警察からの「呼び出し」は逮捕の前兆?取るべき対応と知っておくべきこと
2025年11月20日

警察から突然の「呼び出し」があったら、誰でも不安になるものです。特に自身が何らかの事件に関わっている可能性がある場合、「このまま行ったら逮捕されてしまうのではないか」と恐れを感じるかもしれません。
本コラムでは、警察からの呼び出しが何を意味するのか、逮捕との関係、そして適切に対応するために知っておくべきポイントを解説します。
警察からの「呼び出し」の二つの立場
警察からの呼び出しは、主に以下の二つの立場のどちらかで行われます。
被疑者(容疑者)としての呼び出し
最も注意が必要なのが、罪を犯したのではないかという疑いをかけられている場合、すなわち「被疑者」としての呼び出しです。
この呼び出しは、通常、警察署への任意出頭または任意同行を求める形で行われます。これは強制的なものではなく、応じるかどうかは自由です。しかし、捜査に協力しない態度をとり続けると、後述する「逮捕のリスク」を高める可能性があります。
参考人としての呼び出し
事件の目撃者や、被害者、あるいは事件に関係する情報を持っている人として、捜査協力を求められている場合です。この場合は、犯罪の疑いをかけられているわけではないため、原則として逮捕される可能性は極めて低いと言えます。
ただし、事情聴取の過程で証言の内容などから重要参考人と見なされ、その後、被疑者として疑われるに至れば、逮捕の可能性も生じるため注意が必要です。
呼び出しと「逮捕」の関係
「任意」の呼び出しにもかかわらず、なぜ逮捕のリスクがあるのでしょうか。逮捕されるかどうかは、以下の「逮捕の要件」を満たすかどうかにかかっています。
逮捕の要件
警察官が逮捕状(令状)に基づき被疑者を逮捕する「通常逮捕」には、以下の二つの要件が必要です。
- 嫌疑の相当性:被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること。
- 逮捕の必要性:逃亡のおそれ、または証拠を隠滅するおそれ(罪証隠滅のおそれ)があること。
呼び出しを拒否した場合のリスク
任意での呼び出し(出頭要請)は、通常、事件が「任意捜査」の段階にあることを示しています。しかし、この呼び出しを正当な理由なく拒否し続けると、警察は次のように判断する可能性があります。
- 逃亡のおそれ:「呼び出しに応じないのは、逃げようとしているからではないか」
- 罪証隠滅のおそれ:「呼び出しを遅らせて、その間に証拠を消すつもりではないか」
このように判断されると、「逮捕の必要性」があるとみなされ、警察が裁判官に逮捕状を請求し、後日、逮捕されるリスクが非常に高まります。
また、呼び出しに応じたとしても、取り調べの結果、容疑が固まったと判断された場合、その場で逮捕されるケースも存在します。
呼び出しを受けた際の適切な対応
警察からの呼び出しは、今後の人生を左右する重要な分岐点になり得ます。取るべき対応を慎重に判断しましょう。
まずは弁護士に相談する
呼び出しの電話を受けた時点で、可能な限り早期に弁護士に相談してください。
- 立場の確認: 自分が被疑者なのか、参考人なのか、事件の概要は何か、などを警察に確認し、弁護士に伝えます。
- 戦略の構築: 弁護士は、どのような供述をすべきか(黙秘権の行使を含む)、逮捕の回避に向けた戦略(自首の検討、証拠隠滅や逃亡のおそれがないことの主張など)を立てるサポートをしてくれます。
- 出頭への同行: 弁護士が同行することで、不当な取り調べを防ぎ、また警察に対して「逃亡や証拠隠滅のおそれがない」ことを示し、逮捕のリスクを減らすことにもつながります。
任意出頭には「黙秘権」がある
被疑者として取り調べを受ける場合、憲法で保障された黙秘権を持っています。話したくないこと、不利になるかもしれない供述については、話すことを拒否できます。
しかし、黙秘権を行使するかどうか、どこまで話すかは非常に高度な判断が必要です。これも弁護士と事前に相談しておくべき重要な点です。
FAQ(よくある質問)
Q. 警察からの呼び出しは必ず応じなければいけないのでしょうか?
A. 任意捜査なので、原則として応じる義務はありませんが、拒否にはリスクが伴います。
逮捕状が提示されていない状況での呼び出しは、「任意同行」または「任意出頭」を求めるものであり、法的な強制力はありません。しかし、正当な理由なく呼び出しを拒否し続けると、「逃亡や証拠隠滅のおそれがある」と判断され、逮捕状を請求される可能性が高まります。
体調不良や仕事の都合などで指定された日時に出頭できない場合は、その理由を伝え、日程の調整を依頼するのが賢明です。
Q 呼び出しに応じたら、その日のうちに家に帰れますか?
A. 基本的には帰宅できますが、逮捕される可能性もゼロではありません。
任意の取り調べは、原則として被疑者が帰宅を希望すれば、いつでも警察署から退去できます。しかし、取り調べを通じて容疑が固まり、「逃亡または証拠隠滅のおそれ」が認められた場合、その場で緊急的に逮捕されることもあります。
逮捕されれば、そこから最長48時間は警察による身体拘束が続き、その後、勾留をされる可能性もあります。弁護士に事前に相談し、出頭前に準備を整えておくことが重要です。
Q. 被疑者として呼び出された場合、警察に自分の罪をすべて話すべきですか?
A. 慎重な判断が必要です。黙秘権を行使することもできます。
被疑者には、供述を拒否できる「黙秘権」と、署名・押印を拒否できる権利があります。不利な供述は、後の裁判で証拠として使われてしまう可能性があります。
ご自身の利益を守るためには、安易にすべてを話すのではなく、まずは弁護士に相談し、事件の見通しや供述の戦略についてアドバイスを受けるべきです。黙秘権を行使する場合でも、「何も話しません」と明確に意思を伝えましょう。
Q. 弁護士に相談すると、警察に知られてしまいますか?
A. 弁護士に相談したこと自体が、警察に知られることはありません。
弁護士には守秘義務があるため、相談内容が警察に漏れる心配はありません。また、弁護士を依頼したとしても、それがただちに警察に通知されるわけではありません。
ただし、弁護士が出頭への同行や警察への連絡など、具体的な活動を開始した場合は、当然ながら警察は弁護士を付けていることを知ります。しかし、弁護士がついていることは、むしろ適正な捜査を期待できるという点で、有利に働くことが多いです。
まとめ
警察からの「呼び出し」は、「逮捕」を意味するものではありませんが、特に被疑者の場合はその可能性を秘めています。
不用意な対応は事態を悪化させるおそれがあるため、まずは冷静になり、弁護士に相談することが最善の策です。適切なサポートを受けることで、不当な逮捕を避け、今後の刑事手続きを有利に進める可能性を高めることができます。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。





