サイバー攻撃の基礎知識:企業が知っておくべき脅威の種類と手口

2025年11月19日

サイバー攻撃の基礎知識:企業が知っておくべき脅威の種類と手口

企業のデジタル化が進む現代において、サイバー攻撃は避けて通れない経営リスクの一つとなっています。
近年の攻撃は、単なるシステム障害にとどまらず、顧客情報の漏えい業務停止による損失など、事業の根幹を揺るがすケースが増えています。

サイバーセキュリティ対策の第一歩は、「敵を知ること」。
つまり、攻撃の種類と手口を正しく理解することです。
本コラムでは、企業が特に警戒すべき主要なサイバー攻撃の種類と、その基本的な仕組みをわかりやすく解説します。

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
宅地建物取引士

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「サイバー攻撃」とは何か? 定義と目的

サイバー攻撃とは、ネットワークを通じて、サーバー、コンピューター、モバイルデバイスなどの情報システムに対して行われる、不正な行為の総称です。

その主な目的は、標的とする企業や組織の情報資産(顧客データ、技術情報、金銭など)を盗み出すこと、システムの利用を妨害すること、あるいはシステムを破壊することにあります。

企業が特に警戒すべき主要な攻撃の種類

数あるサイバー攻撃の中でも、企業にとって特に甚大な被害をもたらす可能性のある主要な脅威について解説します。

マルウェア(Malware)

マルウェアは、「Malicious Software(悪意のあるソフトウェア)」の略で、コンピューターに不利益をもたらすプログラム全般を指します。

マルウェアの種類

概要

被害例

ランサムウェア

データやシステムを暗号化し、復旧と引き換えに身代金(Ransom)を要求する。

事業停止、多額の身代金支払い

トロイの木馬

有益なプログラムに見せかけてシステムに侵入し、バックドア(裏口)を仕掛ける。

情報の窃盗、外部からの遠隔操作

スパイウェア

ユーザーの操作や入力情報(ID/パスワードなど)を密かに盗み出し、外部へ送信する。

機密情報、個人情報の漏洩

ゼロデイ攻撃(Zero-Day Attack)

ゼロデイ攻撃とは、ソフトウェアやシステムの脆弱性(セキュリティ上の欠陥)が発見された日(Day)に、その修正プログラム(パッチ)が提供されるよりも早く行われる攻撃のことです。

DDoS攻撃(Distributed Denial of Service Attack)

DDoS攻撃は、「分散型サービス拒否攻撃」とも呼ばれ、標的となるサーバーやネットワークに対して、複数のコンピューターから大量のデータやリクエストを同時に送りつけ、正常なサービス提供を妨害する攻撃です。

攻撃の「入り口」となる「脆弱性」とは

多くのサイバー攻撃は、システムの脆弱性を突くことから始まります。

脆弱性とは、OSやソフトウェア、ネットワーク機器などに存在する、設計上または実装上のセキュリティ上の欠陥のことです。この欠陥を放置すると、攻撃者にシステムへの不正アクセスやマルウェアの侵入を許す「穴」となります。

企業は、常に利用しているシステムやソフトウェアを最新の状態に保ち、この「穴」を塞ぎ続ける対策(パッチ適用など)が不可欠です。

しかし、どれだけ入念な対策をとったとしても攻撃を受ける可能性をゼロにすることはできません。そのため、例えば、EDR、即座にデータを復旧できるバックアップシステム、ネットワークの冗長化など攻撃を受けた場合を前提とした多層的な対策をとることが重要です。

FAQ(よくあるご質問)

Q:マルウェアとウイルスの違いは何ですか?

A. マルウェアは悪意のあるソフトウェア全般を指す総称です。ウイルスはマルウェアの一種であり、「自己増殖機能を持つ」という特徴を持ちます。ウイルス以外にも、ランサムウェアやスパイウェアなど多くの種類がマルウェアに含まれます。

Q:ゼロデイ攻撃を防ぐことは不可能ですか?

A. 完全な防御は困難ですが、被害を最小限に抑えることは可能です。具体的には、ネットワーク監視体制の強化(IDS/IPSの導入)、エンドポイントの隔離機能の導入、そして緊急時の迅速な対応計画(CSIRTなど)の策定が重要になります。

Q:攻撃を受けたことが判明した場合、まず何をすべきですか?

A. まず、ネットワークからの切り離しなどによる被害の拡大防止、次に証拠保全、そして速やかに法律事務所や専門ベンダーに相談することが極めて重要です。特に情報漏洩の可能性がある場合は、法的な報告義務が発生するため、専門家の助言が不可欠です。

まとめ:脅威を理解し、専門家と連携する

サイバー攻撃の脅威は日々進化しており、その手口を理解することは、企業のリスクマネジメントにおいて最も重要な要素の一つです。

自社の情報資産を守り、事業継続性を確保するためには、これらの脅威を正しく認知し、セキュリティ対策の基本を徹底することが求められます。

しかし、複雑な攻撃や法的な対応は、自社内だけで完結できるものではありません。専門的な知見を持つ法律事務所と連携し、リスク対策や万が一の事態に備えることが、現代の企業には必要不可欠です。

 

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