慰謝料請求でやってはいけないこととは?双方の立場と重要な判断基準・対策を解説
2025年01月30日
- 配偶者から慰謝料を請求されている。夫婦の話し合いだから取り合わなくてもよいのでは?
- 配偶者が慰謝料請求を無視している。もう我慢の限界だが、どうすればよい?
- 慰謝料請求への対応を誰かに相談したい。頼りになる専門家はいないだろうか?
夫婦の一方が離婚の原因をつくった、家族を裏切るような行為があったというときは、他方に慰謝料を請求できる場合があります。
しかし、請求された側が無視したり、請求した側が焦ってトラブルを起こしたりすると、夫婦関係が深刻な事態となるかもしれません。
そこで今回は、夫婦間の問題解決に携わってきた専門弁護士が、慰謝料請求された側・される側、双方がやってはいけない行動、弁護士に相談するメリット等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 慰謝料請求された側は、無視や感情的になるのではなく、理性的に解決を図るよう努力する
- 慰謝料請求した側は、焦らず、粘り強く相手と交渉を継続する
- 慰謝料請求された側も請求した側も、弁護士とよく相談した方がよい
慰謝料請求された側がやってはいけないこと
慰謝料請求された側は、慰謝料請求に心当たりがあるのであれば、無視せずに請求した側と交渉する姿勢が大切です。
慰謝料請求に心当たりがないときは、しっかりと反論する必要があります。
請求を無視する
慰謝料請求を無視すると、請求した方は損害賠償(慰謝料)請求調停や裁判を進めていく可能性があります。
慰謝料請求は、通常まず「内容証明郵便」による通知が送付されてくるでしょう。
内容証明郵便には請求を強制する効果はありませんが、「慰謝料請求を確かに行った」という証明となります。
請求した方は調停や裁判で、内容証明郵便の通知を証拠の1つとして提出可能です。そのため、慰謝料請求を無視した場合、立場が不利になる可能性もあります。
そのまま支払いに応じる
慰謝料請求をされ、慌てて請求金額を支払うことは避けましょう。
なぜなら、請求をした側の慰謝料額は不当に高いケースもあるからです。
夫婦の一方の不倫を理由に、相手に慰謝料請求を行う場合の相場は次の通りです。
- 離婚をしない場合:数十~100万円
- 離婚をする場合:200~300万円
相場を大幅に超えるような慰謝料を請求されたときは、冷静に話し合い相場の範囲まで減額を求めた方がよいでしょう。
感情的な対応
慰謝料を請求されても、冷静に相手と交渉し問題の解決を目指しましょう。
慰謝料請求した側に対し、感情的になると話し合いが進まなくなります。冷静に相手へ次のような提案を行いましょう。
- 慰謝料を請求する証拠の提示
- 請求した慰謝料に根拠はあるのか
- 弁護士を立てて交渉したい旨
慰謝料を請求された側が理性的に対応する姿勢を示せば、請求した相手は慰謝料請求の再考や、金額の修正を行う可能性があります。
脅しに屈する
慰謝料を請求した側の脅しや威圧に屈してはいけません。
安易に慰謝料の支払いに応じてしまうと、不当に高い慰謝料を支払わされる場合あります。
まずは慰謝料を請求した側の通知の内容、電話での発言等を記録し、弁護士に相談しましょう。弁護士は状況に応じた的確なアドバイスをします。
慰謝料を請求した側に恐怖を感じるときは、弁護士に交渉役を任せられます。
弁護士が交渉役となれば、慰謝料を請求した側は動揺し、脅しや威圧をやめる可能性も高いです。
慰謝料請求する側がやってはいけないこと
配偶者が不倫をしていた・DVやモラハラを受けた等の理由で、慰謝料請求を検討している場合は、請求方法に注意しなければいけません。
慰謝料を請求する側が対応の仕方を誤ると、刑事責任を追及される可能性もあります。
当人以外への請求
慰謝料の問題はあくまでも夫婦で解決すべきものです。原因をつくった相手の代わりにその親や兄弟に請求することはできません。
慰謝料請求がうまくいかなくても、夫婦で協議→調停→裁判という流れで解決を目指しましょう。
慰謝料請求が行き詰まった場合は、法律の専門家である弁護士に代理人を依頼し、相手との交渉や調停・裁判を任せた方がよいです。
第三者への連絡
配偶者が不倫、DVやモラハラを行っていたとしても、報復的な意味で配偶者の親族や勤務先、さらにはご近所に、その事実を触れまわるのはやめましょう。
不倫・DVやモラハラを行う配偶者に対し、どのような対応をとればよいかわからないときに、自分の親や兄弟にアドバイスを求めることは、もちろん差し支えありません。
暴言や脅迫
配偶者の不倫が発覚したときは、ショックと憤りで我を忘れることもあるかもしれません。しかし、激しく配偶者を責め立てるような行動は避けましょう。
配偶者は暴言・脅迫と受け取り、一切話を聞かなくなるかもしれません。慰謝料を請求しても無視される可能性があります。
配偶者に強い反感を抱いても、冷静に慰謝料請求の交渉や手続きを進めましょう。
暴力
配偶者の不倫やモラハラに逆上し、暴力を振るってはいけません。
配偶者に夫婦関係を悪化させるような行為があったとしても、暴力を振るってしまうと、自分が刑事責任を問われてしまいます。
怒りに任せて、配偶者を殴ったり蹴ったりすれば、次のような刑に処される可能性もあるのです。
- 配偶者がケガをしていない→暴行罪(刑法第208条):2年以下の懲役(2025年6月1日以降「拘禁刑」)若しくは30万円以下の罰金、または拘留若しくは科料
- 配偶者がケガをした→傷害罪(刑法第204条):15年以下の懲役(2025年6月1日以降「拘禁刑」)または50万円以下の罰金
配偶者に激しい怒りを覚えても、慰謝料請求という形で責任を追及するようにしましょう。
慰謝料請求でやってはいけないことか否かの重要な判断基準
配偶者の不倫が原因で慰謝料を請求しても、不倫当時の夫婦関係や不倫の内容によっては認められない場合があります。
婚姻関係の破綻時期
不倫当時、すでに夫婦関係が破綻していた場合、慰謝料請求はできません。
慰謝料は配偶者が不倫をしたために夫婦関係が破綻したという理由で請求するものです。
そのため、「夫婦関係が修復不能となった事態をきっかけに、不倫をした」と配偶者が主張した場合、慰謝料請求が認められない可能性があります。
調停や裁判で慰謝料請求が認められるためには、配偶者の主張に反論できる証拠の提示が必要です。
肉体関係の有無
不倫をしていても、配偶者と不倫相手との肉体関係の証拠がつかめない場合は要注意です。
慰謝料を請求をしても主張が認められないか、認められてもわずかな慰謝料しか得られない可能性があります。
特に裁判では、裁判官が被告(配偶者)の不倫や原告(自分)の慰謝料請求を認めるかどうかは、基本的に肉体関係があったか否かで判断されます。
そのため、慰謝料請求を行う側は、次の証拠を収集しておかなければなりません。
- 配偶者の出産、堕胎に関する証明書
- 配偶者と不倫相手の性行為の画像や動画
- 配偶者と不倫相手の性行為が推認できる画像や動画
出産・堕胎に関する証明書は、配偶者側がすでに破棄している可能性もあります。
そのため、現実的に有力な証拠となりそうなものは、性行為または性行為の推認できる画像や動画の撮影です。
ただし、配偶者・不倫相手の不倫現場の撮影は非常に困難なため、探偵に不倫調査を依頼した方がよいでしょう。
強制された
配偶者が脅迫や暴行によって無理やり性的被害を受けた場合は、原則として慰謝料請求は認められません。
ただし、配偶者の意思で性行為を断れる状況であった場合、慰謝料請求が可能となる場合もあります。
配偶者が性行為をした状況について、慎重な判断が必要です。
慰謝料請求でやってはいけないことを確認した後の対策
慰謝料請求を行う側も、請求された側も、冷静に自分の主張や証拠を整理し、交渉や調停・裁判に臨みましょう。
双方とも事前に弁護士と相談し、今後の対策を検討するのもよい方法です。
弁護士への相談
夫婦の問題に強い弁護士と相談すれば、有益なアドバイスが得られます。
弁護士は夫婦の事情をヒアリングしたうえで、次のようなアドバイスを行うでしょう。
- 慰謝料請求を行う側:請求は認められるか、証拠収集は十分か(不十分なら探偵を紹介する可能性もある)、慰謝料請求の流れ・金額の目安・算定方法の説明等
- 慰謝料請求をされる側:請求は拒否できるか、反論できる証拠はあるか、減額交渉の必要性、調停や裁判へ移行したときどのように対応するか等
相談のときに、弁護士を代理人にした方がよいと思ったときは、そのまま委任契約を締結してもよいです。
証拠収集
慰謝料請求を行う側も、請求された側も十分な主張ができるように、証拠を揃えておきましょう。
- 慰謝料請求を行う側:配偶者と不倫相手の性行為または性行為が推認できる画像や動画、メールやLINEによる不倫相手とのやり取りの保存等
- 慰謝料請求をされた側:夫婦関係がすでに破綻している等の反論(例:別居中である等)
調停や裁判では、有力な証拠を集めた方が有利に手続きを進められる可能性が高くなります。
相手との交渉
慰謝料請求は調停・裁判でも行えますが、まずは夫婦で協議するのが一般的です。
慰謝料の他にも、夫婦が離婚するのか・しないのか、離婚するときの条件(財産分与・親権・養育費・面会交流等)も話し合いましょう。
夫婦で取り決めた内容によって、次の契約書を作成します。
- 慰謝料を支払うが離婚しない→和解契約書(和解合意書):不倫を謝罪し2度としないと誓う、慰謝料の金額・支払方法・支払期限、不倫相手との面会禁止、約束を破った場合の法的措置の明記
- 慰謝料を支払い離婚する→離婚協議書(離婚合意書):離婚に合意する旨、財産分与・慰謝料・親権・養育費等の取り決め内容の明記
取り決めた内容を明記する契約書は2通作成し、当事者がそれぞれ1通ずつ大切に保管しましょう。
慰謝料請求でやってはいけないことを弁護士に相談するメリット
慰謝料請求の交渉は、夫婦が感情的となり、主張が激しく対立する等して、解決の見通しが立たなくなる可能性もあります。
事前に弁護士と相談しアドバイスやサポートを受ければ、スピーディに解決を目指せるでしょう。
状況に応じたアドバイス
弁護士は配偶者がどのような行為をしたかに応じて、慰謝料請求についてアドバイスをします。
- DVやモラハラ:夫婦が直接交渉すると、身体的・精神的な負担が大きい点を説明、弁護士を交渉役にするよう提案
- 不倫:慰謝料請求の主張とそれを裏付ける証拠(または反論・証拠)の確認、慰謝料の適正額、弁護士を交渉役にできる点を説明
慰謝料請求をするきっかけとなった配偶者の行為によっては、直接夫婦で交渉しない方がよい場合もあるでしょう。
弁護士は慰謝料請求によるトラブル回避のため、相談者に寄り添った提案を行います。
スムーズな解決を目指せる
弁護士に慰謝料請求の交渉の相談をすれば、次のようなアドバイスが得られます。
- 慰謝料請求の交渉のポイント
- 証拠の効果的な提示の仕方
- 慰謝料の適正な金額を見積もってもらえる
- 交渉が決裂した場合の対応の仕方
上記のような情報を基に、交渉を有利に進められる他、失敗してもすぐに次の対応へ移れます。
自分だけで相手と話し合いを進めるより、スムーズな解決を目指せるでしょう。
代理手続き・交渉してもらえる
弁護士を代理人にすれば、慰謝料請求の交渉や手続きもすべて任せられます。
弁護士は交渉経験が豊かで慰謝料の相場も熟知しているので、法律を遵守した説得力のある主張で、相手の同意が得られるように全力を尽くすでしょう。
弁護士には次の作業も委任できます。
- 和解契約書または離婚協議書の作成
- 交渉が不成立だった場合の調停・裁判手続き
依頼者は弁護士とこまめに連絡を取り合い、状況を把握しながら、慰謝料問題の解決を進めていけます。
やってはいけないことを避けられる
弁護士に相談すれば、慰謝料を請求したとき(または請求されたとき)に、行ってはいけない禁止事項をアドバイスします。
弁護士のアドバイスに従えば、自分の立場が不利とならず、理性的に慰謝料問題の解決を目指せるでしょう。
弁護士は代理人として法律に則った適切な行動をとるため、相手とのトラブルを避けられます。
慰謝料請求でやってはいけないことか判断に迷うときは春田法律事務所まで
今回は夫婦の問題解決に尽力してきた専門弁護士が、慰謝料請求された側・される側がやってはいけない行動等について詳しく解説しました。
春田法律事務所は夫婦の問題解決に強い法律事務所です。まずは弁護士と、慰謝料請求のポイントや注意点についてよく話し合いましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。