盗撮の示談書の書き方や効力は?弁護士が有利な結果につながる示談書の作成について徹底解説!
2022年01月17日
盗撮事件において、不起訴など被疑者にとって有利な結果を得るためには、盗撮被害者との間で示談成立に至ることが大変重要です。
起訴するのか不起訴とするのかの判断は、検察官に委ねられていますが、検察官は示談書を見て、示談の成否や、具体的な内容を把握することが一般的です。
つまり、検察官に示談についてアピールするためには、示談書を的確、適切に作成しておく必要があるのです。
今回は、盗撮事件を豊富に取り扱う弁護士が、盗撮事件の解決に重要な示談書の作成に関して、その作成方法や書き方、各条項が持つ効力について解説をしていきます。
盗撮事件の示談書の効力は?
まず、盗撮事件の示談書にはどのような効力があるのか、確認してみましょう。
- 盗撮事件において示談書がもつ2つの意味
- 示談書の持つ意義は?
盗撮事件において示談書がもつ2つの意味
盗撮事件において、示談書には主に2つの意味があります。
1 不起訴の可能性や刑罰への影響がある
盗撮事件について、不起訴処分となるのか、起訴されてしまうのか、起訴されてしまう場合も罰金刑でとどまるのか等の悩みがあると思いますが、これらは全て刑事事件に関するものです。
そして、検察官が処分を決定する前に、示談が成立し、示談金が支払われている場合には、一般的には、被害感情が和らいでいること、示談金の支払により被害回復がなされたことを評価し、不起訴の可能性が高まります。
前科などがあり、不起訴には至らない場合でも、被害感情が和らいでいること、被害者の被害が回復していることは有利に働き、刑罰が軽くなる方向で考慮される事情になります。
このように、示談書を作り、示談をしたことを証明することで、刑事事件における処分や、刑罰に大きな影響があります。
2 民事の慰謝料請求への対処にもなる
2つ目は、民事事件への対処としても機能することです。
さきほどは、刑事事件の処分や量刑に影響することをご説明しましたが、盗撮事件は、民事上の不法行為に該当するため、加害者は、被害者が被った精神的損害(慰謝料)を賠償する義務を負います。
示談の際には、民事事件における慰謝料請求も考慮に入れ、示談金を決定し、示談後には金銭的請求をしないことを約束することが一般的です。
つまり、民事事件での慰謝料請求についても、併せて示談をしてしまい、紛争が続かないようにすることが可能です。
このように、示談は、民事での慰謝料請求への対処という機能も持っています。
示談書の持つ意義は?
このように、示談は、民事・刑事の両面で有効ですが、その示談が成立したことを証明するための「示談書」には、どういった意義があるのでしょうか。
1 示談の成立を明確にする
まずは、示談書を作成することで、示談が成立したことが明らかになります。
法律上は口約束をすることも可能であり、口約束であっても有効ですが、後から言った言わないのトラブルが生じることもあるでしょう。
また、捜査機関に示談成立を伝えるためには、口約束では不十分で、示談書が作成されている必要があります。
このように、示談書の持つ重要な機能として、示談が成立したことの証拠となることがあげられます。
2 被害の回復や被害者の安心を実現する
示談交渉をしていると、被害者側から、盗撮されたデータはどうなったのか、犯人は自分のことを本当に知らないのか、今後、犯人と顔を合わせることはないのか等の不安の声をたくさんお聞きします。
示談交渉を行う弁護士としては、これらの不安にも一つ一つ丁寧に回答はするのですが、被害者側としては、やはり、明確に書面を通じて不安を払拭することを望まれます。
このような不安に対しては、示談書の中で、盗撮データを破棄したことを誓約する、被害者側に連絡・接触しないことを約束する等の条項を設けることを提案し、ご了解を頂くことが多く、示談書が、被害者側の安心を実現する手段として機能しているといえます。
3 これ以上の権利義務のないことを確認する
盗撮事件は刑事事件のみならず、民事事件にもなり得ることをご説明しました。
示談書を作成していなければ、民事事件はどうなったのか、今後も金銭請求が続くのではないか等、加害者側・被害者側両方にとってストレスがかかる状態が続いてしまいます。
示談書に、これ以上の権利も義務も存在しないと明記することで、事件自体を終了させることができ、今後事件が続くのではないかという不安が解消されます。
盗撮における示談書の記載例とその効力
最後に、示談書の具体的な記載例を確認します。
- 事件の特定
- 謝罪の文言
- 示談金額の支払時期と支払方法の明記
- 口外の禁止
- 盗撮データの処理について
- 連絡・接触の禁止
- 宥恕の文言を含む条項
- 清算条項
事件の特定
加害者が被害者に対し、示談金を支払う原因となった事実を特定します。
どこまで細かく記載するかは事案ごとで異なりますが、同じ当事者間でいくつか事件が存在する場合などは、特定ができるように記載をしなければなりません。
謝罪の文言
加害者から被害者に対して、「真摯に謝罪する」や「心より謝罪する」などの文言を入れることが一般的です。
示談金額の支払時期と支払方法の明記
示談金額とその支払時期を明記する必要があります。
支払時期については、年月日を記載することもあれば、「本示談成立の日から7日以内」等の指定をすることもあります。
いずれにせよ、いつ、いくらが支払われるのか、一義的に明らかになるよう記載しなければなりません。
口外の禁止
犯罪を起こしたこと、犯罪被害に遭ったことについては、被害者側も加害者側も他人には知られたくないことが多いでしょう。
そのため、事件の内容や示談の経緯、示談の内容について第三者には口外しないとの文言を設けることが多いです。
盗撮データの処理について
盗撮事件において、被害者は、被害時の映像データが流出してしまうのではないかという大きな不安を抱えています。
たとえば、犯行に用いられた携帯電話やその他の媒体は、警察に押収され、捜査終了のタイミングで返却を受けることが一般的です。
その際、加害者は、警察官の前でデータを消去します。
しかし、被害者としては、実際に、データが消去されたかどうか不安に思うことは当然ですから、示談書に、データを削除したこと、流出させていないことを表明し保証する等の条項を設けることもあります。
より信用性を高める趣旨で、この表明保証に反した場合に、違約金が発生するという条項をセットで設けることもあります。
連絡・接触の禁止
盗撮被害者は、今後、加害者とは一切関わりたくないと思うことがほとんどです。
そのため、加害者からの連絡・接触を禁止するとの条項を設けることも多くあります。
「加害者は、被害者に方法の如何を問わず、連絡・接触をしないことを約束する」等の文言を設けることが一般的で、これに違反した場合の違約金条項をセットにすることもあります。
宥恕の文言を含む条項
示談書において重要な条項として、宥恕(「ゆうじょ」と読みます。寛大な心で許すことを意味する言葉です)条項があげられます。
たとえば、端的に「宥恕する」というものや、「許す」というもの、「刑事処分を求めない」と記載するものなど様々です。
検察官は、盗撮事件を処分するにあたって、示談の成立だけを確認しているわけではなく、この宥恕文言の有無も必ずチェックしています。
被害者のなかには、示談自体は受け入れるものの、決して許すことはできないと「宥恕」の条項を入れることを拒絶する人もいらっしゃり、検察官は、この条項の有無を通じて、被害感情の緩和の程度を把握しています。
清算条項
この示談によって、刑事手続における示談だけでなく、民事責任も含めて、全ての賠償(金銭支払)をしたことを明らかにしておく必要があります。
盗撮事件における被害者と加害者のように、今後何らの関係もない当事者同士であれば、「被害者と加害者とは、被害者と加害者の間には、何らの債権債務関係がないことを相互に確認する」等の文言を設けて、関係を清算すべきでしょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は、盗撮事件における示談書の意義や効力、記載の方法についてご説明いたしました。
一般的に、捜査機関は盗撮被害者の情報を加害者本人には提供してくれませんので、示談交渉や示談書作成には弁護士が関与することが不可欠です。
盗撮事件の示談については、早めに弁護士に相談することをお勧めします。