窃盗罪の罰金や示談金の金額について専門弁護士が解説

最終更新日: 2022年01月06日

窃盗罪の罰金や示談金の金額について専門弁護士が解説

窃盗罪の罰金って幾らくらいなの?
窃盗罪の示談金の相場は?
窃盗罪は被害金額が高額だと執行猶予は付かないの?

窃盗事件は被害金額が数百円から数千万円まで様々で、犯罪の中で最も発生件数が多く、身近な犯罪です。そのため、ご自身や家族が窃盗罪の当事者となることもあり、その場合に上記のような不安、疑問をもつことがあるでしょう。

そこで今回は、数百件の刑事事件を解決してきた弁護士が、窃盗罪の刑罰や示談金などについて解説します。

窃盗罪の罰金の金額や刑の重さ

窃盗罪は犯罪のため、刑罰を科されることになります。まずは、窃盗罪の法定刑や罰金の相場について見て行きましょう。

法定刑の重さ

窃盗罪について法律上、どのような刑罰が定められているのでしょうか。以下ご説明します。

窃盗罪

窃盗罪の刑罰について刑法は、10年以下の懲役刑又は50万円以下の罰金刑を定めています。罰金刑よりも懲役刑の方が重い刑罰です。

前科の有無や犯行態様、被害金額などを考慮して、裁判所がどのような刑罰を科すか決定します。

常習累犯窃盗

法律には常習累犯窃盗というものがあります(盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律)。下記の2つの要件を満たす場合、3年以上の懲役刑という重い刑罰が科されます。

①常習として窃盗をしたこと
②過去10年以内に3回以上、懲役6か月以上の懲役刑の執行を受けたかその執行の免除を得たこと

500円以下は窃盗罪にならない?

500円以下など少額なら窃盗罪にはならないのではないかというインターネット上の情報を目にしましたので、念のため、ご説明します。

金額に関わらず、他人の財物を盗めば窃盗罪が成立します。例えば、100円の駄菓子を盗む行為にも窃盗罪が成立するのです。

ただし、例えばコピー用紙1枚を盗んだという場合には、コピー用紙1枚に刑罰を科すほどの財産的価値は認められず、窃盗罪は成立しません。

罰金の金額の相場

先ほど見ましたように窃盗罪の罰金刑は(1万円以上)50万円以下です。下記統計を踏まえますと、窃盗罪の罰金刑は20万円から30万円が相場といってよいでしょう。

 

  50万円以上 30万円以上 20万円以上 10万円以上
地方裁判所 13 117 204 29
簡易裁判所 8 75 144 10

刑事事件に強い弁護士による逮捕・不起訴・裁判の無料相談!

窃盗罪は金額などによって処分が異なる

窃盗罪を犯したとしても必ず刑罰を科されるわけではありませんし、刑罰を科されるとしてもその種類や重さは一様ではありません。

ここでは、窃盗罪を犯した場合にどのような処分があり、どのようなことを考慮して処分が決められるのかについて見て行きましょう。

処分で考慮される事情

窃盗罪について起訴されると、裁判所が刑罰を決定します。そして、起訴して刑罰を科すことを求めるかどうかを決めるのは検察官です。

起訴するか否か、略式起訴とするのか正式な裁判とするのか、罰金刑を求めるのか懲役刑を求めるのか、これらのことを検察官が判断します。

その判断の際には、前科の有無、常習性、犯行動機、被害金額、犯行態様、反省態度、被害者の処罰感情などの様々な事情が考慮されます。

どのような処分がある?

以上のように様々な事情を考慮して捜査機関や裁判所が処分を決めるのですが、ここではどのような処分があるのかについて見て行きましょう。

微罪処分

窃盗罪の場合には、微罪処分になることがよくあります。微罪処分とは軽微な事件について簡易、迅速に処理する制度です。

微罪処分は「処分」とはいっても、刑罰は科されませんので、前科はつきません。

例えば、被害金額が数百円や数千円の万引きであれば、初犯や2回目くらいまでは微罪処分となることが多くあります。自転車窃盗も微罪処分となることが多い類型です。

起訴猶予処分(不起訴処分)

窃盗罪を証明するだけの証拠があるものの、検察官が様々な事情を考慮して起訴しないという判断をすることがあります。これを起訴猶予処分といいます。

初犯で被害金額が数百円、数千円の場合には起訴猶予処分となる可能性が高いでしょう。起訴猶予処分の場合、刑罰を科されませんので、前科はつきません。

略式起訴

窃盗罪について罰金刑を科すことが相当と判断した場合、検察官は略式起訴をすることがあります。略式起訴の場合、法廷での審理は開かれません。後日、簡易裁判所から起訴状と罰金の納付書が届き、検察庁にて罰金を納付します。

被害金額が低額であっても過去に前科がある場合や、前科はなくとも前歴がある場合などには略式起訴となることがあります。

万引きなど軽微な窃盗罪は概ね、1回目は微罪処分、2回目は起訴猶予、3回目は略式起訴、4回目は正式裁判(公判)で執行猶予判決、5回目は実刑判決と、段階的に処分が重くなっていきます。

執行猶予

略式起訴ではなく正式な裁判になった場合で、罰金刑ではなく懲役刑を科される場合も必ず刑務所に服役するとは限らず、執行猶予がつくことがあります。

例えば、「懲役1年、執行猶予3年」という判決であれば、執行猶予期間3年の間に再び犯罪を犯さなければ懲役1年の刑罰は受けなくていい、つまり服役する必要がなくなります。

被害金額が1000万円を超えるなど高額な場合には初犯であっても実刑判決となる可能性が高いですが、初めて正式裁判を受けるときは多くのケースで執行猶予が付きます。

少年(未成年)の場合

以上は成人の場合を想定した説明です。未成年の場合には原則として全ての事件が家庭裁判所に送致されます。

そして、裁判所において少年の更生のために必要な処分を下します。特に処分は必要ないと判断されることもあれば、保護観察処分や少年院送致が必要と判断されることもあります。

いずれの処分となるかについて犯行の内容や被害金額も影響し、初めての万引きであれば特に処分はされない可能性が高いですが、被害金額が大きい、常習性がある場合には保護観察処分や少年院送致となることもあります。

なお、14歳未満は刑事責任を問われませんので、以上の説明は14歳以上の未成年を前提としています。

刑事事件に強い弁護士が逮捕・不起訴・裁判を強力解決!

窃盗罪の罰金の金額を抑えるには?

検察官や裁判所は処分を決めるにあたって様々な事情を考慮します。できる限り処分を軽くしてもらうために何かできることはあるのでしょうか。

自首をする

窃盗をして現行犯逮捕はされなかった場合、自首をすることが考えられます。自ら警察に出頭して犯行を自供することによって、刑罰が軽くなる可能性があります(刑法第42条1項)。

また、このように自首をしたことは検察官が処分を決める際にも有利に考慮され、起訴猶予処分となる可能性が高まります。

ただし、自首が成立するためには捜査機関が犯人を特定する前の段階である必要があります。

示談交渉をする

窃盗罪において、検察官や裁判所が処分を決める際に最も重視するのは被害者との間で示談が成立しているかどうかです。

示談とは被害者が加害者のことを許し、刑事処分は求めないことを表明することです。

このように被害者が許している場合には、前科の有無などその他の事情にもよりますが起訴猶予処分となる可能性が高まりますし、起訴されたとしても罰金の金額など刑罰が軽くなる可能性が高くなります。

万引き事件では大手の会社は示談に応じてくれないことは確かに多いのですが、例外的に示談に応じてもらえることもあります。ですから、そのような会社だからといって最初から示談を諦めるのではなく、弁護士を通じて示談交渉をするべきです。

被害弁償だけでも違う

被害者が示談には応じてくれないこともあります。このような場合も被害者に発生した被害金額の賠償だけであれば応じてもらえることがあります。

窃盗罪は被害者に財産的損害を発生させる犯罪です。たとえ示談が成立していなくても、そのような財産的損害を回復しただけでも、検察官や裁判所が処分を決めるにあたり有利に考慮してもらうことができます。

窃盗罪の示談金の金額について

起訴猶予処分を得たり、刑罰を軽くするためには示談が重要と説明しました。それでは、窃盗罪で示談をするためにはどれくらいの示談金を支払う必要があるのでしょうか。

例えば、万引きであれば商品代金のみで足りることもあれば、商品代金に10万円以下の迷惑料を加えた金額が示談金となることもあります。

一方、侵入窃盗の場合で、侵入する際に扉などを壊した場合にはその修理費用も示談金に加わってきます。また、下着泥棒の場合には、被害者が自宅を知られているのは怖いから転居したいと言って、転居費用の負担を求められることもあります。

このように万引きの場合には概ね示談金額の見通しはつきやすいのですが、窃盗罪のケースは様々であり、示談金が予想外に高額になることもあるのです。

窃盗罪の金額や目的などで処分が異なった事例

最後に、具体的な事例において窃盗罪でどのような処分になることがあるのか見ておきましょう。

万引きの解決事例
  1. 1.転売目的の万引き事例
  2. 2.下着泥棒の事例
  3. 3.初犯で大量の万引き事例

転売目的の万引き事例

1年以上にわたり、コンビニで万引きをしてはインターネット上で転売を繰り返して収入を得ていたところ、ある日、遂に現行犯逮捕されました。

前科はなく警察に捕まったのは初めてでしたが、捜査によって常習的な転売目的の万引きが明らかにされました。弁護人がコンビニと示談金5万円で示談をしましたが、検察官は悪質と判断したことから略式起訴ではなく、公判となりました。

そして、懲役1年、執行猶予3年の判決がくだされました。

下着泥棒の事例

アパートの敷地内に侵入し、ベランダに干されていた女性用下着を盗んだところ、住人に通報され、現行犯逮捕されました。

弁護人が被害者と示談交渉をしたところ、一人暮らしの被害者女性は、釈放された加害者が自宅に押し掛けてくるのではないかと不安に思っており、転居を予定していました。

加害者と相談のうえ、慰謝料20万円に転居費用30万円を加えた50万円を示談金として提案したところ、被害者の了承が得られ、示談が成立しました。

初犯であったこと、示談が成立していることを考慮して、検察官は起訴猶予処分としました。

初犯で大量の万引き事例

3年ほど前から家庭内や仕事のストレスで万引きを繰り返すようになり、ある日、デパートの催事場で手提げ袋一杯の洋服を万引きしたところ、その場で現行犯逮捕されました。

前科はなく、警察に捕まったことも初めてでしたが、被害金額が4万円ほどと高額だったことから示談の成否に関わらず検察官は公判にする方針でした。

店舗は示談には応じてくれませんでしたが、起訴後に店舗に被害金額の弁償を行うことはできました。公判では、懲役10か月、執行猶予3年の判決がくだされました。

まとめ

以上、窃盗罪の刑罰や示談金などについて解説しました。

窃盗罪で刑罰を軽くするためには、自首や示談交渉が重要です。自首、示談交渉を検討している方は、窃盗罪の経験が豊富な弁護士にご相談ください。

家族が逮捕されたら!即日の接見を専門弁護士に依頼!

刑事事件に強い弁護士はこちら

窃盗のコラムをもっと読む