不倫したら離婚時に親権はとれない?専門弁護士が解説

最終更新日: 2023年12月22日

不倫したら離婚時に親権とれない?専門弁護士が解説

不倫をしたら妻は親権を取れない?
夫が親権を取るのは難しい?
夫が親権を取るためのポイントはある?

不倫で離婚することになった場合、不倫された配偶者としては子供の親権を取りたいと考える人も多いところです。不倫するような人は親として不適格と考えるからです。

今回は不倫をした場合の親権について、不倫問題を数百件解決してきた専門弁護士が解説します。

不倫慰謝料に強い弁護士はこちら

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

不倫したら離婚時に親権はとれない?

不倫をした親は親権を取れなくなるのでしょうか?まずは親権に関する法律に確認した上で、この点についてご説明します。

親権とは

民法には、「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。」 と規定されています(民法第820条)。

このように親権は、権利だけでなく義務でもあり、また子の利益のために行使されなければなりません。

婚姻中は、原則として両親が共同で親権を行使します(民法第818条3項)。しかし、離婚した場合には、共同で親権を行使することは難しくなりますので、一方を親権者として定めなければなりません(民法第819条1項、2項)。

不倫と親権との関係

さて、夫又は妻の不倫が原因で離婚をすることになった場合、不倫をした配偶者は親として不適格であり、子の親権者とはなり得ないのでしょうか。

結論としては、不倫の一事をもって親権者になることは否定されません。不倫をしていたとしても子の養育に何ら問題がなかったのであれば、親権者の判断に不倫の事実は考慮されないのです。

離婚する際には親権の他に、慰謝料、財産分与、養育費について決めますが、不倫の事実は慰謝料においてのみ考慮され、その他の親権、財産分与、養育費においては考慮されません。

不倫した妻が親権を獲得できない場合も?

不倫の事実は親権には原則として影響しないとご説明しました。それでは、不倫をした妻が親権を獲得できないケースとはどのような場合なのか、以下見て行きましょう。

親権の判断基準

親権者は、父親と母親のいずれを親権者とすることが子の利益、子の福祉にかなうのか、という基準で判断されます。

このような判断をするにあたっては以下のような様々な事情を考慮することになります。

  • 仕事の内容や勤務時間
  • 親族による養育に対する援助の有無
  • 過去の養育への関わり
  • 離婚後の居住環境
  • 子の年齢と性別
  • 離婚後の面会交流に対する考え
  • 子の意思

最後の子の意思については子が15歳以上の場合には重視されますが、それ以下の場合、特に乳幼児や児童の場合には子の意思はほとんど考慮されません。

なお、親権者の決定においては母親が強いと言われることがよくあります。確かに3歳くらいまでの乳幼児の場合には親権者の決定において母親がかなり有利です。

しかし、それ以上の年齢になりますと、母親の方が父親よりも圧倒的な優位にあるということはなく、上記のような事情を考慮していずれを親権者とする方が子の成長のために適切かという観点から判断されることになります。

妻が親権を獲得できないケース

不倫をしたからといって親権者になれないということはありません。

しかし、例えば、不倫のために育児放棄をして夫に任せっきりだった、子を虐待していた、不倫相手との関係を優先して子を置いて出て行ったなどの事情があると妻が親権を獲得できない可能性が高まります。

要するに、不倫関係が子の養育に悪影響を与えている場合には、妻が親権を獲得できない可能性が出てきます。

不倫で離婚する場合に夫が親権をとるには?

それでは、妻が不倫をした場合に夫が親権を獲得するためにはどうすれば良いのでしょうか。夫が親権を獲得するためにはとりわけ以下の点については必ず実施するようにしましょう。

  1. 協力者の確保
  2. 母親との柔軟な面会交流
  3. 子の養育に積極的に関わる
  4. 子と別居しないこと

協力者の確保

父親がフルタイムで働いている場合、子の送り迎えや、子に病気や怪我などの緊急時の対応が容易ではないことも多いでしょう。また、早朝から深夜まで仕事をしていますと、子が自宅で留守番をすることになってしまいます。

このように仕事をしている父親だけで子の養育を十分にすることが難しい場合には、父親の両親など子の養育について協力してくれる方を確保することが重要です。

もちろん、協力者に養育を任せきりにするようでは親権者としての適格に疑問をもたれてしまいますので、子と一緒に過ごす時間を確保できるよう仕事を調整することも必要となります。

母親との柔軟な面会交流

離婚後は子を母親とは会わせたくないと考える方もおられます。しかし、そのような態度を示しますと父親としての適格性を疑われてしまいます。

子の目線で考えることができるかという点が重視されます。子は父親に気を使って明言はしない場合も、母親に会いたいと思うのが普通です。そのため、子の健全な成長のためには、父親だけでなく母親の存在も重要です。

そのため、父親が親権者となった場合には、母親との面会交流を月に1回だけなどと制限するのではなく、できる限り柔軟に母親と交流できる機会を増やしてあげるような面会交流についての提案をしていく姿勢が求められます。

子の養育に積極的に関わる

幼い子の意思はあまり尊重されないとはいえ、子が父親になついているか、父親に対して親和的な感情を抱いているか、また父親が子に対して深い愛情をもっているかという点も重要な点となります。

そのため、従前は子と過ごす時間が限られていた場合も、親権者となるのであれば、朝、夜、休日に子と過ごす時間を確保するようにしましょう。また、幼稚園や保育園の先生、保護者ともコミュニケーションをとり、学校のことについても把握するよう努めましょう。教育費用を自分が支払うといった状況も、親権を主張・交渉する上での理由として役に立ちます。

子と別居しないこと

離婚が成立する前に夫が妻子を置いて自宅を出たり、妻が子と一緒に自宅を出て別居が始まることがあります。

このように子と離れて生活するようになりますと親権者が決まるまでの間に母親と子の新たな生活環境ができあがってしまいます。生活環境の変化は子にとって負担となりますので、そのように築かれた新しい環境を尊重すべきという判断に繋がりやすいのです。

よって、親権を獲得する場合には、子と別居しないことが重要です。

不倫で離婚する場合に親権を決める流れ

最後に、親権者が決まるまでの流れについて確認しておきましょう。

  1. 夫婦間での協議
  2. 調停
  3. 訴訟

夫婦間での協議

まずは、夫婦間でいずが親権者となるのか話し合いをします。親権を譲りたくないという考えは専ら、親権者にならなければ子と会えなくなる、生活できなくなるという不安にあります。

そのため、不倫をした妻との信頼関係を改めて築くことは容易ではないでしょうが、子のためと割り切り、親権者とならなくても子とは自由に交流することを認めることで、親権者という形への拘りが弱まり、協議で親権者が決まる可能性があります。

なお、子が何人かいる場合に、父親と母親に何人かずつ分けて親権を分ける夫婦もみられます。しかし、子としては兄弟姉妹と離れ離れになりたくないと思うのが普通です。子どもの目線に立って考えてもそれが妥当なのかは慎重に検討する必要があります。

調停

夫婦間の協議で親権者が決まらないときは、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。

調停も夫婦間で合意が成立した場合にのみ親権者が決まる点では協議と同じですが、調停委員が双方の意見を調整しますので、夫婦間での協議よりも合意は成立しやすくなります。

また調査官が関与することもあり、その場合、第三者による調査結果を見て、どちらを親権者とすることが良いのかについて考えが変わることもよくあります。

訴訟

調停においても親権者が決まらないときは、次は離婚訴訟に進みます。離婚訴訟では夫婦間で合意に達しないときには、裁判所がいずれを親権者とするのか判決によって決定します。

このように判決によって白黒をつけられた場合には、親権者となった方は他方の面会交流は最低限しか認めないかもしれません。このようなリスクを考えると、親権という形には拘らずに、面会交流の内容を柔軟にする和解を目指すことも検討に値します。

まとめ

以上、不倫があった場合の親権問題について解説しました。

不倫をしてしまったけれども親権を獲得したい、母親・女性が優位と聞くけれども父親として親権を獲得したい、このようなご希望がある方は、不倫問題を専門とする弁護士にご相談ください。

不倫慰謝料に強い弁護士はこちら

不倫のコラムをもっと読む