意匠権を専門弁護士が解説!取得の流れ・リスク・すべきことを詳しく紹介
最終更新日: 2024年01月31日
- 私は知財の担当をしていますが、自社製品の模倣品に頭を抱えています。有効な対策を取りたいです。
- 意匠権の取得を検討していますが、手続きに戸惑っています。専門家への相談を検討しています。
- 意匠権の取得に関して弁護士へ相談した場合、弁護士はどのようなサポートをするのでしょうか?
自社製品のコピー製品、模倣品に頭を悩ます知財担当者は多いことでしょう。
これら模倣品対策に活用できる知的財産権の1つとして、「意匠権」があげられます。
ただし、自社製品であるからといって意匠権は勝手に主張できず、特許庁への登録が必要となります。
そこで今回は、多くの知的財産権問題に携わってきた専門弁護士が、意匠権の取得方法、意匠権の手続きを弁護士へ依頼するメリット等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 意匠権はコピー商品、類似商品、模倣品を法的な強制力で排除できる権利
- 他社との差別化を図り、自社が安定した利益を得るためには、意匠権の取得が必要
- 意匠権の手続きや措置を弁護士に依頼すれば、円滑に知的財産権問題を解決できる
意匠権を弁護士が解説
意匠権とは、物の形状や模様、色彩等のデザインを保護する権利です。特に工業製品等は、この意匠権で保護される場合があります。
意匠については「意匠法」で権利の保護と利用や規制、罰則等が法定されています。
意匠として保護されるのは次のデザインです(意匠法第2条)。
- 物品の形状や模様、色彩またはこれらの結合:工業製品のデザイン等
- 建築物の形状等:建物の外観のデザイン
- 画像(画像を表示する機能を有するプログラム等も含む):WEBサイトのデザイン等
更に意匠権を有する者は業として、登録意匠および登録意匠と類似の意匠を実施する権利の専有(独占)が認められています(同法第23条)。
なお、意匠権の存続期間は意匠登録出願の日から25年です(意匠法第21条第1項)。
意匠権の取得の流れを弁護士が解説
企業は自社製品のデザインを守るため、特許庁へ速やかに登録したいものです。
こちらでは、意匠権を取得するまでの流れについて説明します。
願書提出
まずは同じような意匠が公開されていないかを調査します。
独立行政法人工業所有権情報・研修館が設ける「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」では、意匠に関する検索が可能です。
確認後、意匠登録願に必要事項を記載し、特許印紙を貼付した上で特許庁に提出します。
意匠登録願は、工業所有権情報・研修館の「知的財産支援ポータルサイト」内の「各種申請書類一覧」で取得可能です。
審査
願書等を特許庁に提出後、審査官が審査を開始します。意匠登録の要件を満たしているかどうかについて確認します。
審査官から登録要件を満たしていないと判断された場合、登録できない理由が示された「拒絶理由通知書」を出願者(企業)に送付します。出願者は拒絶理由通知に対する意見書や、補正書の提出が可能です。
登録料支払い
意匠登録の要件が満たされていた場合、特許庁で登録査定が行われ、「登録査定謄本」が出願者に送付されます。
出願者が登録料を納付し、特許庁から設定登録されると意匠権が発生します。この意匠権の内容は、「意匠公報」で一般に公開されます。
なお、「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」を使用すれば、無料で意匠公報の閲覧が可能です。
一方、意見書・補正書を提出したものの、拒絶理由が解消されず、登録要件を満たしていないと判断されたならば、出願は拒絶(拒絶査定)され「拒絶査定謄本」が出願者に送られます。拒絶査定に対して、出願者は「拒絶査定不服審判」の請求が可能です。
意匠権を取得すべき状況を弁護士が解説
意匠権は、自社製品があるからといって必ず取得しなければいけない権利ではありません。
ただし、他社との差別化を図り、自社の安定した利益を望むなら、必要不可欠な権利と言えます。
他者との差別化
自社製品・部品の機能が、自社で創造したデザインと結びついている場合、当該デザインを意匠登録すれば、その機能のある製品・部品の独占販売が可能です。
次のような製品の差別化で意匠登録を行う場合が多いです。
- 日用品や玩具:おもちゃ、スマホ用ケース、文房具類、体重計、調理用品、ハブラシ等
- 住宅関連の製品:テーブル、デスク、椅子、照明器具、システムキッチン、浴槽等
- 機械製品:工作機械、農機具
独占
意匠権を取得すれば、デザインの独占が可能です。
デザインを独占していなければ、次のような問題が生じます。
デザインのよさで高い売り上げを誇る製品(例:アクセサリー、メガネ等)があった場合、模倣品の販売により売り上げの減少が想定されます。
他社からの発注で納品している部品があり、別の会社で類似のデザインを製造できた場合、発注先を変更されてしまうおそれがあります。
しかし、製品や部品の意匠権を取得していれば、模倣品や類似品は販売できません。つまり、意匠権を有していれば安定した利益が得られるわけです。
意匠権を弁護士に相談しないリスク
意匠権を取得できるかどうかは時間との戦いと言えます。
なぜなら、意匠権を取得できるのは未発表のデザイン、または発表してから6か月以内のデザインに限定されるからです。
国内で自社製品として発表したのち、販売を開始したのち、新聞や雑誌、インターネット上にデザインを掲載したのち、6か月を過ぎると意匠権の取得は不可能となります。
更に、あるデザインを自社が出願について検討しているとき、類似のデザインを他社が出願すると、自社は意匠権を取得できません。
つまり、自社製品のデザインの変更を余儀なくされてしまいます。
しかし、意匠権に関する手続きを、弁護士になるべく早く相談すれば、自社が権利を取得できる可能性が高くなります。
意匠権を弁護士に依頼すべき活動
意匠登録を出願したくても他の業務に追われていたり、自社の知財担当者だけでは模倣品対策に苦慮していたりするならば、意匠権に詳しい弁護士へ対応を依頼しましょう。
手続き代行
意匠権に詳しい弁護士ならば、意匠登録の出願手続きを迅速に進められます。
出願前に弁護士へサポートを依頼すれば、自社製品全体の意匠をとるのが適切か、それとも部分意匠(自社製品の一部のデザインだけ意匠登録する方法)をとったほうがよいのか、等ついて相談できます。
弁護士は意匠法や過去の経験から、どちらで手続きを進めた方がよいのか、的確な提案が可能です。
また、弁護士がいれば出願後の特許庁からの連絡・通知へ適切に対応します。
たとえば、特許庁から拒絶理由通知が送付された場合、弁護士は意見書で説得力のある法的な反論が可能です。
出願に関する手続きを弁護士が代行すれば、意匠権の取得期限まで余裕を持って設定登録が受けられます。
模倣品対策
たとえ意匠権を登録しても、他社がその権利を侵害するおそれはあります。そのようなとき、弁護士は毅然とした措置を実行できます。
他社が無断で類似のデザインを使用しているならば、弁護士は自社に代わって警告や法的措置をとることが可能です。
具体的には、弁護士は自社の同意のもとで、権利侵害の相手に警告のため内容証明郵便を送付し、それに従わない場合は裁判所へ損害賠償請求訴訟の提起等を行います。
意匠権のトラブルへの交渉等に精通した弁護士をたてれば、効果的な模倣品の排除が可能です。
意匠権取得なら弁護士にご相談を
今回は知的財産権問題の解決に尽力してきた専門弁護士が、意匠権の手続きや模倣品の排除を、弁護士へ任せるメリット等について詳しく解説しました。
特に自社製品の模倣品に関するトラブルは、訴訟にまで発展する可能性があります。この場合は知的財産権に詳しい弁護士をたてて、慎重に手続きを進めていきましょう。
弁護士の的確なサポートを受けながら、自社製品のデザインの保護を図ってみてはいかがでしょうか。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。