不倫は「犯罪」ではありません!弁護士が解説する刑法上の罪と民事上の責任
2025年11月19日

パートナーの不倫が発覚したとき、「絶対に許せない!」「警察に訴えて逮捕してほしい!」と考えるのは自然な感情です。このとき、多くの方が「不倫は法律で罰せられる犯罪ではないのか?」という疑問を抱きます。
結論から申し上げます。不倫(配偶者以外の異性と肉体関係を持つこと)は、現在の日本の法律において「犯罪」ではありません。
刑法上の罰則が科されないことに、憤りを感じるかもしれません。しかし、不倫は「民事上の不法行為」として、金銭的制裁(慰謝料請求)という形で、相手に重い責任を問うことが可能です。
不倫が「犯罪」ではない理由:刑法上の規定
現在の日本の刑法には、「不倫罪」や「姦通罪」といった、不倫行為そのものを罰する規定はありません。
かつて明治時代に制定された旧刑法には「姦通罪」がありましたが、これは戦後の法改正で廃止されました。これは、「姦通罪」が妻の不倫だけを処罰対象としており、日本国憲法に定められた両性の平等に反するという考え方や、個人の私的な領域である夫婦間の問題に、国が刑罰をもって介入すべきではないという考え方が主流になったためです。
不倫で問われる「重い責任」は民事上の責任
不倫が犯罪ではないとしても、法的な責任が全く発生しないわけではありません。不倫行為は、法律上「不法行為」にあたり、民事上の責任を負うことになります。
不倫は「不法行為」にあたる
民法第709条には、故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う、と定められています。
不倫は、夫婦間の平穏な共同生活という法的利益を侵害する行為であり、この「不法行為」に該当します。
具体的に負う責任:「慰謝料の支払い義務」
不法行為の責任として、不倫をした配偶者(または不倫相手)は、精神的な苦痛に対する「慰謝料」を支払う義務が発生します。
慰謝料の金額は、以下の要素によって変動します。
- 離婚又は別居に至ったかどうか
- 婚姻期間の長さ
- 不倫の期間や頻度
一般的に、離婚に至った場合の慰謝料相場は高くなる傾向にあります。
「犯罪ではない」からこそ冷静に取るべき対応
不倫相手を罰したいという一心で、冷静さを失った行動に出てしまうと、かえって自分が法的な責任を問われるリスクがあります。
復讐目的で加害者になってしまうリスク
相手への「復讐」や「制裁」として、以下のような行為は絶対に避けてください。これらの行為は、加害者として訴えられる「犯罪」になる可能性があります。
行為 | 適用される犯罪や法的責任 |
不倫相手の職場での秘密の暴露 | 名誉毀損罪、またはプライバシー侵害による民事上の損害賠償 |
執拗なメールや電話、つきまとい | ストーカー規制法違反 |
暴力行為、器物損壊 | 暴行罪、傷害罪、器物損壊罪 |
感情的にならず「証拠」を確保することが重要
刑事罰がない以上、不倫問題の解決は「いかに有効な証拠を揃え、交渉・裁判を有利に進めるか」にかかっています。
慰謝料請求を成功させるためには、不倫相手と配偶者が肉体関係を持ったことを証明できる客観的な証拠が必要です。
焦って違法な手段で証拠を集めようとすると、逆に法的責任を問われることもあります。冷静に、そして適法な方法で証拠を確保することが大切です。
弁護士に相談すべき理由
不倫は「犯罪」ではありませんが、人生を左右する重大な「法的問題」です。感情的になりがちな問題を、冷静かつ戦略的に解決するためにも、弁護士のサポートは不可欠です。
証拠の適法性の判断
集めた証拠が、裁判で有効なものか、または違法に取得したものでないかを判断します。不適切な証拠収集は、かえってトラブルの原因になりかねません。
適切な慰謝料額の算定と交渉
状況に合わせて適切な慰謝料の相場を算定し、相手方との交渉を代行します。感情的な対立を避け、法的な根拠に基づいて最大限の回収を目指します。
感情的な対立を避け、「安全」と「利益」を守る
不倫が発覚した後、相手への強い怒りから、冷静さを失い感情的な行動に出てしまうことがあります。弁護士は感情に任せた行動を未然に防ぎ、法的に正しい手順で慰謝料を回収し、正当な利益を実現します。
まとめ
不倫は「犯罪」ではありませんが、「不法行為」として慰謝料という形で責任を問うことができます。
日常を取り戻すためにも冷静に、そして法的に正しいステップを踏み出すことが重要です。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。




