盗撮による懲戒処分|解雇を回避するためにやるべきこと

2026年04月30日

盗撮による懲戒処分|解雇を回避するためにやるべきこと

通勤中の電車内や駅、商業施設などで盗撮行為に及び、警察の捜査対象となってしまった場合、「会社にバレたらどうしよう」「クビになるのではないか」という不安に苛まれる方は少なくありません。

私生活上の行為であっても、盗撮は懲戒処分の対象となり得ます。特に、懲戒解雇という最も重い処分が下されれば、その後の人生に大きな影響を及ぼすことは避けられません。

しかし、適切な対応を迅速に行うことで、懲戒解雇という最悪の事態を回避できる可能性は十分にあります。この記事では、盗撮による懲戒処分の内容や会社に発覚する経緯、そして解雇を回避するために今すぐやるべきことについて、詳しく解説します。

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士 春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内法律事務所勤務
当事務所開設
資格
宅地建物取引士
情報処理安全確保支援士

「家族が逮捕された」「示談したい」など、300件以上の刑事事件のご相談に対応してきました。(※2026年3月時点)これまでの実務経験をもとに、法律のポイントを分かりやすく解説しています。

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盗撮で行われる懲戒処分の種類と重さ

会社が従業員に対して行う懲戒処分は、その問題行動の内容や結果の重大性に応じて、いくつかの種類に分かれています。盗撮行為が発覚した場合、どのような処分が下される可能性があるのでしょうか。

懲戒処分の種類

懲戒処分は、一般的に軽いものから重いものの順に次のようになっています。どの処分が選択されるかは、会社の就業規則や事案の悪質性などを総合的に考慮して判断されます。

戒告・譴責(かいこく・けんせき)

最も軽い処分です。将来を戒める旨を口頭または文書(始末書など)で通知します。

減給

一定期間、給与から一定額が差し引かれる処分です。労働基準法により、1回の減給額は平均賃金の1日分の半額、総額は一賃金支払期の総額の10分の1までと上限が定められています。

出勤停止

一定期間、会社への出勤が禁止される処分です。その間の給与は支払われないのが一般的です。期間は7日~14日程度が目安となります。

降格・降職

役職や職位を引き下げる処分です。それに伴い、役職手当がなくなるなど給与が下がるケースが多くあります。

諭旨解雇(ゆしかいこ)

会社が従業員に自首退職を促し、合意に基づいて雇用契約を解消する処分です。退職金が支給されることが多く、履歴書にも「一身上の都合」での退職と記載することができる点で、懲戒解雇よりも軽い処分になります。従業員が退職届の提出を拒否した場合は、懲戒解雇に移行することが一般的です。

懲戒解雇

最も重い処分です。会社が一方的に雇用契約を解除します。即日解雇となり、退職金が不支給または減額されることが多く、再就職にも大きな支障をきたします。

盗撮行為は懲戒解雇に相当するのか?

結論から言うと、盗撮行為が直ちに、懲戒解雇に結びつくとは限りません。懲戒解雇は労働者にとって極めて重大な不利益処分であるため、その適用には厳しい要件(懲戒解雇の客観的合理性と社会的相当性)が求められます。

裁判例などを見ると、盗撮を理由とする懲戒解雇の有効性は、以下の要素を総合的に考慮して判断される傾向にあります。

  • 行為の態様:
    常習性、計画性の有無、被害者の数など
  • 会社への影響:
    会社の社会的評価や信用をどの程度傷つけたか
  • 本人の地位や職種:
    管理職や営業職、公務員など、高い倫理性が求められる立場か
  • 犯行場所:
    職場内での盗撮か、業務とは無関係の場所か
  • 事件後の対応:
    被害者との示談が成立しているか、真摯に反省しているか

例えば、初犯であり、事件後すぐに被害者と示談が成立し、深く反省しているようなケースでは、懲戒解雇は重すぎる処分として無効と判断される可能性があります。一方で、職場内で盗撮を行った、常習性がある、報道されて会社の信用を著しく毀損したといった場合には、懲戒解雇が有効と判断される可能性が高まります。

勤務先別に見る盗撮の懲戒処分基準

懲戒処分の基準は、民間企業に勤務しているか、公務員であるかによって大きく異なります。

民間企業の場合

民間企業の場合、懲戒処分の根拠は各社の「就業規則」に定められています。多くの企業では、就業規則の中に「会社の秩序を乱し、または名誉信用を著しく傷つけたとき」といった包括的な懲戒事由が設けられており、私生活上の盗撮行為もこれに該当すると判断されれば処分の対象となります。

特に、バスやタクシーの運転手、教師、警備員など、公共の安全や高い倫理性が求められる職種の場合、私生活上の非行であっても厳しい処分が下される傾向にあります。

公務員の場合

公務員は、国家公務員法や地方公務員法に基づき、「全体の奉仕者」として国民全体の信用を失墜させるような行為をしてはならないと定められています(信用失墜行為の禁止)。そのため、民間企業よりも厳しい基準で処分が判断されるのが一般的です。

人事院が公表している「懲戒処分の指針について」では、盗撮は「性的な言動」に分類され、「公共の場所において、盗撮行為をした職員は、免職又は停職とする」と明記されています。これは極めて重い処分基準であり、公務員の盗撮は原則として免職(懲戒解雇に相当)または停職(出勤停止に相当)になることを示しています。

盗撮が会社に発覚する主な経緯

「自分から言わなければ会社にはバレないだろう」と考える方もいるかもしれませんが、意図しない形で会社に知られてしまうケースは少なくありません。

逮捕・勾留による無断欠勤

盗撮の容疑で逮捕・勾留されると、長期間身柄を拘束されるため会社に出勤できなくなります。警察から会社に直接連絡がいくことは稀ですが、本人も外部と連絡が取れなくなるため、結果的に「無断欠勤」の状態となります。これをきっかけに、家族や弁護士を通じて会社に事情を説明せざるを得なくなり、発覚に至るケースが最も多いです。

実名報道による発覚

公務員や有名企業の社員、役職者などの場合、逮捕された事実が実名で報道されるリスクがあります。ニュースや新聞、インターネット記事などを通じて、会社関係者や取引先の知るところとなり、発覚は避けられません。

警察から会社への連絡

原則として、私生活上の事件で警察が会社に連絡することはありません。しかし、以下のような例外的なケースでは、警察から会社に連絡が入る可能性があります。

  • 職場内で盗撮が行われた場合
  • 会社の備品(業務用スマートフォンなど)が犯行に使われた場合
  • 身元引受人として上司を指定した場合

職場内での犯行が発覚した場合

会社の更衣室やトイレなどで盗撮行為を行った場合、被害者や目撃者が会社の人事部や上司に直接通報することで発覚します。これは会社の秩序を直接的に乱す重大な企業内犯罪であり、発覚は免れません。この場合、懲戒解雇を含む最も厳しい処分が下される可能性が極めて高くなります。

盗撮による懲戒解雇を回避するために今すぐやるべきこと

もし盗撮行為が発覚してしまった場合、懲戒解雇という最悪の結末を回避するためには、迅速かつ的確な初動対応が何よりも重要です。

すぐに弁護士へ相談する

まず最初にやるべきことは、刑事事件、特に性犯罪弁護に強い弁護士に相談することです。一人で悩んでいても状況は悪化する一方です。弁護士に相談することで、以下のメリットが得られます。

  • 被害者との示談交渉を任せられる
  • 逮捕・勾留を回避、または早期の身柄解放に向けた活動をしてもらえる
  • 会社への報告のタイミングや内容について具体的なアドバイスをもらえる
  • 今後の刑事手続きの見通しが立ち、精神的な不安が軽減される

被害者との示談を成立させる

懲戒処分を軽くするため、そして刑事処分を軽くするためにも、被害者の方との示談成立が極めて重要です。示談が成立し、被害者から「宥恕(ゆうじょ)」(許し)を得られれば、検察官が不起訴処分を選択する可能性が大きく高まります。

また、会社に対する報告の際にも、「被害者の方とは和解が成立しております」と伝えることは、真摯な反省の態度を示す有力な材料となり、会社内での処分を決定する上でも有利に働く可能性があります。ただし、加害者本人が被害者と直接接触することはトラブルを招く危険性が高いため、必ず弁護士を介して交渉を進めましょう。

不起訴処分の獲得を目指す

不起訴処分とは、検察官が「起訴(裁判にかけること)を見送る」と判断することです。不起訴になれば、刑事裁判は開かれず、前科もつきません。

刑事事件化しなかった(=不起訴になった)という事実は、懲戒処分の重さを判断する上で非常に重要な要素です。懲戒解雇の妥当性が争われた裁判でも、不起訴処分になったことが解雇を無効とする理由の一つとして挙げられるケースは少なくありません。不起訴処分の獲得を目指す上で、弁護士による示談交渉が鍵となります。

盗撮による懲戒処分に関するよくある質問

Q:盗撮が不起訴になれば、懲戒処分は受けませんか?

いいえ、必ずしもそうとは限りません。刑事処分(起訴・不起訴)と会社の懲戒処分は、根拠も目的も異なる別の手続きです。不起訴処分になったとしても、盗撮という行為自体が「会社の信用を傷つけ、秩序を乱した」と判断されれば、戒告や減給、出勤停止などの懲戒処分を受ける可能性は十分にあります。ただし、不起訴という事実は処分を軽くする上で非常に有利な情状となることは間違いありません。

Q:懲戒解雇された場合、退職金はもらえますか?

会社の退職金規程によります。多くの企業では、「懲戒解雇の場合、退職金の全部または一部を支給しない」と定められています。したがって、全額不支給となる可能性が高いです。しかし、盗撮の態様や会社への影響度によっては、退職金の全額不支給は重すぎると判断され、裁判で争うことで一部支払いが認められるケースもあります。

Q:会社に知られる前に自主退職すべきですか?

これは慎重に判断すべき問題です。自主退職すれば、「懲戒解雇」という不名誉な経歴は残りません。しかし、逮捕・勾留される前に焦って退職すると、その後の示談交渉や弁護士費用で経済的に困窮する可能性がありますし、結果的に不起訴処分になり退職までする必要がなかったと公開する可能性があります。また、失業保険の給付で自己都合退職として扱われ、給付開始が遅れるなどのデメリットもあります。まずは弁護士に相談し、刑事事件の見通しや懲戒処分の可能性を踏まえた上で、最善の選択肢を検討すべきです。

まとめ

盗撮は、刑事罰の対象となるだけでなく、社会人としてのキャリアを根底から揺るがしかねない重大な問題です。特に、公務員や社会的信用の高い企業に勤めている場合、懲戒解雇という厳しい処分が下されるリスクは決して低くありません。

しかし、事件発覚後、いかに迅速に誠意ある対応を取るかで、その後の結果は大きく変わります。弁護士を介しての被害者の方への謝罪と示談交渉、そして不起訴処分の獲得は、懲戒解雇を回避するための生命線です。

もしあなたが盗撮の問題で悩んでいるなら、一人で抱え込まず、一刻も早く刑事事件に精通した弁護士に相談してください。専門家と共に適切な一歩を踏み出すことが、未来を守るための最善の策です。

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