子どもが窃盗で逮捕?少年事件の流れを弁護士が解説します!

最終更新日: 2023年11月03日

子どもが窃盗で逮捕?少年事件の流れを弁護士が解説します!

  • うちの子どもが窃盗で捕まった。今後、どうなってしまうのか
  • 少年事件は、成人の事件とどのように違うのか

お子様が窃盗をして警察に逮捕された場合、まずはこのような不安や疑問が浮かんでくるものと思います。
確かに、少年事件は、成人の事件と違う扱いを受ける部分もありますし、未成年に対する特別のケアも必要になっています。

そこで、ここでは少年事件について、成人事件との違いを説明しながら、弁護士の活動内容を詳しく解説していきます。

それでは、早速、まいりましょう。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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子どもが窃盗で逮捕されるとどうなる?成人事件と少年事件について弁護士の活動内容の違いを解説

子どもが窃盗で逮捕されるとどうなる?成人事件と少年事件について弁護士の活動内容の違いを解説まずは、少年事件で逮捕された場合、どのような流れで捜査が進んでいくのか、以下では、成人事件と比較しつつ、説明していきます。

  • 逮捕されてから捜査が終了するまで
  • 起訴ではなく家庭裁判所に送致
  • 刑事裁判ではなく少年審判

逮捕されてから捜査が終了するまで

成人事件の場合、被疑者が逮捕されると48時間以内に検察庁に送致されます。検察庁は、被疑者の身柄を受け取った後、24時間以内に、勾留請求をするか、釈放して在宅捜査に切り替えるか判断することになります。ここまでの手続きは、逮捕時点から72時間を超えてはなりません。

そして、検察官が勾留請求をした場合、裁判官が被疑者に対する勾留決定をするか、却下するかを判断します。勾留決定をする場合、勾留請求をした日から10日間の身柄拘束を受けることになります。また、勾留決定は延長が認められており、トータルで20日間に及ぶこともあります。

そして、勾留の満期までに捜査機関は、必要な捜査を遂げて、起訴するかどうかを決めなければなりません。勾留満期までに起訴しないのであれば、通常、処分保留として釈放になりますが、再逮捕をすることもあります。

以上が成人事件における逮捕されてから捜査が終了するまでの流れとなりますが、少年事件も起訴されるまでの身柄拘束の扱いは、基本的に同じです。
ただ、検察官は、少年に対して10日間の勾留請求をする代わりに、「勾留に代わる観護措置」をすることもできます。この勾留に代わる観護措置は、延長が認められておらず、身柄拘束期間は10日間に限られています(期間満了後は、後で説明する「観護措置」に切り替わることになります)。

少年事件の流れ

起訴ではなく家庭裁判所に送致

成人事件と少年事件で処理が大きく異なってくるのは、捜査が終了した後のことからになります。

成人事件では、捜査が終了すると、検察官が事件を起訴するか、不起訴にするかを決定します。

成人が起訴された後は、地方裁判所または簡易裁判所において刑事裁判を受けることになり、成人の被疑者は「被告人」となり、検察官と起訴事実を争っていく立場になります。「被告人」は、刑事裁判において、相対する検察官と対等な当事者として扱われるので、対等な当事者である被告人の立場を侵害する取調べは許されません。

そのため、起訴された後、原則として捜査側の捜査を受けることはなくなります。

これに対して、少年事件では、家庭裁判所に送致されることになり、この時点から「少年」という立場として扱われることになります。また、これまで「弁護人」として弁護活動をしていた弁護士の立場は、「付添人」という名称に切り替わることになります。

少年事件が家庭裁判所に送致されると、少年に観護措置がつき、これまでの警察署に留置されていた身柄が、少年鑑別所に身柄を移すことになります。成人の場合、「被告人」になると捜査や取調べがなくなりますが、「少年」の場合、少年鑑別所において、鑑別所と家庭裁判所調査官の「調査」を日常的に受けることになります。もちろん、少年鑑別所に留置されず、在宅に切り替わることもありますが、ここでは割愛します。

起訴されるまでは、少年が起こした犯罪事実に対する捜査がなされていましたが、家庭裁判所に送致された後は、取調べの対象が少年の家庭環境や、更生環境などに切り替わるため、少年事件は、引き続き観護措置により調査が継続することになるのです。

少年鑑別所の観護措置は、通常、3~4週間かかり、最終日に少年審判期日が指定されることになっています。

刑事裁判ではなく少年審判

成人については、刑事裁判によって、検察官が被告人を有罪にする証拠を提出し、被告人の最終的な処分を決めます。被告人は、弁護人のサポートを受けながら、検察官の証拠を争い、また、被告人自身に有利な証拠を提出するなどして、刑事責任を軽くする活動を行っていきます。

これに対して、少年の場合、刑事裁判の手続がなく、その代わりに「少年審判」という手続によって、最終的な処分を言い渡されることになります。

少年審判は、通常、1回で終結し、何らかの結論が出ます。鑑別所の観護措置を経た事案では、保護観察処分とするか、少年院送致とするかのいずれかの結論になることが多いでしょう。

家庭裁判所の裁判官が、これまでの捜査資料や、少年鑑別所における鑑別記録、家庭裁判所調査官の意見、審判当日の少年の受け答えなどを踏まえて、最終的な結論を出します。なお、成人の刑事裁判では、基本的に当事者が同意をした証拠でなければ事実認定をすることができませんが、少年審判では、家庭裁判所に提出された全ての証拠を根拠にして処分を決めることができます。

家庭裁判所において、少年を少年院送致にすべきかどうか判断に迷った際、稀に試験観察に付すことがあります。試験観察では、一度、少年を社会内に戻して、更生の進捗を見て、第2回審判期日において最終的な処分を言い渡すことになります。

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弁護士が考える少年の窃盗事件におけるポイント

弁護士が考える少年の窃盗事件におけるポイントでは、少年の窃盗事件において、具体的にどのような点がポイントになるのでしょうか。付添人活動を行う弁護士の視点から、以下、ひとつずつ見ていきましょう。

 

少年窃盗事件におけるポイント
  1. 少年が窃盗に及んだ経緯
  2. 窃盗の被害回復
  3. 少年の更生意欲と更生環境

少年が窃盗に及んだ経緯

少年審判において、少年の行った犯罪行為を「非行事実」と呼びますが、この非行事実が最終的な処分を決める大枠となりますので、付添人活動を行う弁護士としても重要なポイントです。

では、取り返しのつかない重大な非行事実に及んだ場合、少年院送致は免れないのでしょうか。少年事件は、必ずしもそうではなく、起きてしまった結果よりも、なぜそのような非行に及んだのかという経緯を重視する傾向にあります。
少年審判は、あくまでも当該少年が更生するために何が最も合理的な方法なのかを決める場です。言うまでもなく、少年は成人に比べて未熟であり、少年が起こした結果の責任を問うことは、少年審判の目的ではないのです。
少年が非行に至った原因を解明し、それが社会内で改善できるものであれば、少年院送致とするべきではありません。

そのため、付添人活動を行う弁護士としては、少年が当該非行に及んだ経緯や動機について、少年との対話を通じて探求していきます。

窃盗の被害回復

少年事件は、結果よりも、少年が非行に及んだ経緯が重要であると説明しましたが、窃盗により生じた被害を回復することも忘れてはなりません。被害を回復することができれば、より軽い処分を獲得できる可能性が高まります。

被害回復にあたっては、被害者からの宥恕(※許してもらうこと)を得ることが最もよいですが、少年が反省していることを示す意味で、被害者に対して謝罪をしたことや、被害回復のために努力していることが重要なのです。

被害者に対して、被害弁償を全く考えていないというのでは、反省の態度があるとはいえないでしょう。これでは、反省の態度が不十分であるとして、不利な判断を受けかねません。
付添人として、被害弁償に動いていくことは、少年の反省の態度を表現するために重要なのです。

少年の更生意欲と更生環境

少年審判により保護観察処分が出ると、少年は、その日から社会生活に戻ります。しかし、社会生活に戻っても、少年にとって更生できる場がないのであれば、社会生活に戻すのは危険でしょう。

まず前提として、少年に更生しようという意欲がなければ、何も始まりません。そのため、社会に戻った後、熱中できるだけの目標が必要となります。

勉強、学校、仕事、なんでもよいと思いますが、少年のこれからの人生のため、長期的に必要だと思えることに取り組む意欲を示す必要があります。

逆に、少年に更生意欲がなく、更生環境も劣悪ということであれば、保護観察相当の犯罪事実であったとしても、少年院送致になることがあります。これは、少年審判が少年の更生のため何が最も適切かを考える場であるからであり、社会に戻すよりも、少年院で矯正教育を施す方が少年のためになると裁判所が判断すれば、少年院送致が選択されることになるのです。

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少年の窃盗事件に弁護士が必要となる3つの理由

少年の窃盗事件に弁護士が必要となる3つの理由では、なぜ少年の窃盗事件について、弁護士が必要となってくるのでしょうか。弁護士が必要となる3つの理由について紹介します。

 

必要となる3つの理由
  1. 少年の早期釈放に向けた活動
  2. 窃盗被害者への謝罪と示談交渉
  3. 少年審判に向けた家庭裁判所調査官との対応

少年の早期釈放に向けた活動

窃盗事件は、多くの場合において、逮捕・勾留されても早期釈放が可能です。
早期釈放のためのポイントは、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことになります。

もし少年が逮捕された場合でも、弁護士において、当該少年が逃亡したり、証拠隠滅のおそれがないことの資料を集めて、検察官や裁判官と交渉することで勾留を回避することが可能です。

少年について、逃亡や証拠隠滅のおそれがないというためには、保護者による監督が十分かが問われます。
基本的には、事件が終わるまで、逃亡させないことや、関係者・被害者に接触させないことを保護者に理解していただき、検察官や裁判官にその旨を誓約することで足ります。
これに対し、片親だと不利ではないかという懸念もあるかもしれませんが、片親であっても、監督状況について説得的に説明をすることで、十分に釈放を狙うことは可能です。

窃盗被害者への謝罪と示談交渉

窃盗被害者が加害者と直接交渉することは滅多にありませんが、弁護士であれば、被害者に全く話し合いの余地がない場合でない限り、加害者との間に入って、被害者と交渉することができます。

また、被害者と加害者が直接相対して話し合いをしても、加害者側からは十分な意見を伝えられず、一方的な条件を受け入れざるを得ない事案が多いのですが、弁護士が間に入って被害者と交渉をすることによって、必要以上に条件が重くなるような事態を防ぐことかできます。

少年審判に向けた家庭裁判所調査官との対応

少年審判では、家庭裁判所調査官の調査意見が、審判の結論にほぼ直結しています。そのため、家庭裁判所調査官との面談内容が極めて重要なのです。

家庭裁判所調査官の面談は、少年はもちろん、少年の両親など保護者も対象となります。
弁護士としては、家庭裁判所調査官の関心があるポイントを理解して、少年と保護者に適切なアドバイスをする必要があります。

まとめ

成人事件と少年事件の違いを説明しながら、少年事件において弁護士に依頼する必要性について説明しました。

少年事件は、最終的に少年が受ける処分内容も重要ですが、事件終了後にどのように少年が更生していくのかも非常に重要です。

少年は、いくらでも変わることができ、チャンスさえあれば、未来には無限の可能性が開かれています。少年事件は、少年にとってとても辛い体験ではありますが、この事件を通して、少年にとって何が一番大切なのかをよく考え、少年の更生のためにできることは、何でもすることが大切です。

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