離婚訴訟に備える!流れ・書類・費用・訴えられた場合の対策も紹介

最終更新日: 2024年12月30日

離婚訴訟に備える!流れ・書類・費用・訴えられた場合の対策も紹介

  • 離婚の協議も調停もうまくいかなかった。訴訟で離婚問題を解決する方法について知りたい。
  • 離婚訴訟を提起するので、提出する書類や費用について教えてほしい。
  • 離婚訴訟を提起する前に、弁護士と相談した方がよいだろうか?

協議離婚や調停離婚がうまくいかなかった場合、最終的には裁判離婚で解決を図ります。

裁判所に離婚訴訟を提起する場合、一定の条件を満たすとともに、様々な書類の収集や費用の納付も必要です。

そこで今回は、離婚訴訟に実績豊富な専門弁護士が、離婚訴訟を提起する流れ、必要な書類・費用等について詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 離婚訴訟の提起は、夫または妻の住所地を管轄する家庭裁判所で行う
  • 離婚訴訟を提起する場合、裁判費用の他に弁護士費用も必要となる
  • 訴訟を提起した方も提起された方も、専門弁護士に相談し対応方法を検討しよう

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

離婚訴訟とは

離婚訴訟とは調停離婚が不成立だった場合、裁判で離婚問題を解決する方法です。

裁判所で離婚問題を解決したいからといって、いきなり訴訟提起はできません。まず「夫婦関係調整調停(離婚)」を経る必要があります(調停前置主義)。

訴訟提起は、夫または妻の住所地を管轄する家庭裁判所で行わなければなりません。

離婚訴訟を提起できるのは、法定されている次のケースのみです(民法第770条)。

  • 配偶者に不貞な行為があった
  • 配偶者から悪意で遺棄された
  • 配偶者の生死が3年以上明らかでない
  • 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由がある

夫婦の性格の不一致やすれ違いが原因の場合、離婚訴訟の提起は認められない可能性が高いです。

出典:民法 | e-Gov法令検索

離婚訴訟を提起する流れ

調停不成立となった場合、家庭裁判所に離婚訴訟の提起が可能です。訴訟に必要な書類を収集し、迅速に手続きを進めましょう。

前もって弁護士に代理人を依頼すれば、尋問期日の出頭を除き、ほとんどすべての裁判手続きを任せられます。

離婚訴訟の提起〜判決が言い渡されるまで、1年以上かかる可能性があります。長期間を要するケースも念頭におき、訴訟を提起しましょう。

訴状提出

離婚訴訟を提起する場合、まず訴状を作成します。訴状の用紙には、原告の個人情報(本籍・住所・氏名・送達場所等の届出)、被告の個人情報(本籍・住所・氏名)等を記載します。

また、「請求及び申立ての趣旨」「請求の原因等」欄に、正確な事実の記載が必要です。

収入印紙を貼る欄もあるので、忘れずに貼付しましょう。訴状の他に提出する書類も添付し、夫または妻の住所地を管轄する家庭裁判所窓口に申し込みます。

家庭裁判所が訴状を受け取れば、第1回口頭弁論の期日を指定し、原告・被告双方に通知されます(被告には訴状も送達される)。

訴状の提出から1か月後くらいに、第1回口頭弁論の期日を設定するケースがほとんどです。

答弁書提出

訴状の提出後、原告は第1回口頭弁論の期日を待つだけです。一方、被告は答弁書を提出すれば期日に出席しなくても、第1回目口頭弁論の期日に限り被告側の言い分を主張したものとして扱われます。

答弁書の内容は自由に記載できます。

  • 原告と事実の認識が異なる→被告の意見・反論を答弁書に記載
  • 答弁書を詳細に作成するのが難しい→簡単に裁判で争う意思があると記載するだけでもよい

答弁書の提出期日は第1回口頭弁論期日の1~2週間前に設定されるので、期限内に必ず提出しましょう。

なお、答弁書を提出せず無断で口頭弁論の期日に欠席すれば、被告側はかなり不利な立場になる可能性があるため注意が必要です。

尋問

複数回の口頭弁論の期日を経た後、原告・被告への尋問(本人尋問)が行われます。

尋問とは、口頭弁論の期日で出そろった証拠・争点をもとに、原告・被告本人が代理人(弁護士)や裁判官からの質問に答える手続きです。

尋問では、原告・被告がそれぞれ主張したい事実の立証を行い、事実・証拠の信ぴょう性を述べなければなりません。

尋問では、まず原告側の弁護士が原告に質問(主尋問)後、被告側の弁護士が原告に質問(反対尋問)を行います。

原告の尋問が終わると、被告側の弁護士が被告に質問(主尋問)後、原告側の弁護士が被告に質問(反対尋問)を行います。

裁判官が原告・被告に質問(補充尋問)する場合もあるので、誠実に返答しましょう。

通常、前もって原告・被告それぞれの主張をまとめた「陳述書」を作成し、裁判所に提出しておきます。

判決

原告・被告双方の主張・立証から裁判官が事実認定できる状態になった場合、裁判官が原告の離婚請求を認容または棄却する判決を言い渡します。

裁判官が必要に応じ、判決前に原告・被告へ和解案を提示する場合もあるでしょう。和解案に双方が合意しない場合、判決により離婚問題を解決します。

判決が言い渡されるのは、口頭弁論の終結から概ね1か月後です。判決の詳しい理由は「判決書」に記載されており、判決が言い渡された日の数日〜2週間後、原告・被告に送られます。

控訴

原告・被告が判決に納得できない場合は、判決書の送達を受けた日の翌日から14日以内に控訴が可能です。

控訴するときは、まず控訴状を一審の家庭裁判所に提出しなければなりません。控訴後は、50日以内に「控訴理由書」を高等裁判所に提出します。

控訴理由書を期限内に提出しない場合、控訴しても新たな主張を取り上げてくれない可能性があります。

控訴審の第1回期日は、控訴後3か月くらいになる場合もあるでしょう。

離婚届提出

離婚訴訟で和解または離婚を認容する判決が下り、原告・被告双方が控訴する意思がない場合、和解成立または判決確定の日から10日以内に、市区町村役場へ離婚届を提出しなければなりません。

離婚届を提出するときは、他に次の書類も提出します。

  • 和解調書の謄本
  • 判決書の謄本と確定証明書原本

基本的に離婚訴訟の原告が離婚届を提出します(10日を経過しても原告から届出されないときは、被告からの届出も可能)。

離婚訴訟に必要な書類

離婚訴訟のときに必要な書類は、基本的に次の通りです。

  • 訴状(2部):家庭裁判所窓口またはホームページで取得
  • 夫婦の戸籍謄本とコピー:戸籍謄本は本籍地の市区町村役場で取得(1通450円)
  • 年金分割のための情報通知書とコピー:訴訟で年金分割を求めるときに必要。年金事務所で請求
  • 収入に関する証明書:源泉徴収票や預金通帳等の証拠書類のコピー(2部)

離婚訴訟に必要な費用

離婚訴訟を提起するとき、家庭裁判所に裁判費用(申立手数料・予納郵券)を納付しなければなりません。

裁判費用は申し立てる側(原告)が支払います。最終的に裁判費用を誰が負担するかは、裁判で決定されます。

一般的に敗訴した側が負担しますが、裁判所が負担割合を決めた場合、負担割合に応じて双方が費用を支払うことになります。

弁護士を代理人する場合は弁護士費用も必要です。弁護士費用は高額になることもあるので注意しましょう。

申立手数料

家庭裁判所に申立手数料を収入印紙で支払います。

申立手数料をいくら支払うかは、担当弁護士や訴訟提起を行う家庭裁判所に確認しましょう。

通常、離婚のみの判決を求める場合は約1万3,000円、財産分与や慰謝料・親権等の判決を求める場合は約2万円分の収入印紙が必要です。収入印紙は訴状に貼り付けて提出しましょう。

申立て費用

内訳

収入印紙代

離婚のみ

13,000円

財産分与

+1,200円

面会交流

+1,200円

養育費

1人につき+1,200円

慰謝料

訴額10万円~1億円の場合:1,000円~32万円

郵便切手代

約6,000円

戸籍謄本

450円

 

収入印紙を購入できる場所は、郵便局や法務局の他、市区町村役場やコンビニ等です。収入印紙の額面は1円〜10万円まであります。コンビニでは200円の収入印紙しか購入できない場合が多いです。

1,000円や1万円のようなまとまった額面を購入するのであれば、郵便局や法務局、市区町村役場を利用しましょう。

予納郵券

予納郵券はいわゆる「郵便切手」で、裁判所から申立人(原告)と被告に、郵便物を送付するための料金分として納めます。

納める郵便切手は約6,000円分です。こちらも訴状を提出する家庭裁判所に確認して準備しましょう。

弁護士費用

弁護士費用は、法律事務所が自由に設定可能です。かかる費用は、主に「着手金」「成功報酬」「日当」の3つです。

  • 着手金:弁護士との契約のときに必ず支払う費用。約33万円〜66万円
  • 成功報酬:勝訴判決や和解したときに弁護士に支払う費用。約11万円〜55万円
  • 日当:弁護士が裁判等で時間的な拘束を受けた場合に発生する費用。1日約3万円〜5万円

成功報酬は法律事務所によっては「経済的利益の〇%」という形で決めているところもあります。

弁護士費用は、裁判の長期化により増加する場合もある点に注意が必要です。たとえば、日当は裁判期日に弁護士が出廷する日数分だけ費用が加算されます。

たとえば、裁判期日に6回出廷すれば、約18〜30万円かかるでしょう。ただし、法律事務所の中には「〇回までなら日当無料」としているところもあります。

離婚訴訟について弁護士と相談するとき、追加費用を負担する条件もよく聞いてから、契約しましょう。

離婚訴訟をされたらすべき対処法

離婚訴訟を提起された被告側である場合、まず家庭裁判所から送られてきた訴状(呼出状)を冷静に確認しましょう。

どのように対処すべきかわからない場合は、弁護士と相談し、対応の仕方を話し合った方がよいです。

答弁書への回答

被告には訴状と一緒に答弁書も送付されます。答弁書に記載する内容は次の通りです。

  • 被告の住所・氏名・送達場所の届出
  • 「請求の趣旨」に対する答弁:原告の請求を認めるか拒否するか
  • 「請求の原因」に対する答弁:原告の請求の原因を認めるか否か
  • 和解を希望するか否か

答弁書は慎重に作成する必要があります。記載方法がよくわからない場合、弁護士のアドバイスを受けながら作成しましょう。

家庭裁判所には答弁書正本(裁判所用)1通・副本(相手方用)1通、合計2通の提出が必要です。

裁判所への出頭

被告は、原則として呼出状に記載された日時に出頭します。

ただし、答弁書を提出すれば、第1回口頭弁論の期日に出席しなくとも、被告側の言い分を主張したものとして扱われます。

2回目以降の口頭弁論には、被告が出頭しなければなりません。

ただし、弁護士を代理人とした場合は、被告に代わり弁護士が出廷し、主張や証拠提出を行います。

被告本人は尋問期日を除き、裁判所に出頭する必要はありません。

弁護士への相談

訴状(呼出状)が届いたら、今後どのように対応していくかについて弁護士と相談しましょう。

弁護士は夫婦の現状や、訴状の内容を確認し、次のアドバイスを行います。

  • 訴状の内容に間違いや反論があるか
  • 離婚訴訟の流れ
  • 答弁書提出の重要性
  • 第2回以降の口頭弁論の期日での対応
  • 尋問で何を答えるか 等

相談を通じて「この弁護士に代理人を任せたい」と思うときは、そのまま委任契約を締結してもよいでしょう。

まとめ

今回は多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、離婚訴訟の利点や注意点、離婚訴訟のプロセス等について詳しく解説しました。

離婚訴訟を有利に進めるためには、費用がかかっても弁護士を立てて、主張・立証を行った方がよいです。弁護士は豊富な経験と法律の知識で、離婚問題の解決をサポートします。

離婚訴訟を決意したら、なるべく早く弁護士に相談し、訴訟の進め方を検討しましょう。

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