不同意性交等罪の刑罰は?量刑に影響を与える4つの要因
2025年11月28日

不同意性交等罪は、2023年の法改正によって新たに設けられた重大な犯罪であり、その刑罰は従来の性犯罪と比較しても厳格に定められています。
この罪に問われた場合、どのような刑罰が科されるのか、そしてその量刑がどの程度になるのかは、当事者の方にとって大きな関心事でしょう。
この記事では、不同意性交等罪の法定刑の内容や懲役刑の一般的な傾向、初犯の場合の見通しについて、法律の仕組みをもとに解説します。ご自身の状況を理解し、今後の対応を考える際の参考になれば幸いです。
法定刑は「5年以上の有期拘禁刑」【罰金刑はなし】
不同意性交等罪の法定刑は「5年以上の有期拘禁刑」と定められています。
特に注目すべき点は、懲役刑の下限が5年であり、罰金刑の規定が存在しないということです。
これは、不同意性交等罪が社会的に極めて重大な犯罪と位置づけられていることを示しています。
法定刑の下限が高いため、原則として「執行猶予」が付くことはなく、有罪判決を受けた場合は実刑となる可能性が高いという特徴があります。
懲役刑の平均的な量刑の目安
不同意性交等罪は新しい法律であるため、確定的な統計データに基づく「平均的な量刑」はまだ示しづらい状況です。
しかし、旧強制性交等罪の傾向や社会全体の厳罰化の流れから判断すると、懲役5〜7年程度となるケースが多いと考えられます。
量刑は、犯行の態様、被害の程度、示談の有無、反省の度合いなど、さまざまな事情によって変わります。
法定刑の下限が5年である点を踏まえると、この範囲が一般的な目安となるでしょう。
初犯でも実刑となる可能性が高い
「初犯なら刑が軽くなるのでは」と考える方もいるかもしれませんが、不同意性交等罪では初犯でも実刑判決になる可能性が高いとされています。
これは、法定刑が「5年以上の有期拘禁刑」となっており、執行猶予を付すことができる刑(3年以下の懲役または50万円以下の罰金)の範囲を超えているためです。
そのため、酌量減軽が認められて刑が3年以下にまで下がらない限り、執行猶予が付くことは原則としてありません。
例外的に執行猶予が付く場合については後述しますが、まずは実刑の可能性が高い点を理解しておく必要があります。
不同意性交等罪の量刑に影響を与える4つの要因
不同意性交等罪の法定刑は「5年以上の懲役刑」とされていますが、実際に下される刑の重さ(量刑)は、個々の事情によって大きく異なります。
裁判官は事件ごとの状況を慎重に考慮し、総合的に判断します。ここでは特に重要とされる4つの要因について解説します。
被害者との示談の成立
量刑に最も大きな影響を与えるのが、被害者との示談が成立しているかどうかです。
示談とは、加害者と被害者の間で損害賠償などについて合意し、事件を解決する手続きを指します。
特に、被害者から「宥恕(ゆうじょ)」、つまり処罰を望まない意思が示された場合は、刑が軽くなる可能性が高まります。
一方で、示談が成立していない場合は実刑判決となる可能性が非常に高くなります。
ただし、被害者との直接交渉は感情的な対立を招くおそれがあるため、弁護士を通じて慎重に進めることが大切です。
犯行態様の悪質性(計画性・暴力の程度など)
量刑を重くする要因として、犯行の悪質性が挙げられます。
計画性があったか、暴力や脅迫がどの程度だったか、被害者が抵抗できない状況を作り出したかなどが判断のポイントとなります。
被害者が特に脆弱な立場(未成年、心身の障害、酩酊状態など)にあった場合や、犯行が長期間にわたった場合は、より重い刑が科される傾向にあります。
また、過去に同様の前科がある場合は、再犯とみなされ量刑がさらに重くなります。
被告人の事情(初犯・反省の態度・自首の有無)
量刑を軽くする方向に働く要素として、被告人の状況も重要です。
初犯であること、深い反省を示していること、自首していることなどは有利な事情とされます。
特に、反省文の提出や専門カウンセリングの受講など、具体的な行動を通じて反省を示すことが重要です。
再犯防止に向けた取り組み
再犯を防ぐための積極的な行動も、裁判所で評価される要素の一つです。
性犯罪者向けのカウンセリングや治療プログラムの受講、家族や地域社会との支援体制の構築などが有効です。
これらの取り組みは「再び同じ過ちを繰り返さない」という意思を具体的に示すものとして、量刑判断において考慮されます。
不同意性交等罪は原則として執行猶予はつかない
不同意性交等罪では、法定刑の重さから執行猶予を得ることは非常に難しいとされています。
ただし、「酌量減軽」が認められた場合に限り、懲役3年以下に減刑され、執行猶予が付く可能性が生じます。
そのためには、被害者との示談成立、宥恕の意思、反省、再犯防止策など複数の好条件が重なる必要があります。
こうした状況を法廷で主張するためには、弁護士による情状弁護が欠かせません。
不同意性交等罪で逮捕された後の流れ
不同意性交等罪の容疑で逮捕された場合、手続きは逮捕から始まり、勾留、起訴・不起訴の判断、そして刑事裁判へと進みます。流れを把握しておくことで、今後の見通しを立てやすくなります。
逮捕・勾留による身体拘束
警察に逮捕されると、まずは最大72時間の身柄拘束が続きます。
この間に取調べや証拠収集が行われ、その後、検察官が裁判官に勾留を請求します。勾留が認められると、原則10日間、必要に応じてさらに10日間延長され、最長20日間の拘束となることがあります。
不同意性交等罪は重大な犯罪と受け止められているため、証拠隠滅や逃亡のおそれがあると判断されやすく、勾留に至る可能性は高めです。拘束が長期化すると生活や仕事への影響が大きくなるため、早めの対応が重要です。
起訴・不起訴の判断
勾留期間が満了するまでに、検察官は収集された証拠や取調べの内容を踏まえ、起訴するか、不起訴とするかを判断します。
不起訴処分になれば刑事手続は終了し、前科はつきません。
不起訴を目指すうえで有効な手段の一つが、被害者との示談成立です。和解や被害弁償が進むことで、起訴の必要性が低いと判断される可能性が高まります。この段階での弁護士の関与は極めて重要です。
刑事裁判(公判手続き)
起訴された場合は、公判手続きに進みます。日本の刑事裁判は、起訴後の有罪率が非常に高いのが実情です。
そのため、起訴後の弁護活動では、刑の軽減(たとえば執行猶予付き判決や減刑)を目指すことが中心になります。検察は有罪を裏付ける証拠を提出し、弁護人は被告人に有利な事情を主張して反論します。裁判官はそれらを総合的に評価して判決を下します。厳しい状況でも、専門的な弁護活動が重要です。
不同意性交等罪で刑を軽くするために弁護士ができること
不同意性交等罪は法定刑が重く、厳しい処分が見込まれますが、弁護士に依頼することで、刑の軽減や早期の社会復帰に向けた取り組みが可能になります。
不起訴処分獲得に向けた示談交渉
性犯罪では、加害者が被害者に直接連絡を取ることは、感情面の負担や交渉決裂のリスクにつながりかねません。場合によっては別の法的問題を生む恐れもあります。
弁護士が第三者として仲介することで、被害者の負担に配慮しつつ、適切な示談金額の調整や法的に有効な示談書の作成まで進められます。これは不起訴処分の獲得に直結する重要な活動です。
身体拘束からの早期解放
逮捕に続いて勾留される可能性が高いため、弁護士は準抗告や勾留取消請求などを通じ、早期の身柄解放を目指します。身柄が解放されれば、職場や家族への対応、示談準備などを外部から進めやすくなるという大きなメリットがあります。
執行猶予付き判決を目指した法廷での弁護活動
起訴後の裁判では、有利な事情を整理し、執行猶予や減刑の相当性を丁寧に主張します。
具体的には、示談書、反省文、専門プログラム受講の証明、家族の嘆願書などの資料を整え、真摯な反省と更生への意欲を説得的に示します。酌量減軽に値する事情を論理的に示すことが、最終的な量刑に大きく影響します。
よくある質問(FAQ)
Q:不同意性交等罪の懲役はどのくらいになりますか?
A. 法定刑は懲役5年以上で、現状では5〜7年程度が多いと考えられます。
Q:初犯でも実刑になりますか?
はい。原則として執行猶予は付きません。ただし、酌量減軽が認められれば例外的に付く場合があります。
Q:違うと言い続ければ逮捕されませんか?
A. 否認しても、警察や検察が「証拠がある」と判断すれば逮捕されることはあります。
重要なのは、取り調べで不用意な発言をしないことです。弁護士と方針を確認し、冷静に対応することが最も大切です。
まとめ:不同意性交等罪の疑いをかけられたら早期に弁護士へ相談を
不同意性交等罪は、2023年改正で新設された重大な犯罪で、法定刑は懲役5年以上、罰金刑はなしという厳しい内容です。初犯でも実刑の可能性が高いのが実情です。
逮捕や捜査の対象となった場合は、一人で抱え込まず、できるだけ早く刑事事件に精通した弁護士へ相談してください。早期から適切な弁護活動を始めることで、不起訴処分や身柄解放、裁判になった場合でも執行猶予付き判決など、より良い結果を目指せる可能性が高まります。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。





