不貞行為を隠して調停した配偶者に対してあとから条件変更できる?気づいたらすべき対応を解説
最終更新日: 2023年11月17日
- 離婚成立後に元配偶者の不貞行為がわかったときは離婚条件に影響するだろうか
- 調停離婚を行った後に元配偶者の不貞行為が発覚したときは慰謝料請求できるのか
- 元配偶者が不貞行為を隠したまま調停離婚が成立した場合はどのように対応すればよいのか
夫婦が性格の不一致等が原因で離婚について話し合い調停離婚等で合意したが、実は夫婦の一方が不貞行為をしていたという事実が後で発覚する場合もあります。
そのような場合は、不貞行為を黙っていた側に慰謝料請求や財産分与の割合、親権・養育費の金額等の修正を要求できる可能性があります。
そこで今回は、多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、不貞を隠して調停を進めるリスク、不貞を隠して調停されたと気づいたときに行った方がよい対応等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 不貞を隠していた場合、事実の発覚により事後に離婚条件が変わることや慰謝料を請求される可能性がある
- 元配偶者の不貞行為に気付いた側は、慰謝料請求の他、財産分与の増額、親権の変更等を請求できる可能性もある
- 調停後に相手の不貞行為が疑われる場合は、証拠収集や弁護士への相談が有効な方法になる
不貞を隠して調停を進めるリスク
協議離婚するときに離婚の理由は問われません。夫婦の性格の不一致はもちろん、夫婦の一方が離婚したいと言い、他方が合意すれば離婚は成立します。
しかし、たとえば夫婦の一方が不倫相手と結婚したいために不貞行為の事実を隠して離婚を成立させた場合、その責任を問われる可能性はあります。
不貞が発覚する
後から不貞行為が発覚するのは、たとえば次のようなケースです。
- 離婚成立後に夫婦の一方が自宅を去るときに、配偶者のSNSやLINE、メールで不倫相手と連絡をとっていた事実がわかった
- 離婚成立後に自分の所有物を取りに配偶者宅へ行ったときに、婚姻中の年月日が記載された不倫相手の妊娠や堕胎に関する記録や証明書を見つけた
- 現在、離婚した配偶者が不倫相手から訴えられている 等
このような場合は、改めて証拠を集める等して、離婚条件の決め直しも可能です。
離婚条件が変わる
離婚当時に(元)配偶者が不倫していた事実を知っていれば、財産分与や養育費等をもう少し高く請求できたと認められる場合は、差額分の請求が認められる可能性があります。
改めて調停で離婚給付や養育費等を決め直したい場合は、次のような申立てができます。
- 財産分与調停
- 慰謝料請求調停
- 養育費請求調停
- 面会交流調停
- 親権者変更調停 等
金銭の増額だけでなく、不貞行為をした配偶者と子どもとの面会交流内容を変更したり、不貞行為をした配偶者に子どもを任せられないとして親権者変更を求めたりするために、改めて調停で話し合うことも可能です。
慰謝料請求
離婚成立時にたとえ慰謝料請求しない旨の取り決めがあったとしても、配偶者が不貞行為の事実を隠していた場合は、慰謝料支払いを請求する側は、改めて慰謝料の支払いを交渉することが考えられます。
ただし、離婚時の合意書(協議書)に清算条項があれば後日不倫がわかっても慰謝料請求はできないのが原則です。また慰謝料の請求には、次のような時効があるので注意しましょう。
- 不倫の事実および不倫していた当事者を知った日から3年(消滅時効)
- 配偶者と不倫相手との不倫関係が始まった日から20年(除斥期間)
不貞を隠して調停が進められた後にできること
離婚成立後、元配偶者が不貞行為を隠していたとわかったときは、次のような離婚給付や離婚条件の変更を交渉することはできます。ただし、離婚成立時の条件内容を変更することは原則できません。
慰謝料の請求や増額
離婚成立時には慰謝料請求しないという合意をしていたものの、配偶者が不貞行為を隠していた事実に気付いた場合は、改めて慰謝料の交渉をすることは可能です。
不貞行為を隠していた事実は非難されるべき行為ですが、多くの場合、離婚成立時の条件内容を変更することが難しいのが現実です。
財産分与の増額
財産分与は婚姻中、夫婦が協力して形成した財産を、離婚時または離婚後に分配する方法です。
離婚成立時に不貞行為がわかっていればさらなる増額を要求していたという場合は、交渉によって元配偶者に財産分与の増額を請求できる可能性があります。
話がまとまらない場合は、離婚から2年以内に家庭裁判所に「財産分与調停」を申し立てることにより、解決が図れます。
婚姻費用
婚姻費用とは、家を出て別居した側に必要な生活費用等を指します。
離婚を前提に別居するケースも多く、別居した所得の低い側が、所得の高い配偶者へ婚姻費用の支払いを請求できます。
婚姻費用を請求する側が事前に配偶者の不貞行為を知っていたとすれば、もっと高額な費用を請求できたと認められるときは、離婚後も婚姻費用の増額請求ができる可能性があります。
親権
不貞行為を隠していた元配偶者が親権者となっていた場合は、親権を持たない親は、家庭裁判所に「親権者変更調停」の申立てができる可能性があります。
不貞行為の事実が発覚した元配偶者をそのまま親権者にしておくと子どもに悪影響が出るかもしれない、と主張すれば親権や監護権を取り戻せる可能性があります。
なお、離婚後の親権者変更は当事者だけの話し合いで決めず、必ず家庭裁判所の調停・審判を行わなければなりません。
面会交流
不貞行為を隠していた元配偶者が親権者となっているときは、子どもが心配だという理由で面接交流をしたり、その機会を増やしたりする請求も可能性があります。
当事者の話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に「面会交流調停」の申立てができます。
出典:面会交流調停 | 裁判所
不貞を隠して調停されたと気づいたらすべき対応
調停時に、元配偶者が不貞行為を隠していたと気付き、条件変更や新たに離婚給付等の請求を行いたいのであれば、次の対応をとりましょう。
調査依頼
探偵社等の調査会社に調査を依頼する方法があります。
ただし離婚後に調査会社が元配偶者とその相手の交際事実を突き止め、動画・画像を撮影しても、残念ながら不貞行為の証拠にはなりません。
交際が(元)配偶者との婚姻中から続いていたか、婚姻中も不倫相手と性行為を行っていたかを証明する必要があります。
調査会社には、婚姻中から不貞行為が続いていたという証拠を集めてもらいましょう。
証拠収集
自分でも、元配偶者が不貞行為を隠して調停していたという証拠を収集しましょう。
離婚成立後しばらく経ってからでは、たとえ元配偶者宅に立ち入っても、確実な証拠は得られないかもしれません。
そのような場合は不倫相手と考えられる人の氏名・住所がわかっていれば、当人を説得し、不倫の証拠(例:妊娠や堕胎に関する証明書、元配偶者と連絡を取り合っていた記録・履歴等)を収集するのも1つの方法です。
不倫相手と交渉する場合は、法律の専門家である弁護士を立てた方が、成功率が高くなります。
弁護士への相談
元配偶者が調停時に不貞行為を隠していた事実が判明したときは、弁護士に相談してみましょう。
弁護士は相談者の事情をよく聴いて、今後取るべき手続きの流れ、交渉や裁判を有利に進めるコツについてアドバイスします。
弁護士に依頼すれば、元配偶者や不倫相手との交渉、調停の申立てや裁判手続き等を任せられるので安心です。
まとめ
今回は多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、調停時に元配偶者が不貞行為を隠していた場合の対応方法等について詳しく解説しました。
素人では離婚後の証拠の収集や、元配偶者・不倫相手との交渉は困難です。調査会社や弁護士のサポートも受けながら手続きを進めていきましょう。
離婚後に元配偶者の不貞行為の事実がわかったときは、早く弁護士に相談して、今後の対応の仕方を話し合ってみましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。