離婚するときに親権を父親が獲得しにくい!?獲得できるケースや決定の流れなどを弁護士が解説

最終更新日: 2023年07月04日

  • 離婚するときに親権を父親が獲得することは難しいと言われるが本当か?
  • 離婚するときに親権を父親が獲得できるケースを知りたい
  • 離婚して親権を父親と母親どちらが獲得するのか決定する流れを確認したい

離婚するときに子どもがいる場合は、親権の帰属も注意しておかなけばならないポイントです。実情は、母親の方が有利な状況が多く、父親が親権を獲得できるケースは決して多くはありません。

それでは、父親が親権を獲得できるケースはどのような場合なのでしょうか。また、親権が決定するまでの流れや父親が親権を獲得できなかった場合の対処方法も、確認しておきたいところです。

そこで今回は、離婚時の親権に詳しい専門弁護士が、離婚時に父親が親権を獲得しにくい理由や親権を獲得できるケース・親権を獲得できなかった場合の対処方法、などについて解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 父親が親権を獲得する事例は、年々低下しており2020年には11.8%
  • 離婚しても親権を父親が獲得できるケースは、「母親が子供を虐待」「母親がネグレクト」「母親の家出」「子どもが母親よりも父親との生活を希望」などがある
  • 離婚時に親権がどちらに属するか決まる流れは、「話し合い」→「解決できなければ調停」→「解決できなければ裁判」

離婚に強い弁護士はこちら

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

離婚するときに親権を父親が獲得できる可能性は低い!?

国の統計によると、父親が親権・監護権を持つ事例は年々低下しており2020年には11.8%に過ぎません。逆に母親が親権を持つ事例が84.7%で、ほとんどの場合は母親が親権を持っています。

出典:人口統計資料集(2022)|国立社会保障・人工問題研究所

ここでは、離婚するときに親権を父親が獲得できる可能性が低い理由について、以下の2つを解説します。

  • フルタイムで働く父親が多い
  • 母親と遊ぼうとする子どもが多い傾向がある

それでは、1つずつ解説します。

フルタイムで働く父親が多い

理由の1つ目は、フルタイムで働く父親が多いことです。

フルタイムで仕事をしていると、どうしても子育てに手が回らないと考えられてしまいます。子どもを保育園や保育施設に預けることも可能ですが、フルタイムで働いていて毎日迎えに行くことは、容易ではありません。

また、父親が外で働き、子育ては母親に任せているケースでは、一般的に育児経験が少なく単独で子育て・世話はできないと判断される可能性もあるでしょう。

母親と遊ぼうとする子どもが多い傾向がある

理由の2つ目は、母親と遊ぼうとする子どもが多い傾向があることです。

親権を決めるときには、特に子どもの年齢が一定以上であれば子どもの意見も少なからず考慮されます。その際、母親の方が父親よりも多くの時間子どもに関わっているケースが多いため、母親と遊ぼうとする子どもが多い傾向にあるのです。

ただ、どの家庭でも子どもが母親と遊ぼうとしているとは限りません。また、親権を最終的に子どもに決めさせること望ましくなく、子どもの意見はあくまでも参考に留めたほうがよいでしょう。

離婚しても親権を父親が獲得できるケース

ここでは、離婚しても親権を父親が獲得できるケースについて、以下の4つのケースについて解説します。

  • 母親が子供を虐待
  • 母親がネグレクト
  • 母親の家出
  • 子どもが母親よりも父親との生活を希望

それでは、1つずつ解説します。

母親が子供を虐待

父親が親権を獲得できるケースの1つ目は、母親が子どもを虐待しているケースです。

母親が子どもに対して暴行や暴言などの虐待を行っていると認められる場合は、親権は父親側に認められる可能性が高いでしょう。

母親がネグレクト

父親が親権を獲得できるケースの2つ目は、母親がネグレクトをしているケースです。

母親が子どもに食事を与えない・学校に行かせないなどのネグレクトをしており、かつ父親は適切に子育てを行っていると認められる場合は、高い確率で父親に親権が認められるでしょう。

母親の家出

父親が親権を獲得できるケースの3つ目は、母親が家出しているケースです。

母親が父親や子どもをおいて家出している場合は、ネグレクトとみなされ父親に親権が渡る可能性が高くなります。

子どもが母親よりも父親との生活を希望

父親が親権を獲得できるケースの4つ目は、子どもが母親よりも父親との生活を希望しているケースです。

子どもが父親と暮らしたいという意思を持っている場合は、それも判断材料の1つになります。ただ、子どもによっては親に気を遣って本音を言えないことも考えられます。

子どもの希望がわからないときは、家庭裁判所の調査官が調査を行いますが、調査官の前で子どもに「パパと暮らしたいでしょ?」などと誘導すると、逆に不利になると考えましょう。

離婚時に親権が父親と母親どちらに属するかを決定する流れ

ここでは、離婚時に親権が父親と母親どちらに属するかを決定する流れについて、以下の3つを解説します。

  • 話し合いから始める
  • 話し合いで解決できなければ調停を行う
  • 調停でも解決できなければ裁判を起こす

それでは、1つずつ解説します。

話し合いから始める

1つ目は、話し合いから始めることです。

話し合いの余地がある場合は、まずは話し合いから始めることがセオリーです。多くの場合、母親と父親双方が親権を求めて対立しますが、感情にふり回されず冷静に話し合いましょう。

そのためには、以下のポイントに注意することが大事です。

  • 父親が育児に積極的に関わっており、親権を得るにふさわしい(母親が逆に育児放棄などがあり、親権を得るにふさわしくない)といえる客観的証拠を用意する
  • 事前に弁護士に依頼して、話し合いの場に同席してもらう
  • 共通の友人など、第三者にも同席してもらう
  • 決めたい内容や要望などを記したメモに沿って話し合いを進める
  • 話し合うときに、合意の上で内容を録音する
  • 話し合った結果をメモに残し、署名をもらう
  • 離婚協議書を作成してから離婚する

話し合いで解決できなければ調停を行う

2つ目は、話し合いで解決できなければ調停を行うことです。

話し合いで解決できない場合は、家庭裁判所の夫婦関係調整調停を活用しましょう。夫婦関係調整調停の概要は、以下のとおりです。

申立て場所

相手方が住む地域、もしくは当事者が合意で定めた家庭裁判所

必要書類

  • 夫婦関係調整調停申立書
  • 進行に関する照会回答書
  • 事情説明書
  • 夫婦の戸籍謄本
  • 連絡先等の届出書

費用

コピー代など含め5,000円前後

進め方

  • 家庭裁判所の調停室にて、男女2名の調停委員が夫婦を交互に呼び出す(お互いは顔を合わせない)
  • 夫婦は互いに調停委員に対し自分の主張を述べ、それを踏まえてよりふさわしい親権者や解決方法を提案する
  • 必要に応じ、家庭裁判所調査官が調査を行う

調停でも解決できなければ裁判を起こす

3つ目は、調停でも解決できなければ裁判で決着をつけることです。

裁判になってから調査を行うことは多くなく、基本的に調停で行われた調査の結果を基に、親権者が決定されます。そのため、調停の段階でも父親が親権者として子どもの面倒をしっかり見ていること、そしてその証拠をきちんと残しておくことが大事です。

裁判ではその事実と証拠があることを十分アピールしましょう。また、裁判の進め方については、弁護士に依頼してアドバイスをもらうことをおすすめします。

離婚時に親権を父親が取れなかった場合どうすればよいか

ここでは、離婚時に親権を父親が取れなかった場合どうすればよいかについて、以下の2つを解説します。

  • 面会交流を求める
  • 親権者変更を目指す

それでは、1つずつ解説します。

面会交流を求める

1つ目は、面会交流を求めることです。

面会交流は、離婚後も非親権者が子供と定期的に会って交流するものです。月1回程度が相場ですが、当事者同士で自由に決められます。

面会交流は、子供の発育の面でも重要なので、母親にもその点を説明しましょう。話し合いがまとまらなければ、調停や審判、裁判でも面会交流を求めることができます。

親権者変更を目指す

2つ目は、親権者変更を目指すことです。

一度決められた親権者も、途中で変更することが可能です。離婚後も子供と関わりを持ち、養育環境を整備していけば、親権者を変更できる可能性があります。

短期間で親権者変更することは容易ではありませんが、子供の年齢が上がると母性優先の原則も考慮されなくなってくるので、親権者変更が認められる確率が高まるでしょう。

まとめ

今回は、離婚時の親権に詳しい専門弁護士が、離婚時に父親が親権を獲得しにくい理由や親権を獲得できるケース、親権を獲得できなかった場合の対処方法などについて解説しました。

紹介したように、国の統計によると、父親が親権を行う事例はわずか11.8%(2020年)で、反対に母親が親権を行う事例が84.7%でした。父親が親権を獲得できるケースが少ないことは事実です。そこには、フルタイムで働く父親の多さなどが要因としてあります。

ただ、客観的証拠をそろえて、子どもの親権は父親である自分が獲得すべきであることを示せば、親権を獲得できる可能性はあります。また、離婚時には親権を獲得できなくても、家族との関わりを深めていけば、先々、親権変更も不可能ではありません。

離婚に強い弁護士はこちら

離婚のコラムをもっと読む

※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。