医道審議会の流れや解決事例を専門弁護士が解説
最終更新日: 2024年02月26日
- 刑事事件の加害者となったら医師免許に影響するのか?
- 免許停止を回避することはできるのか?
- 処分を回避・軽減するために何をすれば良いのかわからない
医師、歯科医師の先生や看護師、薬剤師などの医療従事者が刑事事件の加害者となってしまうケースがしばしばあります。この場合、会社員とは異なり免許の停止・はく奪の可能性があるため、上記のような疑問、不安をもつことになります。
今回は多数の医道審議会に関する相談、ご依頼を受けてきた専門弁護士が医道審議会の対応について解説します。
医道審議会と流れについて弁護士が解説
まずは医道審議会の制度について簡単に確認しましょう。「行政処分の内容」ではご自身の事件ではどのような処分を受けるかについて見通しをつける方法についても説明いたします。
- 医道審議会とは
- 医道審議会の流れ
- 行政処分の内容
医道審議会とは
医師や歯科医師が犯罪や不正に及んだ場合には厚生労働大臣より行政処分を受ける可能性があります。例えば、医師法には下記の場合に行政処分をすることができると定められています(7条1項、4条)。
- 心身の障害により医師の業務を適正に行うことができない者
- 麻薬、大麻又はあへんの中毒者
- 罰金以上の刑に処せられた者
- 医事に関し犯罪又は不正の行為のあった者
- 医師としての品位を損するような行為をした者
厚生労働大臣は、厚生労働省の設置された専門家によって構成される医道審議会の意見をもとに行政処分を行います。なお、医師、歯科医師と同様に看護師、薬剤師なども同様の行政処分があります。
医道審議会の流れ
医道審議会の対象となり、処分を受けるまでの流れは以下のとおりです。司法判決から最終的に処分が決定までに半年ほどのケースもあれば2年ほどかかるケースもあります。
- 1 刑事事件の司法判決
- 2 法務省(検察庁)から厚生労働省へ情報提供
- 3 都道府県の担当部署から事案報告依頼が届く
- 4 都道府県から厚生労働省へ事案報告
- 5 医道審議会において、処分の区分を決定
- 6 都道府県の担当部署による意見聴取・弁明聴取
- 7 都道府県から厚生労働省へ報告
- 8 医道審議会において、答申内容を決定
- 9 厚生労働大臣による行政処分
後に説明しますが、行政処分を回避・軽減するために非常に重要となるのは、1の司法判決が出る前の弁護活動、3の事案報告、6の意見聴取・弁明聴取への対応です。これらについて専門の弁護士の協力を得ることがポイントとなります。
なお、行政処分と前後して医師会から処分を受ける可能性がありますので、医師会から通知が来たときは医師会に対する弁明についても対応が必要となります。
行政処分の内容
医道審議会の対象となった場合に最終的に受ける処分は以下のとおりです。
厳重注意(行政指導)
戒告
免許停止(3年以内)
免許取消
処分の重さは、司法判決の重さを参考とすることを基本としつつ、医師や歯科医師に求められる倫理に反する場合には更に重く処分するという方針が示されています(医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方について)。
また、過去の事件内容と処分内容について厚生労働省から資料を取り寄せることができます。過去の事件とご自身の事件を比較して処分の重さについて見通しをつけることが可能です。
医道審議会の対応を弁護士に任せるメリット
次に、医道審議会の対象となった、あるいは医道審議会の対象となるかもしれないという場合に弁護士はどのような弁護をしてくれるのかについて説明します。
- 司法判決の回避
- 厚生労働省への通知回避
- 行政処分の回避・軽減
司法判決の回避
まずは司法判決の回避です。
先ほど説明しましたとおり、刑事事件の加害者となった場合で医道審議会の対象となるのは罰金刑以上の司法判決を受けた場合です。司法判決を受けなければ医道審議会の対象となることはないのです。
したがって、司法判決を受ける前にご依頼があったときは、弁護士は示談交渉などによって有利な情状を集め、検察官に対して起訴しない、つまり不起訴処分とするよう求めて行きます。
その結果として不起訴処分となれば司法判決もありませんので、医道審議会の手続きは始まらずに事件解決となります。
行政処分を回避する最も確実な方法は司法判決の回避です。そのため、刑事事件の加害者となったときはできる限り早期に弁護士に相談、依頼することが最重要のポイントです。
厚生労働省への通知回避
医師又は歯科医師に対して罰金刑以上の司法判決が下った場合、原則として、法務省(検察庁)から厚生労働省へ起訴事実と刑事罰の内容について通知がなされます。
しかし、懲役刑ではなく略式起訴で罰金刑を受けるにとどまる場合には、有利な情状を主張して厚生労働省への通知をしないよう検察官に求めることで厚生労働省への通知を回避できるケースがあります。
このように起訴処分が避けられないケースであっても厚生労働省への通知がなされないよう検察官に働きかけることも弁護士のできることの一つです。
行政処分の回避・軽減
起訴処分がなされ、法務省(検察庁)から厚生労働省へ通知へなされたときは、医道審議会の手続きが始まります。
司法判決から数か月後に都道府県担当部署から対象事件について報告を求める書面が届きます。概ね1か月後の締め切りが設定され、事案報告書を作成し提出します。
行政処分の回避や軽減のためにはこの最初の報告書が非常に重要となります。いかに当方に有利な事実と証拠を示し、主張できるかによって最終処分は変わってきます。単なるレポートではなく法的書面と捉えるべきものですから専門の弁護士において作成することが効果的です。
そして、免許停止以上の処分となる場合には弁明の機会や意見聴取の機会があります。行政の担当者からのヒアリングに適切に対応できるよう専門の弁護士と練習、リハーサルが必須です。
何も言わなくても行政の側がご自身に有利な事情を酌んでくれるということはありません。こちらから有利な事実と証拠を効果的に示すことによって行政処分の回避・軽減を獲得する必要があるのです。
医道審議会の対応に必要な弁護士費用
最後に当事務所にご依頼いただく場合の弁護士費用について、他事務所の費用と比較しつつ説明いたします。
- 相談料
- 着手金
- 成功報酬金
相談料
当事務所では、まずは電話、LINE又はEメールにて弁護士が簡単にご相談をお受けしております。ここでのご相談は無料です。
その上で、しっかりと面談をしてお話を伺うべき事案については来社又はビデオ通話による面談を行います。ここでのご相談は1時間以内のご相談で1万円です。
電話やLINEでの無料相談を実施していない法律事務所は多いようですが、当事務所は上記のとおり無料相談を実施しています。面談による法律相談は多くの法律事務所で1時間あたり1万円の相談料を設定しているようです。
着手金
正式にご依頼をいただき、案件に着手する際にお支払いいただくのが着手金です。当事務所では40万円の着手金をいただいております。
40万円から50万円が医道審議会の対応に要する弁護士費用の相場のようです。医道審議会の対応は相当な業務量となりますので、例えば着手金が非常に安価な設定の場合にはしっかりと対応してもらえるのか慎重な検討が必要です。
成功報酬金
成功報酬金は案件の終結時にお支払いいただく報酬金です。ご依頼の際に作成する委任契約書に記載されていますのでご確認ください。
当事務所の成功報酬金は原則として下記のとおりです。免許取消回避のケースでない限り、着手金と合わせて100万円前後の弁護士報酬となるのが通常です。他の法律事務所も同程度の弁護士費用のようです。
厳重注意 | 60万円 |
戒告 | 40万円 |
免許停止期間の軽減 | 所定月数からの軽減月数×5万円 |
免許取消の回避 | 100万円から300万円 |
医道審議会に関する弁護士の解決事例
最後に実際に当事務所の弁護士が解決した事例を紹介いたします。プライバシー保護のため事案内容は多少変更を加えていることはご了承ください。
器物損壊で罰金刑を受けたケース
A様は泥酔した状態で駐輪場の自転車を壊してしまい逮捕されました。被害者は示談を拒否したことから、そのまま手続は進み罰金刑の刑事罰が確定しました。約3か月後、県の担当部署から事案報告を求める書類が届き、その対応を当事務所に依頼しました。
事案報告書の提出期限まで時間がなかったことから、まずは事案報告書を提出し、その後に再度示談交渉をして示談が成立した場合には示談書を追完する方針としました。事案報告書では、悪質性は低く、軽微な事案であり行政処分の必要性はないことを丁寧に説明をしました。刑事手続の際と同様、被害者は頑なに示談を拒否したことから、やはり示談は成立しませんでした。
1年ほどして弁明の聴取を実施する旨の通知書が届きました。当日までに1か月もありませんが十分にA様と打合せをするとともに、改めて当日に提出する書類として現在までの医師としての稼働状況や反省の姿勢をまとめた書類を作成し当日に臨みました。当日の手続きは30分ほどで終わりました。
20日ほどして、担当者から当事務所に電話連絡がありました。行政処分はせず、厳重注意にとどめる結果となり本件は終結しました。
銃刀法違反で罰金刑を受けたケース
B様は趣味でモデルガンを収集していたところ、そのうちの一部が法定の上限を多少超える程度の威力だったことから銃刀法違反で検挙されました。そのまま手続は進み、罰金刑の刑事罰が確定しました。1年ほど後、県の担当部署から事案報告を求める通知が届き、その対応を当事務所に依頼しました。
刑事手続では弁護士をつけておらず、捜査機関の言われるがままに供述調書を取られてしまったようでした。実際には法定の威力を超えることの認識は全くなく、また自宅の自室外に持ち出したことはなく他人に危害が及ぶ可能性は一切ない所持状況でした。事案報告書ではこの点について丁寧に説明することで行政処分の必要性はないことを主張しました。
コロナ禍もあり医道審議会の手続きは通常よりも相当に時間を要しました。事案報告書の提出から約3年ほど経ってようやく弁明の聴取を実施する旨の通知が行政から届きました。事前に十分に打合せをした上でB様と弁明の聴取を対応しました。
2か月ほどして行政の担当者からB様のもとに行政処分はせず厳重注意にとどめる内容の通知書が届き本件は終結となりました。
まとめ
以上、医道審議会の基礎、弁護士ができること、弁護士費用について説明いたしました。
資格に対する行政処分の影響は甚大なものがあります。手続きが進むほどに打つ手が減っていきますので、行政処分の回避・軽減のためにはできる限り早期に対応を始めることが重要です。
医道審議会についてご不安な方は、当事務所の専門弁護士に一日も早く無料でご相談ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。