和解離婚とは?概要から実施の流れ・メリット・デメリットを解説
最終更新日: 2023年02月21日
- 和解離婚と他の離婚方法について知りたい
- 和解離婚が成立するまでにはどのような流れがあるのだろうか
- 和解離婚のメリットとデメリットを整理したい
離婚には協議離婚や裁判離婚など、複数の種類があります。その中の1つが和解離婚です。和解離婚であれば、訴訟中でも当事者同士が話し合いで離婚を成立させるため、裁判に要する時間や手間を減らせます。
ただ、和解離婚のメリットやデメリットを十分理解できていない方もいらっしゃるかもしれません。また、和解離婚の流れを把握しスムーズに和解離婚を成立させられれば、夫婦がお互い離婚に伴う負担を軽減できるでしょう。
そこで今回は、離婚の裁判に詳しい専門弁護士が、和解離婚の意味や流れ、メリットやデメリットについて解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 和解離婚と認諾離婚以外の離婚方法には、「協議離婚」「調停離婚」「審判離婚」「離婚裁判」の4つがある
- 和解離婚を行う流れは、「離婚調停不成立」→「離婚訴訟開始」→「第1回口頭弁論」→「和解勧告」→「和解調書作成」→「和解調書謄本作成」→「和解成立」
- 和解離婚のメリットは「裁判期間が短くなること」で、デメリットは「協議よりも手間や時間がかかること」
離婚方法の1つに和解離婚がある
ここでは、離婚方法について、以下の3つを解説します。
- 和解離婚とは
- 認諾離婚との違い
- その他の離婚方法
それでは、1つずつ解説します。
和解離婚とは
1つ目は、和解離婚の意味です。
和解離婚とは、離婚訴訟中に、当事者同士の話し合いに基づき離婚を成立させる方法です。訴訟中でも、裁判上で原告被告双方が話し合いで和解できれば、その時点で訴訟が終了して離婚成立となります。
出典:令和4年度「離婚に関する統計」の概況 人口動態統計特殊報告|厚生労働省
認諾離婚との違い
2つ目は、認諾離婚と和解離婚の違いです。
認諾離婚とは、被告が原告からの離婚請求を全面的に受け入れて離婚するものです。裁判の途中でも、認諾離婚が成立すればその場で裁判が終了し、離婚成立となります。
ただ、認諾離婚では、親権や財産分与などの条件は訴えの中に含めず、あくまでも離婚のみをトピックとし、主に争いを長引かせたくない、避けたいというときに原告の主張を認めます。それに対し、和解離婚では離婚条件もトピックになることが、両者の違いです。
その他の離婚方法
3つ目は、和解離婚と認諾離婚以外の離婚方法についてです。以下に4つ、表にまとめました。
協議離婚 | 当事者同士が話し合って離婚条件を決め、それに基づき離婚するもの |
調停離婚 | 家庭裁判所で離婚調停を行い、その調停に基づき離婚するもの |
審判離婚 | 調停でほぼ条件の合意が取れているものの、ささいな事情で調停が不成立になりそうなときに、裁判官が離婚を決定するもの |
裁判離婚 | 離婚訴訟の判決に基づき離婚するもの |
和解離婚を行う流れ
ここでは、和解離婚を行う流れについて、以下の7つを解説します。
- 離婚調停不成立
- 離婚訴訟開始
- 第1回口頭弁論
- 和解勧告
- 和解調書作成
- 和解調書謄本作成
- 和解成立
それでは、1つずつ解説します。
離婚調停不成立
和解離婚を行う流れの1つ目は、離婚調停不成立です。
訴訟の前段では、調停を行ってそれが不成立になっていないといけません(調停前置主義)。ただ、家庭裁判所が審判離婚で離婚と判断したものの、それについて異議申立てする場合も、離婚訴訟になります。
離婚訴訟開始
和解離婚を行う流れの2つ目は、離婚訴訟開始です。
調停不成立の場合、夫婦のどちらかが原告で、もう片方が被告となり、家庭裁判所に離婚訴訟を起こすことになります。離婚訴訟では、以下の書類を家庭裁判所に提出しましょう。
- 離婚を求める旨や離婚条件を示した訴状
- 訴状の内容を示す証拠
- 調停が不成立となったことを示す「調停不成立等証明書」
第1回口頭弁論
和解離婚を行う流れの3つ目は、第1回口頭弁論です。
家庭裁判所は、訴状が受理されてから、1か月〜1か月半を目安にして、原告と第1回口頭弁論期日を調整します。第1回口頭弁論期日が決定したら、家庭裁判所からは、被告側にその期日に出廷する旨求める呼出状と、原告からの訴状などを合わせて送付します。
口頭弁論は、原告・被告双方が、書面や証拠などを提出し、約1か月〜1か月半のペースで行われます。そして、裁判官の指示のもと、双方が主張や証拠提出などを行い進行していきます。
和解勧告
和解離婚を行う流れの4つ目は、和解勧告です。
第1回口頭弁論以後、しばらくしてから裁判官より原告と被告に和解勧告がなされます。ただし、和解の可能性が低いと思われる場合は、和解勧告を行われないケースもあります。おおよそ4、5回口頭弁論を経て、互いの主張や立証などが整理されてくるので、そのタイミングで和解勧告がなされることもあるようです。
和解調書作成
和解離婚を行う流れの5つ目は、和解調書作成です。
裁判官主導で、和解離婚に向け、本人や代理人弁護士の間で和解離婚の条件について協議していきます。離婚条件の合意形成ができたら、その内容を裁判所に報告して、和解調書を作成します。
期日に本人と代理人弁護士が出廷し、裁判官が読み上げた和解調書の内容に異議がなければ、その期日をもって和解離婚が成立するのです。そのとき、原告と被告のどちらが和解調書を役所に提出するか、裁判官に確認されます。
和解調書謄本作成
和解離婚を行う流れの6つ目は、和解調書謄本作成です。
和解が成立すれば、裁判所はすぐに和解調書謄本を作成します。通常、以下の2つの和解調書謄本が当事者双方に郵送されます。
- 離婚する旨だけを記載した和解調書謄本
- 離婚条件も記載した和解調書謄本
なお、前者は役所提出用で、後者は手持ち用です。また、当事者に代理人となる弁護士がついている場合は、その弁護士の所属事務所に和解調書謄本が郵送されます。
和解成立
和解離婚を行う流れの7つ目は、和解成立です。
和解調書が届いたら、戸籍法第63条と77条に基づき、和解成立から原則10日以内に役所に和解調書とその謄本を提出しなければなりません。
提出しなければ、戸籍法137条に基づき、5万円以下の過料が科せられる恐れがあります。提出する役所は、夫婦の本籍地や住居地、所在地いずれの市区町村役場でも構いません。
出典:戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)|e-GOV法令検索
離婚を和解により行うメリット・デメリット
ここでは、和解離婚のメリットとデメリットを解説します。
メリット
1つ目は、和解離婚のメリットです。
和解離婚のメリットは、裁判期間が短くなることです。裁判離婚では、結果が出るまで1年以上の時間がかかるため、大きな負担になりかねません。
しかし、和解調書には裁判の判決と同程度の効力を有しますが、和解離婚ではより短い期間で離婚が成立します。また、和解離婚では戸籍に「裁判による離婚」と記載されないことも、メリットといえるかもしれません。
デメリット
2つ目は、和解離婚のデメリットです。
和解離婚のデメリットは、裁判を受ける必要があるため、協議よりも手間や時間がかかることです。
また、お互い歩み寄った上で離婚が成立するため、慰謝料や養育費などが希望金額よりも低くなることもあります。
まとめ
今回は、離婚の裁判に詳しい専門弁護士が、和解離婚の意味や流れ、メリットやデメリットについて解説しました。
和解離婚とは、裁判中に当事者同士で話し合い、両者が和解して離婚することです。似た言葉に認諾離婚があります。ただ、認諾はあくまでも離婚の有無のみが問われるのに対し、和解離婚では離婚条件まで話し合って合意することが相違点です。
和解離婚の前には調停離婚を経ている必要があります。また、口頭弁論や和解勧告、和解調書作成など複数のプロセスがあるので、流れをしっかり把握しておきましょう。離婚の裁判に詳しい弁護士にアドバイスを依頼すると、より確実に和解離婚を成立させられるはずです。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。