道路拡張による立ち退き料の相場は?専門弁護士が解説

最終更新日: 2023年12月11日

道路拡張による立ち退きを徹底解説!流れ・必要な交渉・税金を詳しく紹介

  • 自分の住居のある地域で都市開発が行われるため、立ち退きを要求されてしまった
  • 立ち退きに応じるが、なるべく有利な条件を行政側から引き出したい
  • 立ち退き料や補償金をもらったら税金はかかるのだろうか

道路の拡張・街の再開発等をするため、都市開発を実施するケースがあります。都市開発のための工事をする場合、対象地域の建物を取り壊す必要があると、立ち退きを要求されてしまう場合もあります。

どのような手順で立ち退きが進められるのか、立ち退き交渉をするときに十分な立ち退き料や補償料は受け取れるのか、地権者の方々は不安に感じてしまうはずです。

そこで本記事は、多くの不動産問題に携わってきた専門弁護士が、道路拡張で立ち退きを要求された場合の交渉内容、道路拡張による立ち退きの流れ、立ち退き料にかかる税金計算方法等を詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料で相談することが可能です。

  • 道路拡張による立ち退きを要求されても、すぐに承諾しない方がよい
  • 立ち退きでは立ち退き料や補償金を受け取れるが、合理的な金額かを冷静に検討する
  • 立ち退き料を受け取った場合、基本的に譲渡所得や一時所得等の税金が課せられる

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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道路拡張の立ち退き料の相場は?いくらもらえる?

道路拡張の立ち退きで、地権者は自分の建物、土地の全部または一部を手放す必要が出てきます。そのため、次の内容をしっかりと話し合う必要があります。

  • 道路拡張による立ち退きとは
  • 立ち退き料
  • 補償金
  • 移転時期

それぞれについて解説していきましょう。

道路拡張による立ち退きとは

都市開発のような公共事業では、道路の拡張が行われる場合もあります。その拡張の範囲内に入っている建物を取り壊す必要があり、該当する地権者は立ち退きを要求されます。

ただし、短期間に立ち退きを強制されるような事態とはならないため、安心してください。

行政側も多くの地権者と交渉していくので、おおよそ1年くらいの期間を設け交渉が進められていくはずです。

立ち退き料

新たな道路の建設や現在の道路を広くするため立ち退きが必要な場合、立ち退き料は公示価格・基準地価を基に算出されます。

道路拡張による立ち退き料の範囲となるのは次の通りです。

  • 拡張による土地の面積分の損失
  • 拡張範囲にある工作物(例:塀・壁等)や樹木

たとえば、道路拡張で失う土地面積が200㎡で、近隣の公示価格1㎡あたり30万円だった場合は次のように計算します。

200㎡×30万円=6,000万円

ただし、立ち退き料は公示価格・基準地価で算定された金額の他、迷惑料(慰謝料)も加算されます。

迷惑料(慰謝料)には「長年住んできて立ち退きをするのが辛い」というような心情や、立ち退きにかかる諸費用も考慮されるはずです。こちらは交渉次第で地権者に有利な金額となる可能性があります。

補償金

道路拡張の範囲内に建物があったなら、建物は基本的に取り壊さなければいけません。この場合は補償金(建物移転料)も受け取れます。

建物に関する補償金を算定する場合、主に次のような費用が考慮されます。

  • 同等の建物を再び建設する費用
  • 建物取り壊し費用(解体純工事費、廃材運搬費・処分費等)
  • 新たな移転先に引越しをする転居費用
  • 新しい建物が完成する間、一時的に賃借する住居(アパート・マンション)の費用

ただし、同等の建物を再び建設する費用に関しては、取り壊す建物が木造2階建・150㎡の場合、移転先でも同じ建物を建築する費用しか補償されないので注意しましょう。

たとえば、移転先で同等の建物より価値が高い鉄骨造2階建・200㎡の建物を建築するので、補償金を増額するよう交渉しても、認められない可能性が高いです。

交渉では自分が負担する引越し費用、一時的に賃借する住居費用等を、なるべく有利な金額で補償金に追加してもらえるよう交渉した方がよいでしょう。

移転時期

道路拡張による立ち退きを行う場合、土地・建物の所有者の移転時期はおよそ1年が目安となるはずです。もちろん、行政側との交渉が難航すれば移転時期は遅れてしまいます。

立ち退きを拒否し続ければ、いずれ行政から強制的な立ち退き(強制執行)を受ける可能性もあるので注意しましょう。

どのくらいの猶予期間があれば、無理なく立ち退きは可能か、よく検討して交渉する必要があります。

なお、自分が賃貸物件の賃貸人で立ち退きを検討する場合、賃借人の立ち退きも考慮しなければいけません。賃借人の場合は、賃貸人より早く賃貸物件を退去することになります。

道路拡張による立ち退きの主な流れ

道路拡張による都市開発は、将来の交通の利便性を高めるために必要ですが、地権者に大きな影響を与える公共事業になるため、慎重な手続きで進められていきます。

こちらでは、道路拡張による立ち退きの大まかな流れについて説明しましょう。

道路拡張計画

施工する国や都道府県・市町村のような地方自治体は、交通の需要、交通の安全性、人口増加等、様々な状況を踏まえ、道路拡張計画をたてます。

整備計画の立案の他、現地調査、事前測量の実施、測量図面等の作成、道路拡張の対象となる地権者・地元の自治会へ整備方針の説明をします。

もちろん道路拡張を進めたとき、地権者には最小限の影響になるよう、慎重に計画が進められます。

調査・評価

地権者・地元の自治会へ整備方針の説明後は、現況測量調査・用地測量調査および評価が実施されます。それぞれ次のような調査が行われます。

調査・評価

内容

現況測量調査

建物の形、門塀や樹木の位置等を把握し、道路計画図の作成や道路の概略を設計するために必要となる現況測量図が作成される

用地測量調査

道路や隣地との土地境界確定等を把握し、道路拡張の立ち退き対象となる土地面積の確定と、分筆登記のための準備作業を行う

資金調達

道路拡張を行うときの資金調達に関しては、次の財源が充てられます。

  • 国庫補助金
  • 都道府県支出金(地方債・市町村負担金)
  • 市町村支出金(地方債・都道府県補助金・都市計画税)
  • 自己資金等

出典:§13 都市計画事業費の財源、その他(1)都市計画事業費及び財源 [2](イ)道路事業 | 国土交通省

立ち退き交渉

都市計画事業の手続きにより道路拡張の認可取得(事業化)した場合、道路拡張による立ち退きの対象となる地権者と、立ち退き料や移転時期の交渉を開始します。

ただし、地権者側はすぐに承諾をせず、行政側の立ち退き料・補償金等が立ち退きに見合うものか、よく検討してから回答を行いましょう。

交渉のときに弁護士等にサポートを依頼していれば、行政側の提示した金額が妥当か否かを詳しく調査してくれます。

契約締結

行政側の立ち退き料・補償金等の提案に納得したなら、書面で契約します。

主に次の内容が明記されています。

  • 施行者の名称・所在地等
  • 地権者の氏名・所在地等
  • 立ち退きに関する合意内容
  • 立ち退き料・補償金額等の明記
  • 立ち退き料・補償金額等の支払い方法・期限
  • 拡張対象となる用地の分筆・所有権移転登記の期限
  • 移転時期 等

契約締結前に書面内容に不明な点があれば必ず担当者へ質問しましょう。

立ち退き

拡張対象となる用地の分筆や所有権移転登記を開始します。登記手続き等についてよくわからなければ、不動産登記に関して深い知識を有する弁護士や司法書士等の専門家へ相談しましょう。

また、専門家に登記を依頼すればスムーズに手続きが進むはずです。契約書には期限が明記されているため、専門家のサポートも受け、期限内に必ず手続きを済ませましょう。

なお、交渉次第では新たな移転先へ引越しする転居費用、一時的に賃借する住居(アパート・マンション)の費用等、補償金の一部を立ち退き前に取得できる可能性があります。

支払い

基本的に対象となる用地の引渡し、物件の移転を確認後、立ち退き料や建物の補償金が支払われます。支払い先は、地権者が指定した銀行口座に振り込まれます。

立ち退き料・補償金が振り込まれたら、契約した内容通りの金額かどうかをよく確認しましょう。

拡張工事実施

道路拡張による立ち退きが全て完了したら、いよいよ拡張工事が実施されます。ただし、一部の地権者との交渉が進まない場合は、拡張工事がなかなか開始されない可能性もあります。

道路拡張の立ち退き料にかかる税金計算方法

道路拡張による立ち退き料等を受け取った場合、法人ならば法人税として他の所得と合算し課税されます。

一方、個人の場合はケースによって次のような所得となり、所得税が課せられます。

  • 譲渡所得
  • 事業所得
  • 一時所得

それぞれの特徴について解説しましょう。

譲渡所得

立ち退きにより所有建物等を取り壊す必要があったとき、その資産がなくなったことで受け取った立ち退き料等は、譲渡所得として所得税が課せられます。

計算式は次の通りです。

収入金額-( 取得費+譲渡費用)-特別控除額=課税譲渡所得金額 

取得した立ち退き料から費用等を差し引き、さらに特別控除額も利用できます。

収用等により土地建物を譲渡したならば、5,000万円の特別控除額(特例)が適用される可能性もあります。

ただし、5,000万円の特別控除額を利用するには、次の条件へ合致していなければいけません。

  • 土地建物は自分の固定資産である
  • その年に公共事業のため売った資産の全部について、収用等に伴い、代替資産を取得した場合の課税の特例の適用を受けていない
  • 最初に買取り等の申出があった日から6か月を経過した日まで、その土地建物を売っている
  • 公共事業の施行者から最初に買取り等の申し出を受けた者が譲渡している

取得費・譲渡費用を差し引いた上で、立ち退き料等が5,000万円以下に収まれば非課税です。もちろん、これらを差し引いても課税譲渡所得金額が残るなら、その分は課税対象となります。

事業所得

立ち退き対象が店舗・事務所である場合、立ち退きをすると営業ができなくなるはずです。

営業できない期間の売上の補償、移転でお客が減る事態への補償等、休業に関しての立ち退き料は、事業所得になります。

計算式は次の通りです。

総収入金額-必要経費=事業所得金額 

必要経費を差し引いても事業所得金額が残るなら、その分だけ課税対象となります。

一時所得

譲渡所得・事業所得以外の所得の場合は一時所得となります。たとえば、賃貸住宅から立ち退きしたとき、立ち退き料等を受け取ったケースが該当します。

計算式は次の通りです。

総収入金額-収入を得るために支出した金額(地権者の負担した費用)-特別控除額(最高50万円)=一時所得の金額 

収入を得るために支出した金額、特別控除額を差し引いた事業所得金額が課税対象です。

道路拡張による立ち退き料なら弁護士に相談を

今回は多くの不動産問題に携わってきた専門弁護士が、道路拡張による立ち退きのときの交渉内容、立ち退きの流れ等について詳しく解説しました。

立ち退き料の交渉などした経験がなく、自分だけで対応するのに不安を感じる人は多いはずです。そのようなときには弁護士に相談し、アドバイスやサポートを経て交渉を進める方がよいでしょう。

道路拡張による立ち退き要求があったら、弁護士へ相談して自分が納得できる立ち退き交渉を目指してみてはいかがでしょうか。

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