離婚時の年金分割とは?2種類の制度・手続きの流れ・もらえる金額を弁護士が解説

最終更新日: 2026年06月23日

離婚時の年金分割とは?手続きから実際にもらえる金額まで弁護士が詳しく解説

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離婚にあたって「年金分割という制度があると聞いたけど、よくわからない」「自分は対象になる?」「実際にいくらもらえるの?」と疑問をお持ちの方は多いです。

年金分割は正しく手続きを行えば老後の生活を支える大切な権利です。

この記事では、年金分割の仕組みから2種類の制度の違い・手続きの流れ・もらえる金額の目安まで、離婚問題に精通した弁護士がわかりやすく解説します。

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士 春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内法律事務所勤務
当事務所開設
資格
宅地建物取引士
情報処理安全確保支援士
詳しくはこちら

職員が丁寧にお話を伺います初回無料

目次

 年金分割とは?対象になる年金・ならない年金

年金分割とは、婚姻期間中に夫婦が納めた厚生年金の保険料納付記録(標準報酬)を、離婚時に分割してそれぞれ自分の年金記録とする制度です。

分割された記録をもとに、老後の年金額(老齢厚生年金)が計算されます。

重要なのは、年金分割は自動的には行われないという点です。離婚後に自分で手続きをとらなければ、権利を失ってしまいます。

区分

具体例

年金分割の対象

対象

厚生年金(会社員・公務員)、旧共済年金

対象外

国民年金(老齢基礎年金)

×

対象外

企業年金(確定拠出年金・厚生年金基金等)

×

対象外

退職金

×

夫が自営業者・フリーランス(国民年金のみ加入)の場合、厚生年金の標準報酬がないため年金分割の対象となる記録がなく、原則として年金分割はできません。

夫が会社員・公務員であることが制度活用の前提です。

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合意分割と3号分割の違いをわかりやすく解説

年金分割には「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。どちらを使えるかは、婚姻中の状況によって異なります。

項目

合意分割

3号分割

制度開始

2007年4月〜

2008年4月〜

対象者

すべての離婚夫婦

婚姻中に第3号被保険者だった方(専業主婦・主夫など)

相手の同意

必要(拒否されたら調停・審判へ)

不要(単独で申請可能)

分割割合

最大50%(合意または審判で決定)

固定50%

対象期間

婚姻期間全体(厚生年金加入期間)

2008年4月以降の第3号被保険者期間のみ

どちらの制度を使うか

婚姻期間がすべて2008年4月以降で、かつ婚姻中ずっと相手の扶養に入っていた(第3号被保険者だった)方は、相手の同意なしで3号分割を申請できます。

共働きだった方や、2008年4月以前に婚姻していた方は合意分割が必要です。

なお、3号分割の対象期間(2008年4月以降)と合意分割の対象期間が重複する場合、3号分割の申請が優先されます。

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年金分割の手続きの流れと必要書類

合意分割の場合

STEP

内容

目安期間

STEP1

年金事務所に「年金分割のための情報通知書」を請求する

1週間〜1か月

STEP2

分割割合を夫婦で協議し、公正証書または離婚協議書に記載する

当事者間の交渉次第

STEP3

年金事務所に「標準報酬改定請求書」を提出する

即日〜数日

STEP4

「標準報酬改定通知書」を受け取る(手続き完了)

2〜3週間

離婚協議書を弁護士に依頼した時の、費用・手続き・注意点をこちらの記事で解説しています。

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3号分割の場合

相手の同意は不要です。

情報通知書の取得は任意で、直接「標準報酬改定請求書」を年金事務所に提出するだけで手続きが完了します。

必要書類一覧

書類

合意分割

3号分割

備考

年金分割のための情報通知書

△(任意)

年金事務所で請求

標準報酬改定請求書

年金事務所の窓口で取得

戸籍謄本(離婚を証明するもの)

発行から3か月以内のもの

本人確認書類

マイナンバーカード・運転免許証等

分割割合を定めた書類

×

公正証書・調停調書・審判書等

第3号被保険者期間確認のための書類

×

場合により必要

手続き先は「お近くの年金事務所」または「街角の年金相談センター」です。

婚姻期間中に複数の年金事務所の管轄をまたいで住んでいた場合でも、現住所の年金事務所1か所で手続きできます。

公正証書の費用についてはこちらの記事をご覧ください。

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年金分割でもらえる金額の目安

年金分割でもらえる金額は、婚姻期間・双方の年収・分割割合などによって大きく変わります。

「自分はいくらになる」と一概には言えませんが、参考として統計データと具体例を示します。

厚生労働省の統計データ

厚生労働省の調査によると、年金分割を受けた方(第2号改定者)の年金額は、分割前の月平均約5万3,000円から分割後の約8万4,000円へと増加しています(合意分割・3号分割合計の平均値)。

具体的な計算例

【ケース】婚姻30年・夫が会社員(年収600万円)・妻が専業主婦(婚姻中は第3号被保険者)

制度

分割割合

妻の年金増加額(目安)

備考

合意分割(50%)

50%

月額3万〜4万円増加

婚姻30年分の厚生年金記録が対象

3号分割(50%)

50%固定

月額1万5,000〜2万円増加

2008年4月以降の約18年分のみ対象

上記はあくまで目安です。夫の年収・婚姻期間・双方のその後の就労状況などにより実際の金額は変動します。

正確な金額は「年金分割のための情報通知書」を取得することで確認できます。

年金分割はいつから受け取れる?

年金分割で増えた年金記録は、自分が老齢厚生年金の受給を開始する時期(原則65歳)から受け取ることができます。

離婚直後に現金で受け取れるわけではなく、老後の年金として毎月受給します。

ポイント

内容

受給開始

原則65歳(老齢厚生年金の受給開始時)

繰上げ受給

60〜64歳での受給も可能だが、年金額が永続的に減額される

繰下げ受給

66〜75歳まで受給を遅らせることで年金額が増加する

相手が先に受給開始しても

自分の受給開始時期には影響しない

再婚・死亡の影響

分割した記録は確定しており、変更されない

年金分割は「離婚後すぐに受け取れるお金」ではありません。

老後の生活設計として、財産分与・慰謝料・養育費と合わせてトータルで考えることが重要です。

年金分割で注意すべき4つのポイント

ポイント1:請求期限(2026年4月の法改正で変更)

【重要】請求期限が「2年以内」から「5年以内」に延長されました(2026年4月1日以降に離婚した方が対象)

  • 2026年3月31日以前に離婚した方:離婚の翌日から2年以内
  • 2026年4月1日以降に離婚した方:離婚の翌日から5年以内

期限を1日でも過ぎると請求できなくなります。早めに手続きを行いましょう。

ポイント2:相手が死亡した場合は1か月以内

合意分割は相手が生きている間にしか申請できません。ただし相手が死亡した場合でも、死亡から1か月以内であれば申請が可能です。

相手の健康状態が不安な場合は早めに手続きを進めることをおすすめします。

ポイント3:振替加算が停止される場合がある

「振替加算」とは、配偶者が老齢厚生年金を受け取る際、一定の条件下で加算される金額です。

年金分割を受けることにより、元配偶者の振替加算が停止または減額される場合があります。元配偶者の年金への影響を理解したうえで手続きを進めましょう。

ポイント4:年金分割だけでは老後資金が不十分な場合もある

年金分割は厚生年金の標準報酬記録を移転するものであり、受取額には一定の限界があります。婚姻期間が短い・夫の年収が低いケースでは分割額も少なくなります。

年金分割だけを頼りにせず、財産分与・慰謝料の確保や自身での老後資金の準備も合わせて検討することが重要です。

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相手が年金分割に同意しない場合はどうする?

合意分割は相手の同意が必要ですが、相手が拒否した場合でも諦める必要はありません。

家庭裁判所に調停・審判を申し立てる

相手が合意に応じない場合、家庭裁判所に「年金分割調停」を申し立てることができます。

調停で合意できない場合は審判に移行し、裁判官が分割割合を決定します。審判では原則として50%の分割が命じられることが多いです。

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3号分割は相手の同意不要

専業主婦(夫)など第3号被保険者だった方が対象の「3号分割」は、相手の同意なしに単独で申請できます。

この場合は調停・審判は不要です。ただし対象期間(2008年4月以降)に限られる点には注意が必要です。

年金分割を弁護士に依頼する3つのメリット

メリット1:合意分割で50%を確保できる

合意分割の分割割合は「最大50%」と上限は決まっていますが、相手との交渉によっては50%を下回る内容で合意させられてしまうリスクがあります。

弁護士が交渉することで、適正な割合(50%)での分割を実現できます。

メリット2:相手が拒否する場合の調停・審判を代理対応

相手が年金分割に応じない場合、家庭裁判所での調停・審判手続きが必要になります。

弁護士が代理人として申立てから期日対応まで行うため、相手と直接交渉する精神的負担を避けながら確実に手続きを進められます。

メリット3:財産分与・慰謝料・養育費と合わせてトータルで交渉できる

年金分割は離婚条件の一部に過ぎません。財産分与・慰謝料・養育費といった他の条件と組み合わせて有利に交渉するには、全体を見渡した戦略が必要です。

弁護士であれば離婚条件全体を俯瞰しながら最善の解決策を提案できます。

離婚問題の弁護士費用について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

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よくある質問

Q. 婚姻期間が短くても年金分割できますか?

はい、婚姻期間に最低年数の制限はありません。

ただし、婚姻期間が短いほど対象となる標準報酬の記録が少なくなるため、分割後の年金増加額も小さくなります。

Q. 夫が自営業者の場合は年金分割できますか?

夫が会社に一度も勤めておらず国民年金のみ加入している場合、厚生年金の標準報酬記録がないため年金分割の対象になりません。

ただし夫が過去に会社員だった期間があれば、その期間の記録は分割対象になります。

Q. 離婚後に再婚したら年金分割の権利はなくなりますか?

いいえ、なくなりません。一度分割された年金記録は再婚しても変わりません。

ただし手続きを離婚後5年以内(2026年4月以降の離婚の場合)に行う必要があります。

Q. 企業年金・退職金も年金分割の対象になりますか?

いいえ、対象になりません。年金分割の対象は厚生年金(旧共済年金を含む)の標準報酬記録のみです。

企業年金・確定拠出年金(iDeCo含む)・退職金は年金分割の対象外ですが、財産分与の対象として請求できる場合があります。

Q. 別居期間中の標準報酬も年金分割に含まれますか?

含まれます。年金分割は「婚姻期間中」の標準報酬が対象であり、婚姻関係が続いている間は別居していても対象期間に含まれます。

Q. 年金分割の手続きを相手が拒否した場合はどうなりますか?

合意分割の場合、相手が拒否しても家庭裁判所に調停・審判を申し立てることで50%の分割を認めてもらうことができます。

3号分割の場合は相手の同意自体が不要なので、単独で手続きを進められます。

Q. 年金分割と財産分与は別ものですか?

はい、別の制度です。財産分与は婚姻中に形成した財産(預金・不動産・株式など)を分け合う制度です。

年金分割は厚生年金の標準報酬記録を分割する制度であり、財産分与とは独立した請求権です。どちらも忘れずに請求しましょう。

財産分与について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

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まとめ

年金分割について、重要なポイントをまとめます。

ポイント

内容

対象

厚生年金の標準報酬記録のみ(国民年金・企業年金・退職金は対象外)

2種類の制度

合意分割(相手の同意必要)と3号分割(第3号被保険者は単独申請可)

請求期限

2026年4月以降の離婚は離婚翌日から5年以内(改正前は2年)

受給開始

原則65歳(老齢厚生年金の受給開始時)

相手が拒否した場合

家庭裁判所の調停・審判で50%分割を命じてもらえる

注意点

相手の死亡後1か月以内・振替加算への影響・単独では老後資金が不十分な場合も

年金分割は老後の生活を守る大切な権利です。

「手続きが複雑でよくわからない」「相手が同意してくれない」「期限が迫っている」などのお悩みがある方は、早めに弁護士にご相談ください。

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