墓じまいのトラブルについて専門弁護士が解説
最終更新日: 2022年10月13日
墓じまいでトラブルになることがある?
墓じまいでトラブルになったらどうすればいいの?
墓じまいのトラブルを避けるためには?
ここ数年、墓じまいという言葉の認知度が高まっているように、墓じまいの件数は急増しています。それに伴い、トラブルを見聞きすることも増えいますので、ご自身が墓じまいをする際に、何らかのトラブルに巻き込まれないかと不安に思うことも無理はありません。
今回は墓じまいの際にどのようなトラブルがあるのか、またトラブルに対する対処法について、お寺、お墓の専門弁護士が解説します。
墓じまいに関する親族とのトラブル
お墓にお参りをする親族は一人ではありません。そのため、墓じまいをする際に親族で意見が対立しトラブルになっているというご相談はよくあります。
ここではそのような親族とのトラブルとその解決方法についてみていきたいと思います。
- 墓を壊すことへの反対
- 遠方へ行ってしまうことへの反対
- 費用負担への反対
墓を壊すことへの反対
墓地に使用者、承継者として届けられるのは遺族のうち祭祀(さいし)承継者は一人だけですが、納骨された先祖に関わる親族は一人だけではありません。
そして、供養に関する考え方は人によって様々です。
そのため、祭祀承継者が墓じまいを決めた場合に他の親族から反対意見が出ることはしばしばあります。
墓じまいをする理由が、子供がおらずお墓を継ぐ人がいないということや、管理費やお布施などの金銭的な負担にある場合には、反対する親族に墓地使用者を交代してもらうことを相談することが考えられます。
通常、お寺は墓地規則でお墓を承継できる親族の範囲を制限していますが、無縁墓になる可能性がありますので、例外を認めてくれる余地はあるでしょう。
反対する親族が墓地使用者になることを拒否し、かつ親族のために引き続き管理することを求めてくるような場合には、祭祀承継者の権限で墓じまいを強行することも考えられます。
お墓に関して管理、処分する権限は遺族のうち、祭祀承継者(民法第897条)にあるのです。
遠方へ行ってしまうことへの反対
都市部に居住しており、田舎にあるお墓のお参りや管理が十分にできないことを理由に、墓じまいをして居住地の近郊にお墓を改葬するケースはよくあります。
この場合、田舎に住む親族は都市部までお墓参りに行かなければならなくなりますので、反対されることがあります。
この場合もまずは話し合いですが、どうしても同意が得られないときは、祭祀承継者の権限で墓じまいを強行することも考えられます。
あるいは、納骨された遺骨を分骨して、田舎のお墓はそのままに、都市部に設けたお墓に分骨された遺骨を納骨するという方法も考えられます。
費用負担への反対
墓じまいをすることに親族に異存はない場合にも、誰がその費用を負担するのかについて揉めることがあります。
遠方へ墓じまいをすることに反対した親族の意向をのんで、近場の永代供養墓に改葬したのに、その親族が費用負担はしてくれないというご相談を受けたこともあります。
墓じまいには数十万円の費用がかかります。高額な費用ですから、できれば自分は負担したくないという思いもあるでしょう。親族が皆お参りをするお墓なのだから、皆で費用を負担すべきだという考えもあるでしょう。
しかし、法的には、祭祀承継者に費用の負担義務がありますので、他の親族に法的に負担を求めることができないのです。墓じまいをする前に話し合いによって、費用負担について取り決めをしておくべきです。
墓じまいに関するお寺とのトラブル
お墓が公営墓地ではなく寺院墓地にある場合、墓じまいにあたり、墓地管理者である住職とトラブルになるケースはよくあります。
ここではどのようなトラブルがあるのか、その対応についてもみていきたいと思います。
- 高額な離檀料の請求
- 遺骨を引き渡さない
- 未納管理費等を遡って請求
高額な離檀料の請求
しばしばメディアで見聞する問題に、墓じまいの際に住職から200万円、300万円の離檀料を求められたというものがあります。
この離檀料のトラブルについては、後ほど詳しくご説明します。
遺骨を引き渡さない
高額な離檀料の請求はないけれども、墓じまい、離檀に反対して住職が墓じまいに協力をしてくれず、遺骨の引き渡しを拒否するというトラブルもしばしば見聞します。
この点も、高額な離檀料と同様の妨害行為です。後ほど詳しくご説明します。
未納管理費等を遡って請求
墓じまいをするケースの中には、長年管理費の支払いもなくお墓が放置されており、お寺から墓じまいを求められるというケースはよくあります。
この場合、高額な離檀料の請求や、遺骨の引渡拒否はなくとも、滞納していた数年分の管理費を一括で支払うよう求められることはよくあります。
墓地管理費は支払期日から5年間を経過することで消滅時効にかかりますので、法的には、それ以前まで遡って支払う義務はありません。
もっとも、後腐れなく墓じまいをするためには、消滅時効にかかわらず、滞納していた管理費を支払うことも検討されてよいでしょう。
墓じまいの離檀料に関するトラブル
近年墓じまいが増加していることにともない、墓じまいの際にお寺とトラブルになるケースが非常に増えています。
その多くの場合が、離檀料にかかわるトラブルです。ここでは、離檀料に関して基礎からご説明します。
- 離檀料とは
- 離檀料の相場
- 離檀料を支払う法的義務はある?
- 高額な離檀料を請求された場合の対応
- 高額な離檀料を請求した寺院の法的責任
- 埋蔵証明書に代わる書面の提出
- なぜお寺とのトラブルが多発しているのか?
離檀料とは
離檀料とは、寺院墓地のお墓を墓じまいし、お寺との檀家関係を解消する場合に、檀家からお寺に支払うお布施のことをいいます。お世話になったお寺に対する謝礼のようなものと考えてよいでしょう。
離檀料の相場
離檀料の金額は、お寺によって異なりますし、檀信徒における立場やお寺との付き合いの長さなどによっても金額は異なることがあります。離檀料の相場は、概ね10万円から30万円ほどです。
離檀料を支払う法的義務はある?
墓地使用契約や寺院墓地規則に離檀料の定めがない限り、離檀料について明確な法的根拠はありません。そして、離檀料について契約や規則に記載されていることはほとんどありません。
そのため、原則として、離檀料を支払う法的義務はありません。
もっとも、この点については判例が未だありません。そのため、裁判になった場合に、相場の金額の離檀料であれば、慣習や条理などを法的根拠として、その支払いを命じられる可能性は否定できません。
高額な離檀料を請求された場合の対応
墓じまいは墓地使用者が自由に行えるものです。
ところが、離檀を申し入れたところお寺から高額な離檀料を請求され、それを納めない限り埋蔵証明書は交付しない、遺骨を引き渡さないという対応をとられるというケースがしばしばあります。
埋蔵証明書がなければ原則として改葬はできませんし、改葬はせず手元供養をする場合も遺骨を引き渡してもらえなければそれもできません。
住職と話し合った結果、納得のいく離檀料の金額に落ち着いたとしても、指定石材店がお寺の意向を組んで相場よりも高額なお墓の解体費用を請求してくることがあります。
このような妨害にあった場合に、住職に事前に通知することなく、自身で依頼した石材店に工事を強行してもらうことはできるのでしょうか。
墓地使用者には墓地の通行権がありますし、墓石や焼骨の所有権は墓地使用者にあります。
そのため、このような強硬手段をとったとしても基本的に違法行為にはなりませんが、工事の際に寺院側とトラブルが発生する可能性がありますのでお勧めはできません。
適正な手続きで対応するには、弁護士に依頼をして交渉をする、それでも寺院が応じない場合には、遺骨返還請求訴訟を提起することが必要となります。
高額な離檀料を請求した寺院の法的責任
墓地使用者には信教の自由があります。
高額な離檀料を求め、埋蔵証明書を交付しない、遺骨を引き渡さないという対応は、墓地使用者の信教の自由を侵害する不法行為となり、損害賠償責任が発生しかねませんのでお寺としても注意が必要です。
埋蔵証明書に代わる書面の提出
改葬するときは、原則として、お寺から埋蔵証明書を交付してもらう必要があります。
もっとも、お寺がそれに応じてくれない場合には、埋蔵証明書に代わって、「市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面」(墓埋法規則第2条2項1号)を提出することが認められています。
どのような書面が必要になるかは市町村によって異なりますので、市区町村役場の担当部署に確認しましょう。
ただし、このように法律上、埋蔵証明書に代わる書面の提出が認められており、また行政の通達でも同様に解釈されているにもかかわらず(昭和30.2.28衛環第22号)、役所の担当者があくまで埋蔵証明書を提出するよう求めるケースがしばしばあります。
なぜお寺とのトラブルが多発しているのか?
墓じまいをしようとしたら、お寺から高額な離檀料を請求された、遺骨を引き渡してくれないといったトラブルが近年、多発しています。
昨今、お寺の経済事情が厳しいので、お寺が収入源を失う墓じまいに抵抗しているというような論調も見られます。
確かに、そのような考えも全くないとは言い切れませんが、このようなトラブルの主たる原因は、お寺と檀信徒との付き合いに関する考え方のギャップにあります。
若い世代は、お寺との付き合いを大切にしてきた祖父母の世代とは信仰心、価値観が大きく異なります。そのため、お盆にもお寺に顔を出さず、お墓は放置され、管理費も滞納されているというケースが多々あります。
長年お寺に足を運ばず、墓地の管理費も滞納が続いていたところ、突如、墓じまいをしたいと言われれば、お寺としてもそんな非礼なことはないだろうと思うのは当然でしょう。
また、代々、先祖を供養してきたお寺に対して何ら感謝の気持ちを示すことなく、マンションの解約のようにドライな対応をされればお寺としても快くはないでしょう。
お寺と檀信徒、いずれが他方の考え方に歩み寄るべきなのかは一概には言えません。
弁護士の立場から言えることは、無用なトラブルを回避するために、檀信徒としては、お寺に理解を示し、長年、先祖を供養してくれたことに対する感謝を示しつつ、墓じまいのお話を進めるべきでしょう。
墓じまいに関する石材店とのトラブル
最後に、親族やお寺とのトラブルほど多くはありませんが、石材店に関わるトラブルに巻き込まれてしまうこともあります。
以下、石材店に関わるトラブルについてみていきましょう。
高額な工事費の請求
墓じまいのためにお墓の解体、撤去を依頼する石材店は自分で探して依頼する場合もありますが、寺院墓地の場合にはお寺の指定石材店に依頼することになるのが通常です。
指定石材店制度は独占禁止法違反なのではないかという意見もありますが、多数の石材店があり、中には粗悪な業者もありますので、墓地の適正管理のために石材店を指定することに合理性があります。
先ほども触れましたが、墓じまいをする場合、お寺と指定石材店が結託して、相場よりも高額な工事費を請求し、代金の一部をお寺がキックバックとして受け取る事例があります。
このような場合、他社の費用感を説明して減額を求める、それに応じてくれないときは消費者センターや弁護士に相談をしましょう。
ずさんな工事や不法投棄
石材店は全国に多数あり、中には粗悪な業者も存在します。
指定石材店に依頼をする場合にはこのようなトラブルはないでしょうが、自分で見つけて依頼をした石材店の場合には、工事が雑で他の墓所や墓地の共用部に損害を与えてしまうことがあります。
また、搬出した墓石を産業廃棄物として処理せず山中に不法投棄するケースもみられます。
もちろん、これらのトラブルについて墓地使用者が関わっていないのであれば法的に責任を問われることはありませんが、面倒な問題に巻き込まれてしまう可能性があります。
そこで、自分で石材店を選定するときは、価格だけを基準とはせずに、優良石材店の指定の有無などを確認するようにしましょう。
まとめ
以上、墓じまいのトラブルについて解説しました。
典型的な墓じまいのトラブルについてご紹介しましたが、実際の事例はこれらに限られず、墓地管理者、遺族、納骨されている親族によって多様なトラブルが発生しています。
このような多様なトラブルに対応するためには、お墓に関する専門的な知識、経験が必要となります。もし墓じまいのトラブルに遭ってしまったときは、お墓に関する専門弁護士にご相談ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。ご不明な点があるときやもっと詳しく知りたいときは、下にある「LINEで無料相談」のボタンを押していただき、メッセージをお送りください。弁護士が無料でご相談をお受けします。