夫から離婚を切り出されたら?離婚になる?対処法は?
最終更新日: 2024年02月26日
- 妻との暮らしに疲れてしまったが離婚は認められるのか?
- 夫婦で協議や調停をしても離婚が成立しなかったので悩んでいる
- 夫から離婚したいと言われてどうすればよいのかわからない
長年の家族の生活を支えてきたものの、妻との関係が悪化し、離婚を考えている男性は多いでしょう。
一方、夫から離婚を切り出された場合、何とか関係修復を行いたい女性もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、夫が離婚したくなる主な原因、妻が関係修復を行う方法等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 夫が離婚したくなる理由は、「性格の不一致」が圧倒的に多い
- 裁判で離婚をする場合は、民法で規定された条件に該当する必要がある
- 妻が夫から離婚を切り出された場合、調停で問題を解決したり弁護士に相談したりして対応する
夫から離婚を切り出すケースは多いのか?
最高裁判所事務総局の集計「第19表 婚姻関係事件数―申立ての動機別」によれば、家庭裁判所へ離婚に関する申立てをした夫の人数は15,176人となっています。
これに対し、申立てた妻の人数は41,886人となっています。妻の1/3程度の人数ですが、夫の方も年間15,000人が申立てを行っており、決して少なくない人数と言えます。
夫から離婚を切り出したくなる理由
どのような理由で夫が妻と離婚したくなるのかは、いろいろな理由があります。
こちらでは、夫が離婚したくなる家庭内での問題を取り上げます。
出典:令和4年 司法統計年報 3家事編 | 裁判所
性格の不一致
いろいろある離婚理由のなかで最も多いのが、「性格が合わない」という理由です。
最高裁判所事務総局の発表では「性格が合わない」という理由が、離婚に関する申立てをした夫の総数15,176人のうち、9,127人(全体の60.1%)を占めています。
ただし、離婚理由を複数あげる夫も多く、「性格が合わない」という理由の他、様々な問題が重なって離婚を決意したと推察されます。
モラハラ・DV
離婚の理由として「精神的に虐待する(モラハラ)」という理由が3,234人(全体の21.3%)、「暴力を振るう(DV)」という理由が1,353人(全体の8.9%)と、こちらも高い割合となっています。
精神的な虐待(モラハラ)とは、主に次のような言葉の暴力を受けたケースが該当します。
- 「いつまでたっても出世しないわね、隣のご亭主が羨ましい!」
- 「なんで月給が上がらないの!仕事さぼってるんじゃないの!?」
- 「臭いどこかいけ!」 等
家に居場所がない
「家族親族と折り合いが悪い」という理由が1,849人(全体の約12.2%)となっています。
同居している妻や子どもとうまく会話ができない、拒否される、不満を言われる等のトラブルが考えられます。
また、妻の家族と同居している場合は、妻の親との不和も原因の一つと言えるでしょう。
妻が働かない
最高裁判所事務総局の集計には表れていない、離婚をしたくなる理由もいろいろ考えられます。
自分の収入では家計を賄いきれず、妻にもパートやアルバイトしてもらい家計を支えてもらいたいが、妻は全然働こうとしない、というケースもあるでしょう。
この場合、将来の夫婦生活に不安を感じ、離婚したくなるかもしれません。
妻が家事をしない
夫である自分が外で働いているのに、妻は家事をせずになまけている、という場合は離婚をしたくなるかもしれません。
夫婦が共働きの場合、妻が仕事で疲れ、家事にまで手が回らない可能性もあるでしょう。そのようなときは、曜日ごとの家事当番を決めて対応するのもよい方法です。
妻への愛情がなくなった
次のような理由で、妻への愛情・関心がすっかり薄れ、離婚を考えるようになるケースもあるでしょう。
- 休日になっても、自分にかまってくれない
- 妻との夜の営みに関心がなくなった
- 同居するのが苦痛
このような無関心が継続すると、休日を一人で楽しんだり、別の異性に関心を持ったりして、妻とトラブルになる可能性があります。
我慢の限界
いろいろと妻への不満や、家庭への不満を貯め込み、これ以上婚姻関係は続けられない、と考えてしまう場合があります。
離婚を検討する前に、妻へ直して欲しいところを率直に告げた方がよいでしょう。逆に妻から自分の不満を告げられる場合もありますが、そのようなときはお互いに改善する努力が必要です。
普段から言いたい事も言わずに不満を貯め込み、いきなり妻へ離婚を切り出したら、大きな反発を招くおそれもあります。
夫から切り出した離婚が認められる条件
協議離婚の場合は夫婦の合意で離婚が成立します。その協議が不調なら調停離婚で解決を図ります。
離婚の協議や調停では、特に「この条件に合致しなければ離婚は認められない。」という規定はありません。
ただし、「離婚裁判」で離婚の是非を争う場合は、離婚が認められる条件が法定されています(民法第770条)。5つの条件いずれかに合致しないと裁判所は離婚を認めないので注意しましょう。
こちらでは、法定された条件について取り上げます。
妻に不貞な行為があったとき
妻が浮気相手と不貞行為をしていた場合、離婚の訴えを提起できます。
ただし、裁判で妻との離婚が認められるためには、浮気相手と肉体関係があった、という証拠の提出が必要です。
単に見知らぬ相手と仲良くレストランで食事をしたり、日帰り旅行を楽しんでいたりした等の目撃証言・画像・動画だけでは、基本的に不貞行為の証拠とはなりません。
浮気相手との性行為の証拠を得るのは難しい作業ですが、浮気調査を行う専門事業者(例:探偵事務所)に任せれば、確実な証拠を得られる可能性が高くなります。
証拠を掴んだときに探偵事務所が提出する証拠物は次の通りです。
- 調査報告書:調査の経緯や調査対象者の行動記録
- 浮気現場の動画・画像・音声 等
これらの提出物は、裁判のときに不貞行為の動かしがたい証拠となるでしょう。
妻から悪意で遺棄されたとき
妻が正当な理由もないのに、同居を拒否したり、夫との協力や扶け合いを拒んだりした場合、悪意の遺棄に該当します。
具体的には、次のようなケースが悪意の遺棄と判断されます。
- 夫や子どもを自宅へ置き去りにし、頻繁に家出をする
- 夫や家族を自宅から追い出した
- 健康で働ける状態なのに、働きもせず家事もしない 等
ただし、妻が病気やケガをしてしまい入院し帰宅ができない、妻が就職活動中なので生活費を渡せないという場合ならば、悪意の遺棄に当たりません。
妻の生死が三年以上明らかでないとき
3年以上にわたり妻が生存または死亡しているのか、確認できない状態ならば離婚原因として認められます。
ただし、妻の生存はわかっているものの、居場所を教えてもらえず、どこに住んでいるのかわからない場合は対象外です。
妻が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
妻が強度の精神病を発症し、粘り強く治療しても回復の見込みが無いケースです。
しかし、離婚条件に合致したからといって、容易に離婚が認められれば、精神病にかかった妻は、夫から生活費や療養費等の経済的支援が得られなくなるかもしれません。
そのため、精神病を離婚原因とする場合、裁判所は妻を継続的に支援する方法の有無等が考慮され、厳格に離婚の是非を判断します。
その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
妻との婚姻を継続しがたい重大な事由として、主に次のようなケースが該当します。
- 妻からDVやモラハラを受けた
- 妻が子どもを虐待している
- お互いに愛情が無くなりセックスレスになっている 等
妻から夫が暴力を受けた場合の他、子どもへの虐待・ネグレクト等も、婚姻を継続しがたい重大な事由となります。
夫から離婚を切り出されたら妻がすべきこと
夫から離婚を切り出され、妻の方は慌ててしまうかもしれません。
しかし、感情を露わにするのは避け、冷静に対応を行う必要があります。
こちらでは、妻側が押さえておくべき4つの対応策を説明します。
落ち着いて話し合いをする
「まさか夫が離婚を切り出すほど追いつめられていたとは、全く気付かなかった。」と衝撃を受けるかもしれません。
しかし、まずは冷静になり、なぜ離婚したいのか理由を聞いてみましょう。
妻に何らかの不満があるなら、その不満の解消ができれば離婚をしなくてもよいか、2人でよく考えます。
なお、夫の離婚したい理由に妻の方も納得するなら、協議離婚を開始しても構いません。
夫の意見を尊重する
離婚したい夫の意見を尊重しましょう。
妻からみて身勝手な理由(例:子どもの世話ばかりし、自分にかまってくれない等)で離婚したいと主張しても、意見として認め、今後どのような対応をとればよいか、解決策を検討します。
解決策が思い浮かばなければ、弁護士に相談し関係修復のためのアドバイスを受けても構いません。
円満調停
妻が夫との関係修復を図りたいなら、家庭裁判所で行う「夫婦関係調整調停(円満)」を利用してみましょう。なお、離婚した方がよいか迷っている場合も、この調停を利用できます。
調停を行う場合、相手方の住所地または当事者が合意で定めた家庭裁判所に申立てをします。
申立てのときは主に次の書類の提出が必要です。
- 調停申立書とその写し1通
- 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書):本籍地の市区町村役場で取得
- 収入印紙1,200円、連絡用切手
調停は非公開で行なわれ、調停委員が夫婦から事情を聞いたうえで、夫の離婚したい原因を探り、夫婦がどのように努力すれば関係改善が見込めるのか、等について考えます。
調停委員から解決案の提示や助言を受けながら、話し合いによる合意を目指します。
弁護士への相談
夫との関係の修復をしたい、または離婚したい夫の意見に同意し離婚条件を話し合いたい、という場合、夫婦関係のトラブルに詳しい弁護士へ前もって相談しておきましょう。
弁護士は、妻の希望や不安な点をヒアリングし、夫婦の事情に応じた的確なアドバイスを行います。また、弁護士に依頼すれば夫との交渉も任せられます。
夫婦の問題に詳しい弁護士を選ぶときは、法律事務所のホームページを確認しましょう。
夫婦問題の相談実績や、夫婦に関する話題が豊富に掲載されていれば、その分野の交渉や裁判等に詳しい弁護士とわかります。
まとめ
今回は多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、夫が離婚したくなる原因や離婚裁判の条件、離婚したい夫に妻がどう対応するべきか等について詳しく解説しました。
夫婦の関係修復または離婚の協議をする場合、弁護士の力を借りた方が、交渉を有利に進められます。
夫婦の問題に関して、まずは弁護士に相談し、今後の対応をよく話し合ってみてはいかがでしょうか。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。