中小企業が今すぐ取り組むべきセキュリティ対策:内部不正と情報漏洩の防ぎ方
2025年11月14日

「セキュリティ対策は大企業の話」「うちは狙われるほどの情報を持っていない」と考える中小企業の経営者や担当者は少なくありません。しかし、実際にはサイバー攻撃の標的の約7割が中小企業だといわれています。
大企業に比べてセキュリティへの投資や人員が限られている中小企業は、攻撃者にとって“防御が甘いターゲット”と見なされやすいのが現実です。特に、情報漏洩の原因は外部からの攻撃だけでなく、従業員や元従業員による不正な情報持ち出しなどの「内部不正」が大きな割合を占めている点にも注意が必要です。
本コラムでは、中小企業が実践すべき基本的なセキュリティ対策と、特に重要な「内部不正」の防止策について解説します。
中小企業のための基本的なセキュリティ対策
経営資源が限られる中小企業でも、費用対効果の高い対策から着実に実施することが大切です。
従業員の意識とルール整備
セキュリティ対策で最も重要でありながら、見落とされがちなのが「人」に関する対策です。
情報セキュリティポリシーの策定と周知
情報資産の取り扱い方やパスワードのルール、私用デバイス(BYOD)の利用ルールなどを文書化し、全従業員に理解させることが必要です。
定期的なセキュリティ研修の実施
標的型攻撃メールなどの最新事例を紹介しながら、情報漏洩リスクへの意識を継続的に高めます。
技術的な対策の優先順位
まずは、インターネットに接続する端末の「入口」と「出口」をしっかり守ることから始めましょう。
OSやソフトウェアの最新化(パッチ適用)
古いソフトウェアには既知の脆弱性が残っており、攻撃を受けやすくなります。常に最新の状態に更新しましょう。
多要素認証(MFA)の導入
ログイン時にパスワードだけでなく、スマートフォンの認証コードなどを組み合わせることで、不正アクセスを防止できます。
データのバックアップの徹底
ランサムウェアなどでデータが暗号化されても復旧できるよう、定期的に社外のクラウドや外部ストレージにバックアップを取ります。
特に重要な「内部不正」の防止策
内部不正とは、現職の従業員や派遣社員、退職者などが企業の機密情報を不正に持ち出したり、システムを改ざんしたりする行為を指します。
内部不正は「不正のトライアングル」、すなわち不正の「動機」(金銭トラブル、恨みなど)、「機会」(対策の不備)、「正当化」(不正を自分に納得させる理屈)の3つが揃ったときに発生しますので、不正の機会を与えない対策をとることが重要です。
従業員のアクセス権限の最小化
「必要最小限の権限」を付与する最小権限の原則を徹底します。
職務に応じたアクセス権限設定
全員がすべての情報にアクセスできる状態は危険です。部署や職務に応じてアクセス範囲を細かく設定しましょう。
相互牽制と業務分掌
重要なデータの取り扱いには二人以上の承認を要求する、一人で業務を完結できないよう役割を分担させるなどしましょう。
特権IDの厳格な管理
システム管理者などが持つ特権IDは、悪用された場合の影響が大きいため、利用者を限定し、利用ログを監視します。
不正行為を「させない」「見つける」仕組み
不正行為を防止し、発生時にはすぐに把握できる体制を整えます。
PC操作ログの取得と監視
ファイルアクセスやUSB接続などの操作履歴を記録し、不審な動きを確認します。特に退職予定者などへの監視を強化します。
情報持ち出し経路の制限(EDR/DLPの導入)
EDR(Endpoint Detection and Response)やDLP(Data Loss Prevention)の導入により、機密情報のコピーや送信を検知・制御できます。
懲戒規定の整備と周知
内部不正を行った場合の処分や損害賠償の可能性を明確に示し、従業員への抑止力とします。
FAQ(よくある質問)
Q:内部不正対策で従業員との信頼関係が損なわれませんか?
A. 監視は従業員を守るためでもあります。操作ログの取得は「万が一の誤解から従業員を守るため」であることを説明し、透明性を確保することで理解を得やすくなります。
Q:ITの専門家がいない場合、何から始めるべきですか?
A. まずは「OSの更新」「ウイルス対策ソフトの導入」「パスワードルールの見直し」から始めましょう。自治体や商工会議所などの支援制度を活用するのも有効です。
Q:BYOD(個人所有デバイスの業務利用)による情報漏洩が心配です。
A. MDM(モバイルデバイス管理)サービスを導入しましょう。業務データと私用データを分離し、紛失時には遠隔で業務データを削除できます。
まとめ
中小企業の情報セキュリティ対策では、「自社にとって最も大きなリスクは何か」を把握し、優先順位をつけて対処することが大切です。
特に内部不正は、企業の信頼を大きく損なうリスク要因です。
- ルールと教育で「人の意識」を高める
- 最小権限の原則で「アクセス」を制御する
- ログ監視やEDRで「不正な動き」を見逃さない
この3つを柱として、早めの対策を進め、大切な情報資産と企業の信用を守りましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。




