妻の浪費で離婚を考えたときに押さえたい4つの注意点と対処法を解説
最終更新日: 2023年10月31日
- 妻がブランド物のバッグを買ったり、ホスト通いをしたりして浪費がひどいので離婚したい。
- 妻の浪費を理由に離婚したいが、離婚を切り出す前に注意すべき点は何かあるのだろうか?
- 離婚を有利に進めるコツがあるなら、是非教えてほしい。
せっかく生活費のため自分の収入を預金しているのに、妻が勝手に浪費して困っているという方は多いかもしれません。
ただし、妻の浪費を理由に、いきなり離婚を切り出すのではなく、前もって慎重に離婚のための準備を進めた方がよいでしょう。
そこで今回は、多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、妻の浪費が離婚につながる背景や離婚を切り出す前の準備等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 妻の浪費が離婚につながる背景には、家計を管理できない妻への不信感等が考えられる
- 離婚を決意したら、まず財産分与や親権等についてよく考えておく必要がある
- 夫が離婚を有利に進めたいなら、証拠の収集や弁護士への相談も行う
妻の浪費が離婚につながる背景
最高裁判所事務総局の集計「第19表 婚姻関係事件数―申立ての動機別」によれば、離婚の原因として妻の「浪費」と答えた夫は、申立人総数15,176人のうち1,723人と約11%を占めています。
妻の浪費から離婚につながる背景として、主に次のような理由が考えられます。
価値観の不一致
夫は子どもの教育資金のためにコツコツ積立をしたいが、妻はレジャー等に資金を使いたい場合、 夫婦間で資金の使い道に関して、意見が割れる可能性もあるでしょう。
また、家計を管理するはずの専業主婦でありながら、生活費ではなく自分のレジャー等にお金に使えば、夫婦間でトラブルが起きるのは当然といえます。
金銭面のストレス
妻が浪費をしてしまうと、将来に必要な資金(例:マイホームの購入費等)や、子どもができた場合に必要な養育費用が、なかなか貯まらなくなります。
収入を支える夫は、金銭面でのストレスがどんどん貯まっていき、妻との婚姻生活に嫌気がさして離婚を考えるかもしれません。
信頼の低下
後先を考えず、ブランドのもののバッグや衣服を購入する妻に対し、夫はどんどん不信感を強めていくでしょう。
夫婦が共働きで、妻が収入の範囲内で物品の購入やレジャーを楽しむならまだしも、夫が生活費のために渡したお金を浪費されては、今後の生活の維持に支障が出てしまいます。
次第に夫は妻を信頼できなくなり、離婚を考えるようになっていきます。
会話の減少
浪費を繰り返す妻に対して、夫はどんどん愛情が冷めていきます。同じ空間にいるのも嫌な状況になるかもしれません。
当然、会話は減少し家計の管理も夫が行うようになるでしょう。
また、夫婦間で急速に愛情が冷めていき、家庭内別居の状態となる場合があります。
夫婦関係を修復できないまま家庭内別居の状態が長引けば、離婚に発展する可能性は高いです。
妻の浪費で離婚するときの4つの注意点
妻の浪費で婚姻関係の継続が不可能と感じたら、夫が妻へ離婚を切り出す前に、確認しておくべき点がいくつかあります。
主に次の4点をそれぞれチェックしたうえで、離婚の準備に取りかかりましょう。
財産分与
財産分与は夫婦で協力して得たお金を離婚時に分配する方法です。基本的には夫婦が1/2ずつ分けます。
財産分与の割合に関して、法律で「離婚のときは夫婦で必ず等分にしなければならない。」というような規定はありません。そのため、夫婦の協議で自由に分与割合を決定できます。
妻の浪費が原因で離婚手続きを進める場合は、浪費した分を考慮し、分与割合を変更しても構いません(例:夫1/2・妻1/2→夫2/3・妻1/3にする等)。
妻が納得せず合意に至らなかったら、夫は家庭裁判所の調停で調停委員に対し、妻の浪費を根拠に、自分の言い分を主張できます。
親権
親権に関しては妻が有利と言われています。
最高裁判所事務総局の集計によると、妻が親権者となっているのは全体の件数16,739件のうち15,706件と、約94%に上っています(第23表「離婚」の調停成立又は調停に代わる審判事件のうち「子の親権者の定め」をすべき件数―親権者別―全家庭裁判所)。
ただし、協議や調停、裁判において次の主張をすれば、夫が親権者となる可能性もあるでしょう。
- 妻がブランド品の購入やホストにお金を貢ぐ等、家計を圧迫する原因になっている
- 妻が育児放棄し、預金を切り崩して遊びまわっている
- 妻よりむしろ夫や夫の家族(例:親)が子どもの世話をしている 等
もちろん、夫側は妻の浪費に関する客観的な証拠を提示していく必要があります。
養育費
養育費とは、離婚後に未成年の子どもが自立するまでの間、親権者とならなかった親が養育のために支払う費用です。
妻が親権者となった場合、夫は養育費の支払い方法や金額を妻と話し合って決めます。
なお、養育費の金額は、裁判所の公表している「養育費・婚姻費用算定表」を参考に決定しましょう。
ただし、妻の浪費が原因で離婚する場合は、子どもをしっかり養育できるのかが、慎重に話し合われます。
妻に問題があると判断されたら親権者は夫となります。この場合は妻が夫に養育費を支払わなければいけません。
手続きの理解
妻の浪費が原因で離婚する場合、裁判離婚を行うとき法定離婚事由の一つである「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」に該当する可能性があります(民法第770条)。
ただし、いきなり離婚訴訟を起こすのではなく、まずは協議離婚、調停離婚という形で話し合いを進めなければいけません。
妻が全く協議に応じようとしなければ(すでに別居中の場合等)、調停離婚で解決を図ります。その調停も不成立になると裁判離婚へと進みます(調停前置主義)。
このような手続きの流れもしっかりと把握しておきましょう。
妻の浪費で離婚したい夫がすべきこと
夫が離婚を有利に進めたいならば、次の3つの作業を進めておいた方がよいでしょう。
証拠収集
妻の浪費の証拠を集めておきましょう。主に次のような物が有力な証拠となります。
- 妻が貯金を下ろしたとわかる明細や通帳の履歴
- 妻の浪費がわかるレシート
- 勝手に使用された自分(夫)のクレジットカードの引き落とし明細
- 妻が借り入れた消費者金融等の契約書
- 妻が浪費で購入したブランド品の写真や、ホストクラブ等でのホストとの写真
レシートは妻が早めに処分してしまい、確保できない可能性があります。妻が廃棄する前にレシートを押さえておきましょう。
一方、調停離婚や裁判離婚のときは、妻が「夫から受け取る生活費が足りなかった」と主張する可能性があります。
そのときには次のような反論が効果的です。
- 夫婦共有の預金口座に給与の全額を振り込んでいたので、生活費が足りなかったとはいえない
- 共有の預金口座から引き落とされる水道光熱費や毎月の必要な食費等の他に、使途不明の大きな金額が引き落とされた記録がある 等
感情的にならず、証拠を提示し妻の浪費について主張できれば、夫へ有利に離婚手続きは進んでいきます。
慰謝料請求
妻の浪費が原因で離婚する場合は、妻に慰謝料請求も可能です。
妻が仕事を持っている状態なら、浪費された分の経済的利益を算定し請求が行えます。
ただし、妻が専業主婦だったり、パート従業員でわずかな資産しか保有していなかったりすれば、慰謝料請求は困難です。
その場合には財産分与で調整を図りましょう。夫婦が等分に分配せず、妻が浪費した金額分の財産を、夫へ分配するように取り決めるのもよい方法です。
弁護士への相談
離婚を決意したら、弁護士に相談しアドバイスを受けましょう。
妻の浪費が原因で離婚する場合に、弁護士はどのような証拠物を集めるべきか、妻から慰謝料を請求できるか、話し合いで解決できない場合の対応等をわかりやすく説明します。
また、夫婦が別居している場合、弁護士を代理人にたてれば、自分の代わりに妻との離婚交渉を任せられます。
まとめ
今回は多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、妻の浪費を理由に離婚するときの注意点や、交渉を進めるポイント等について詳しく解説しました。
妻との交渉のときに、感情的になってしまうことがあるかもしれません。しかし、スムーズな離婚成立のためには、夫には冷静な対応が必要です。
夫が妻の浪費で離婚を決意したなら、なるべく早く弁護士に相談し、今後の対応を話し合ってみてはいかがでしょうか。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。