審判離婚とは?メリット・デメリット・進め方を徹底解説!

最終更新日: 2023年02月18日

  • 審判離婚とは何か?
  • 審判離婚のメリット・デメリットが知りたい
  • 審判離婚の進め方を知りたい

審判離婚は、裁判所が決定する離婚の方法の1つで、近年増加傾向にあります。審判離婚は、調停離婚があともう一歩のところで成立しない場合に、裁判所の職権で審判を下すことができる制度です。

審判離婚には、さまざまなメリット・デメリットがあり、進め方もよくわからないということもあるでしょう。

そこで今回は、離婚を専門にする弁護士が、審判離婚の基礎知識・メリット・デメリット・利用されるケース・流れについて解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 審判裁判とは、裁判所の判断で、離婚を決定する手続き
  • 審判裁判のメリット・デメリットの一例を挙げると、メリットは「当事者双方の衡平が考慮された審判が下る」、デメリットは「異議申立てがあると即座に無効になる」などがある
  • 審判離婚の流れは、離婚調停を行う→裁判所による審判の確定→審判の確定

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

審判離婚とは?

審判裁判とは、裁判所の判断で、離婚を決定する手続きです(家事事件手続法284条1項)。離婚調停で裁判所の調停委員は、双方から意見を聞き合意を目指しますが、不成立になる場合があります。それでも裁判所が「離婚するのが妥当だ」と判断した場合に、審判を下すことができます。

家事事件手続法の2013年施行に伴い、近年、審判離婚の組数は急増しています。2020年の審判離婚組数は2,229件、全離婚組数のうち約1.2%が審判離婚になります。

出典:人口動態統計特殊報告 P.23 | 令和4年度「離婚に関する統計」の概況

審判離婚のメリット

審判離婚のメリットは、以下の3つがあります。

  • 当事者双方の衡平が考慮された審判が下る
  • 迅速な問題解決が期待できる
  • 裁判の確定判決と同じ効力が発生する

1つずつ見ていきましょう。

当事者双方の衡平が考慮された審判が下る

審判離婚のメリットの1つ目は、当事者双方の衡平が考慮された審判が下ることです。

審判離婚は、その前提として離婚調停の不成立があります。

不成立になると、裁判官が離婚調停を担当した家事調停委員や調査官から意見を聞き、双方の主張の妥当性・提出された証拠が主張を裏付けるものかなど総合的に考慮し、当事者双方に偏りなく妥当な離婚条件を考慮して、審判を下すのです。

裁判所は、離婚の可否、慰謝料・財産分与・親権者・養育費・面会交流などの条件・金額を決定します。

迅速な問題解決が期待できる

審判離婚のメリットの2つ目は、迅速な問題解決が期待できることです。

そもそも離婚調停は結論に至るまで、3回ほど行われ、平均的な期間は半年とされています。調停が不成立になり、その後に離婚訴訟となれば、離婚するまでの期間がさらに長くなります。しかし、審判は調停不成立後1か月ほどで下るといわれており、迅速な問題解決に期待できるようになります。

また、家事事件手続法286条8項に定められた、当事者双方が行う「調停に代わる審判に服する旨の共同の申出」があります。審判離婚の異議申立てを事前に放棄し、審判に従えば、迅速に離婚を成立させることができます。

裁判の確定判決と同じ効力が発生する

審判離婚のメリットの3つ目は、裁判の確定判決と同じ効力が発生することです。

確定した審判は判決と同等の効力があるため、審判の内容が守られないときには、即座に強制執行の申立てが可能です。たとえば慰謝料・養育費の未払いは、裁判所が支払い義務のある者の給与や預金口座などの財産を差し押さえることができます。

また、審判で、面会交流の日時や頻度・時間の長さ・子どもの引き渡しの方法について特定すれば、面会交流がされない場合、監護する親に対して、「間接強制金」を課して実施を促すことも可能です。

審判離婚のデメリット

審判離婚にはさまざまなメリットがある一方でデメリットも2点あります。

  • 異議申立てがあると即座に無効になる
  • 自分の主張が通らない可能性がある

1つずつ見ていきましょう。

異議申し立てがあると即座に無効になる

審判離婚のデメリットの1つ目は、異議申立てがあると即座に無効になることです。

審判は裁判所が職権によって行う決定のため、当事者の権利保護の観点から異議申立てが設けられています。そのため審判の内容に納得がいかなければ、当事者のどちらか一方からの異議申立てによって、審判結果は無効になります。

異議申立ての手続きは、家事事件手続法第286条で定められている「審判に対する異議申立書」を、審判書の受け取りから2週間以内に家庭裁判所へ必着するよう送付します。理由などの記載は不要です。

出典:家事事件手続法 | e-GOV法令検索

自分の主張が通らない可能性がある

審判離婚のデメリットの2つ目は、自分の主張が通らない可能性があることです。

審判を下す裁判官は、そもそも離婚調停を担当している裁判官と原則として同一人物です。離婚調停で行われる話し合いに裁判官が毎回出席しているわけではありませんが、調停において提案される離婚条件には、当然のように裁判官の見解が反映されています。

調停委員から不本意な離婚条件に妥協するよう促され、納得がいかないから調停が不成立になったにもかかわらず、同じ裁判官によって審判が下るのであれば、自分の主張通りの結果が得られない可能性があります。

審判離婚が利用されるケース

審判離婚が利用されるケースは非常に稀です。審判離婚は、家庭裁判所での調停離婚が不成立となった場合で、裁判所が「離婚が妥当である」と判断したケースです。審判離婚が利用される3つのケースを、以下の3点から解説します。

  • 病気などの理由で裁判所に出頭できない
  • 条件面でわずかな意見の対立がある
  • 離婚を認めず出頭を拒否している

1つずつ見ていきましょう。

病気などの理由で裁判所に出頭できない

審判離婚が利用されるケースの1つ目は、病気などの理由で裁判所に出頭できない場合です。

家事事件手続法では、住まいが遠方の場合などは、当事者の意見を聞いた上で、テレビ会議システムを利用して手続きを行うことができます。しかし、離婚は重大な事項のため、実際に裁判所に出向き、離婚調停に出席しなければ調停不成立になります。

当事者の一方が病気・長期入院・住まいが遠方で調停に出席できない場合で、離婚する意思が明らかであるときは、審判離婚が利用されます。

条件面でわずかな意見の対立がある

審判離婚が利用されるケースの2つ目は、離婚の条件面でわずかな意見の対立がある場合です。

たとえば、すでに調停で離婚・親権者や養育費の合意ができていたが、財産分与についてのみ意見の対立があった場合です。このまま調停不成立になっては、すでに合意ができている離婚条件も不成立になり、当事者に妥当な結果にはなりません。

しかし、審判によって親権者や養育費が確定し、子どもが不利益を被ることを避けることができます。

離婚に対する双方の合意はできており、わずかな意見の対立がある場合に審判は有効です。

離婚を認めず出頭を拒否している

審判離婚が利用されるケースの3つ目は、調停において離婚を認めず出頭を拒否している
場合です。

合意後に当事者の一方の意思が変わり、あと一歩のところで調停を拒否している場合があります。相手への嫌がらせから要望を受け入れたくない、譲歩することが相手に負けたように感じる、など心情的反発や体裁が悪いと感じて調停が不成立になることもあります。

しかし、心情的な要因から離婚調停が不成立になった場合でも、審判なら裁判官が決定したことには従うという体裁が整うため受け入れられることがあり、審判が問題解決に有効な場合があります。

審判離婚を申し立てたあとの流れ

審判離婚は、前提として離婚調停の不成立があります。そのため、最初は家庭裁判所で離婚調停を行います。離婚調停が不成立の場合に家庭裁判所が審判を行い、審判確定へと手続きが進みます。ここでは、手続きの流れを詳しく見ていきましょう。

最初は離婚調停を行う

審判離婚は、前提として離婚調停の不成立があります。

まずは、家庭裁判所へ離婚調停を申し立てます。離婚調停では、当事者は個別に家庭裁判所の家事調停委員と話し合います。当事者が出席しない場合、意見の隔たりが埋まらない場合、当事者間の合意成立は見込めないと家事調停委員に判断されて、調停不成立となります。

審判は、離婚調停が不成立となった場合に、家庭裁判所の権限で行うため、当事者が審判離婚を申し立てることはできません。しかし、当事者は、裁判所に対して審判離婚を利用したいと意見することはできます。

裁判所による審判の確定

家庭裁判所による離婚調停が不成立の場合で、裁判所が「離婚が妥当である」と判断したときに、裁判官の職権により審判が行われます。

審判では、裁判官が離婚調停を担当した家事調停委員や調査官から意見を聴き、提出された証拠・当事者の主張や置かれた事情を考慮して、審判内容を決定します。特に、当事者双方のために、偏りなく妥当な条件となるよう考慮されます。

裁判所の審判では、離婚の可否の決定と、調停で争われた慰謝料・財産分与・親権者の指定・養育費・面会交流などの条件や金額について決定します。

審判の確定

裁判所による審判が下されると、審判の結果が記載された審判書が当事者双方に送られます。審判書を当事者が受け取り、「通知を受けた日から2週間以内」以内に異議申立てがされずに経過すれば、審判が確定し、その日が離婚日になります。

審判が確定したら、「確定した日を含めて10日以内」に、当事者の一方が、離婚届や添付書類(審判確定証明書・審判書謄本等)を市町村の戸籍係に提出し、書類に不備がなければ、離婚が成立します。

出典:家事事件手続法 | e-Gov法令検索

審判離婚になる前にまずは弁護士に相談することがおすすめ

調停離婚を進めている場合、万が一離婚調停が不成立になっても、家庭裁判所によって審判が下される場合があります。審判の結果に納得して離婚すべきか・異議申立てをすべきか、判断が難しい場合もあるでしょう。

離婚調停・審判離婚を進める前に、まず弁護士に相談することがおすすめです。弁護士は、離婚訴訟がどのような結論になるのかを予測し、依頼者であるあなたの意見・状況を踏まえた離婚手続きを進めてくれます。また、慰謝料などが発生する場合には、権利を主張するアドバイスも可能です。

離婚を考えたらまずは弁護士に相談し、適切かつスムーズに離婚を進めることがおすすめです。

まとめ

今回は、離婚を専門にする弁護士が、審判離婚の基礎知識・メリット・デメリット・利用されるケース・流れについて解説しました。

審判離婚は、離婚調停が不成立の場合に、裁判所が職権により審判を下し離婚が成立します。裁判官は、当事者双方に偏りなく妥当な条件を考慮します。

そのため、あなたの主張が妥当だと裁判官に受け入れられるように、あなたに有利な証拠の裏付けをもって主張することが離婚調停の段階から重要です。

離婚を考えたらまずは弁護士に相談し、スムーズに離婚の検討や手続きを進めることをおすすめします。

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