離婚の年金分割とは?申請から支給されるまでの流れと注意点も併せて弁護士が解説
最終更新日: 2023年07月04日
- 離婚したから年金分割を申請したい
- 離婚してから年金分割が支給されるまでの流れを整理したい
- 離婚したときの年金分割に関する注意点を知りたい
離婚したときには、夫婦片方しか厚生年金に加入していないと、厚生年金に加入していない側の年金が少なくなります。これを解消するために用意されている制度が、年金分割です。
年金分割には、合意分割制度と3号分割制度の2種類があります。制度の内容だけでなく、年金分割が支給されるまでの流れや注意点も把握していると、より安心して年金分割を申請できるでしょう。
そこで今回は、離婚の金銭問題に詳しい専門弁護士が、年金分割の意味や支給までの流れ、年金分割に関する注意点について解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 年金分割とは、婚姻期間中における厚生年金記録(保険料納付実績)を、離婚するときに夫婦で分割する制度
- 年金分割が支給されるまでの流れは、「年金分割のための情報通知書」を請求・受領→(合意分割のみ)按分割合決定→「標準報酬改定請求書」を提出
- 離婚してから年金分割を受けるときに注意すべきポイントは、「離婚後2年以内が請求期限」「相手が死亡した場合は1か月以内に申請」「振替加算が停止される可能性がある」「離婚後の再婚や内縁でも年金分割可能」の4つ
離婚時の年金分割とは
ここでは、年金分割の基礎知識について、以下の3つを解説します。
- 年金分割の意味
- 合意分割制度
- 3号分割制度
それでは、1つずつ解説します。
出典:離婚時の年金分割|日本年金機構
出典:年金分割|法務省
年金分割の意味
基礎知識の1つ目は、年金分割の意味です。
年金分割とは、婚姻期間中における厚生年金記録(保険料納付実績)を、離婚するときに夫婦で分割する制度です。通常は、夫婦片方が厚生年金に加入していない場合、厚生年金に加入していない側は離婚時に年金が少なくなります。これを解消するために、年金分割が必要なのです。
なお、令和3年度に厚生労働省が行なった報告によると、令和3年の離婚件数は184,386件で、年金分割件数は34,135件です。そのため、離婚する夫婦の約18.5%が年金分割をしていることになります。
出典:令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況 |厚生労働省
出典:令和3年(2021) 人口動態統計月報年計(概数)の概況 |厚生労働省
合意分割制度
基礎知識の2つ目は、合意分割制度です。
合意分割制度は、以下の条件に該当する場合、当事者または双方の請求で、婚姻期間中における厚生年金記録を当事者同士で分割できる制度です。
- 婚姻期間中に厚生年金記録がある
- 当事者の合意または裁判手続きを経て按分割合を定めている
- 原則離婚の翌日から2年以内の請求期限を過ぎていない
なお、婚姻期間中に3号分割の対象期間も含まれる場合は、合意分割の請求時に3号分割の請求もあったとみなされます。よって、3号分割の対象期間については、合意分割による分割に加え、3号分割による分割も行われます。
3号分割制度
基礎知識の3つ目は、3号分割制度です。
以下の条件を満たす場合は、国民年金の第3号被保険者から3号分割制度により年金分割を請求できます。
- 婚姻期間中、平成20年4月1日以後国民年金の第3号被保険者期間がある
- 原則離婚の翌日から2年以内の請求期限を過ぎていない
その場合、平成20年4月1日以後の婚姻期間中において、第3号被保険者期間中にて相手の厚生年金記録を半分ずつ、双方で分割できます。
この制度を活用するときには、当事者同士の合意は必要ありません。ただ、分割される側が障害厚生年金受給権者であり、3号分割請求の対象期間を年金額を基礎としている場合、3号分割請求は認められません。
離婚後に年金分割を受けるまでの流れ
ここでは、離婚時に年金分割を受けるまでの流れについて、以下の3つを解説します。
- 「年金分割のための情報通知書」を請求・受領
- (合意分割のみ)按分割合決定
- 「標準報酬改定請求書」を提出
それでは、1つずつ解説します。
出典:離婚時の年金分割について|日本年金機構
「年金分割のための情報通知書」を請求・受領
年金分割を受けるまでの流れの1つ目は、「年金分割のための情報通知書」を請求・受領することです。
まずは、「年金分割のための情報提供請求書」を年金事務所に提出し、「年金分割のための情報通知書」を請求・受領します。
「年金分割のための情報提供請求書」には、住所氏名や基礎年金番号、婚姻期間などを記載します。夫婦共同でもどちらか単独でも、提出は可能です。また、実際に離婚する前に請求することも可能です。
なお、「年金分割のための情報提供請求書」には、本人の基礎年金番号やマイナンバーを示す書類などが必要になります。詳細は、日本年金機構のホームページをご覧ください。
出典:離婚時に年金分割をするとき|日本年金機構
(合意分割のみ)按分割合決定
年金分割を受けるまでの流れの2つ目は、按分割合を決定することです。ただしこれは、合意分割の場合のみ対象になります。
夫婦間で按分割合について話し合い、合意したら2人で年金事務所にて年金分割改定請求手続きを行います。そのときには、代理人を立てることも可能です。
ただ、按分割合の合意を得られなければ、家庭裁判所に審判または調停の申立てを行い、協議します。それでも按分割合が決定しなければ、裁判官が按分割合を決定することになります。
「標準報酬改定請求書」を提出
年金分割を受けるまでの流れの3つ目は、「標準報酬改定請求書」を提出することです。
年金事務所に「標準報酬改定請求書」を提出して、年金分割の改定請求手続きを行います。厚生年金の標準報酬が改定されたら、日本年金機構から離婚した両者に、「標準報酬改定通知書」が通知されます。
申請のときには、以下の書類も忘れずに添付しましょう。
合意分割の場合 |
|
3号分割の場合 |
|
出典:離婚時の厚生年金の分割(合意分割制度)|日本年金機構
出典:離婚時の厚生年金の分割(3号分割制度)|日本年金機構
離婚してから年金分割を受けるときに注意すべきポイント
ここでは、離婚してから年金分割を受けるときに注意すべきポイントについて、以下の4つを解説します。
- 離婚後2年以内が請求期限
- 相手が死亡した場合は1か月以内に申請
- 振替加算が停止される可能性がある
- 離婚後の再婚や内縁でも年金分割可能!?
それでは、1つずつ解説します。
離婚後2年以内が請求期限
ポイントの1つ目は、離婚後2年以内が請求期限であることです。
離婚時に双方の合意があっても、年金事務所で離婚の翌日から2年以内に年金分割を請求しないと、年金分割を受けられません。
ただ、2年以内に審判や調停の申立てを行なったものの、審判や調停の結果が出るまで2年以上要した場合は、申立て日の翌日から6か月までは年金分割の請求が可能です。
相手が死亡した場合は1か月以内に申請
ポイントの2つ目は、相手が死亡した場合は1か月以内に申請しなければならないことです。
離婚後2年が経過していなくても、年金分割を行う相手が死亡した場合は、1か月以内に年金分割を行わないと申請できなくなります。
別れた相手の死亡がすぐに知らされないこともあり得るので、2年を待たずに速やかに年金分割の手続きをしておくことを推奨します。
振替加算が停止される可能性がある
ポイントの3つ目は、振替加算が停止される可能性があることです。
夫(妻)の老齢厚生年金や障害厚生年金に加算されている加給年金額について、その対象者である妻(夫)が65歳になると、加給年金額がストップします。
このとき、妻(夫)が老齢基礎年金を受けるときに、一定基準により妻(夫)自身の老齢基礎年金額に、先程の加給年金額が加算されます。これが振替加算です。
振替加算は、離婚しても継続的に受けられますが、年金分割を行うと厚生年金の被保険者期間(240か月未満)を上回ってしまうため、振替加算が停止される可能性があります。
厚生年金の被保険者期間を確認して、振替加算と年金分割どちらが有利か事前に確認しましょう。
出典:加給年金額と振替加算|日本年金機構
離婚後の再婚や内縁でも年金分割可能!?
ポイントの4つ目は、離婚後の再婚や内縁でも年金分割が可能であることです。
離婚後に再婚しても、事実婚であっても、すでに決まっている年金分割は可能です。ただ、事実婚の場合は夫婦いずれかが3号被保険者である期間が必要になります。そのため、住民票など事実婚の証明書類を用意しましょう。
まとめ
今回は、離婚の金銭問題に詳しい専門弁護士が、年金分割の意味や支給までの流れ、年金分割に関する注意点について解説しました。
年金分割は、夫婦片方しか厚生年金に加入していないと、厚生年金に加入していない側の年金が少なくなる状態を解消するための制度です。婚姻期間中の厚生年金記録(保険料納付実績)を、離婚するときに夫婦で分割するもので、合意分割と3号分割の2種類があります。
離婚の翌日から2年以内に申請しないといけないことや、振替加算が停止される可能性があることに注意が必要です。そのため、年金分割を申請した方が得になるか慎重に判断し、申請する場合は速やかに申請しましょう。
どの分割方法がよいのかわからない場合は、離婚問題に詳しい弁護士への相談をおすすめします。
最後までお読みいただきありがとうございました。ご不明な点があるときやもっと詳しく知りたいときは、下にある「LINEで無料相談」のボタンを押していただき、メッセージをお送りください。弁護士が無料でご相談をお受けします。