賭博で逮捕される条件とは?刑罰と逮捕後の流れを解説
最終更新日: 2023年09月13日
- 賭博で逮捕されてしまったが、何とか罪を軽くできる方法はないか
- 賭博罪にはどのような種類があるのか
- 賭博罪で逮捕されないためにはどうすればよいのか
有名人やスポーツ選手等が賭博で逮捕された、というニュースを見聞きした人も多いでしょう。
常習的に賭博を行っていたとすれば、最高3年の懲役刑が言い渡されるおそれがあります。そのため、どのような行為が賭博罪にあたるのか、よく確認しておく必要があります。
そこで今回は、賭博に関する多数の刑事事件に携わってきた専門弁護士が、賭博で逮捕される条件、賭博罪で逮捕されたときの対応等を詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 賭博罪には様々な種類があることを理解して、その成立要件に該当する行為はしない
- 賭博罪になるギャンブル・ならないギャンブルがある点をきちんと把握する
- 賭博罪で逮捕されたときは速やかに弁護士と面談して対応を協議する
賭博で逮捕される条件は?
普段参加している福引大会や、趣味として楽しんでいるパチンコ、毎年楽しみにしている年末ジャンボ宝くじが賭博にあたるのでは?と心配する人がいるかもしれません。
しかし、いわゆるギャンブルの全てで賭博罪が成立するわけではありません。賭博罪の要件に該当していなければ、刑法でいう賭博には該当しませんので安心してください。
こちらでは賭博罪の成立要件と、賭博罪の種類について説明しましょう。
賭博罪の成立要件
賭博罪が成立するためには次の全ての要件を満たす必要があります。
- 偶然の勝敗によるものである
- 財産または財産上の利益が対象である
- 得喪を争うものである
「偶然の勝敗」とは、勝敗の確実な予見が不可能なことです。
たとえ勝敗を競うプレイヤー(例:馬や騎手等)の技量・能力が、勝敗に大きく影響する場合でも、偶然性を完全に廃除することは不可能なため、本要件に該当します。
「財産または財産上の利益」とは金銭に限定されず、財産的価値(例:物品、オンラインゲームのアイテム等)も対象です。
ただし、一時の娯楽に供する物を賭けた場合、賭博罪には該当しません。一時の娯楽に供する物には、すぐに消費されてしまう物が該当します。
たとえば「対戦ゲームで負けた方が、ランチをおごる」「ボウリングで低スコアを出した方が、帰りの電車賃を支払う」等があげられます。
「得喪を争う」とは、偶然の勝敗で勝つ人もいれば負ける人もいる、という意味です。
たとえば、福引等で何らかの景品(商品)を獲得する人がいても、全くもらえない人がいない場合は賭博に該当しません。
賭博罪とは
賭博罪とは、金銭や品物等を賭け、ギャンブルをする行為に対して適用されます。
賭博場で賭け事を行うことはもちろん、仲間だけで賭け事を行っても、本罪に該当するので注意が必要です
賭博罪としては、「単純賭博罪」「常習賭博罪」「賭博場開帳等図利罪」の3つが法定されています。
単純賭博罪
一般的な賭博罪を指します。常習賭博罪や賭博場開帳等図利罪と区別する意味で「単純賭博罪」と呼ばれています。
賭博を1回行ってもこの罪に問われます。量刑は、50万円以下の罰金または科料です(刑法第185条)。
常習賭博罪
賭博に関して常習性があると認められた場合に問われる罪です。
常習性の有無は、賭博をした期間・回数はもちろん、賭博の種類や賭けた金額、賭博罪の前科等も含め、総合的な見地から判断されます。
量刑は3年以下の懲役で、単純賭博罪よりも重くなっています(刑法第186条第1項)。
賭博場開帳等図利罪
賭博場を開張した人、博徒(ばくち打ち)と結びついて利益を図った人が問われる罪です。
賭博場(例:カジノ等)を開設する行為の他、電話等で申し込みを受け付け、結果に基づき客へ配当金の支払、金品等を徴収する開帳行為(例:野球賭博等)も、本罪に含まれます。
量刑は、3月〜5年以下の懲役です(刑法第186条第2項)。
賭博罪で逮捕されないギャンブル
公営のギャンブルに参加しても、もちろん賭博罪で逮捕されることはありません。また、一見ギャンブルに見えても、法律上はギャンブルと認められないものもあります。
なお、民法改正(2022年4月1日施行)により18歳以上が成年とされましたが、公営のギャンブルの解禁年齢は改正前と変わらず、20歳以上でなければ利用できませんので注意が必要です。
公営競技
地方自治体または特定の公営団体が開催し、投票券を販売する競技です。国内では競輪、競馬、オートレース、ボートレースの4つが該当します。
競馬
公営競技として認められているギャンブルの中では最も人気が高く、基本的に中央競馬は毎週、地方競馬は毎日レースが開催されています。競馬法によって認可された団体が運営しています。
それぞれの馬に騎手が乗り所定の距離を一緒に走らせて、勝ち馬・着順等を当てる仕組みです。的中者には配当金が支払われます。
競輪
職業選手によって行われる自転車競走です。自転車競技法により都道府県・総務大臣に指定された市町村が開催するギャンブルです。
着順的中者には払戻金が交付されます。また、指定市町村が財政収入を得るという役割も担っています。
オートレース
小型自動車競走法に基づき公認・運営される、自動二輪車・小型自動四輪車の競走によるギャンブルです。
競走の主催者は都道府県・指定市町村で、勝者投票券(車券)が発売されます。
ボートレース
競艇とも呼ばれ、モーターボートのレースに勝舟投票券を発売して行うギャンブルです。
モーターボート競走法により国土交通省の監督下で、都道府県・指定市町村が主催します。各都道府県の社団法人モーターボート競走会が主催者の委託を受けて実施します。
パチンコ
パチンコは民間が運営しているものの、法律上ではギャンブルとされていません。なぜなら、パチンコ店自体では、出玉を金員ではなく景品と交換しているからです。
地域によって異なりますが、一般にパチンコ店から得た特殊景品(中に金地金などが封入されている景品)は、景品交換所で現金と交換できます。
利用者に対し、直接現金を景品として渡しているわけではないため、パチンコ店が賭博罪で摘発されるケースはほとんどありません。
宝くじ
宝くじ(正式名称「当選金付証票」)はギャンブルの一種ですが、当せん金付証票法という法律があります。
宝くじの売上金は地方財政に当てるための資金などとして活用されています。
賭博罪で逮捕される違法賭博
一般的に娯楽やスポーツとして楽しんでいるものでも、賭け事に利用すれば賭博罪として逮捕される可能性があります。
賭博罪で逮捕される可能性が高い娯楽・スポーツは主に次の通りです。
- 闇スロット(違法パチスロ):営業許可を取っていない状態で、目立たない場所で営業
- 裏カジノ・オンラインカジノ:特定複合観光施設区域以外でルーレットやブラックジャック等に金銭を賭ける
- 賭け麻雀:金銭を賭け、麻雀の勝敗を競う
- 賭けスポーツ:賭けゴルフ、賭け野球等で金銭を賭ける
闇スロットや裏カジノ・オンラインカジノは、運営者だけではなく利用者も逮捕されてしまいます。
1回利用しただけでも、「賭け場だとは知らなかった」という言い訳はまず通らないので注意しましょう。
また、特定複合観光施設区域整備法で指定された区域以外で行うカジノは違法なので、たとえオンラインであっても利用してはいけません。
賭博罪で逮捕された後の流れ
賭博罪で逮捕された場合、警察や検察の判断で次のように手続きが進められていきます。
現行犯逮捕・後日逮捕
警察が賭博場に踏み込んだ場合、賭博店関係者の他、利用者も現行犯逮捕されます。
ただし、利用者は勾留されず、すぐ釈放されるケースが多いです。しかし釈放されたからといって無罪放免となるわけではありません。
賭博場の利用者に対して、在宅事件として捜査が継続されるでしょう。
また、現行犯で逮捕されなくとも、賭博場を捜索した警察官が、以前から利用していた人の個人情報や証拠を見つけた場合、後日逮捕の可能性があります。
勾留・起訴決定
検察官へ送致されると、賭博罪で逮捕した利用者(被疑者)を、勾留(警察の留置施設や拘置所に拘束)するか、それとも在宅で捜査を進めるか決定されます。
多くのケースでは釈放されますが、賭博の常習性の高い人が逮捕された場合、勾留されてしまう可能性が高いです。
検察官が、勾留すると決めたら裁判所に勾留請求をします。裁判所で勾留決定がなされると、警察の留置場内で身柄拘束が継続されます。
勾留期間は最大20日間です。勾留中、取り調べ・捜査が続けられ勾留期間の終了までに、検察官は起訴して裁判にするか、不起訴にして釈放するかを決めます。
刑事裁判・判決
逮捕後23日以内に起訴・不起訴が決まります。起訴されれば刑事裁判が進められます。
常習性がある場合でも、真摯に反省している態度と更生する意思を明確に示せば、たとえ有罪になるとしても執行猶予が付く可能性があります。
執行猶予とは有罪判決による刑の執行を一定期間猶予し、その期間内に再び罪を犯さなければ、刑罰権を消滅させる制度です。執行猶予期間が経過すれば、刑務所に入ることはありません。
執行猶予は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金の場合に認められるので、常習賭博罪(3年以下の懲役)に問われても、適用が期待できます。
なお、単純賭博罪で起訴された場合は、「略式裁判」という書面審査になるケースが多いです。
賭博罪で逮捕されたらすぐ弁護士に相談を
賭博罪で逮捕された場合、動揺してしまい、自分がどうなってしまうのかと不安になるかもしれません。そのような場合は、すぐ弁護士(私選弁護人)と面会し、対応を相談しましょう。
逮捕後72時間以内は家族との面会は認められませんが、弁護士との面会は可能です。賭博で逮捕された経緯について詳しく説明し、どのように対応すべきかを相談しましょう。
大事なことは包み隠さず賭博場にいた状況を打ち明けることです。弁護士は逮捕された本人の事情を正確に聞くことで、今後どのように対応していくか助言できます。
弁護士がきちんと状況把握できれば、賭博が一時のものであり、掛け金も少ないので勾留継続は不要であると、警察・検察側へ強く主張できます。そうすれば、身柄の早期解放も期待できるのです。
たとえ常習賭博罪で起訴されたとしても、弁護士が本人の謝罪と更生の意志を法廷の場できちんと主張し、減刑されるようにしっかりサポートします。
まとめ
今回は多くの賭博事件に携わってきた刑事事件の専門弁護士が、賭博罪の成立要件、賭博罪で逮捕される違法賭博の例、賭博罪で逮捕された後の流れ等について詳しく解説しました。
仲間だけで賭け事をしていれば、賭博罪で逮捕されるリスクはないと油断している人が多いかもしれません。しかし、賭博行為を目撃した人から警察に通報されてしまう可能性もあります。
賭博罪で逮捕されてしまったら、弁護士に早く相談し、今後取るべき対応をすぐに検討しましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。