離婚公正証書とは何か?メリット・作成ステップ・注意点もわかりやすく紹介

2024年12月27日

離婚公正証書とは何か?メリット・作成ステップ・注意点もわかりやすく紹介

  • 離婚するときは取り決めた内容を書面化したい。最も確実に記録を残せる方法を知りたい。
  • 離婚に合意しても、離婚後に相手が取り決めた義務を履行するか不安だ。離婚公正証書を作成した方がよいのか?
  • 離婚公正証書を作成すれば、どのようなメリットがあるのだろう?

夫婦が合意し、市区町村役場に離婚届を提出し受理されれば、離婚が成立します。しかし、離婚後に当事者の一方が、取り決めた約束を破る可能性もあるでしょう。

離婚が成立したにも関わらず、離婚した当事者間で深刻なトラブルが発生する事態も想定されます。

離婚後のトラブルを回避するためには、離婚の協議内容を書面にまとめ、公正証書化するのが最も有効な方法です。

そこで今回は、離婚問題の解決に携わってきた専門弁護士が、離婚公正証書を作成するメリットや注意点等について詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 離婚公正証書を作成すれば、書類の破棄や改ざんのおそれはない
  • 離婚公正証書を作成するには法的な手続きが必要
  • 離婚公正証書を作成するときは、忘れずに「強制執行認諾文言」を付け加える

離婚に強い弁護士はこちら

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

離婚公正証書とは

夫婦間で協議して取り決めた内容を公正証書化すると、取り決めた内容が履行されないリスクを軽減できます。

ただし、公正証書を作成する場合、基本的に公証役場で手続きを進める必要があり、費用もかかります。

概要

離婚公正証書は、公証人(公証作用を担う公務員)が作成する公文書です。

公証人が夫婦の取り決めた離婚条件を聴き取って作成します。公証人が作成するため、夫婦だけで作成した離婚協議書(私文書)より格段に信頼性は高くなります。

公正証書の原本は公証役場に保管されるので、後日、離婚当事者や第三者によって内容を偽造・変造されてしまうリスクもありません。

費用

離婚公正証書には、財産分与・慰謝料・子の養育費等の金額を記載します。

取り決めた離婚給付の金額によって、公正証書を作成する費用は変わります(ただし、養育費は10年分の金額のみが「目的の価額」に該当)。

下表の公証人手数料をご覧ください。

目的の価額

公証人手数料

~100万円

5,000円

100万円超~200万円

7,000円

200万円超~500万円

1万1,000円

500万円超~1,000万円

1万7,000円

1,000万円超~3,000万円

2万3,000円

3,000万円超~5,000万円

2万9,000円

5,000万円超~1億円

4万3,000円

1億円超~3億円

4万3,000円+超過額5,000万円ごとに1万3,000円を加算した金額

3億円超~10億円

9万5,000円+超過額5,000万円ごとに1万1,000円を加算した金額

10億円超~

24万9,000円+超過額5,000万円ごとに8,000円を加算した金額

出典:手数料 | 日本公証人連合会

記載内容

離婚公正証書への記載内容は夫婦によって異なりますが、基本的に次のような取り決めを明記します。

  • 夫婦が離婚に合意すること:離婚届の提出日・誰が(または夫婦が揃って)離婚届を提出するか
  • 財産分与:夫婦の共有財産を分割する割合や対象財産・分与の支払時期・一括または分割で支払うか
  • 親権:子がいる場合に必ず取り決める。どちらが子を監護・養育し、子の財産を管理するか
  • 子の養育費:非親権者の毎月の養育費の支払額・支払日・支払期間・支払方法、事情が変更した場合の調整方法
  • 面会交流:非親権者が子と会う頻度や面会時間・実施方法等
  • 慰謝料:夫婦のどちらかが離婚原因をつくった場合、もう一方に支払う賠償金。慰謝料に合意した旨・支払額・支払日・支払期日・支払方法(一括または分割)
  • 年金分割:婚姻期間中に納めた厚生年金を離婚時に分配する取り決め・分割方法や割合
  • 互いの連絡先等の通知義務:離婚後、住所や勤務先等を変更したときは速やかに相手へ連絡する義務
  • 清算条項:夫婦で取り決めた請求権を除き、今後、双方に支払い義務が一切生じない旨を確認する文言
  • 強制執行認諾文言を付加する合意:離婚給付を支払う側が約束通りに支払わなかったときは強制執行による財産差押を承諾する条項

必要な書類

離婚公正証書の作成を希望するときは、公証役場へ次のような書類を提出しなければなりません。

  • 離婚協議書(原案)
  • 戸籍謄本:本籍地の市区町村役場で取得(家族全員が記載された戸籍謄本)、すでに離婚しているときは当事者双方の離婚後の戸籍謄本
  • 印鑑登録証明書と実印:印鑑登録証明書は住所地の市区町村役場で取得
  • 本人確認書類:運転免許証・マイナンバーカード・パスポート等
  • 不動産の登記簿謄本・固定資産税納税通知書:不動産所有権を相手に移す場合
  • 年金手帳等:年金分割をする場合
  • その他:必要に応じて車検証や査定資料・委任状等を提出

離婚公正証書を作成するメリット

離婚公正証書の作成には手間や費用がかかりますが、公文書としての証明力と離婚後のトラブルを未然に防ぐ効果があります。

また、離婚給付を支払う側が、取り決めた約束を破るリスクの軽減にもなるでしょう。

合意内容の明確化

夫婦が協議して取り決めた条件を文書にすれば、合意内容を明確化できます。

いつでもお互いがどのような条件で離婚に合意したか確認でき、離婚給付の内容も忘れずに済みます。

合意内容を明確化できるという点は、離婚公正証書・夫婦で作成した離婚協議書に共通するメリットです。

公式な保管

離婚公正証書の原本は、公証役場に原則として20年間保管されます。

離婚当事者の一方や第三者によって公正証書を破棄・隠匿されたり、内容をねつ造されたりする事態を防止できます。

離婚給付を支払う側が「慰謝料を支払う約束などしていない」「何年も前に約束した内容は忘れた」という言い逃れはできません。

強制執行への移行

離婚公正証書に「強制執行認諾文言」を入れておけば、離婚給付を支払う側(債務者)に不履行があった場合、訴訟を行わずに強制執行の申し立てが可能です。

強制執行認諾文言は公正証書の中に、たとえば「当事者が、本書に定めた義務の履行を怠った場合、直ちに強制執行へ服する旨を受諾する」という内容で記載します。

強制執行をおそれる債務者は、離婚公正証書に記載された義務を果たす可能性が高まるでしょう。

離婚公正証書を作成するステップ

夫婦の合意の下で離婚公正証書を作成する場合は、まず夫婦間で離婚条件をとりまとめてから、作成手続きに入る必要があります。

夫婦で作成した離婚協議書が、必ずしもそのまま公正証書化されるわけではない点に注意しましょう。

夫婦での話し合い

夫婦で離婚の条件を話し合います。

子がいない場合は、話し合う事項は財産分与や慰謝料の金額・年金分割がメインになるでしょう。

子がいる場合は、他に親権や養育費・面会交流についてしっかりと話し合わないと、後日トラブルになる可能性があります。

子の経済的・精神的な面を十分にケアできるよう協議しましょう。

離婚協議書の作成

夫婦の話し合いの後、すでに合意した条件・合意できそうな条件を離婚協議書(原案)にまとめていきます。

条件がすべてまとまらなくても、離婚公正証書の作成前に決めておくか、まとまっていない部分を除いて公正証書にしてもよいです。

離婚協議書(原案)を作成したら、最寄りの公証役場に離婚公正証書の作成したい旨を伝え、予約を入れましょう。

公証人のチェック

夫婦で作成した離婚協議書(原案)を公証人が確認します。

子がいるにも関わらず親権や養育費等を何も規定していない場合、公正証書に盛り込むよう指摘されます。

また、財産分与の割合が夫婦の一方に偏っている場合は、理由を聞かれる場合もあるでしょう。

公証人が夫婦双方に確認したうえで、離婚協議書の内容が修正される可能性もあります。

公正証書の作成

公証人のチェックを受けた後、公証役場を再度訪問する日を決めます。

当日は公証人と離婚する夫婦が離婚公正証書の読み合わせを行います。読み合わせ後、内容に問題がなければ署名・捺印をしましょう。

基本的に当日は離婚する夫婦が訪問します。ただし、やむを得ない理由等があって訪問できないときは、代理人を立てて対応することも可能です。

完成

離婚公正証書の内容に不審な点や疑問点がなければ、手数料を支払い、公正証書(正本)を夫婦が1通ずつ受け取ります。

これで離婚公正証書の手続きはすべて終了です。

離婚公正証書の作成期間は、公証役場に申し込んでから2週間程度かかると思った方がよいでしょう。

離婚公正証書作成時の注意点

離婚公正証書を作成すれば、離婚後の当事者の義務不履行を防止ます。

作成するときに確認しておかなければならない点がいくつかあります。

作成後撤回不可

離婚公正証書は契約書であるため、記載した内容は離婚後も当事者双方を拘束します。

離婚公正証書を作成してから、条件変更を望む場合、離婚した相手の同意がなければ原則として撤回は不可能です。

そのため、離婚条件を十分に協議し双方が納得したうえで、公正証書の作成に移りましょう。

強制執行認諾文言の理解

強制執行認諾文言付き公正証書を作成しても、離婚給付を支払う側(債務者)の義務がすべて強制執行の対象になるわけではありません。

強制執行の対象は、金銭債務(金銭に関する財産分与・養育費・慰謝料等)に限定されます。

たとえば、土地・建物の明け渡しのような財産分与は対象外です。金銭債務以外の不履行があった場合は、訴訟を経たうえで、裁判所に強制執行を申し立てなければなりません。

専門知識が必要

離婚公正証書の作成は、必要書類の提出や法令に従った手続きが必要です。

書類の収集に手間取ることや、離婚協議書(原案)の不備を公証人から指摘される可能性もあります。

離婚公正証書の作成をスムーズに進めたいのであれば、弁護士のアドバイスを受けつつ、準備をした方がよいです。

弁護士にサポートを依頼すれば、離婚に関する協議をアドバイスし、離婚公正証書の作成で必要な書類収集も代わって対応します。

離婚公正証書なら春田法律事務所にご相談を

今回は離婚問題の解決に尽力してきた専門弁護士が、離婚公正証書の作成手順や作成のときに気を付けなければならない点等について詳しく解説しました。

離婚公正証書を作成すれば、離婚給付の不履行に関するトラブルを回避できる可能性が格段に高まります。

春田法律事務所は、離婚の交渉や離婚公正証書の作成に詳しい経験豊かな法律事務所です。まずは気軽に相談し、離婚公正証書の作成ポイント等のアドバイスを受けてみましょう。

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