離婚訴訟とは?裁判の条件と流れ・メリット・デメリットを解説
最終更新日: 2023年09月28日
- 相手との離婚の話し合いも、調停もうまくいかなかった、どうすればよい?
- 離婚訴訟となった場合、協議や調停の場合と何が違うのだろう?
- 離婚の話し合いが失敗したため訴訟を起こしたい、離婚訴訟の流れを知りたい
離婚訴訟(離婚裁判)とは、婚姻中の夫婦の離婚を認めるか否か、離婚する場合の離婚条件について、裁判官が一切の事情を考慮して決定する手続きです。
裁判官が離婚について判決を下すので、強制力のある結果が得られ、相手が判決内容を守らない場合は強制執行が可能となります。
ただし、申立てのときは申立書への記載や書類の収集が必要で、さらに裁判が開始されれば公開の法廷で自分の主張の正当性を説明しなければならないなど、原告・被告共に大きな負担を伴います。
そこで今回は、多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、離婚訴訟のメリット・デメリット、離婚訴訟の流れ等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 離婚訴訟を行う前に、原則として離婚調停を経る必要がある
- 離婚訴訟は強制力がある反面、判決まで2年近くかかる可能性がある
- 離婚訴訟では原告・被告が互いに自らの主張や証拠の提出等を行う
離婚訴訟とは何か
離婚訴訟(離婚裁判)とは、離婚に関して次の内容を決定する手続きです。
・当事者が離婚するかどうかで争っている場合→離婚の是非について判断
・双方が離婚したいものの条件が嚙み合わない場合→離婚条件について判断
裁判官が当事者(原告・被告)の主張や証拠、様々な事情を考慮したうえで、判決を下します。
原則として、夫または妻の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てます。
離婚訴訟を起こせる条件
離婚を決めたからといっていきなり訴訟を提起してよいわけではありません。申立てをするためには条件があります。
こちらでは事前に離婚調停を行う必要性、法定離婚事由について解説しましょう。
離婚調停が不成立
離婚裁判を起こす前に、原則として離婚調停を行う必要があります(調停前置主義)。
まずは家庭裁判所で調停を行い、調停委員から夫婦がアドバイスを受け、提示された解決案を考慮して、和解を目指します。
それでも話し合いがまとまらない場合は、離婚訴訟(離婚裁判)へと進んでいきます。
ただし、次のようなケースでは調停を省略し、離婚訴訟から開始できます。
- 配偶者の行方または生死が不明
- 配偶者が強度の精神病を患い、話し合いでの解決は非常に困難
- 調停しても合意に至る可能性がない
法定離婚事由に当てはまる
離婚訴訟を行うためには、民法で決められた離婚事由(法定離婚事由)に該当する必要があります。
法定離婚事由は次の4つです(民法第770条)
- 配偶者に不貞行為があった:配偶者が浮気相手と肉体関係を持った場合等
- 配偶者から悪意で遺棄された:正当な理由がないのに、配偶者に生活費を与えない等
- 配偶者の生死が3年以上明らかでない
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
- その他婚姻を継続し難い重大な事由がある:DVやセックスレス等で夫婦関係が破綻している等
なお、離婚訴訟では有責配偶者(浮気した方、DV等の加害者)からの申立ては原則として認められません。
たとえ訴訟を提起しても、自分が不貞行為等をした事実が明らかになれば、相手方が離婚を望んでいない場合、訴えを却下される可能性が高いです。
離婚訴訟のメリット
離婚訴訟は判決で離婚の是非や離婚条件が決定されるので、勝訴すれば自分の希望した内容で離婚問題の解決が図れます。
こちらでは、離婚訴訟のメリットを2つ取り上げましょう。
法的な強制力がある
離婚訴訟では、たとえ相手方が離婚を拒否していても、あるいは離婚条件に納得していなくても、勝訴すれば、相手方の意向に関係なく離婚でき、自分の望んだ離婚が可能となります。相手方は判決に従う義務があります。
ただし、相手方が判決に納得できないとして、判決書の送達を受けた日の翌日から2週間以内に控訴した場合は、高等裁判所で訴訟が行われる可能性があります。
判決書・和解調書の作成
離婚そして離婚に関する養育費や財産分与、慰謝料等の請求も、裁判所から認められれば「判決書」に記載されます。
判決書とは、裁判所が判決を下した理由や事実、判決主文等が記載され、裁判官が署名・捺印した文書です。
この文書があれば、相手方が判決で決められた内容を履行しない場合、強制執行を行えます。
そのため、相手方は強制執行をおそれ、養育費や財産分与、慰謝料の支払い等の判決内容を履行するでしょう。
また、離婚訴訟のときに裁判所から和解を勧められる場合があります。双方が応じ、和解が成立した場合は「和解調書」が作成されます。
この和解調書に記載された内容を履行しない場合も、強制執行の対象となります。
離婚訴訟のデメリット
離婚訴訟は、勝訴により自分の希望した内容で離婚問題の解決が図れる反面、手続きや費用が負担となる可能性もあります。
こちらでは、離婚訴訟のデメリットを2つ取り上げましょう。
費用がかかる
離婚訴訟には、まず申立て費用がかかります。訴訟額によっては費用が数十万円に達する場合もあります。
裁判の申立て費用のうち、収入印紙代・郵便切手代・戸籍謄本の手数料は、裁判を起こす時点で原告が負担しなければいけません。
収入印紙代は、訴訟の内容によって変わってきます。下表をご覧ください。
申立て費用 | 内訳 | |
収入印紙代 | 離婚のみ | 13,000円 |
財産分与 | +1,200円 | |
面会交流 | +1,200円 | |
養育費 | 1人につき+1,200円 | |
慰謝料 | 訴額10万円~1億円の場合:1,000円~32万円 | |
郵便切手代 | 約6,000円 | |
戸籍謄本 | 450円 |
その他、裁判のために証人・鑑定人を呼ぶときは、日当や旅費の負担も必要です。
最終的に原告・被告のどちらが裁判費用を負担するかは、裁判官が判決で決めます。
敗訴した人の全額負担となるケースもありますが、双方で何割かずつ負担すると決められるケースがほとんどです。
申立て費用の他に、弁護士を立てた場合は弁護士費用も必要になります。
法律事務所ごとに差はありますが、80万円〜100万円が目安です。
精神的な負担が大きい
離婚訴訟は原告・被告に重大な影響を与えるため、慎重に審理が進められます。
審理の過程で原告・被告ともに、大きな精神的負担を受ける可能性があるでしょう。
精神的な負担となる原因は主に次の3点があげられます。
- 判決が下されるまでに半年~2年程度かかってしまい、いつになったら解決できるのかと不安になる
- 相手方が提出する書面に、自分への誹謗中傷と思える内容が記載されている場合もあり愕然とする
- 離婚裁判は公開の法廷で行われるため、家族や友人・知人が傍聴する可能性があり、プライベートな事実が明るみに出てしまう
特に浮気が原因で離婚する場合は、不貞行為の内容も傍聴者に知られてしまいます。
有責配偶者にとっては自業自得ですが、恥ずかしい事実が知れ渡り、大きく信用を損なう事態ともなるでしょう。
離婚訴訟を起こす流れ
離婚訴訟を起こす場合は、申立てに必要な書類をしっかりと準備し、自分の主張を裏付ける証拠も収集しておく必要があります。
こちらでは、離婚訴訟の流れについて説明しましょう。
書類の準備
離婚訴訟を起こすときに必要な書類は、裁判所のホームページに明記されています。
次のような書類を準備しましょう。
- 離婚訴状:2部
- 夫婦の戸籍謄本とコピー
- 年金分割のための情報通知書:離婚とともに、年金分割に関する処分の申立てをする場合
- 源泉徴収票・預金通帳等の証拠書類のコピー:2部
出典:離婚 | 裁判所
証拠の準備
自分の主張を裏付ける証拠書類の収集・提出が求められます。
たとえば、浮気に関しては次のような書類が動かぬ証拠となります。
- 調査報告書
- 浮気現場の画像・動画・録音
- 浮気に関するメールや物品(例:ラブホテルのスタンプカード等)
被告の浮気に関して探偵事務所へ調査を依頼すると、詳細な調査報告書、浮気現場の画像・動画等が提供されます。
プロの調査であれば証拠能力が高く、そのまま訴訟の証拠書類・証拠物として提出が可能です。
離婚の準備をはじめるときに、自分では証拠をなかなか集められないのであれば、調査専門の探偵事務所へ依頼し、有力な証拠が得られるように対策をとっておきましょう。
訴状提出
訴状は、原則として、夫または妻の住所地の家庭裁判所に提出します。
訴状には裁判所に申し立てた理由・経緯、審理してほしい内容等を明記します。
提出書類に不備がなければ、家庭裁判所は訴訟の準備を開始します。被告となる相手に、家庭裁判所から訴状が送られます。
第1回口頭弁論の期日を指定
裁判所は訴状を受け取ると、第1回口頭弁論の期日を指定します。訴状提出の約1か月後を期日とすることが多いです。
その間に被告側は訴状内容を確認し、原告と事実の認識が異なる点、自分の意見や反論等を答弁書に記載して提出します。提出期日は口頭弁論期日の1〜2週間前に設定されます。
口頭弁論
口頭弁論は公開の法廷で行われます。原告・被告がそれぞれ自分の主張、証拠を提示して進められていきます。
弁護士に依頼すれば、本人の代わりに弁護士が出廷し、主張や証拠の提示を行います。
口頭弁論は1回だけで終わらず、複数回にわたり開かれる場合がほとんどです。口頭弁論は回を重ねるごとに、次のように争点を整理していきます。
- 第1回口頭弁論:原告の訴状・被告の答弁書をもとに争点を確認、原告と被告双方が自分の主張と証拠を提示する。
- 2回目以降:弁論準備手続に進み、裁判官・当事者双方・弁護士が今後の方針について話し合う。裁判官から和解を進められる場合もある。
なお、口頭弁論は概ね月1回のペースで開かれます。
本人尋問
本人尋問とは、原告・被告が裁判官や代理人(弁護士)の質問に答える手続きです。質問のやり取りを通じ、事実の立証や、双方の証拠の信ぴょう性について主張します。
本人尋問のときは、原告・被告がそれぞれ「陳述書(自分の主張をまとめた書類)」を作成、裁判所に提出するのが一般的です。
判決の言い渡し
和解の見込みがなく、原告・被告の主張や証拠が揃った場合、裁判官は原告の離婚請求を認めるか否かを判断します。
判決が下されるのは、口頭弁論の終結後1か月~3か月くらいです。なお、判決の詳しい内容を記載した「判決書」が作成され、判決後の数日〜10日ほど後に、当事者双方へ届きます。
判決に不満があれば、判決書の送達を受けた日の翌日から2週間以内に、高等裁判所への控訴も可能です。
まとめ
今回は多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、離婚訴訟の利点や注意点、離婚訴訟のプロセス等について詳しく解説しました。
離婚訴訟を有利に進めるためには、費用がかかっても弁護士をたてて、主張・立証を行った方がよいです。弁護士は豊富な経験と法律の知識で、離婚問題の解決をサポートします。
離婚訴訟を決意したら、なるべく早く弁護士に相談し、訴訟の進め方を検討しましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。