DDoS攻撃の仕組みとは?中小企業にも忍び寄るサーバーダウンのリスクと法的備え
2025年05月13日
ある日突然、企業のホームページが閲覧できなくなる、メールが送受信できない、という事態に直面したことはありませんか?
それは「DDoS攻撃(ディードス攻撃)」によるサーバーダウンの可能性があります。DDoS攻撃は近年、特定の思想や利益目的ではなく、「金銭要求」「嫌がらせ」「競合妨害」などを目的として、一般企業・中小企業にも拡大しています。
本記事では、DDoS攻撃の基本的な仕組みと最新の傾向、中小企業が受けうる被害、そして法的・実務的な備え方について詳しく解説します。
DDoS攻撃とは?「分散型」のサイバー妨害の手口
DoS攻撃(Denial of Service attack)とは対象のサーバーやネットワークに大量のパケットを送りつけることで、システムリソースやネットワークが正常動作できない状態に陥れる攻撃をいいます。
DDoS攻撃(Distributed Denial of Service attack)は、ボットネットなどインターネット上の多数の踏み台となる攻撃元からDoS攻撃を仕掛ける攻撃手法です。
攻撃元は世界中のウイルス感染端末やIoT機器が利用されることが多く、「誰が」「なぜ」攻撃してきたのか特定しにくい点が特徴です。
代表的なDDoS攻撃のタイプと傾向
SNY Flood攻撃
送信元IPアドレスを偽装して標的サーバに接続要求をするパケットを大量に送信することによって標的サーバのメモリやCPUを消費させ、正常なサービス提供を妨害する攻撃です。
UDP Flood攻撃
標的サーバやネットワークに大量のUDPパケットを送信することでファイアウォールなどのネットワーク機器に負荷をかける攻撃です。
Smurf攻撃
標的サーバのIPアドレスを偽装し、踏み台となるネットワークのブロードキャストアドレスへICMPエコー要求パケットを送信することで、踏み台となるネットワーク上の各ホストは標的サーバへ一斉にICMPエコー応答を送信し、標的サーバが正当なサービス提供を妨害する攻撃です。
最近では、クラウドサーバーやSaaSツールに対してもDDoS攻撃が行われるケースが増えており、「社内サーバーを使っていないから安全」とは言えなくなっています。
中小企業で実際に発生したDDoS被害の事例
- 2022年に日本政府や東京メトロに対してDDos攻撃がなされウェブサイトが一時的な障害が発生。
参照:日本経済新聞
- 2025年に日本気象協会に対してDDoS攻撃がなされ天気予報サイトがアクセスしづらい状態になった。
参照:日本経済新聞
DDoS攻撃そのものに「情報漏洩」は伴いませんが、企業活動の信頼性が損なわれること自体が大きな損害につながります。
DDoS攻撃で企業が法的に問われる責任とは?
DDos攻撃を受けた被害企業、その踏み台とされてしまった企業であっても法的責任を問われる可能性があります。つまり、サービスの提供を受けられなかった顧客に対して損害賠償をすることになったり、踏み台とされた企業が被害企業に対して損害賠償をすることになる可能性があります。
確かに、脆弱性をついた攻撃である性質上、よほどの過失がない限り、機器の所有者が法的責任を負うことはないでしょう。しかし、製造元などから再三にわたって注意喚起、対応依頼があったのにセキュリティ対策を実施しなかったような場合には過失が認定され法的責任を負う可能性があります。
また、今後企業が遵守すべきセキュリティ対策の水準が確立されれば、それを遵守していない場合には過失が認定されやすくなるでしょう。
中小企業がとるべき対策と法律事務所が提供できる支援
技術的な対策(社内・外部委託問わず)
- DDos攻撃の検知、防御のシステムを構築
- DDos攻撃を受けた場合の対応手順の整備
- 取引先のセキュリティ対策に関する評価
法律事務所が提供できる支援
- DDos攻撃を受けた場合の責任限定に関する顧客との契約書や利用規約の整備
- DDos攻撃を受けた場合の対応協力や法的責任に関する取引先との契約書の整備
- 警察・通信事業者・サーバー業者との連携支援
まとめ:中小企業でも「業務停止リスク」は他人事ではない
DDoS攻撃は、セキュリティの甘い中小企業も狙われる時代です。被害の目的が“金銭”や“嫌がらせ”である限り、規模に関係なく対象になります。
技術的対策に加えて、「法的備え」も整えることで、被害発生時に適切な対応ができ、信頼を守ることができます。トラブル時だけでなく、予防段階から弁護士へ相談することで、安心してビジネスを継続する体制が整います。
よくあるご質問(FAQ)
Q:自社のサイトがDDoS攻撃でつながらなくなりました。まず何をすべきですか?
速やかに情報セキュリティ責任者やCSIRTへ報告し、対応チームを召集します。
攻撃対象となっているサーバや該当IPに対し、一時的にネットワーク遮断やアクセスフィルタを適用し、必要であれば該当機器をネットワークから隔離します 。
その後、影響範囲の特定、フォレンジック調査、対外的なアナウンスの準備を行います。
Q:DDoS攻撃によってサービスが停止した場合、契約違反になりますか?
過失の有無と顧客との契約やサービス利用規約によります。
不可抗力によるサービス停止については法的責任を負わないのが通常です。しかし、一般に求められる水準のセキュリティ対策を怠っていたような場合には契約違反による法的責任を負う可能性があります。
これらについて契約書や利用規約に明記することが重要でしょう。
Q:セキュリティ担当がいない小規模事業者でも実施できる最低限のDDoS対策は?
海外のIPアドレスからのアクセス制限、CDNの導入、WAF、IPSの導入などが考えられます。
自社に適した対策をとるためにはやはり専門家の支援が必要ですから、スポットでDDos対策についてのコンサルを依頼しましょう。
Q:法律事務所にはどういった場面で相談できますか?
DDosを受けてしまった場合の顧客、取引先への対応について法律事務所は支援できますが、やはり事前対策が重要です。
法的側面からの対策はもちろん、情報処理安全確保支援士の資格をもつ弁護士が所属している法律事務所であれば技術的側面からの対策についても支援を受けることができます。
顧問契約は必須とせず、スポットでこのような対応をしてくれる法律事務所もあります。
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