介護施設で顧問弁護士をお探しの方のために専門弁護士が解説!

最終更新日: 2022年10月09日

顧問弁護士とは、毎月定額の料金(顧問料)を支払うことで、会社でおこる法律問題や不安に対して、継続的に相談やアドバイスなどを通じて法的なサービスを提供してくれる弁護士のことをいいます。

今回は、介護施設での顧問弁護士の必要性や、どのように顧問弁護士を選べばよいのか等について介護専門の弁護士が具体的に解説をいたします。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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介護施設に顧問弁護士が必要となる理由

さて、そもそも介護施設に顧問弁護士は必要なのでしょうか。

たとえば、「今は問題がないから大丈夫」とか、「何もお願いしないのに顧問料を負担するのはちょっと・・・」と考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで、介護施設において顧問弁護士が必要となる理由をご説明いたします。

  • 緊急事態への対応
  • クレームへの対応
  • 労務問題への対応

緊急事態への対応

まずは、緊急事態に速やかに対応できることです。

さきほど、顧問弁護士は、「継続的に法的サービスを提供してくれる弁護士」であると説明いたしました。

これに対して、何らかのトラブルが具体化し、法的な紛争が顕在化したために、その紛争・案件のみを弁護士に依頼することもあります(むしろ、このように案件ごとに依頼をすることをイメージされる方が多いかもしれません)。

このように、スポット的に、案件ごとに対応する弁護士を、この記事では「スポット弁護士」と呼んで、話を続けます。

具体的な事件や案件の対応はスポット弁護士でも十分ではないかとお考えになるかもしれません。もちろん、スポット弁護士も依頼を受けた案件に全力で取り組んでくれるでしょう。

しかし、スポット弁護士に依頼する場合には、実際に事件が起きてから初めて弁護士に相談することになるため、事件が起きる背景や、事件の発端、経緯などをすべて説明する必要が生じます。

この説明だけでも大変ですが、介護業界のことをあまり知らない弁護士であれば、具体的な用語や介護施設の種類、業界の仕組みなどの前提知識から説明しなければならないこともあり得ます。

事件が発生した緊急事態において、じっくりと上記の説明を尽くすことは難しく、対応や回答までのタイムリミットだけが迫ってくるといった事態も想定されるところです。

他方、顧問弁護士であれば、普段からコミュニケーションをとっており、また実際に紛争が顕在化する前の段階から相談を聴いていることも多いため、事件の発生後、円滑に、事件の対応を開始することができます。

また、実際の窓口としての交渉や、訴訟への移行など顧問料の範囲内を超えた業務についても、顧問弁護士であれば速やかに依頼をすることができ、また少し料金を割り引いて対応してくれる場合もあるでしょう。

クレームへの対応

介護施設において、利用者や家族からのクレームが入ることは珍しいことではありません。

建設的な意見や軽微なクレームであれば、施設側において誠実に対応することで解決することも多いですが、他方で、残念ながら、言いがかりに近いようなクレームや、不可能を強いるようなクレームが入ることも少なくありません。

こういった場合に、このクレーム全てに施設職員が対応していれば、当然、施設職員が疲弊してしまいますので、最悪の場合には、離職や、職員から安全配慮義務違反を理由に損害賠償請求を受けるおそれもあります。

また、対応を誤れば、さらに利用者やご家族との関係を悪化させてしまい、収拾がつかない事態に陥ることもあります。

顧問弁護士がいることで、クレームの種類を見極めたうえ、その対応方法をタイムリーに相談することができ、問題が悪化することを防止できます。また、施設職員の疲弊を考慮し、窓口としての対応を顧問弁護士に依頼することで、施設の運営への支障を食い止めることも可能です。

労務問題への対応

企業が頭を悩ませる問題の一つは職員との労務問題であり、介護の業界でも労務問題は大きな問題の一つです。

たとえば、職員からの残業代請求、指揮命令への違反を繰り返す職員、介護・介助の際に身体を痛めてしまった等の事例が典型例です。

職員への対応については、日常の業務の中での注意指導などが重要であり、これは紛争が生じてから、さかのぼって対策することはできません。だからこそ、問題が顕在化する火種の時点から、顧問弁護士に継続的に相談しておくことが肝要なのです。

顧問弁護士がいれば、業務マニュアルや就業規則のチェック・改定などの整備を行うこともできますし、個別具体的な職員への対応について、客観的な証拠を残しながら対応を継続するようアドバイスすることも可能です。

介護施設の顧問弁護士がしてくれること

これまで、スポット弁護士との比較を交えながら、顧問弁護士の必要性について、ご説明しました。

では、具体的に介護施設の顧問弁護士には、どのような業務を任せることができるのでしょうか。

  • 契約書の整備
  • 介護事故発生時の対応
  • クレーム対応
  • 労務の助言・対応
  • その他の対応

契約書の整備

まずは、契約書の整備です。

契約書といっても、介護事業では、利用契約書や重要事項説明書等の利用者との関係を定めるものもあれば、雇用契約書や就業規則など職員との関係を定めるものなど、多数の契約書を利用しています。

日頃の業務で何気なく利用している契約書類も、たとえば法改正に追いついていない内容であったり、必要以上の負担を施設側に課していたりすることが少なくありません。

顧問弁護士は、介護事業所との協議し、事業所が想定するリスクを把握したうえで,定期的に契約書のリーガルチェックを行うことが可能です。

また、預り金に関する規定や看取りに関する同意書等、関連する周辺の規定の整備を行う際にも、法的アドバイスや文書作成を行うことも可能です。

介護事故発生時の対応

介護事業において、介護事故のリスクを無視することはできません。そして、介護事故への対応は、何よりも初動が肝心です。

病院への搬送はもちろんのこと、ご家族への連絡、謝罪の有無や方法についての検討、保険会社への連絡、職員へのヒアリング、行政への報告等、事故発生後にしなければならないことは山積みです。

介護事故発生後、速やかに顧問弁護士に連絡をとることで、各方面への連絡内容やその方法、タイミングなどについて、総合的なアドバイスを受けることができます。

また、介護事故について損害賠償請求を受けた場合には、実際の窓口となり、交渉や訴訟対応を行うことも可能です。

クレーム対応

さきほども説明したとおり、介護事業において頭を悩ませる問題の一つが利用者やご家族からのクレーム対応です。

場当たり的な対応をしたり、対応の内容を適切に記録に残さないことで、当初のクレームとは異なる大きな問題に発展することもあり得ます。また、クレーム対応にあたる職員のメンタルケア重要な課題です。

顧問弁護士がいることで、クレームの内容を吟味したうえで適切な対応方法をアドバイスすることが可能です。また、いわゆる「カスタマーハラスメント」のような事例であれば、警告書の作成や、実際の交渉窓口としての対応なども可能です。

労務の助言・対応

労務管理のご相談、介護事業におけるご相談の中でも大きな割合を占めます。

たとえば、問題職員への対応は、問題行動を粘り強く注意・指導しながら、その指導の経過や改善の状況を、的確に記録しておくことが肝要です。顧問弁護士は、問題行動を法的に分析したうえで、その注意・指導の方法や、記録の残し方などを具体的にアドバイスします。

また、退職後に残業代請求や不当解雇であると主張される場合もあります。その場合も、法的観点から助言を行うとともに、労働審判や訴訟などに移行する場合には、代理人として裁判所に出廷することも可能です。

その他の対応

介護事業では、これまで見てきた類型のほかに、以下のようなご相談がよくあります。

  • 利用料金の滞納
  • 職員による利用者の金銭管理をめぐるトラブル
  • 問題のある利用者の退去
  • 行政への対応
  • インターネット上での誹謗中傷への対応

介護施設の顧問弁護士の選び方

これまで、介護施設における顧問弁護士の業務内容について見てきました。では、実際に顧問弁護士を選ぶ際には、どのようなことに注意すべきでしょうか。顧問弁護士の選び方を解説いたします。

  • 介護業界に精通しているか
  • レスポンスは早いか
  • 誠実で信頼できる弁護士か

介護業界に精通しているか

まず、介護事業に精通しているかどうかは重要なポイントです。

弁護士は法律の専門家ですが、各業界のプロではなく、当然にすべての業界に詳しいわけではありません。そのため、介護業界に詳しくはない弁護士も存在します。たとえば、法律相談の際に、介護に関する用語がうまく伝わっていなければ、不安に感じることでしょう。

介護業界に詳しい弁護士であれば、このようなストレスを感じることはほとんどないでしょう。

また、契約書のチェックの場面でも具体的なリスクを想定することが可能ですし、介護事故の際にも、施設側に法的責任があるか否か、について適切な見通しを立てることが可能です。

レスポンスは早いか

次に、レスポンスの早さも重要です。

顧問弁護士が真価を発揮するのは、やはり緊急時の対応でしょう。ところが、メールや電話しても一向に返事がない弁護士であれば、そもそも顧問契約をした意味がなくなってしまいます。

もちろん24時間365日、連絡がつく状態を維持することは現実的ではないものの、迅速な反応が期待できる弁護士であることが望ましく、その意味では、複数人の弁護士で対応してくれるか否かもレスポンスにかかわる判断材料になると考えます。

誠実で信頼できる弁護士か

弁護士の仕事ぶりで重要な点は、誠実であるか、信頼に値するかどうかです。

なかでも顧問契約は継続的な関係を前提にするものですから、よきビジネスパートナーとして共に歩むためにも、誠実で信頼できる弁護士であることは不可欠です。

たとえば、顧問であるにもかかわらず、ほかの業務の多忙さを理由に事件を引き受けようとしない弁護士は、誠実ではないでしょう。

また、事業所側が絶対に無理な要望をしている場合に、適切な見通しも示すことなく、これを安請け合いして報酬をもらおうとすることもよくなく、厳しい意見でも率直に伝えてくれることも大切です。

もちろん弁護士の在り方は様々ですので、上記はあくまでも一つの考え方ですが、事業所にあった仕事ぶり・人柄の弁護士を見つけるためにも、顧問契約をする前に面談を行うことは重要です。

介護施設に顧問弁護士がいればよかった事例

当事務所の弁護士が活動した事例を2つ紹介いたします。

  1. 利用者家族からのクレーム対応
  2. 労働者から残業代請求を受けた事案

利用者家族からのクレーム対応

まずは、適切にケアプランを作成し、プランに基づき適切な介護を実施していたにもかかわらず、ある利用者のご家族から、クレームがなされた事案です。客観的には、事業所側には落ち度のない事案でした。

当初は、後方支援として、事業所側が適切に介護を行ってきたことを丁寧に伝えるよう対応策をアドバイスしていましたが、ご家族の気持ちがおさまらず、訴訟提起がなされました。

当事務所の弁護士が介入し、毅然とした態度で、主張・立証をつづけた結果、裁判所には事業所側の主張が全面的に認められる結果となりました。

このように、十分な介護をしてきた場合にもクレームが生じることは避けられませんが、弁護士のアドバイスや弁護士への窓口変更を通じて、一貫した説明と毅然とした態度を続けることで、きわめて妥当な解決がなされた事案です。

労働者から残業代請求を受けた事案

事案としては、労働者から残業代請求を受けた事案ですが、事業所側からはこの紛争が具体化する前から、問題のある職員がいるとの相談を受け、その対応について助言を行っていました。

弁護士から、法的な根拠があることを十分にご説明していたこともあり、業務命令や、当該従業員に対する処分について、事業者側は自信をもって冷静に対応していました。

従業員側からの不当ともいえる要求を毅然とした態度で拒絶したことで、従業員側は労働審判を申し立てましたが,裁判所も先方の主張に理由がないとの心証を示したことで、勝訴的な和解にて終了いたしました。

紛争が生じる前から、綿密なコミュニケーションを図り、対応方法を共有していたことで、事業者側も解決を見据えながら冷静に対応ができました。また、解決内容も当初の想定どおりであり、スポットではなく顧問弁護士だったからこその解決といえます。

当事務所の顧問弁護士サービス

最後に、当事務所で提供している顧問弁護士のサービス内容をご紹介します。

顧問料

月額顧問料は3万3000円(税込)から対応しております。なお、月額顧問料が3万円の場合、2時間以内の作業を想定しており、想定作業時間を超えた場合に追加顧問料が発生することになります。

具体的には、内容にもよりますが、利用契約書の改定や2、3件の労務相談2時間程度の作業量が想定されますので、月額顧問料の中で対応可能な場合が多いです。

なお、個別具体的な事件の窓口・代理人となって活動する場合には、別途、委任契約を締結して対応に当たっております。

弁護士とのアクセス方法

事務所にご来所いただく方法での打合せはもちろん、電話・メール・WEBミーティングなど、お客様のご都合に合った打合せ方法にて対応しております。

また、専門弁護士へ直通の携帯番号を共有させていただきますので、弁護士と中々連絡がつかないといったストレスもありません。複数人の弁護士で担当することが原則ですので、可能な限り迅速な対応も可能です。

対応範囲

介護案件の全般についてカバーしておりますが、当事務所には、労働法務に詳しい弁護士、インターネットの削除要請に詳しい弁護士など様々な領域を専門とする弁護士がおりますので、多様な業務に関する法律相談についても対応しております。

また、当事務所のオフィスは全国の主要都市にございますので、全国のお客様と顧問契約も可能です。

まとめ

以上、顧問弁護士が必要となる理由、メリット、その選定基準についてご説明しました。

顧問弁護士に依頼した後になってミスマッチが判明しますと、お互いにとって良い結果になりませんので、本当に信頼できる弁護士かどうかは、慎重に吟味する必要があります。

本コラムにおいて記載したポイントが、顧問契約を依頼する法律事務所を選ぶ際の基準となり、よい弁護士と巡り会えるための一助となれば幸いです。

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