介護離婚とは?疲れたら知るべき回避策と別れ方を弁護士が解説
最終更新日: 2023年07月04日
- 介護を理由に離婚することはできるのか
- 義両親の介護が辛くて離婚を考えてしまうのはなぜか?
- 介護離婚を回避する方法はあるのか?
高齢化社会を目の当たりにして、義両親の介護をしなければならない毎日が辛いと思う方は少なくないでしょう。
自分の親の介護でも大変なのに、まして配偶者の大切な親とはいえ義両親の介護となるとどうしても心身の負担が一層大きくなり、ストレスが溜まり、ついには離婚を決意することもあると思います。
そこで今回は、男女問題や離婚事件を数多く取り扱う弁護士が、介護離婚を考えたときに必要な知識をはじめ、離婚を回避する方法から離婚するための手順までを詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 介護を理由にした離婚は、相手も合意すればできる。できない場合は調停・裁判へと発展する可能性もある
- 義両親の介護で離婚を考えてしまう理由には、「配偶者が介護に協力してくれない」「義両親と不仲でストレスを感じる」「親族が協力してくれない」「仕事と介護が両立できない」などがある
- 介護による離婚を回避する方法には、「夫婦や親族に相談し介護の負担を軽くしてもらう」「介護施設の利用を検討する」「別居をする」などがある
義両親の介護は義務?離婚を考えたときの基礎知識
結論からいうと、義両親の介護は法律上の義務ではありません。
民法には、
直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある
(民法877条1項)という規定があります。しかし、ここでいう「直系血族」とは子や孫のことで、義両親のような姻族については扶養義務はないのです。ただ、夫婦については、民法の他の条文で
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない
(民法752条)と定められています。
この2つの条文を見ると、配偶者が両親を介護している場合は、夫婦として協力する必要があるともいえます。そうだとしても、それはあくまでも配偶者が義両親を介護をしている場合のことです。自分だけが義両親の介護をする義務があるということにはならないでしょう。
義両親の介護で離婚を考えてしまう理由
それでは、なぜ義両親の介護が辛いと思ってしまうのでしょうか。ここでは、義両親の介護で離婚を考えてしまう理由を以下の4点について解説していきます。
- 配偶者が介護に協力してくれない
- 義両親と不仲でストレスを感じる
- 親族が協力してくれない
- 仕事と介護が両立できない
配偶者が介護に協力してくれない
配偶者が介護に協力してくれないことで、離婚を考えるということは十分考えられます。特に、配偶者が介護を全くしない状況では、介護の負担が一方に集中してしまうため、大きなストレスや疲れがたまり、夫婦間のトラブルを引き起こす可能性が高いでしょう。
また、介護によって生活のバランスが崩れ、プライベートタイムや趣味の時間が減ることも問題になりがちです。さらに介護により経済的な負担が増えた場合には、夫婦間に不満が溜まってしまうことも十分に考えられます。
義両親と不仲でストレスを感じる
介護をしている義両親と仲が悪いと、離婚を考えてしまうこともあります。
不仲にもかかわらず義両親の介護を続けなければならないと、どうしても心理的な負担が大きくなってしまうものです。まして、献身的に介護をしているのに、配偶者からねぎらいの言葉や態度が示されなければ、夫婦間の信頼関係も崩れてしまいかねません。
このようなストレスや不満が続く場合は、離婚を考えることもあるでしょう。
親族が協力してくれない
親族が義両親の介護に協力してくれないことも、離婚を考える理由の1つになりえます。
相手の親族が全く協力してくれない中で、自分たちだけが時間的・金銭的な負担を強いられてしまうと、「なぜ配偶者の兄弟姉妹や家族は協力してくれないのか」と不満を感じてしまうのも当然かもしれません。
配偶者が、自分の兄弟姉妹などに協力を依頼するなどの対策を講じないまま、義両親の介護を自分たちだけで続けるとなると、離婚に踏み切る決断も十分考えられます。
仕事と介護が両立できない
義両親の介護の負担が大きく、仕事と介護が両立できなくなることもあるでしょう。場合によっては、夫婦のうち一方が介護に専念せざるをえないかもしれません。
そうなると、一層大きなストレスや負担が蓄積して、ついには離婚を考えてしまうこともあるでしょう。
介護による離婚を回避する方法
離婚したいと思う一方で、離婚しなくてもすむ方法はないかと考えることもあるでしょう。ここでは、介護による離婚を回避する方法として、以下の3つについて説明します。
- 夫婦や親族に相談し介護の負担を軽くしてもらう
- 介護施設の利用を検討する
- 別居をする
配偶者や親族に相談し介護の負担を軽くしてもらう
介護による離婚を回避するためには、配偶者や親族に相談して、介護の負担を軽くすることが重要です。介護を分担することでストレスや疲れが軽減され、夫婦間の関係も改善に向かう可能性が高まります。
また、親族や友人などからのサポートも大切です。協力してもらうことで、介護の負担を軽くできるでしょう。
介護施設の利用を検討する
介護による離婚を回避するためには、介護施設の利用を検討することも有効です。
介護施設では、専門のスタッフが介護を行うため、負担を軽減することができます。介護施設に入所することで、義両親もよい環境で過ごすことができるでしょう。
ただし、介護施設は費用がかかる場合があるため、費用面を考慮しながら入所を検討する必要があります。なお、義両親が介護施設への長期的な入所を望まない場合は、介護施設の利用は慎重に検討した方がよいでしょう。
介護施設の利用を検討するときは、地域にある施設の中から義両親に適した施設で、専門の介護サービスなども受けられる施設を選ぶことが大切です。
別居をする
介護による離婚を回避するためには、別居も一つの選択肢です。別居して、義両親の介護から距離をおくことで、ストレスを軽減することができるかもしれません。
離婚という結論を出す前に別居をすることで、夫婦間の関係を切ることなく、一歩ずつ解決へと進むことができるかもしれません。ただし、別居は家賃や生活費など、経済的な負担を伴うことがあるため、慎重に検討する必要があります。
また、別居をするときには弁護士などの専門家に相談しておくと良いです。そうすれば、結果的に離婚をすることになったときの対応にも備えられるでしょう。
義両親の介護にもう限界!離婚する方法はある?
義両親の介護を理由に離婚する場合は、夫婦が離婚に合意しているかどうかで手順が異なります。ここでは、場合を分けて離婚する方法を説明していきます。
夫婦が離婚に合意しているとき
法律上は、配偶者が離婚に同意すれば介護が理由であっても離婚の手続きを進められます。
夫婦間で合意が得られる場合は、調停や裁判を経ずに手続きを行うことができるのです。ただし、離婚するときには、経済的な負担や子どもたちの問題などを考慮する必要があります。
夫婦が離婚に合意していないとき
夫婦が離婚に合意していない場合に離婚を進めるためには、民法770条で定められている離婚事由にあてはまることが必要です。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
義両親の介護が上記の事由のいずれかにあてはまることが証明できれば、離婚を進めることができます。義両親の介護は、上記の離婚事由のうち5番目の
その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
に該当する可能性がありますので、この点を検討します。
ただし、調停や裁判で離婚が成立するまでには時間がかかることもあります。また、養育費や財産分与などの離婚条件についても、話し合う必要があることに注意しておきましょう。
離婚事由にあたるケース
介護を理由とした離婚で、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するケースとしては、配偶者に一切の介護の責任を投げて、自分は全く行動する態度を見せない場合が考えられます。
たとえば、夫が身体的な介護を一切しないだけでなく、介護費用の負担も支援も拒否している場合です。そのような場合は、妻が一人で介護の全責任を背負わざるを得ないので、耐え難い大きなストレスや経済的な負担を負うことになるでしょう。
義両親の介護の状況に加え、夫婦が置かれた状況や事情を考慮して、「婚姻を継続し難い重大な事由」だと裁判所が認めれば、離婚が成立する可能性はあるでしょう。
離婚事由にあたらないケース
離婚事由にあたらないケースとしては、配偶者に特に問題行動がなく、これまで同居を続けてきた場合などが考えられます。
たとえば、夫が介護に協力し、経済的なサポートをするなど、妻が満足して同居を続けてきた場合や、妻側が離婚を希望する理由がない場合には、離婚事由にあてはまらないと考えられます。
まとめ
本記事では、男女問題や離婚事件を多く取り扱う弁護士が、介護離婚を考えたときに必要となる基礎知識から、離婚の回避方法、介護をきっかけとした離婚の進め方について解説しました。
離婚を考えた場合には、弁護士への相談をおすすめします。当事務所では、離婚専門弁護士が、経験と知識をもとに状況に応じた適切な助言を行います。
離婚をしたい方にはスムーズな離婚手続きの実施をご支援する一方で、離婚を避けたい方には離婚回避のための法的助言を行うこともあります。介護離婚でお悩みの方は、お気軽に当事務所の無料相談をご利用ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。