占有離脱物横領罪とは?窃盗罪との違い・時効・刑罰を弁護士が解説
最終更新日: 2026年06月12日

本コラムでは、窃盗罪と窃盗罪によく似た占有離脱物横領罪について、両罪の相違点を簡単にご説明したうえで、両罪の公訴時効についてご説明いたします。
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窃盗罪と占有離脱物横領罪の違い
窃盗罪とは
窃盗罪は、他人の財物を窃取した場合に成立するとされており、刑法では以下のように規定されています。
第235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
窃盗罪の典型的な例としては、スリや空き巣、万引き事件等、被害者の財物を奪う行為が挙げられます。なお、被害者の物を奪う行為のうち、暴力を伴ういわゆる強奪事件などは、窃盗罪ではなく強盗罪の成否が問題となる場合があります。
占有離脱物横領罪とは
これに対し、占有離脱物横領罪は遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した場合に成立するとされており、刑法では以下のように規定されています。
第254条
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。
占有離脱物横領罪の典型的な例としては、被害者が放置又は置き忘れたものを取得して犯人(加害者)のものにしてしまう行為など、俗に置き引きといわれる行為などが挙げられます。
窃盗罪と占有離脱物横領罪の相違点
ア 行為態様
窃盗罪と占有離脱物横領罪には、被害者の物を自分のものにしてしまうという点で共通点がありますが両者には明確な区別があります。
それは窃盗罪が被害者の占有する財物を対象とするのに対し、占有離脱物横領罪はその名のとおり、被害者の占有を離脱した、すなわち被害者の占有を離れた財物をその対象としているという点です。
占有とは、財物に対する事実上の支配をいい、当該財物を占有している者を占有者といいます。
現実に所持している物や自宅に置いてある物に関しては問題なく所有者の占有が及ぶことになる一方、所有者が置き忘れて長時間が経過したもの、例えば、長期間にわたり公道に放置された自転車等については、所有者の占有が失われているのが通常です。
もっとも、所有者が置き忘れた直後の財物などについては、経過した時間や移動した距離、置き忘れた場所の性質など様々な要素から占有の有無が判断されることになり、その判断には困難が伴います。
イ 量刑
窃盗罪及び占有離脱物横領罪は、他人の財物を自分の物にするという点では共通するものの、その刑事罰の重さには大きな差があります。
窃盗罪が10年以下の懲役又は50万円以下の罰金としているのに対し、占有離脱物横領罪は1年以下の懲役又は10万円以下の罰金と、窃盗罪に比べて軽い刑罰が規定されています。量刑は被害額や犯行態様などを考慮して法定刑の範囲内で決められることになります。
なお、刑事事件とは別に、窃盗罪及び占有離脱物横領罪の被害者には、民事上、犯罪により生じた被害を回復するための損害賠償請求権という権利があるため、窃盗の犯人が被害者から民事裁判を提起され、損害賠償を請求される可能性もあります。
窃盗罪及び占有離脱物横領罪の公訴時効とは
公訴時効とは
民事事件及び刑事事件の双方に時効という概念がありますが、公訴時効とはそのうちの刑事事件、とりわけ刑事裁判において用いられる用語です。
公訴時効とは、検察官がある犯罪に対し、公訴を提起(裁判にかけること)することができる時間的な限界を意味します。
公訴時効は、刑事訴訟法という法律によって犯罪ごとに定められており、同期間を経過することで、当該犯罪についての公訴時効が完成することとなります。
公訴時効が完成した場合、検察官は当該犯罪について公訴を提起することができなくなります。
すなわち、公訴時効が完成した犯罪については、その容疑者が刑罰に処されることはなくなるということです。
窃盗罪の公訴時効
公訴時効については刑事訴訟法第250条に規定があります。
窃盗罪の刑罰は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金ですから、これを公訴時効について規定した刑事訴訟法第250条にあてはめると、窃盗罪の公訴時効は、7年となります。
刑事訴訟法第250条2項
時効は、人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによって完成する。
長期15年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については7年
なお、公訴時効は当該犯罪が終了したときから進行しますので、窃盗罪の場合には、他人の財物を盗んだ時点から、窃盗罪の公訴時効が計算されることになります。
すなわち、窃盗行為を行った時点から7年が経過した場合には、当該窃盗行為については公訴時効が完成していることから、検察官は当該窃盗行為について公訴を提起することはできません。
したがって、その結果として当該窃盗行為については刑罰に処せられることはなくなります。
なお、問題となった窃盗行為が初犯ではなく再犯の場合、もしくは、常習犯の場合には、窃盗罪の量刑が拡大される可能性がありますので、それに伴って、公訴時効も7年以上の長期となる可能性があります。
占有離脱物横領罪の公訴時効
一方、占有離脱物横領罪の公訴時効は何年でしょうか。
占有離脱物横領罪の刑罰は1年以下の懲役又は10万円以下の罰金とされています。
これを、公訴事実について規定した刑事訴訟法第250条にあてはめると、窃盗罪の公訴時効は以下のとおり3年となります。
刑事訴訟法第250条2項
時効は、人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによって完成する。
長期5年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については3年
占有離脱物横領罪の場合にも、他人の財物を取得した時点から公訴時効が計算されますので、当該行為を行った時点から3年が経過した場合には公訴時効が完成することになります。
したがって、検察官は当該行為について公訴を提起することはできず、犯人は当該犯罪について刑罰に処せられることはなくなります。
こちらの記事で、窃盗・万引きの刑罰・逮捕の流れ・前科を総合解説しています。併せてご覧ください。
最後に
以上、本コラムでは窃盗罪と占有離脱物横領罪の相違点、公訴時効についてご説明いたしました。
両罪のうち、特に窃盗罪は事件当時に逮捕されていなくとも、警察による被疑者の捜査が進むことで、後日に逮捕される可能性が高い犯罪でもあります。
しかし、窃盗罪や占有離脱物横領罪は、初動対応によっては逮捕を避けたり、不起訴や執行猶予の獲得が十分に見込める犯罪でもあります。
したがって、過去に犯してしまった窃盗罪や占有離脱物横領罪に当たる行為について、逮捕される可能性はあるのか?示談は出来るのか?どのような責任を負うのか?など、ご心配な点やご不安な点がございましたら、ぜひ刑事事件の経験が豊富な弁護士にお早めにご相談ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。
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