盗撮で懲戒処分はどうなる?会社ごとの違い・影響・回避策を弁護士が解説

最終更新日: 2025年04月01日

盗撮で懲戒処分はどうなる?会社ごとの違い・影響・回避策を弁護士が解説

  • 盗撮で逮捕されてしまった。会社に知られたらクビになるかもしれない。
  • 公務員だが盗撮で逮捕された。懲戒免職になるのだろうか?
  • 盗撮で逮捕され失職するのは嫌だ。何とか穏便に解決したい。

盗撮は他人に暴力を振るったり、金品を奪ったりする行為ではありませんが、許可なく他人の下着や裸体を撮影し、自分の欲望を満たす犯罪行為です。

盗撮が勤務先に発覚すれば、懲戒免職になることもあるでしょう。

盗撮問題を穏便に解決し、懲戒処分を避けるためには迅速な対応が必要です。

そこで今回は、数多くの刑事事件に携わってきた弁護士が、盗撮による懲戒処分の内容、懲戒処分を受けないための対応方法等を詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談できます。

  • 盗撮事件を起こした場合、降格・降職や懲戒解雇等の懲戒処分を受ける可能性がある
  • 責任の重い職にあるほど、厳しい懲戒処分を受ける傾向がある
  • 盗撮による懲戒処分を避けたいときは、弁護士と相談しよう

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

盗撮による懲戒処分とは

盗撮で逮捕された従業員をどのように処分するかは、雇用している会社次第です。会社の就業規則に従い、懲戒処分が決められるでしょう。

懲戒処分とは、社内秩序維持等のために、就業規則違反などの問題を起こした従業員に対して下す制裁です。

懲戒処分の種類は主に次の7つがあります。

  • 戒告:口頭での注意が一般的
  • 譴責(けんせき):始末書を提出させ厳重注意するのが一般的
  • 減給:給与を一定額減額する処分
  • 出勤停止:一定期間従業員の就労を禁止する処分
  • 降格、降職:資格・役職を引き下げる処分
  • 諭旨解雇(ゆしかいこ):会社が従業員に退職届を出すよう勧告し、一定期間に提出しなければ懲戒解雇する処分
  • 懲戒解雇:従業員を失職させる最も重い処分

盗撮の常習犯で悪質性が高いときや、マスメディアから盗撮犯として実名報道されたときは、懲戒解雇になる可能性もあるでしょう。

盗撮の懲戒処分は勤務先によって異なる

盗撮事件で逮捕・起訴された場合、従業員をどのように処分するかは、会社が就業規則に従って判断することになります。

民間会社

民間の場合、従業員が盗撮事件を起こして逮捕されたとしても、いきなり懲戒処分を行うことは少ないでしょう。

逮捕されてもすぐ釈放される場合もあるため、起訴されるまでは処分を決めない可能性があります。

会社は通常、従業員が盗撮で逮捕された場合、まず事実関係の調査をします。
たとえば、次の人から事情聴取をするでしょう。

  • 逮捕された従業員本人
  • 従業員についた弁護士
  • 他の従業員や上司・関係者

会社側は従業員本人の処分を決定する前に、弁明の機会を与えるでしょう。就業規則に弁明の機会の付与が規定されている場合は必須要件です。
弁明の機会は面談の他、書面になる可能性もあります。

会社側からの処分は、口頭ではなく「懲戒処分決定通知書」等の書面で通知されるのが一般的です。

処分に不服があるときは、会社を被告として訴訟を提起できます。

公務員

公務員は、それぞれに適用される法律に従って懲戒処分を受けることになるでしょう。

たとえば、国家公務員や地方公務員法の場合、盗撮行為は国家公務員法や地方公務員法に規程する「私生活上の非行」にあてはまるため、懲戒処分の対象になります(国家公務員法第82条、地方公務員法第29条)。

禁錮(2025年6月1日から拘禁刑。以下同じ)以上の刑が科されると、基本的に失職となるでしょう(国家公務員法第76条・38条、地方公務員法第28条4項・16条)。

盗撮に関する罪で、執行猶予付き判決を受けたとしても同様です。懲戒免職となれば、退職金や失業給付は受け取れません。

出典:国家公務員法|e-GOV法令検索

出典:地方公務員法|e-GOV法令検索

医師

医師が盗撮事件を起こした場合、医師資格に関する行政処分を受ける可能性があります。

行政処分の内容は、厚生労働大臣が医道審議会の意見に基づき決定することになるでしょう。

医師法によれば、医師が罰金以上の刑に処せられ、医師として品位を損するような行為があった場合は、厚生労働大臣は次の処分をできるとされています(医師法第4条、第7条)。

  • 戒告
  • 3年以内の医業の停止
  • 免許の取消し

つまり、盗撮事件を起こせば医師免許の取消しもあり得るのです(執行猶予付き判決の場合も同様)。

また、民間の医療法人で医療に従事している医師は、病院側から懲戒処分を受ける可能性もあります。

出典:医師法|e-GOV法令検索

教師

教師が盗撮事件を起こした場合、教員免許を剥奪される可能性があります。

教員が盗撮行為で有罪判決を受け、禁錮(2025年6月1日から拘禁刑。以下同じ。)以上の刑に処されると、教員免許を剥奪されます(教育職員免許法第5条1項3号、第10条1項)。

学校教育法も、禁錮(拘禁刑)以上の刑を受けた場合、教職に就けないと明記しており(学校教育法第9条1号)、たとえ執行猶予付き判決を受けても同様です。

出典:教育職員免許法|e-GOV法令検索

出典:学校教育法|e-GOV法令検索

盗撮による懲戒処分の影響

盗撮で懲戒処分を受けた場合、盗撮した本人に深刻な影響が生じる可能性があります。

懲戒解雇(免職)は免れたとしても、結局職場に居づらくなり、退職せざるを得なくなる事態もあり得るでしょう。

評価が下がる

盗撮という恥ずかしい行為で有罪とされ、会社から懲戒処分を受けた場合、社内の評価は大きく低下するでしょう。

盗撮の刑罰は罰金刑で済んだとしても、懲戒処分を受けた事実はしっかり記録され、人事考課・査定に影響を及ぼす可能性が高いです。

自分がこれまで社内で培ってきた信用は、ほぼ失墜してしまうかもしれません。

減給となる

盗撮の懲戒処分として減給となる可能性もあります。

減給になると本人や家族の生活は、困窮してしまうかもしれません。

ただし、減給に関しては、次のような制限があります(労働基準法第91条)。

  • 1回の減額分が平均賃金の1日分の半額を超えてはいけない
  • 減額総額が一賃金支払期における賃金の総額の1/10を超えてはならない

つまり、一定期間まったく賃金を支払わない処分は違法です。違法な減給処分が行われた場合は、会社を相手に訴訟を提起できます。

出典:労働基準法|e-GOV法令検索

公表される

盗撮行為により従業員が懲戒処分を受けたという事実は、社内に公表される可能性があります。

懲戒処分の事実の公表については特に制限がなく、文書掲示、書面の回覧や社内報への記載、インターネット掲示板に記載されても違法とはいえません。

ただし、実名が公表されており、社外の人たちが容易に閲覧できる状況の場合、本人は名誉毀損(不法行為)を理由に訴訟を提起できます。

従業員本人が盗撮で懲戒処分を受けたとしても、報復・見せしめ目的の実名公表は不当で、会社を相手に損害賠償請求もできます。

社内に居づらくなる

盗撮行為により懲戒処分を受ければ、上司や同僚・部下の冷ややかな目線にさらされ、社内に居づらくなるでしょう。

本人の前では盗撮や懲戒処分の件に触れなくても、陰で笑いものにしているかもしれません。

同じ職場の人から疎外され、孤立して居づらくなることはあり得ます。

転職活動の支障となる

盗撮行為を理由に懲戒解雇された場合、転職活動にも大きな支障が出かねません。

たとえば、懲戒解雇の事実が転職希望の会社に発覚すると、その会社からも、企業の秩序を乱した好ましくない人物と判断される可能性があり、転職は難しくなってしまうでしょう。

また、盗撮により罰金刑や執行猶予付き判決を受けた場合でも、前科はついてします。

重い刑罰や懲戒解雇されなくても、会社の評判や信用を低下させかねない労働者を雇うことは、どの会社も避けたいところでしょう。

盗撮による懲戒処分を回避するための対策

懲戒処分を避けたいのであれば、逮捕を回避するための対応策を講じる必要があります。

盗撮行為を疑われており、逮捕されそうなときは、まず弁護士と相談しましょう。

弁護士への相談

盗撮行為で現行犯逮捕されなくとも、後日警察から呼び出しを受けることや、令状を持った警察官が自宅を訪れ逮捕(通常逮捕)されることがあります。

前もって弁護士と相談すれば、次のようなアドバイスが得られます。

  • 相談者の行為が盗撮に関する罪(撮影罪)となるかどうか
  • 有罪の場合、どのくらいの刑になるか
  • 懲戒処分を避けるコツ
  • 盗撮の被害者が誰かわかる場合の対応
  • 示談を行う必要性
  • 逮捕されたときの対応 等

逮捕前に弁護士を代理人に選任しておけば、自首の付き添い(自首同行)や、警察・検察への対応・被害者との示談交渉も任せられます。

自首による逮捕回避

弁護士は、逮捕される前に警察署へ自首することをすすめることがあります。

自首は盗撮の事実や盗撮犯が特定されていない段階で、捜査機関に犯行を申告する方法です。

自首が成立すれば、盗撮した本人に有利な処分や対応を得られる可能性があります。

  • 微罪処分(検察に送致せず、警察限りで処理を終わらせる処分)となる
  • 逮捕されずに帰宅を許され、自宅で生活しながら捜査を受けられる(在宅事件となる)
  • 被害者が示談に応じやすくなる
  • 送検されても不起訴処分を得られやすい

自首同行という形で弁護士が付き添えば、盗撮した本人が深く反省している旨や、逃亡・証拠隠滅のおそれはないと主張し、逮捕しないように警察を説得できます。

逮捕は、住所不定の場合や、逃亡・証拠隠滅のおそれがある場合にとられる措置です。

自首すれば、警察は逃亡・証拠隠滅のおそれがないとして帰宅を許す可能性が出てきます。

帰宅が許されれば以後は在宅事件として扱われ、検察へ書類送致になるでしょう。この場合、逮捕されずに捜査が進められるので、会社に気付かれない可能性があります。

示談

被害者との示談を成功させましょう。

盗撮の被害者とは面識がない場合でも被害届が提出されていれば、連絡がとれる可能性はあります。

弁護士を通じて、捜査機関に被害者と示談を話し合いたいと伝えましょう。捜査機関が被害者の意向確認し、被害者が応じれば示談交渉を進められます。

示談は、弁護士と被害者が交渉し、次のような内容をとりきめるものです。

  • 加害者は被害者に盗撮行為を誠心誠意謝罪する
  • 示談金(金額、支払方法・期限)の決定
  • 被害者は被害届を取り下げる
  • 被害者が検察官に加害者の寛大な処分を求める:嘆願書の提出
  • 加害者と被害者は以後、今回の問題を蒸し返さない

示談に合意できたときは示談書を2通作成し、加害者・被害者が1通ずつ大切に保管しておきましょう。

不起訴処分獲得

弁護士が弁護活動を続ければ、不起訴処分を得られる可能性があります。

盗撮に関する罪(撮影罪)は非親告罪のため、盗撮した本人を不起訴にするかどうかは検察官次第です。

そのため、弁護士は次の事実を粘り強く主張していきます。

  • 本人は犯した罪を真摯に反省している
  • 捜査に協力的だった
  • すでに被害者と示談が成立している
  • 常習性はない
  • 盗撮した画像動画を、不特定多数の視聴者に提供していない

検察官が上記のような事情等を考慮し、起訴猶予処分が相当であると判断する可能性があります。

盗撮による懲戒処分を避けたい方は春田法律事務所へ

今回は刑事事件の示談交渉に尽力してきた弁護士が、盗撮で懲戒処分を受けないための対応方法等について詳しく解説しました。

春田法律事務所は、刑事事件の示談交渉や弁護活動に力を入れている法律事務所です。盗撮で懲戒処分を受けるのではと不安な方は、対応方法を弁護士とよく話し合いましょう。

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