離婚を取り消したい?無効にするには?専門弁護士が解説
最終更新日: 2024年01月24日
- まだ離婚を話し合っている最中なのに、配偶者が勝手に離婚届を出してしまった
- 強迫されて離婚届に署名してしまった、もう取り消せないのか?
- 離婚届を無効にしたいがどのような方法をとればよいのだろう?
離婚が成立したら市区町村役場に離婚届の提出をします。当然、夫婦の一方が離婚に同意しなければ、原則として離婚は成立しません。
しかし、中には話し合いが進まず、夫婦の一方が勝手に離婚届を提出したり、夫または妻に強迫されたりして離婚届へ署名してしまう場合もあります。
そのようなときは、離婚の無効・取り消しが可能です。
そこで今回は、多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、離婚届を無効(取消)にできるケース・できないケース等を詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 勝手に離婚届を提出されたり、夫婦の一方に強迫または騙されて離婚届に署名した場合、無効または取消が可能
- 離婚が成立している場合や届出に不備があるだけならば離婚届は無効とならない
- 離婚届の無効や取消をするためには、まず弁護士に相談し対応を検討する
離婚届を無効または取消にできるケース
離婚届を提出しても、その届出を無効または取消にできるケースがあります。
こちらでは、それぞれに該当するケースを解説します。
無効にできるケース
「無効」とは、当事者の表示した意思のような法律効果が生じない場合を指します。つまり、離婚届が最初から無かった状態となるケースです。
たとえば、夫婦の一方から勝手に離婚届を出されたケースが該当します。
離婚届を提出しても、他方に離婚の意思が認められないならば、届出は無効です。
ただし、勝手に離婚届を出された状態で放置されると、離婚届が受け付けられたままになってしまいます。
離婚が無効であると主張したいなら「離婚無効確認」の手続きを行いましょう。
離婚届を勝手に出された側は、家庭裁判所に申立て、離婚無効確認調停や離婚無効確認訴訟を行ったうえで、離婚を無効にできます。
取消にできるケース
「取消」とは、取消権者の意思表示によって、行為の当時に遡って無かった状態とする場合を指します。
詐欺や強迫を用いて、離婚届を出したケースが該当します(民法第764条、第747条第1項)。
つまり、夫婦の一方が他方をだましたり、脅したりして、無理に離婚届へ署名させた場合、その取消が可能です。
取消をしたい配偶者は、家庭裁判所に申立て、離婚取り消しの調停や離婚取り消し訴訟を行います。
離婚届を無効または取消にできないケース
離婚届を提出した後では、夫婦が無効や取消を自由に主張できません。
こちらでは、無効または取消にできないケース2つを取り上げます。
届出に不備がある
離婚届に不備があっても、市区町村役場の職員から受理されてしまえば、離婚は有効となってしまうので注意しましょう。
民法では「離婚の届出が前項の規定に違反して受理されたときであっても、離婚は、そのためにその効力を妨げられない。」と明記されています(民法第765条第1項)。
なお、離婚届の捨印の欄(主に用紙の左端にある)に押印すれば、誤字や単純な記載ミスがある場合、受け取った市区町村役場で訂正してもらえます。
離婚成立
調停離婚・裁判離婚で離婚が成立した場合は、届出人の署名さえあれば、離婚届は有効に提出できます。
他方が離婚届の無効や取消を主張しても、もはや認められません。
ただし、調停離婚・裁判離婚を経た場合は、離婚届に次の書類を添付します。
- 調停離婚:調停調書の謄本
- 審判離婚:審判書謄本、確定証明書
- 裁判離婚(判決):判決書謄本、確定証明書
- 裁判離婚(和解):和解調書謄本
いずれの書類も家庭裁判所に申請し取得します。
離婚届を無効または取消とするためにすべきこと
夫婦の一方から自分の意思に反して離婚届が提出されても、冷静に対応しなければいけません。
こちらでは、離婚届の無効または取消を図る方法について解説します。
婚姻届の提出
勝手に離婚届を出された側(または詐欺や強迫で署名せざるを得なかった側)が、(元)配偶者を説得し、婚姻届を出す方法があります。
同じ人と再婚する形になるわけですが、双方の合意を得られれば、離婚してすぐに婚姻届の提出も可能です。
ただし、勝手に離婚届を出した(元)配偶者の同意を得るのは非常に困難と解されます。
離婚の無効または取消を主張したいならば、やはり次のような方法で解決を図りましょう。
- 夫婦の一方が勝手に離婚届を出した→離婚無効確認調停、離婚無効確認訴訟
- 夫婦の一方から詐欺や強迫を受け、離婚届を出した→離婚取り消しの調停、離婚取り消し訴訟
家庭裁判所へ離婚無効確認を請求する
夫婦の一方が勝手に離婚届を出した場合は、まず「離婚無効確認調停」を申立て、離婚届を無効にするよう話し合いが持たれます。
離婚無効確認調停 | 内容 |
申し立てる場所 | 相手方の住所地または当事者が合意で定めた家庭裁判所 |
調停の進め方 | 調停委員(2名)が夫婦の間に入り、意見の調整等を図る |
調停成立後 | 裁判所が必要な事実の調査等を行い、合意に従った審判を下す |
審判確定後、1か月以内に市区町村役場へ戸籍訂正の申請をします。
申請のときは主に次の書類を提出しましょう。
- 戸籍訂正の申請書
- 審判書謄本、確定証明書:家庭裁判所に申請し取得
離婚無効確認調停が不成立の場合は、「離婚無効確認訴訟」を提起します。
離婚無効確認訴訟 | 内容 |
申し立てる場所 | 当事者の住所地の家庭裁判所 |
裁判の進め方 | ・離婚に合意していない事実を主張、証拠も提出し審理が進められる ・離婚届が偽造である事実を証明するため、筆跡鑑定等も行われる |
判決(和解) | 裁判所の判決が言い渡される、その前に当事者同士の和解も可能 |
審判確定後、1か月以内に市区町村役場へ戸籍訂正の申請をします。
申請のときは主に次の書類を提出しましょう。
- 戸籍訂正の申請書
- 判決書謄本、確定証明書:判決の場合
- 和解調書謄本:和解した場合
家庭裁判所へ離婚取り消しを請求する
離婚の取り消しには期間があり、詐欺を発見したとき、または強迫を免れたときから3か月以内に、手続きを進めなければいけません(民法第747条第2項)。
離婚無効確認を請求する場合と同様に、離婚取り消しの調停を相手方の住所地または当事者が合意で定めた家庭裁判所に申立て、話し合いでの解決を図ります。
調停不成立ならば、当事者の住所地の家庭裁判所に離婚取り消し訴訟を提起します。
審判や判決が言い渡された場合は、1か月以内に市区町村役場へ戸籍訂正の申請を行いましょう。
弁護士への相談
離婚届を無効または取消にしたい場合は、まず弁護士に相談してみましょう。
離婚問題に詳しい弁護士なら、どのような状況で離婚届が提出されたのか判断したうえで、相談者に最適な解決策を提案します。
弁護士を代理人にすれば、調停・裁判で自分の主張が通る可能性も高いです。
無効または取消の調停申し立てや、訴訟提起も弁護士が対応します。
その他、弁護士は自分の代わりに、離婚に合意していない事実を主張し証拠の提出も行うので、無効または取消の手続きを安心して任せられます。
離婚問題に詳しい弁護士を選ぶなら、まず法律事務所のホームページをみてみましょう。
- 離婚に関する相談実績・成功実績の具体的な件数が明記されている
- 離婚に関する話題や夫婦のトラブルを扱った話題が豊富に掲載されている
- 離婚や夫婦のトラブルを解決する手順や、弁護士報酬が明記されている
これらの内容が確認できれば、離婚等の交渉や調停・裁判において経験豊富な弁護士であるとわかります。
まとめ
今回は多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、離婚届を無効または取消にできるケース、無効または取消を行う方法等について詳しく解説しました。
特に離婚の取り消し手続きを行う場合は、期限が設けられているので、迅速に手続きを進めた方がよいでしょう。
離婚届に関するトラブルで悩んだら、なるべく早く弁護士と相談し、今後の対応を話し合ってみてはいかがでしょうか。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。