離婚調停は女性が有利なのか?理由・ポイント・注意点も解説
最終更新日: 2024年12月30日
- 離婚調停は女性が有利と聞いた。それが事実なら公平な和解は無理だと思う。
- 離婚調停で家庭裁判所が公平に夫婦の話を聴くのか内心不安だ。
- 離婚調停で有利となるポイントがあれば是非教えてほしい。
離婚調停は裁判官や調停委員が夫婦の仲立ちをして、和解を促す解決方法です。
裁判官や調停委員は公平に夫婦の主張をヒアリングします。ただし、夫婦の経済状態や有責性の有無を判断し、夫婦の一方に大幅な譲歩を求める可能性もあるでしょう。
そこで今回は、数多くの離婚調停に携わってきた専門弁護士が、離婚調停では女性が本当に有利なのか?調停で有利になるためのポイント等を詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 女性が調停で有利になるといわれている理由として、パート従業員や専業主婦である等、所得の低さがあげられる
- 調停離婚で女性が有利となるのは、親権や財産分与等に関してである
- 離婚調停で有利となるためには、調停で冷静な対応や、説得力のある主張を行う必要がある
離婚調停は女性が有利?
離婚調停では、夫婦の和解による離婚の成立を目指します。
家庭裁判所は互いの歩み寄りを促したり、夫婦双方に和解案を提示したりします。
離婚調停とは
離婚調停とは、夫婦の協議が不調に終わった場合、家庭裁判所で話し合い、自主的な和解を目指す手続きです。調停では裁判官と調停委員2人が夫婦の仲立ちをします。
調停申立後、約2週間くらいで家庭裁判所から申立人と相手に、「呼び出し状」が送付されます。指定された調停期日に、原則として夫婦が出席しなければなりません。
調停期日には、夫婦が別々に調停室に呼び出され、30分程度の事情聴取が交互に行われます。裁判官と調停委員が夫婦双方の言い分を聴取したうえで、実情に応じたアドバイスを行います。
協議される内容
協議される内容は夫婦の事情により異なりますが、主に次のような内容です。
- 離婚の合意:離婚するかどうか
- 財産分与:共有財産の分割割合をどのようにするか
- 親権:親権をどちらにするか(2026年の改正民法施行後から「共同親権」も選択できる)
- 養育費:非親権者が毎月支払う子の養育費の取り決め
- 面会交流:非親権者が子と会う日時や実施方法等の取り決め
- 慰謝料:夫婦の一方が離婚原因をつくった場合は、賠償金額の取り決め
- 年金分割:婚姻期間中に納付した厚生年金を離婚時に分配する取り決め
夫婦の協議で合意できた取り決め内容は、調停で再び話し合う必要はありません。合意できていなかった離婚条件のみ、家庭裁判所で話し合いを継続します。
すでにどちらかが別居している場合は、生活費等の婚姻費用分担についても協議可能です。ただし、離婚調停とは別に「婚姻費用分担請求調停」を申し立てる必要があります。
女性は有利か
離婚調停では単に女性だからという理由で、特別な優遇措置はとっていません。
夫婦の事情聴取を行う調停委員も通常は男性1名・女性1名です。また、調停期日に行われる1回の事情聴取の時間も平等に30分です。
調停委員は中立的な立場で夫婦それぞれの言い分を聴き、合意のための説得や、和解案の提示を行います。
ただし、夫婦が対立している離婚条件や、夫婦それぞれの経済事情によっては、女性に有利となる可能性があります。
調停離婚で女性が有利となりやすい理由
調停では、母親である場合・夫婦の収入等を考慮する必要がある場合に、女性が有利になる可能性もあるでしょう。
ただし、性差別というわけではなく、子の養育面や離婚後の経済面を考慮した、やむを得ない判断です。
親権
親権については、母親の方が有利となりやすいです。
政府の報告によれば、子1人世帯の夫婦の離婚件数4万5,551件のうち、母親が親権を取得したのは4万0,076件で、90%近い割合を占めています。
理由としては「母性優先の原則」があげられます。母性優先の原則とは、特に乳幼児期の子の場合、母親と一緒にいる方がよいという考え方です。
ただし、無条件に母親が親権を得られるわけではなく、次のようなケースでは父親が親権を得られる可能性もあります。
- 母親が子を虐待していた
- 子が父親についていきたいと表明している
- 父親の監護実績、育児のサポート体制の充実が認められる 等
父親が親権者となりたい場合は、上記の事実を、証拠も提示しながら冷静に主張していく必要があります。
出典:人口動態調査 人口動態統計 確定数 離婚 | e-Stat
婚姻費用
婚姻費用とは、夫婦が婚姻生活を維持するために必要な費用です。すでに夫婦が別居している場合も、婚姻費用の分担は夫婦の義務です。
離婚が成立する前の生活費等に関しては、収入の多い配偶者が少ない方に対して金銭を支払う必要があります。
妻が自宅を出て別居していた場合に、収入が低いか全くの無収入のときは、収入が多い夫が妻よりも多めに生活費等を負担する必要があるでしょう。
養育費
養育費は、非親権者が支払う子の生活費・教育費を賄うためのお金です。
親権者が母親となり、非親権者が父親となる場合、基本的に父親が支払わなければなりません。
ただし、養育費の支給額や支給期間が法定されているわけではなく、夫婦で自由に養育費の内容を決定できます。
親権者となった母親の収入が多い場合は、養育費を無理に取り決める必要はありません。
養育費の支給額を算定する場合、裁判所の公表している「養育費算定表」が参考となります。
財産分与
財産分与は夫婦が協力して築き上げた財産(共有財産)を分配する取り決めです。
夫婦だけの協議で分配するときは、夫婦で50%ずつ分けるのが一般的です。ただし、この分け方の場合、必ずしも公平に分配されるとはいえません。
なぜなら、夫婦それぞれの収入に見合った分配方法ではないからです。
たとえば、妻が専業主婦である場合は収入は0円ですが、離婚後すぐに専業主婦が正社員として働けるとは限りません。
夫婦に50%ずつ財産分与をしても、今後の生活の維持が難しくなるおそれがあるのです。
妻が「財産分与割合を増やしたい」と主張した場合、夫が50%の分与を主張しても、調停委員は夫に分与割合を譲歩するよう説得するケースが想定されます。
離婚調停で有利になるためのポイント
離婚調停は夫婦の和解を目的とした手続きなので、夫婦のどちらかが勝訴・敗訴するわけではありません。
ただし、調停で説得力のある主張を行い、積極的に解決を図りたいという姿勢が認められれば、有利に話し合いを進められる可能性があります。
感情的にならない
調停期日で行われる調停委員の事情聴取には、冷静沈着に対応しましょう。
事情聴取のときに相手への苛立ちを爆発させ、激高したり号泣したりすると、調停委員から「理性的な話し合いがまったく進まない」と判断され、立場が不利になってしまう可能性もあります。
相手のことについて尋ねられたとしても、何とか感情を抑えながら返答しましょう。
法的知識を身につける
離婚調停の前に、法律の知識をできるだけ身につけておきましょう。
離婚調停の申立方法を事前に知っていれば、手続きをスムーズに進められます。
調停不成立後の解決方法を知っている場合、離婚訴訟等で解決を図れる余地があるとわかっているので、心理的な負担も大きく軽減できます。
また、慰謝料請求を検討するときに、離婚訴訟で認められる金額相場が100〜300万円と把握できていれば、適正な金額を相手に提示できるでしょう。
調停委員を味方につける
女性という理由だけで、調停委員が味方となるわけではありません。
事情聴取のとき、次のような姿勢・対応がとれれば、調停委員は理解を示すでしょう。
- 事情聴取に冷静かつわかりやすい返答を行う
- 相手の悪口をいわずに、率直な意見を述べる
- 証拠を提示し、説得力のある主張を行う
- きちんとした服装で調停に出席する
逆に乱れた服装で出席し、感情的な主張ばかりを行い、調停委員に対して威圧的な態度をとるようでは、家庭裁判所からの理解はとても得られません。
弁護士へ相談する
離婚調停の前に、民事関係に強い弁護士へ相談しておくのもよい方法です。
弁護士は相談者の調停に関する質問や不安等をヒアリングしたうえで、次のようなアドバイスを行います。
- 離婚調停の手順や申立方法
- 調停期日に事情聴取を受けるときの注意点
- 効果的な主張を行うポイント
- 証拠を収集しておく必要性
- 弁護士が調停に同席する有効性
- 調停不成立の場合の対応 等
離婚調停では代理人(弁護士)の同席や、依頼者の代わりに出席も可能です。
アドバイスを受けるうちに「相談だけではなく、弁護士に代理人を依頼したい」と思ったときは、そのまま契約を締結してもよいでしょう。
離婚調停で有利になるために押さえるべき注意点
離婚調停を有利に進めるため、調停中は軽率な発言や行動は避けましょう。
また、離婚調停の話し合いを有利に進められても、最終的に相手の同意がなければ調停は不成立となります。調停不成立となった場合の対応も、事前に把握しておきましょう。
不利になる発言や行動を避ける
調停期日に出席する場合は、感情的にならず冷静な発言を心がけましょう。また、家庭裁判所内で威圧的な対応を行ってはいけません。
その他にも無断欠席をすれば、裁判官や調停委員の印象が悪くなり、調停で不利な立場となってしまいます。
2〜3回続けて無断欠席すれば、調停不成立となるケースがあるので注意しましょう。やむを得ない理由で欠席するときは、家庭裁判所へ事前に連絡しておくのがマナーです。
調停不成立時の対応策を用意する
調停が不成立となった場合の対応を、事前に考えておきましょう。
根気よく調停を続けても、相手が和解に応じなければ調停不成立となるか、離婚条件の一部だけしか和解できない場合もあります。
ケースに応じて次のような解決方法を検討しておきましょう。
- 離婚や他の条件に合意できないまま調停不成立→離婚訴訟
- 離婚に合意したが他の条件は合意できていない→個別の問題を調停で解決する(財産分与請求調停・養育費請求調停・慰謝料請求調停等)
調停後の解決方法を把握していれば、調停不成立となっても、速やかに訴訟等の手続きを進められます。
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今回は離婚調停での解決に尽力してきた専門弁護士が、離婚調停で女性が有利となる理由、調停で有利となる姿勢や対応等について詳しく解説しました。
春田法律事務所は、離婚調停の交渉に実績豊富な法律事務所です。まずは弁護士と相談し、離婚調停に関する不安や悩みを打ち明けてみましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。