大麻所持に適用される大麻取締法違反について

最終更新日: 2021年07月08日

1 はじめに

薬物犯罪のうち、大麻取締法違反は覚せい剤取締法違反に次いで検挙件数の多い薬物犯罪です。平成30年の統計によりますと、大麻取締法違反の検挙件数は4605件でした。うち大麻所持の検挙件数は3913件であり、大麻取締法違反事件の約85%が大麻所持事件ということになります。

大麻取締法違反は、他の違法薬物と比較して、検挙人員に未成年者や20代といった若者が占める割合が約50%と高く、我々弁護士への相談、依頼も少年事件や大学生の事件が非常に多くあります。

今回は薬物事件のうち、大麻の所持に関する法律の規制についてご説明します。

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2 大麻所持は違法で、犯罪として罪に問われます

日本でも第二次大戦前は大麻に関する規制は、印度大麻に対する規制はありましたが、この麻薬である印度大麻と、国内で農産物として生産されている麻が同一のものであるとは役人も考えていませんでした。

終戦後、GHQの指令を受け、1948年に大麻取締法が制定されました。もっとも、当初は検挙されていたのは大半が、厳しい管理下におかれた農家の無許可栽培であり、大麻乱用が増加するのは1970年代以降です。

近時、世界的には医療大麻や嗜好品としての大麻を合法化する国が現れていますが、ご承知のとおり日本では大麻は違法薬物でありその所持は犯罪となります。

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3 大麻所持に関する法律

(1)大麻の定義

まず、大麻取締法は規制対象である「大麻」を以下のように定義しています。

「この法律で「大麻」とは、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品をいう。ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品を除く。」(第1条)

大麻にはマリファナその他、様々な俗称がありますが、学名は、カンナビス・サティバ・エルといいます。

大麻草にも各種部位がありますが、大麻取締法は、成熟した茎とその製品、種子とその製品については規制対象外としています。

(2)大麻の葉っぱ

前記のとおり、大麻草及びその製品は、規制対象となっています。

この「製品」とは、大麻草自体を加工した乾燥大麻、大麻タバコ、大麻草から抽出、採取した液体大麻、大麻樹脂などをいいます。

不正使用される大麻は主に、乾燥大麻、大麻樹脂、液体大麻があります。乾燥大麻より大麻樹脂、大麻樹脂より液体大麻の方が、幻覚等の作用を引き起こすTHC(テトラヒドロカンナビノール)の含有量が多くなっています。

なお、近時押収される乾燥大麻には、栽培方法が工夫され、THCの含有量が多いものが増えてきています。

(3)大麻の茎、種子

大麻の成熟した茎は、古くからそれを収穫して、繊維を取り出し、繊維製品の麻として製造、流通されてきました。

また、種子は鳥のエサ、七味唐辛子(原材料の中に麻の実と記載されています。)などに用いられてきました。

このように歴史的、社会的基盤があることから、前記のとおり大麻の茎、種子は規制対象外とされています。なお、大麻の成熟した茎や種子にはTHCはほとんど含まれていません。

なお、国内で流通する種子の大半は輸入されたもので、地方厚生局麻薬取締部から熱処理等によって発芽不能にしたことの証明書の交付を受け、税関に提出して輸入されています。

ところが、本来は出回るはずのない発芽能力のある大麻種子が市場に出回っているのが現状です。種子が「大麻」に含まれないとはいえ、栽培する行為、それのために種子を提供する行為は規制対象ですから、合法と考えるのは早計です。

なお、大麻の栽培、輸出、輸入のために大麻草の種子を提供する行為は大麻取締法第24条の6で処罰対象とされています。

4 大麻所持の罰則に関する法律の条文

(1)大麻所持の法定刑(刑罰)

下記のものが大麻所持に関する罰則を定めた大麻取締法第24条の2の条文です。

大麻の単純所持の法定刑は、5年以下の懲役刑、営利目的所持の法定刑は7年以下の懲役刑と200万円以下の罰金と規定されています。

  1. 大麻を、みだりに、所持し・・・た者は、五年以下の懲役に処する。
  2. 営利の目的で前項の罪を犯した者は、七年以下の懲役に処し、又は情状により七年以下の懲役及び二百万円以下の罰金に処する。
  3. 前二項の未遂罪は、罰する。

(2)大麻所持の構成要件

「所持」とは、大麻の保管について実力的支配関係を有することをいいます。

つまり、大麻の存在を認識しながら、それを管理しうる状態に置くことをいいます。手に握っている必要はなく、自宅に保管する行為や、他人に預けている場合も所持になります。

たまに大昔に買ったもので、自宅にあった大麻の存在を忘れていたという主張がされることがあります。この場合も、大麻の所持を開始した時に大麻所持の認識・認容があれば足りますので、その後に大麻の存在を忘却していたとしても犯罪の故意は否定されません。

「みだりに」とは、免許を受けているなど正当な理由がない、端的には法律に違反して、という意味です。

なお、大麻取締法は大麻の使用については規制対象外としています。麻薬取締法や覚せい剤取締法は使用を規制対象外としていますが、大麻については使用を規制対象外としている理由については定かではありません。

(3)営利目的の大麻所持

第2項では営利目的での所持について、法定刑が過重されています。

「営利の目的」とは、当該犯罪行為の動機が財産上の利益を得る、ないしはこれを確保する目的に出たことを意味します。

営利目的がある場合、大規模に反復して行われることが多いため、その分、社会的危険性が大きいことから刑罰が過重されています。

情状によっては罰金刑が併科されるとありますが、原則として罰金刑も科せられることになります。

(4)大麻所持の未遂

第3項では未遂についても処罰すると規定されていますが、所持の場合、所持の開始と同時に既遂に達することが通常ですから、大麻所持の未遂というケースは実際にはないといっていいでしょう。

5 大麻所持の公訴時効

公訴時効が完成すると、起訴することができなくなります。法定刑によって時効期間は異なり、刑事訴訟法第250条2項によると、大麻の所持については、所持終了時から5年を経過すると時効となり、営利目的の大麻所持の場合は時効期間は7年です。

6 最後に

以上、薬物事件のうち大麻所持に関する法律についてご説明しました。

薬物事件については勾留、勾留延長がなされ長期の勾留がなされることが通常でしたが、近時、特に初犯の大麻所持については、弁護士によって逮捕・勾留を回避できるケースが出てきています。

また、検挙された大麻取締法違反事件のうち約50%は不起訴処分となり、起訴処分となった事件のうち85%以上で執行猶予がついています。大麻所持の初犯が多いことが一つの要因と思われます。

薬物事件は被害者のいない犯罪ですから、被害者との示談という弁護活動はありませんが、裁判では再犯防止の取り組みを示すことが執行猶予判決など被告人に有利な判決を得るために重要となります。

したがって、大麻所持の嫌疑がかかって被疑者となったときは、早期の対応が非常に重要ということになりますので、刑事事件の経験豊富な弁護士にご相談ください。

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