【弁護士解説】墓地の相続のポイントは?費用や手続き・民法ルールや相続登記すべきケースを解説
最終更新日: 2022年10月13日
お墓も家や預金の相続と手続きは同じなの?
誰がお墓を相続するの?
お墓を相続すると色んな税金を払わないといけないの?
親族が亡くなると多くの方がお墓を継ぐことになりますが、お墓という特殊なもののため、他の財産と同じように扱ってよいのかという疑問が湧くのはもっともです。
また、お墓は購入費用の大きいものですから、お墓を継ぐことで予想外の支出が必要になるのではないかと心配にもなるかもしれません。
当事務所ではお墓に関する法務を専門的に扱っております。今回は墓地の相続について基礎から相続対策まで専門の弁護士が徹底解説いたします。
それでは早速基礎知識から順番に説明して参ります。
墓地の相続とは
不動産や預貯金の相続とお墓の相続に違いはあるのでしょうか。結論として、お墓については、法律上、相続財産とは異なる取扱いとなっています。
墓地の相続は墓地使用権と祭祀財産の承継
相続とは、被相続人が亡くなったときに、その相続財産を相続人が承継することをいいます。
実は、法律上、墓地はこの相続財産には含まれません。そのため、相続財産と一緒に遺産分割協議の対象となるものではありません。
相続財産とは異なる取扱いとなっている理由は、先祖の供養に関するものは相続財産とは異なり相続人の共有にするのではなく、供養を担当するのに適切な人に単独で委ねるべきという考えがあるからです。
民法では、相続財産の承継とは別の規定、祭祀承継に関する規定の中でお墓の承継(相続)について規定しています。
お墓の承継の対象は、墓石その他の祭祀財産の所有権と、公営墓地や寺院墓地などの墓地使用権です。
このようにお墓の「相続」と一般的には言いますが、法律上は、「相続」とは別の手続きとなっています。
賃借人が墓地として使用している土地の相続
もっとも、上記のようなお墓の祭祀承継とは異なり、文字通り墓地を相続する場合があります。
どのような場合かというと、所有している土地を他人に賃貸し、賃借人がその土地を墓地として使用している場合です。
この場合、上記のお墓の祭祀承継とは異なり、相続人は、当該土地を相続財産として相続しますので遺産分割協議の対象となります。
墓地を相続(承継・継承)するのは祭祀承継者
それでは、誰がお墓を承継するのでしょうか。相続財産と同じく相続人が承継するのでしょうか。
答えは、相続人ではなく、祭祀(さいし)承継者です。
お墓などの先祖の供養に関するものについて普通の財産と同様に扱うことは国民感情や習俗に合わないことや、財産のように共有や分割して相続することに適さないからです。
墓地を誰が相続するのか?民法のルール
お墓の相続は他の相続財産の相続とは異なることがわかりました。では、お墓は誰が相続するのでしょうか。
お墓を相続する者、すなわち祭祀承継者の決定方法については、民法が以下のルールを定めています(民法第897条)。
- 被相続人が指定した者がいればその指定によって決定
- 指定がなければ慣習によって決定
- 慣習が明らかでなければ、相続人間の協議で決定
- 慣習が明らかでなく、相続人間の協議でも決定できない場合は、家庭裁判所が決定
以下、順番に見ていきましょう。
被相続人の指定
被相続人が祭祀主宰者(祭祀承継者)として指定した者が、祭祀を承継し、お墓も承継します。遺産の相続とは別ですから、遺産を相続する者を指定したからといって祭祀主宰者を指定したことにはなりません。
指定方法は、生前に指定することも、遺言書で指定することもできますし、口頭、書面を問いません。もっとも、争いを防ぐためには公正証書遺言にしておくべきです。
祭祀承継者は、法律上は親族に限られず、縁故者、お寺などの墓地経営者、さらには株式会社を指定することもできます。
しかし、適切に祭祀を主宰できる者が承継しなければ、お墓の管理がしっかりとなされず、いずれ無縁墳墓化することも懸念されます。
また、墓地使用規則(約款)において、墓所の承継者を「相続人」、「3親等内の親族」などと限定している場合がありますので、祭祀承継者の指定にあたっては、この点も墓地管理者に確認する必要があります。
慣習によって決定
被相続人が祭祀承継者を指定していない場合は、被相続人の住所地の慣習や、出身地の慣習など慣習に従って決まります。
とはいえ、慣習というのは明確ではありませんので、慣習によって祭祀承継者を決定できる場合は稀でしょう。
相続人間の協議によって決定
民法第897条には規定されていませんが、相続人間の協議によって祭祀承継者を決定することも認められています。
よって、被相続人よる指定がなく、また慣習でも祭祀承継者が決定しない場合には、相続人間の協議によって、誰が祭祀を承継するか決定することができます。
家庭裁判所の決定
被相続人の指定がなく、慣習も明らかでなく、また相続人間でも誰が祭祀を承継するか決定するか決定できない場合には、相続人などの利害関係人が申立てをして、家庭裁判所が祭祀承継者を決定します。
家庭裁判所は、祭祀承継者と被相続人との身分関係、過去の生活関係及び生活感情の緊密度、祭祀主宰の意思・能力、その他の利害関係人の意向などを考慮して祭祀承継者を指定しています。
そのため、必ずしも長男が指定されるわけではなく、内縁の妻や二女が指定されることもあります。
墓地を相続した祭祀承継者の役割、負担
以上の民法のルールにしたがって、お墓を承継する者が決定しますが、祭祀承継者にはどのような役割や負担があるのでしょうか。
公営墓地、民営墓地、寺院墓地いずれについても、墓地管理者は墓地全体の管理はしてくれますが、基本的に個々の墓所区間の管理についてはその墓所の使用者に責任があります。
そのため、祭祀承継者は定期的に墓参して清掃をするなど、お墓を適正に管理する必要があります。草木が伸び放題であったり、墓石が傾いていたりすると、他の墓所区画の使用者から苦情が出るかもしれません。
また、祭祀承継者は、墓地の管理費や護寺会費など、墓地使用規則で定められた費用を納める義務があります。これらの費用を何年も滞納していると墓地管理者から墓地使用契約を解除され、最終的にはお墓を撤去されてしまいます。
このようにさまざまな役割、負担が課されますので、これらをきちんと担うことができる者を祭祀承継者とするべきです。
墓地の相続で困るケース
被相続人による祭祀承継者の指定がない場合に、誰がお墓を承継するのかについて判断がつかずに困っているというご相談はよくあります。
以下このようなご相談の一例をご紹介いたします。
次男と長男の子いずれが継ぐのか
長男が亡くなった後、その妻は死後離婚をしました。長男には弟(次男)が一人いるほか、自身の息子が一人います。この場合、長男の息子と次男のうち、いずれがお墓を相続するのでしょうか。
直系にあたる長男の息子がお墓を承継するのが通常です。しかし、長男の息子が未だ小中学生など子供の場合には、適正にお墓を管理することは困難です。
このような場合には、墓地管理者と相談のうえ、次男がお墓を継ぐことも認められるでしょう。
長男が遠方に住む場合
お墓のある田舎には次男が住んでおり、長男は遠方の都会に住んでいるという場合で、長男が田舎に帰ってくることが稀という場合、近場に住む次男がお墓を継ぐことはできるのでしょうか。
遠方に住んでいたとしても長男がちゃんとお墓を管理するという意思があり、現実的にそれが可能であれば長男がお墓を継ぐことでもよいでしょう。
他方、長男による管理があまり期待できず、次男にその意思があるのであれば次男が継ぐことで良いでしょう。
墓地管理規定にはお墓の承継者の範囲について例えば3親等内の親族などと制限している場合はありますが、長子に限定している規定は稀です。
田舎にある放置された祖父のお墓
長男が都市近郊の霊園に父のお墓を建てました。ある日、祖父の遺骨が納骨されている田舎のお墓の住職から管理費を払うか、墓じまいをするか決めてもらいたいという手紙が届きました。このようなケースはよくあります。
この場合、長男は祖父のお墓を継いだ覚えはないと思うかもしれませんが、父のお墓を建てていますので、先祖代々の祭祀を承継していることになります。
そのため、継いだ覚えはなくとも、長男は祖父のお墓についても継いだことになっていますので、長男が祖父のお墓の管理費を納めるか、墓じまいをしなければならないということになります。
嫁にいった長女しか相続人がいない場合
嫁に行って苗字の変わった長女しか相続人がいない場合、墓石に記された家名と長女の苗字は異なりますが、長女がお墓を継ぐ他ないでしょう。
お墓の承継には一墓所一家系という原則があります。多数の家系が一つのお墓に納骨されることになると、お墓の承継者の範囲が広がり、適正なお墓の承継に支障をきたすおそれがあるからです。
したがって、原則として、お墓を長女が承継したとしても、長女が嫁いだ家系の遺骨を納骨することは許されません。
また、墓地を承継できる親族の範囲には制限があるのが通常ですから、長女が亡くなった後にはお墓を承継できる者がいなくなるかもしれません。
そのため、いずれかの時機に長女において墓じまいをして永大供養墓などに改葬することを検討してもよいかもしれません。
承継したくない墓地を相続放棄できるか
相続財産には相続放棄の制度があります。例えば、被相続人の資産よりも借金が多いような場合には相続放棄をすることがよくあります。
このような相続放棄をすると、お墓も承継できないのでしょうか。反対に、お墓を承継すると相続放棄はできなくなるのでしょうか。
繰り返しになりますが、相続財産の承継とお墓の承継とは全く別個のものです。したがって、相続放棄をしてもお墓は承継できますし、お墓を承継したとしても相続放棄をすることができます。
では、被相続人から遺言書で祭祀承継者として指定されていた場合、お墓の承継を放棄することはできるのでしょうか。
法律上、相続放棄のように祭祀承継者としての地位を放棄する制度はありません。そのため、祭祀を承継したくなくても、指定されてしまえば祭祀承継者の地位を得ることになってしまいます。
このように祭祀を承継したくないという場合には、放棄ではありませんが、他の親族に相談をして、自身の代わりに祭祀を承継してもらうことは可能です。
墓地の相続(承継)で困らないための対策
上記のように被相続人の死後に誰が祭祀承継者となるのかについて遺族が困ったり、遺言書で指定した遺族が祭祀承継者となることを拒んだりするケースがあり、そうなるとお墓のスムーズな承継が阻害されます。
このような事態を回避するにはどのような対策があるでしょうか。
まず、被相続人の死後に誰が祭祀承継者となるのかについて遺族が困らないようにするためには、公正証書遺言によって明確に祭祀承継者を指定しておくべきです。そうすれば、誰が祭祀承継者になるのか不明確になることはありません。
もう一つの方法は、お墓の生前承継です。
お墓は亡くなった後に遺族が承継するのが通常ですが、生前承継は生前にお墓を承継させるものです。
法律上、生前承継は否定されていませんし、離婚や離縁の際には、法律上も生前承継が認められています(民法第769条、第817条)。
このように生前承継をしておけば亡くなった後に誰がお墓を継ぐのかということで困ることはありませんし、祭祀承継者として指定された者がお墓を継ぎたくないと言い出す事態も心配する必要がありません。
このような生前承継は、例えば、墓地使用者が遠方に居住しているために墓地管理が困難となった場合や、高齢や病気によって墓地管理が困難になった場合にも有効です。
生前承継を認めてもらえるかどうかは、墓地管理者との協議によることになります。生前承継を認めることに墓地管理上の支障はなく、むしろ生前承継を認めた方が、お墓の無縁化を防ぐことができるなど墓地管理上、望ましい場合には生前承継を認めてくれるでしょう。
なお、公営墓地の条例や民間墓地の規則で生前承継を明示的に認めている例もあります。
墓地を相続する人がいないとお墓はどうなるか
先祖のお墓を承継したものの、自身には兄弟姉妹、配偶者や子がいないという場合、その方が亡くなった後にはお墓を承継する人がいなくなってしまいます。
お墓を承継する人がいないと、お墓が無縁化し、5年から10年ほどが経過すると墓地管理者において無縁改葬の手続きがとられ、お墓は撤去され、遺骨は合祀墓に祀られることとなります。
このように墓地を相続する人がいない場合には、生前に先祖代々のお墓を墓じまいして、永代供養墓に改葬することが無縁化を防ぐ一つの対策となります。
もう一つの対策は次に説明します特別祭祀承継制度です。
特別祭祀承継制度
お墓を相続する人がいない方は、生前に自身が他界したときに入るために永代供養墓を契約することが多くあります。
他方、先祖代々のお墓に自身も入りたいというニーズもあります。このようなニーズに応える制度が、特別祭祀承継制度です。
この特別祭祀承継制度は、生前に墓地経営者を祭祀承継者として指定し(公正証書遺言で指定します。)、亡くなった後は、墓地経営者が祭祀承継者として既に建立されているお墓に納骨し、契約した期間(10年から30年ほど)、そのお墓で供養するものです。
そして、契約期間が満了すると、祭祀承継者(墓地使用者)である墓地経営者が建立されているお墓を墓じまい(改葬)して、焼骨は永代供養墓に移して、供養されます。
この特別祭祀承継制度によれば、生前に先祖代々のお墓を墓じまいするのではなく、自身もそのお墓に入ることができ、かつ承継者がいないことでお墓が荒れ墓になる事態を回避できます。
ただし、墓地の承継者がいないと言っていたものの、亡くなった後に親族が現れ、お墓の承継を主張してくる可能性があります。そうなると、お寺が祭祀承継者に関する争いに巻き込まれてしまいます。
そのため、契約内容には祭祀承継を主張する者が現れた場合には、祭祀承継者は親族の決定に委ねることを定めておくべきです。
また、契約期間満了後に墓地経営者が自ら墓地使用者として改葬する際、行政から親族からの同意書を求められる可能性があります。そのような事態もありうることから、墓地経営者を祭祀承継者とする場合には、予め親族からその同意書をとっておくことが望ましいといえます。
墓地の相続(承継)の手続き
お墓の承継手続については、それぞれの墓地ごとに手続きが定められています。
多くの墓地では、所定の申請書に、墓地使用許可証、墓地使用者として届けられている者が亡くなったことを示す除籍謄本、自身とその墓地使用者との関係を示す戸籍謄本などの明分関係の資料を添えて墓地管理者に提出することになります。
お墓の承継の費用についても、墓地ごとに手数料が定められています。多くは数千円程度の費用です。
墓地の相続税評価は非課税
相続をする際に気になるのは相続税です。お墓は高額な費用をかけて建てられていますので、お墓を承継する際に多額の相続税がかかるのではないかと心配なさる方もおられるでしょう。
ここでは、お墓と相続税との関係や節税方法について以下のとおりご説明します。
- 墓地は原則として相続税はかからない
- 生前に購入すれば相続税の節税に
- 生前購入しなくてもいいケース
それでは、順番に見ていきましょう。
墓地は原則として相続税はかからない
お墓は数十万円から数百万円もする大きな買い物です。このように高価なお墓ですが、生前に購入しておいたお墓を相続した場合に相続税は課されるのでしょうか。
結論としては、原則として、お墓には相続税は課されません(相続税法第12条)。
お墓は相続財産とは異なる、祭祀財産だからです。同様に祭祀財産である仏壇や仏具についても相続税はかかりません。
「原則として」といいましたのは、例えば、純金製のお墓、仏像など市場価値があり売却可能なものの場合には、課税逃れを疑われ課税されてしまう可能性があるからです。
なお、生前にはお墓を購入しておらず、被相続人が亡くなった後に遺族が相続したお金を使ってお墓を購入したとしても、税金の計算上、その費用が相続財産から控除されることはありません。
生前に購入すれば相続税の節税に
生前にお墓を購入しておくと、その購入のためにお金を支払いますので、その分、相続財産が少なくなり、相続税は減ります。
このように生前に購入した場合には購入費用分の節税になりますが、生前に購入しなかった場合には購入費用分の相続財産に相続税か課税されます。
したがって、お墓は生前に購入しておくことがおすすめです。
注意点として、お墓をローンで購入する場合がありますが、ローンで購入して完済前に亡くなった場合には節税にはなりません。
ローンなどの借金は相続財産から控除して税金が計算されるのですが、お墓の場合には非課税の財産のため、その購入のためのローンは相続財産から控除されないからです。
したがって、節税の効果を得るためには現金一括で購入をするか、生前に完済をしておくことが重要です。
生前購入しなくてもいいケース
相続税の計算には、基礎控除というものがあります。相続財産の価格から基礎控除額を差し引いた残りの金額に課税されることになります。
基礎控除額の計算式は、3000万円+(600万円×法定相続人の数)です。
相続財産の価格がこの基礎控除額以下の場合には相続税が発生しませんので、節税の必要性がなく、節税という観点からはお墓は生前に買う必要はないということになります。
他方、相続財産が基礎控除額以上になる場合には、やはりお墓を生前に購入して節税をするべきでしょう。
墓地に関わる税金まとめ
お墓に関わる税金は相続税だけではありません。
ここでは、以下のとおり、お墓と税金について網羅的にご説明します。
- 消費税がかかるもの
- 固定資産税や都市計画税はかからない
- 樹木葬・永代供養墓・納骨堂と税金
- 生前承継の場合の贈与税
- ペットのお墓
以下、順番に見ていきましょう。
消費税がかかるもの
お墓に関わる支出にはいろいろなものがありますが、消費税がかかるものとかからないものがあります。
お墓を建立する際の墓石代、工事代金には消費税がかかります。
他方、墓地の契約をする際に支払う永代使用料には消費税はかかりません。
お墓を建てた後、毎年、墓地管理費を支払います。この墓地管理費には原則として消費税がかかるのですが、寺院墓地の場合には護寺費などの名目になっており宗教活動の一環とみなされ消費税は非課税となります。
固定資産税や都市計画税はかからない
不動産を所有していると毎年、固定資産税や都市計画税が課されます。
お墓も「購入する」、「分譲する」などと表現されることがありますし、永久的にその墓所区画を使用できることから不動産を購入するような感覚があるかもしれません。
しかし、お墓はその墓所区画の所有権を取得しているのではなく、永代使用権を取得しているに過ぎず、あくまで土地の所有者はお寺などの墓地経営者です。
よって、お墓を建てたとしても固定資産税や都市計画税を課されることはありません。
樹木葬・永代供養墓・納骨堂と税金
最近は、伝統的なお墓以外にも新しい葬法として樹木葬や納骨堂などが広まっています。
いずれについても新たに施設を設ける場合には工事代金などに消費税が課されますが、既存の樹木や永代供養墓、納骨壇に遺骨を納めるだけであれば、そのような工事はなく消費税は課されません。
いずれも管理費はかかりますのでそれについては消費税が課されるのが通常ですが、寺院が経営するものについては非課税の場合もあります。
また、納骨、管理、供養をパッケージで募集している場合などには消費税込みの総額で販売されていることもあります。
生前承継の場合の贈与税
新たにお墓を建立する際の税金のお話をしましたが、代々承継されてきたお墓を生前に次世代に承継する場合があります。
この場合、お墓を贈与するということになるわけですが、贈与税が課税されることはないのでしょうか。
1年間に受けた贈与の金額が110万円以下の場合には贈与税は課税されません。
そして、お墓の経済的価値が110万円を超えることは極めて稀ですから、基本的にお墓の贈与を受けて、贈与税が課されるケースはないと考えて良いでしょう。
ペットのお墓
ペットも家族ですから、送葬についても人間と同様に考えたいところですが、法律上は、ペットは動産、物として扱われます。
これまでご説明しましたお墓はあくまで人間が祀られるお墓です。最近はペット霊園も増えてきましたが、ペットのお墓の税務上の取り扱いは人間のお墓とは異なり、お墓の永代使用料についても消費税が課されます。
他方、その数は未だ少ないですが、ペットと人間が一緒に入ることのできるお墓を販売する墓地があります。あくまで人間のお墓に副葬品としてペットが入るという形であれば、人間のお墓と同様に扱われますので、永代使用料に消費税は課税されません。
墓地の相続登記が必要なケースとその手続き
ここまでお墓の承継手続や税金のご説明をしましたが、最後に、以下のとおり、お墓と登記についてご説明します。
- 通常はお墓の相続登記は不要
- 墓地の相続登記が必要なケース
- 墓地の相続登記に必要な申請書
- 地目が墓地なら相続登記の際に登録免許税は非課税
それでは、順番にご説明します。
通常はお墓の相続登記は不要
土地の登記簿謄本には、地目という欄があり、土地の用途に応じて宅地や田などの記載があります。墓地の場合には地目は墓地と記載されています。
お墓を相続した場合に、他の相続した不動産と同様に登記変更が必要ではないかと考える方もいらっしゃるかと思います。
しかし、お寺など墓地経営者と契約をしてその区画を使用しているだけであれば、その土地の所有権をもっているわけではありませんので、お墓を相続しても登記手続は必要ありません。
墓地の相続登記が必要なケース
とはいえ、相続にあたり墓地の登記手続が必要な場合もあります。
一つは、賃借人がその土地で墓地を経営している場合です。この場合には、賃貸人である所有者は相続した土地の登記手続が必要となります。
この場合、祭祀財産としての承継ではなく、他の不動産と同様に相続財産としての承継ですから、登記手続も他の不動産と異なりません。
もう一つは、個人墓や共同所有の墓地を相続した場合です。この場合、お墓の所有者がお墓の敷地の所有者(共有者)のため、相続した土地について登記手続が必要となります。
この場合の登記手続は、相続財産の登記手続とは異なり、民法897条による祭祀財産の承継を原因とする登記手続となります。
墓地の相続登記に必要な申請書
墓地を相続した場合の申請書ですが、相続財産として墓地を相続した場合には、遺産分割協議書を添えて相続を原因とする所有権移転登記手続をすることになります。
他方、個人墓や共同所有の墓地を相続した場合など祭祀財産の承継として墓地を相続した場合には、祭祀承継者が相続権利者、他の相続人が相続義務者となって、「〇年〇月〇日民法第897条による承継」を登記原因として登記申請を行います。
この場合、祭祀承継者であることを証する書類として、被相続人による指定書や相続人全員が慣習に基づき祭祀承継者を決定したという書面、あるいは家庭裁判所の審判書を添付します。
なお、相続財産としての墓地の相続なのか、祭祀財産としての墓地の承継なのか、法務局の担当者が把握することは困難です。
そのため、実務上は、不動産登記簿の地目が墓地の土地については、実態にかかわらず、上記のいずれの方法による申請であっても受理される運用となっています。
地目が墓地なら相続登記の際に登録免許税は非課税
不動産を相続し、その登記をする場合、不動産価格に応じた登録免許税を納める必要があります。
もっとも、地目が墓地の土地については、登録免許税は非課税とされています(登録免許税法第5条10号)。
まとめ
以上、墓地の相続について基礎から対策まで専門弁護士が網羅的に解説いたしました。
お墓、先祖の供養に関する人々の考え方は、年々変化してきています。それに伴ってか、お墓の承継をめぐる親族間やお寺、墓地管理者とのトラブルは増加傾向にあります。
お墓の安定した、適切な承継のために事前の対策を講じたい、お墓の承継でトラブルになったという場合には、お墓の専門弁護士に一度ご相談ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。