離婚の財産分与の割合は相手が悪いと変えられる?有利に進める方法・対象資産・注意点を徹底解説

最終更新日: 2025年03月31日

離婚の財産分与の割合は相手が悪いと変えられる?有利に進める方法・対象資産・注意点を徹底解説

  • パートナーが原因で離婚を検討しているが、相手が悪いときは財産分与を決めるとき有利になるだろうか?
  • 相手が悪いのに財産分与は平等に分ける必要があるのか?納得できない。
  • 離婚原因がパートナーにあるときの財産分与について相談できる専門家を教えてほしい。

パートナーの不倫やDV等が原因で離婚するケースもあるでしょう。離婚原因が一方にだけあったとしても、財産分与においては夫婦それぞれ2分の1に分けるのが一般的です。

しかし、中には「相手が悪いのに、平等に財産分与するのはおかしい」と、不満を抱く人も多いでしょう。

そこで今回は、離婚問題の解決に実績豊富な弁護士が、有責配偶者との財産分与が原則平等となる理由、財産分与を有利に進める方法等を詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談できます。

  • 離婚の財産分与を平等に分ける理由は、有責性と財産分与は別問題のため
  • 夫婦が話し合いで合意すれば、有責配偶者側の財産分与割合を減らせる
  • 財産分与を円滑に進めたいなら、離婚協議前に弁護士とよく相談した方がよい

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

離婚の財産分与の割合は相手が悪い場合どうなる?

夫婦のどちらかが離婚原因をつくった場合でも、財産分与の割合は2分の1ずつが一般的です。

財産分与は、夫婦が協力して得た財産を分ける方法です。有責配偶者(離婚原因をつくった側)の責任を追及したいのであれば、離婚協議で慰謝料を請求しましょう。

相手が悪いのに離婚の財産分与が平等になる理由

「パートナーが不倫をした」「パートナーが暴力やネグレクトをした」という有責性があっても、夫婦の財産形成に対する貢献度とは無関係です。

そのため、「あなたが原因で離婚するのだから、あなたに財産を要求する資格などない」といった主張は、なかなか通らないでしょう。

それでも財産分与割合にこだわるのであれば、有責配偶者が相手方に支払う慰謝料分を、財産分与に含めて計算する方法もあります(慰謝料的財産分与)。

この方法であれば、不倫やDVをされた方の財産分与割合を増やせるかもしれません。

財産分与割合をどのように決めるのかは夫婦次第のため、双方が納得すれば、有責配偶者が財産を一切取得しないという取り決めもできます。

相手が悪い場合に離婚の財産分与を有利に進める方法

有責配偶者と財産分与で揉めていると、いつまで経っても離婚手続きが進まなくなります。

そのような場合は、弁護士と相談する等して、財産分与を有利に進められる方法を検討しましょう。

弁護士への相談

弁護士は財産分与に不満を持つ相談者の事情を聴いた後、ケースに応じた財産分与方法を提案し、分与割合を調整するサポートも行います。

  • 相談者へ有利な財産分与にするポイント
  • 有責配偶者の行為の悪質性
  • 慰謝料請求の検討
  • 慰謝料的財産分与で協議する場合のリスク
  • 協議がまとまらなかった場合の措置
  • 弁護士を交渉役にする必要性

より手厚いサポートを受けるため、弁護士を代理人として依頼することもおすすめです。

たとえば、すでに別居していて、有責配偶者と直接対面したくないときは、弁護士が交渉役となり、相手と離婚・財産分与の協議を続行できます。

財産の調査

財産分与を協議する前に、夫婦で協力して得られた財産(共有財産)の正確な調査が必要です。

婚姻中に夫婦が得た次のような財産は、基本的にすべて共有財産となります。

  • 土地や建物
  • マイカー
  • 預金(夫婦どちらの名義でも対象)
  • 現金等
  • 骨董品、絵画、貴金属
  • 家財道具
  • ローン等の借入
  • 退職金 等

財産の取得時期が婚姻前か後かは、保管している証明書等を確認して判断しましょう。

ただし、被相続人から相続した遺産や、夫婦どちらかに贈られた物は、婚姻の前後を問わず「特有財産」となり、財産分与の対象外となります。

夫婦間の協議

財産調査を終えたら、財産分与を基本通り2分の1で分けるか、それとも有責配偶者側の分与割合を減らすかについて協議しましょう。

夫婦が顔を合わせて協議すると、お互いが感情的になりそうなときは、弁護士を立てることもおすすめです。

不倫やDVを受けた側が弁護士を立てれば、有責配偶者に「財産分与を多めに譲らないと、結局慰謝料を支払うことになる」などと説得し、理解を求めるでしょう。

貢献度合いの主張

例外的に財産分与割合が、夫婦それぞれ2分の1とならないケースもあります。

たとえば、夫婦の一方だけが家事・育児を行い、家庭を切り盛りしていた場合です。

有責配偶者が家庭を顧みない中、家事・育児に奔走していた事実を主張すれば、協議で有利になる場合もあるでしょう。

慰謝料請求の検討

財産分与割合で有責配偶者と揉めるときは、財産分与と慰謝料を切り離して検討するようにしましょう。

たとえば、財産分与は基本通り夫婦それぞれ2分の1で合意するが、慰謝料は譲らないことにすれば、慰謝料協議は不成立になっても、調停・裁判で有利となる可能性があります。

ただし、調停・裁判で有利となるためには、相手に離婚原因があることを示す証拠を揃えておかなければなりません。

離婚することと、財産分与、子どもの親権・養育費などの条件には合意できているのであれば、先に離婚届の提出を終えておいた方がよいです。

その後、次の調停や訴訟で慰謝料の解決を図りましょう。

  • 慰謝料請求調停:離婚後に家庭裁判所へ請求し、裁判官・調停委員が元夫婦双方の意見を聴き、和解案を出す等して、和解を目指す。
  • 損害賠償請求訴訟:調停不成立の場合は地方裁判所(請求額140万円以下なら簡易裁判所)に訴訟提起が可能。最終的に判決で原告の請求を認容するか否かを決める。

なお、離婚慰謝料は不法行為による損害賠償請求に該当するので、離婚が成立した日から3年で時効となるので注意が必要です。

離婚時に財産分与の対象となる資産

財産分与の対象となる財産は、不動産、現金・預貯金など多岐にわたります。

マイナスの財産も対象となる場合があるので注意しましょう。
以下は、財産分与の対象となる資産と分割方法の例です。

現金・預貯金

婚姻中に得られた現金・預貯金は財産分与の対象です。

独身のとき開設した預金口座に婚姻前から貯めていたお金は特有財産で、基本的に財産分与の対象ではありません。

ただし、婚姻生活を送る間に特有性が失われたと裁判所から判断されるケースもあります。

たとえば、婚姻前に開設した預金口座であっても、婚姻後、給与の振込口座に利用されてきた場合、共有財産とみなされる可能性があるでしょう。

不動産

婚姻中に取得した不動産は財産分与の対象です。

基本的に次のような分割方法をとりましょう。

  • 不動産を売却するときは、売却して得られたお金を分割
  • 不動産をどちらかが所有するときは、他方に評価額の1/2を支払う

評価額は、不動産業者などに査定を依頼するとよいです。

婚姻中に取得した自動車も同様です。

次のような分割方法をとりましょう。

  • 自動車を売却し、得られたお金を分割
  • 自動車をどちらかが引き続き利用する場合は、他方に評価額の1/2を支払う

評価額は、自動車販売店等に査定を依頼できます。

有価証券

婚姻中に取得した有価証券も財産分与の対象です。

有価証券は日々評価額が変化するので、原則として「離婚時の価額」を基準に評価しましょう。有価証券の種類に応じて、次のような評価があります。

  • 上場株式、国債、社債:評価基準日の終値や評価額を基準に評価
  • 非上場会社の株式:会社が解散したときの価値に着目する・類似業種の上場企業株式価額を参考にする等の方法で評価

住宅ローン

住宅ローンなどのマイナスの財産も、原則として財産分与の対象です。

住宅ローンは、住宅の現在価値と残債の状況によって次のような方法で財産分与をしましょう。

  • 住宅の現在価値がローンの残債を上回る場合:残債の半分に相当するお金を渡す、他の財産と相殺する
  • 住宅の現在価値よりもローンの残債が多い場合(オーバーローン):住宅の財産価値を0円とみなし、住宅・住宅ローンの財産分与は行わず、住宅ローン名義人が返済し続ける

住宅ローン名義人の負担が大きすぎるときは、他の財産とローン負担額との相殺を検討した方がよい場合もあるでしょう。

解約返戻金

生命保険の解約返戻金は財産分与の対象です。

ただし、無理に保険を解約し夫婦で分割する必要はありません。

保険契約者が加入を継続したい場合は、保険に加入していない側へ、離婚時点での解約返戻金額(解約返戻率)に相当する金額の1/2を支払う方法もあります。

退職金

退職金は、受取後または退職前でも分与対象です。

分与額は夫婦の話し合いで自由に取り決めできますが、一般的には次のようにします(折半の場合)。

  • 退職金の受取後の分与:退職金額×(婚姻期間/勤務期間)×1/2
  • 退職前の分与:退職金相当額×(婚姻期間/勤務期間)×1/2

婚姻期間に別居期間は原則として含みません。

たとえば、夫が勤務先から退職金を受け取る前の場合は、次のように分与額を算定します。

  • 財産分与を支払う側:夫
  • 財産分与を受け取る側:妻
  • 婚姻期間(同居期間):12年
  • 夫の勤続年数:20年
  • 夫の退職金相当額:1,200万円
  • 分与割合:各1/2

退職金相当額1,200万円×(婚姻期間12年/勤続年数20年)÷2=360万円

上記の場合、妻の退職金の財産分与額は360万円です。

離婚時の財産分与における注意点

離婚時の財産分与の協議では分与割合だけでなく、注意すべき点がいくつかあります。

特に取り決めた内容を書面に記録すること、離婚後の税金を考慮することは必須です。

書面に残す

財産分与をはじめ合意した離婚条件の内容は、「離婚協議書」を作成し漏れなく記載しましょう。

財産分与の割合等について、具体的かつ正確に離婚協議書へ明記する必要があります。

離婚協議書を作成しておけば、相手から「そんな約束していない」「内容など忘れた」といわれることもないでしょう。

離婚協議書の書式は特に決まりはありません。手書きやパソコンで作成してもよいです。2通作成し署名・捺印のうえ、それぞれ1通ずつ大切に保管します。

税金を考慮する

財産分与の内容によっては、税金を納付しなければならない場合もあります。

たとえば、財産分与で得た財産が不動産の場合、名義変更の登録免許税や毎年賦課される固定資産税の納付が必要になります。

また、財産分与で得た財産額によっては贈与税が課されることもあるでしょう。

期限を確認する

離婚後に継続して財産分与について話し合うときは、時効に注意しましょう。

財産分与の話し合いだけがまとまらないときは、先に離婚届を提出し、離婚後も話し合いを継続する方法もあります。
ただし、「財産分与請求調停」の申立てには期限があり、離婚が成立した日から2年で時効となるため注意が必要です。2年が経過すると、財産分与を請求できなくなるため、期限内に忘れずに請求しましょう。

参考:財産分与請求調停 | 裁判所

離婚時の財産分与でお困りの方は春田法律事務所まで

今回は離婚問題の解決に尽力してきた弁護士が、有責配偶者との財産分与の方法やポイント等について詳しく解説しました。

春田法律事務所は、財産分与をはじめ離婚問題に力を入れている法律事務所です。有責配偶者との財産分与で悩むときは、弁護士と対応の仕方をよく話し合いましょう。

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