永代供養の基礎やトラブル事例について専門弁護士が徹底解説!

最終更新日: 2024年01月12日

永代供養の基礎やトラブル事例について専門弁護士が徹底解説!

永代供養墓って普通のお墓と何が違うの?
永代供養墓にはどんな種類があるの?
永代供養墓で何かトラブルになることはあるの?

永代供養墓はここ10年ほどで普及した新しいタイプのお墓です。そのため、永代供養墓という言葉は聞いたことはあるけれども、その仕組みはよく分からないという方は多いです。

そこで、ここでは永代供養墓の基礎からトラブル事例まで、お墓の専門弁護士が徹底解説いたします。

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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永代供養のトラブルの基礎知識

伝統的なお墓とは異なる永代供養墓は、新しいタイプのお墓のため、正しく理解されていないことがしばしばあります。

そこで、ここでは永代供養墓とはどのようなお墓なのかについてご説明します。

永代供養墓とは?

通常のお墓は、永代使用料を納めて、墓地使用権を取得します。そして、そのお墓(墓地区画)の墓地使用権は、代々承継されていきます。

永代供養墓はこのように後世に承継されず、一代限りのお墓です。

通常のお墓は墓地使用権の設定を契約内容としますが、永代供養墓は、遺骨の埋蔵、管理及び供養の委託を契約内容とします。

どのような方が永代供養を希望するのか?

上記のとおり、永代供養墓は、一代限りのもので、親族に引き継がれるものではありません。

永代供養墓を希望する方というのは、お墓の承継を望まない方や承継する人がいない方です。具体的には、後世にお墓を管理する負担をかけたくない方や身寄りのない方が永代供養墓の申し込みをしています。

永代供養墓の種類

一口に永代供養墓といっても、その埋蔵場所や埋蔵方法には、以下のとおり、いくつか種類があります。申し込みをしようとしている永代供養墓がいずれのタイプであるのか、しっかりと確認することが重要です。

  • 一般的な個別墓のタイプ
  • 納骨堂など同じ場所に、骨壺、袋に遺骨を入れて供養されるタイプ
  • 他人の遺骨と混ざり合って供養されるタイプ(合祀墓)

いずれのタイプも永久に個別に供養されるものは稀で、7年、17年、33年、50年などの一定期間経過後に、他の遺骨を合わせて供養する合祀墓へ改葬されるものがほとんどです。

永代供養のトラブルを防ぐには?

永代供養墓は伝統的なお墓とは異なる新しいタイプのお墓です。そのため、永代供養墓について正しく理解せずに、申し込みをしてしまう方がいます。

我々弁護士もよくご相談を受けるのは、納骨後数年したら他の遺骨と合わせて埋蔵される、合祀されることを知らなかったというものです。

伝統的なお墓の場合、人ごとに骨壺に遺骨を納めて埋蔵されますので、当然永代供養墓もそのような扱いになるだろうと考えている方が多いのです。

ところが、先ほどご説明しましたとおり、ほとんどの永代供養墓では、所定の年数を経過するとそのような個別の埋蔵ではなく、他者の遺骨と合わせて埋蔵されます。

このような誤解があった場合、申込者が生前に契約解除を求めたり、申込者が亡くなった後に遺族が契約解除を求めるトラブルに発展することがあります。

繰り返しになりますが、永代供養墓を申し込む際にはどのような契約内容であるのかよく理解しておくことが重要です。

永代供養をめぐるトラブルの事例

お墓をめぐるトラブルはしばしば起こりますが、永代供養墓については、その特徴ゆえに伝統的なお墓とは異なるトラブルが起きがちです。

以下では、永代供養墓をめぐって起きがちなトラブルについてご紹介します。

永代供養墓に反対する遺族が永代供養料の返金を求めた事例

永代供養墓の申込者が亡くなった後、遺族が代々承継されるお墓を希望し、永代供養墓の契約の解除を求めることがあります。

遺族(正確にはそのうち祭祀承継者)において、永代供養墓の契約を解除することは可能です。この場合、申込時に支払った永代供養料の返金もされるのではないかと考えるところですが、返金は認められるのでしょうか。

永代供養墓の契約内容は、遺骨を埋蔵し、永代にわたって供養するというものです。そのため、申込者が亡くなった直後であれば、未だ遺骨の埋蔵も供養も行われていません。

そうだとすれば全額返金をしてもらえるのではないかとも思えます。

しかし、判例(東京地判H26.5.27)は、全額の返金は認めておらず、契約時から契約解除時までの経過期間を考慮して、一定金額の返金のみを認めています。

永代供養墓の契約書類や墓地規則にこの点について明記されていることがありますので、そちらも確認しましょう。

なお、代々承継されるお墓の場合は、契約時に永代使用料を納めますが、この永代使用料については一切返金されないというのが判例です。

死亡後に承継者が現れた事例

永代供養墓は、身寄りがいないと思って申込みをしたり、親族はいるけれどもお墓を管理してくれないだろうと思って申込みをする方が多いです。

ところが、申込者が亡くなった後、親族や縁故者が供養するために遺骨の引渡しを求めることがあります。

永代供養墓の契約上の地位は、相続人が相続するものではなく、祭祀承継者が承継します。そして、永代供養墓の契約では、通常、お寺を祭祀承継者として指定します。

そのため、このような親族や縁故者が現れると、お寺が祭祀承継者であることについて争われ、お寺は法的紛争に巻き込まれてしまいます。

そのような事態を避けるために、もし祭祀承継を主張する者が現れたときにはお寺を祭祀承継者とする指定は無効となる契約内容としておくべきです。

身寄りのある申込者が、お寺を祭祀承継者とすることを強く希望する場合には、祭祀承継者の指定を公正証書遺言ですることも考えられます。

確かに、公正証書遺言によって指定をしておけば、たとえ争いになっても、故人の希望どおり、お寺が祭祀承継者と認められる可能性は高いです。しかし、そのような紛争に巻き込まれること自体、お寺にとって過大な負担となります。

したがって、やはり祭祀承継を主張する者が現れたときには、指定を無効とする契約内容とするべきでしょう。

合祀した後で遺骨を返却できなくなった事例

永代供養墓の中には、個別のお墓や納骨堂での供養はせず、初めから他者の遺骨と混ざり合って一緒に埋蔵して供養するタイプがあります。

このように混ざり合ってしまうと、他者の遺骨と判別ができませんので、遺骨の返還に応じることが物理的に不可能となります。

このように返還不能になった後に親族が遺骨の返還を求め、それに応えることができないというトラブルがしばしばあります。

故人や祭祀承継者との契約内容に無いにもかかわらず、勝手にそのように他者の遺骨と合祀してしまうと債務不履行責任や不法行為責任をお寺は問われることになります(京都地裁H19.2.13 平成17年(ワ)第2092号、平成18年(ワ)第871号)。

しかし、故人との契約に基づき、祭祀承継者と指定されたお寺がそのように合祀をしたのであれば、後に現れた親族や縁故者に遺骨を返還できなかったとしても、このような法的責任を問われることはありません。

法的責任は問われないとしても、かかる紛争に巻き込まれること自体を回避したいところです。

そこで、申込者の親族に同意書を提出してもらうことも考えられます。しかし、対象となる親族の範囲をどうするかという問題や、そもそも祭祀承継者は親族に限定されないことから有効な対策とはいえません。

お寺としては、できる限り遺骨の返還に応じられるよう、最初から合祀をするタイプの永代供養墓ではなく、数年間は骨壺や耐久性ある袋に入れて個別に供養するタイプの永代供養墓を勧めるのが得策です。

更に慎重を期すのであれば、個別供養する期間についても、取得時効や相続回復請求権の除斥期間を参考に20年以上とすることも考えられます。

申込者の死亡を把握できなかった事例

永代供養墓は亡くなる数年、十数年も前に申し込みがなされていることがあります。そうしますと、特に身寄りがない申込者の場合には、数年、十数年後に亡くなった事実をお寺が把握できない可能性があります。

そして、申込者が孤独死をしていた場合、市区町村が火葬し、公営墓地の合祀墓に埋蔵されてしまいます。これではお寺に供養を委ねた申込者の意思を実現できません。

このような事態を防ぐために、申込者の死亡をお寺が把握するための対策を取っておく必要があります。

具体的には、親族がいる申込者であれば親族に永代供養墓を契約した旨を連絡しておいてもらう、身寄りがない方については緊急連絡先としてお寺を記載したカードを財布に入れておいてもらうなどが考えられます。

また、最近流行りの見守りサービスを利用している場合には、その委託先に死後事務委任をしている弁護士や行政書士がいる場合にはその方に、永代供養墓を契約していることを伝えておいてもらいます。

永代供養墓と似て非なるものに、特別祭祀承継制度というものがあります。
詳しくは、以下の記事をご覧ください。

まとめ

以上、永代供養についてご説明しました。

永代供養墓で最重要のポイントは、いずれは他人の遺骨と混ざり合って供養されるという点です。

この点は、申込者自身にとっても遺族にとっても関心の高いところで、トラブルにもなりがちですから、お寺はしっかりと説明し、申込者もよく理解して遺族がいれば予め説明しておくことが重要です。

永代供養墓に関するトラブルは、お墓の専門の弁護士にご相談ください。

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