婚前契約と遺言

最終更新日: 2023年06月13日

離婚歴のある中高年の方が再婚するにあたり、前配偶者との間でもうけた子に財産を相続をさせ、再婚相手との間では相続が発生しないようにしたいというご要望はしばしばあります。

このようなご要望は婚前契約書を作成することで実現できるのでしょうか。

婚前契約書で遺言はできるか

まず、前配偶者との間の子に相続をさせる遺言が必要となりますので、婚前契約の中にこのような規定を設けることが考えられます。

しかし、遺言は民法の定める方式に従って遺言書でしなければ無効となります。

ですから、前配偶者との間の子に財産を全部相続させると婚前契約書に記載したとしても法的効力はありません。婚前契約書とは別途に遺言書を作成する必要があります。

なお、遺言と類似の効果があるものとして死亡時に贈与が発生する死因贈与契約があります。この死因贈与契約を婚前契約書に盛り込むことは可能ですが、遺言書とした方が税金の負担は軽いので、別途に遺言書を作成します。

遺言だけでは遺留分が残る

前配偶者との子に相続させる内容の遺言をしたとしても、再婚相手には相続財産について一定割合を相続する権利が残ります。この一定割合を遺留分といいます。

ですから、遺言をしただけでは、死亡後に配偶者が遺留分を主張すれば一定割合の相続財産を得ることができます。

このような遺留分についても配偶者に残さないためにには、再婚後に、遺留分放棄の許可を家庭裁判所からとる必要がありますから、婚前契約にも婚姻後速やかに遺留分放棄手続をとることを規定しておきます。

遺留分放棄許可の手続

申立て

遺留分放棄許可の申立書には、遺留分を放棄する理由を記載します。この理由には、中高年の再婚であり、再婚後に子を設ける予定がなく、前配偶者との子に全ての財産を相続させることを条件として再婚したことなどを記載することになります。

許可の判断基準

遺留分放棄を許可するかどうかについて、家庭裁判所は以下の点を考慮して判断します。特に1の要素が重視されますので、遺留分放棄を約束した婚前契約をするプロセスにおいて、弁護士が介在して、相手が自由な意思で契約したことを担保することが重要です。

遺留分放棄は9割以上が許可されますが、不許可となることを回避するために適切に主張、立証する必要があります。

  1. 遺留分の放棄が遺留分権利者の自由な意思に基づいているか否か
  2. 遺留分を放棄する理由に合理性があるか否か
  3. 遺留分の放棄に対する代償が支払われているか否か

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