痴漢で前科が付いたらどうなる?知らないと後悔するリスクと対策を解説
2025年02月23日
- 痴漢をして逮捕されてしまった。有罪判決を受けたらどのような前科が付いてしまうのか?
- 痴漢で前科がツ付くと刑に服するだけではなく、社会復帰も難しくなるのだろうか?
- 痴漢で前科が付かないために、どのような対応をとればよいのだろう?
痴漢で逮捕・起訴され、刑事裁判で有罪となれば前科が付いてしまいます。
刑に服した後、社会復帰を目指そうにも前科が影響し、なかなか就職先が決まらないという事態も想定されます。
痴漢で前科が付つかないよう、逮捕前や逮捕されてから、何らかの対応が必要です。早く弁護士と相談し、法的アドバイスやサポートを得ておくことも大事です。
そこで今回は、多くの刑事事件に携わってきた専門弁護士が、痴漢で前科が付いた場合の影響、前科を付けないための対策等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 痴漢で有罪となれば、迷惑防止条例違反や不同意わいせつ罪で前科が付いてしまう
- 痴漢で前科が付くと社会復帰は困難になる
- 痴漢で前科を付けないためには、不起訴処分や無罪判決を受ける必要がある
痴漢による前科
痴漢は「迷惑防止条例違反」「不同意わいせつ罪」で処罰されます。
また、痴漢で有罪となれば、最長10年の拘禁刑に処される可能性があります。
迷惑防止条例違反
痴漢行為をすれば、各都道府県が制定する「迷惑防止条例」違反になる場合があるでしょう。
ほとんどの条例では痴漢に関する規定が設けられており、衣服の上から身体を触る痴漢行為は迷惑防止条例違反で処罰されるケースが多いです。
たとえば、東京都の迷惑防止条例では、「公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること」をしてはならない、と規定しています(東京都迷惑防止条例第5条)。
条例違反となれば、6月以下の懲役(2025年6月1日以降は拘禁刑)または50万円以下の罰金を受けます。
出典:公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例|東京都令規集
不同意わいせつ罪
不同意わいせつ罪は、わいせつ目的で相手に暴行や脅迫を行うだけでなく、被害者が行為に同意していない状況でわいせつな行為をした者を処罰対象とする罪です。
非常に悪質な痴漢の場合、同罪が適用される可能性があります。具体的には、被害者の衣服の中に手を入れ、下着の上からまたは肌に直接触れるケースが該当するでしょう。
不同意わいせつ罪で有罪となれば、婚姻関係の有無にかかわらず、6月〜10年以下の拘禁刑を受けます。
出典:刑法|e-GOV法令検索
痴漢で前科が付くリスク
痴漢で前科が付いてしまうと刑罰を受けるだけではなく、仕事を解雇されたり、社会的信用を失ったりする可能性があります。
社会復帰には困難が伴うでしょう。
解雇
会社の就業規則に従い、解雇されてしまうリスクがあります。
痴漢行為で逮捕された段階では、被疑者が起訴されるか不起訴処分となるかはわかりません。そのため、会社側もいきなり解雇処分は行わない可能性が高いでしょう。
ただし、検察官から起訴され、刑事裁判で有罪判決を受ければ前科が付いてしまいます。
その場合は、たとえ痴漢が私生活上の犯罪行為であっても、会社の社会的評価に重大な影響を与える可能性もあるため、懲戒解雇の対象になるでしょう。
社会的信用を失う
前科が付いた場合、痴漢を行った本人は社会的な信用を大きく失ってしまいます。
痴漢は逮捕された時点で、マスメディアによって実名報道される可能性があります。
痴漢で逮捕された事実が広まれば、近所の人や職場の人の信頼は失われることでしょう。
しかし、十分な証拠がなかったときや冤罪だったときは、再びマスメディアから不起訴処分や無罪判決を受けたという報道が行われるかもしれません。
一方、前科が確定すれば痴漢をした本人の他、家族も肩身の狭い思いをするでしょう。
- 本人の親の職場でも逮捕の噂が広まり、出世に影響が出たり、陰口をいわれたりする
- 本人に子どもがいる場合は、学校中の噂となり、いじめに遭う
- 近所に噂が広がり家族も白い目でみられ、引越しを余儀なくされる
また、本人は家族からも信用を失い、孤立してしまうこともあるでしょう。
転職・就職活動が困難
前科によっては一定期間、特定の職業に就けなくなる場合もあるでしょう。
前科が付くと国家公務員・地方公務員や、保険外交員、警備員、士業専門職(弁護士・司法書士・行政書士)等への就任が制限されます。
また、一般的に賞罰欄のある履歴書の場合は、前科の情報を記載を求められるでしょう。
たとえ前科を偽り入社できたとしても、後から前科が発覚し、経歴詐称として解雇される可能性があります。
痴漢で前科が付くケース
痴漢で前科が付くのは、一般的な刑事裁判で有罪判決を受けるケースだけではありません。
略式裁判による「略式命令」では、必ず前科が付きます。
有罪判決
一般的な刑事裁判の「実刑判決」「執行猶予付き判決」を受けた場合は、前科が付いてしまいます。
執行猶予付き判決とは、被告人(痴漢をした犯人)の刑罰の執行を猶予し、刑事施設に入らずに通常の社会生活を送れるという判決です。
執行猶予期間(約1年〜5年)を無事に経過すれば、受けた刑の言渡しの効力が無効となります。
ただし、刑の言渡しの効力が無効となっても前科は残るので、社会復帰が難しくなる可能性は残るでしょう。
略式命令
略式裁判で簡易裁判所からの略式命令に従った場合も、前科が付くので注意しましょう。
略式裁判とは、検察官の提出した書面により審査する裁判手続です。
簡易裁判所の管轄に属する100万円以下の罰金または科料に相当する事件が対象です。痴漢事件の場合、次のような条件が揃えば略式裁判を行えます。
- 被疑者が痴漢行為を認めている
- 被疑者が略式裁判に同意した
- 罰金を納付すれば済むような軽度の痴漢事件である
簡易裁判所で略式命令が発せられた場合、略式命令を受けた本人(被告人)が罰金を納付するだけで手続は終了します。
簡易な手続で手間がかからないものの、必ず前科が付いてしまうので、痴漢をしていないと主張する場合は、一般的な刑事裁判で無罪を主張した方がよいです。
痴漢で前科が付かないケース
痴漢で前科が付かないためには、刑事裁判での無罪判決または検察官から不起訴処分を受ける必要があります。
まずは弁護士と、今後どのような対応をとるのかについて話し合いましょう。
無罪判決
被告人が痴漢をしていなければ、堂々と法廷で無罪を主張しましょう。
起訴に至る過程で次のような事態があれば、弁護士は被告人の立場に立って無罪の主張・立証を行います。
- 被害者や目撃者の勘違いで痴漢の犯人にされた
- 捜査機関から巧みに誘導されて、痴漢をしていないのに自白してしまった
ただし、日本では起訴後の有罪率がとても高く、99.9%が有罪となっている状況です。
無罪を勝ち取るためには、裁判官も納得する有力な証拠の提出が必要です。
不起訴処分
被疑者が痴漢を認めている場合でも、検察官が不起訴処分を行う可能性はあります。
次のような事情を踏まえて、不起訴処分とするかどうかが判断されるでしょう。
- 被疑者が痴漢行為を反省し、捜査にも協力的だった
- 痴漢の初犯であり、不同意わいせつ罪にあたるような悪質性の高い痴漢ではない
- すでに被害者と示談が成立している
その他、痴漢の疑いが晴れた場合(嫌疑なし)、証拠があまりにも乏しい場合(嫌疑不十分)は不起訴となります。
一方、被疑者の自白や、それを裏付ける証拠が揃っている場合は、被害者との示談成立の有無が、起訴・不起訴を決める大きなポイントになるでしょう。
痴漢による前科を付けないための対策
痴漢による前科を避けたいなら、犯行を認めている場合も、犯行を認めていない場合も、まず不起訴処分を得る必要があります。
被疑者の私選弁護人(弁護士)は、被疑者が犯行を認めている場合は「起訴猶予」を、犯行を認めていない場合は「嫌疑なし」「嫌疑不十分」となるよう、全力を尽くします。
犯行を認めている場合
被害者との示談交渉を成功させましょう。示談成立により、検察官が痴漢行為は明白であっても、起訴を見送る可能性があります(起訴猶予)。
ただし、示談交渉をする場合、被疑者(加害者)と被害者が直接話し合うことは避けましょう。
被害者が被疑者(加害者)に対し、強い嫌悪や反感を覚え、大きなトラブルに発展するかもしれないからです。
示談交渉は弁護士に委任が可能です。交渉では、弁護士と被害者が次のような示談内容を取り決めます。
- 加害者が被害者に謝罪し、二度と被害者に近づかない
- 示談金額や支払方法・期限等
- 被害届や告訴状を提出している場合は被害者が取り下げる
- 被害者から検察官に寛大な処分を求める
- 示談後は、双方とも今回の問題を蒸し返さない
被害者が加害者に対する寛大な処分を求めるときは、検察官に嘆願書を提出します。
示談内容がまとまったときは示談書を2通作成し、加害者・被害者がそれぞれ1通ずつ大切に保管しておきましょう。
犯行を認めていない場合
犯行を認めていない場合は、「嫌疑なし」「嫌疑不十分」いずれかによる不起訴処分を目指します。
たとえば、「嫌疑なし」の主張をする場合、捜査機関に次のような根拠を示し、証拠も提出する必要があるでしょう。
- 被疑者は人違いで後日逮捕された:現行犯逮捕ではないので犯人と間違われる可能性が高い
- 電車内の防犯カメラで痴漢行為が記録されているが、同じ髪型・背格好・服装をした別人である
- 被疑者は痴漢が行われた時刻に友人とLINEのやりとりに夢中となっていた
- 被害者とは別の車両を利用しており、被疑者の利用していた車両の防犯カメラ映像を確認すべきだ
痴漢の行われた同時刻にLINEのやり取りをしていた事実、別の防犯カメラで被害者と違う車両にいた事実が確認できた場合、検察官は被疑者を不起訴処分としなければならないでしょう。
痴漢による前科を防ぐために春田法律事務所へご相談を
今回は数多くの刑事事件を担当してきた専門弁護士が、痴漢の前科を付けないための対策等について詳しく解説しました。
痴漢の前科を付けないためには、刑事事件に強い弁護士を選任することが大事です。
法律事務所のホームページやサイトで相談実績や痴漢事件等の話題が豊富なら、刑事事件に強い弁護士とみてもよいでしょう。
春田法律事務所は、刑事事件の示談交渉や裁判を得意とする法律事務所です。痴漢の前科を付けないためにはどうすればよいのか、弁護士とよく相談しましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。