離婚の親権を徹底解説!権利の概要と決め方・条件を紹介
最終更新日: 2023年09月27日
- 離婚のときに決める親権とはどのような権利なのだろう?
- 子どもの親権はどのように決めていくのだろう?
- 親権者となるにはどのような条件が必要なのだろうか?
親権とは、未成年の子どもの財産管理や監護・養育する権利を指します。
離婚のときに夫婦の財産分与や慰謝料、面会交流の他に、子どもの親権をどちらが持つかも決めなければいけません。
ただし、双方が子どもの親権を持つと主張し、話し合いが平行線となる可能性もあります。このようなときは、何らかの方法で解決を図る必要があるでしょう。
そこで今回は、多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が親権の範囲や、親権の決め方、親権者となる条件について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 親権は子どもの財産の管理処分~子どものしつけまで幅広い範囲に及ぶ
- 協議で親権者が決まらない場合は、家庭裁判所の調停・離婚訴訟等で解決を図る
- 親権者を決める場合、子どもとの関係、健康・経済状態、居住・教育環境等が考慮される
離婚における親権とは
親権とは、未成年の子どもの財産管理や監護・養育をする権利です。離婚のときに未成年の子どもがいる場合は、親権者を取り決める必要があります。
親権には大きく分けて「財産管理権」「身上監護権」があります。
こちらでは、それぞれの権利について解説しましょう。
財産管理権
財産管理権とは、未成年の子どもの財産を管理する権利および義務です。
ただし、子どものために現金・預金を管理するだけではなく、親権者が子どもの財産のための法律行為をしたり、子どもの行為に同意をしたりする権利も該当します。
具体的には次のような権利・義務を有します。
- 子どもが親戚等から受け取ったお年玉や、子ども名義の預貯金の管理
- 子どもが賃貸物件の賃貸借契約を締結する法律行為に同意する 等
身上監護権
身上監護権とは、まだまだ知識・経験の未熟な子どもを育て上げるために必要な、許可やしつけ等に関する権利および義務です。
具体的には下表の4つの権利で構成されています。
身上監護権 | 内容 |
身分行為の代理権 | 子どもの身分行為(例:婚姻・離婚・養子縁組等)に同意し、代理する権利 |
居所指定権 | 子どもの住む場所を指定する権利 |
懲戒権 | 子どもをしつける権利 |
職業許可権 | 子どもが職業に就く許可または不許可とする権利 |
離婚における親権の決め方
離婚するときに親権をどう決めるかは、まず夫婦でよく話し合う必要があります。基本的には協議→調停→裁判という形で進んでいきます。
ただし、相手が別居したまま、いつまで経っても話し合いに応じないならば、調停離婚を申し立てても構いません。
なお、ケースによっては相手方がいきなり調停を起こし、家庭裁判所から呼び出し状が届く
場合もあります。
こちらでは、協議離婚・調停離婚・裁判離婚それぞれの親権の決め方について解説します。
協議離婚
協議離婚では夫婦が話し合い、どちらが子どもの親権者になるかを決定します。
離婚のとき、市区町村役場へ提出する離婚届の中には、親権者を父母のどちらにするのか記載する欄があり、未記載の場合は離婚届が受理されないので注意しましょう。
協議が難航し親権者を決められなければ、家庭裁判所の調停・離婚訴訟等で決めます。
調停離婚
協議で決められなかった場合、相手方の住所地または当事者が合意で定めた家庭裁判所に、「夫婦関係調整調停(離婚)の申立」を行います(調停離婚)。
調停離婚とは、家庭裁判所から選出された調停委員が当事者の意見をよく聴き、アドバイスや解決案を提示する等して、和解を目指す方法です。
調停は非公開で行なわれ、原則として夫婦双方の出頭が必要です。
夫婦双方が同席すれば感情的になり言い争いとなる可能性もあるので、夫婦の一方が調停委員と会っている間は、他方は呼び出されるまで別室で待機します。
1回で話し合いがまとまらなければ、合意または不成立となるまで、約1か月おきに数回程度、家庭裁判所で調停が開かれます。
裁判離婚
調停でも、親権をどうするか主張が物別れに終わった場合、裁判離婚で決めます。原則として夫または妻の住所地を受け持つ家庭裁判所に、訴訟提起を行います。
ただし、当事者だけでの話し合いがうまくいかないからといって、いきなり訴訟提起はできません。まずは離婚調停を経たうえで行う必要があります。
裁判離婚では、当事者のどちらが親権者となるかについて、裁判官から決定が下されます。
なお、子どもが15歳以上であれば子どもの意思を重視します。子どもが15歳に満たない場合は、母親が親権者とされるケースが多いです。
離婚で親権者となる条件
親権者に必要な条件は法律で規定されていません。
しかし、父母のどちらが親権者にふさわしいのか、裁判所では家庭の事情や子どもとの関係、健康・経済状態等を総合的に考慮して判断します。
こちらでは、親権者として選ばれる条件について取り上げましょう。
子どもの年齢
幼い子どもにとっては、母親の存在が必要不可欠な存在であり、母親とのくらしが幸せだ、という考え方が一般的です(母性優先の原則)。
裁判所の判断では、実際に乳幼児や子どもの年齢が幼ければ、この原則が重視され、母親が親権者に選ばれやすい傾向があります。
ただし、時代の変化とともに家族の在り方、価値観は変化しています。
たとえば母親が働き、父親が家事を担当していた(主夫)という場合、裁判所は父親を親権者と決める可能性もあります。
子どもとの関係
子どもへの愛情の深さ、子どもとどれだけ接してきたかが重要視されます。
裁判所は主に次のような事情も考慮します。
- 子どもの世話をしてきた実績は父母のどちらが大きいか
- 日常生活で子どもと共に過ごす時間の長さや、会話の内容
- 仕事をしていても育児に積極的だったか
- 休日には、積極的に子どもと触れ合ってきたのか 等
たとえば、母親が育児放棄をしていて、一方の父親は仕事があるにもかかわらず、子どもの世話を積極的に行っていたという場合、父親が親権者に選ばれる可能性は高いです。
親権者の経済状況
離婚後の父母の仕事・経済状況も、親権者を決めるときに注目されます。
離婚しても、経済的に子どもの衣食住の困窮はもちろん、教育に支障が出ないか等が考慮されます。
ただし、一概に年収の高い方が親権者に選ばれるというわけではありません。
たとえ相手より収入が低かった場合でも、子どもの生活に足りない分のお金は養育費で補えます。そのため、裁判所は父母の経済力の差に関して、親権を決めるときに重要とはみなされません。
なお、父母の一方はお金の管理があまりできず、借金を繰り返している、浪費癖が激しい等の事実があれば、とてもその親は親権者として認められない、と裁判所は判断するでしょう。
親権者の健康状態
父母の一方が病気がちで、子どもの日常的な世話ができないほど悪化している場合、親権者として適切ではないと、判断されてしまう場合があります。
健康に自信がない、持病があり治療中の場合、それだけで親権者になれないわけではありません。
しかし、裁判所は子どもの福祉を最優先に考えるため、親権者となる親には、子どもの日常的な世話に支障が出ないよう、身体的にも精神的にも、健康である点が求められます。
環境
離婚後、子どもの生活環境がどうなるかも判断されます。
親権者が生活費を稼ぐため、昼夜を問わず働くのはやむを得ないですが、子どもが事実上、1人だけで生活する事態となっては、親権者を決めた意味がありません。
そのため、離婚時に子どもがまだ幼ければ、子どもと一緒に過ごせる時間の長い親の方が、親権者に適していると判断される傾向があります。
ただし、親が仕事で子どもにかまってやれなくとも、その分、近所に住んでいる自分の両親(子どもから見て祖父母)や、兄弟姉妹に育児を協力してもらう等、親以外に子どもへ愛情を注いでくれる存在がいれば、裁判所は良好な生活環境である、と判断します。
まとめ
今回は多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、親権者を決める流れ、親権者を決める判断基準等について詳しく解説しました。
無理に相手方と会い離婚を話し合おうとしても、口論となり余計に離婚手続きが進まなくなる可能性があります。
そのようなときには弁護士へ相談し、自分の代理人として話し合いをしてもらうのもよい方法です。当事者同士ではないので、冷静に話し合いが進められます。
話し合いがまとまらない場合でも、その後の調停や裁判の手続きを弁護士へ任せられるので安心です。
直接、相手方と離婚の話し合いをするのが不安なら、弁護士へ相談し、手厚いサポートを受けてみてはいかがでしょうか。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。