【弁護士監修】別居中の生活費は請求できる?相場や参考例、請求方法を解説

最終更新日: 2024年09月27日

【弁護士監修】別居中の生活費は請求できる?相場や参考例、請求方法を解説

別居を検討されている方の中には、「生活費はどうなるの?」と不安に思われている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、弁護士の視点から、別居中の生活費について、請求できるのか、相場、そして注意すべき点などを詳しく解説します。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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別居中の生活費は請求できる?

結論から言うと、別居中でも婚姻費用を請求できる可能性は十分にあります。こちらではその費用の決め方について解説します。

婚姻費用とは

夫婦の一方が離婚の意思を固め別居した場合、別居生活を維持するためにいろいろとお金がかかります。別居中の生活には、主に次のような費用が必要です。

別居した人の生活費:家賃や税金、食費、水道光熱費等

別居した子どもの費用:学費、養育費、医療費等

別居した人の交際費、娯楽費:常識的に必要と考えられる範囲

子どもも連れて別居したときは、別居した人の費用だけでなく、子どもの学費や医療費も考慮しなければなりません。これらの生活費のことを、法律上では「婚姻費用」と呼び、生活費を支払うことを「婚姻費用を分担する」と言います。

民法では、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と規定しています(民法第752条)。別居中でも、互いに生活を扶助する義務があるので、収入の多い配偶者に対し婚姻費用の請求が可能です。

ただし、たとえば「〇〇日間別居した場合、〇万円を支払わなければならない」と、法律で決まっているわけではありません。別居中の婚姻費用をどれくらい支払うかは、本来夫婦で相談するものです。

婚姻費用の相場

婚姻費用の金額は、夫婦それぞれの収入、年齢、職業、子どもの有無など、様々な要素によって異なります。そのため、一概に「相場」とは言えませんが、裁判所が公表しているデータによると、月額10万円から15万円が最も多いようです。

婚姻費用の相場

出典:令和5年 司法統計年報 3家事編

婚姻費用の参考例

婚姻費用の算出には、「養育費・婚姻費用算定表」というものが存在します。

この算定表は、裁判所が婚姻費用の金額を決める際に参考にしているもので、夫婦の収入などを入力することで、おおよその金額を算出することができます。

こちらでは、「養育費・婚姻費用算定表」を参考に、以下の場合、婚姻費用が毎月どれくらいになるか算定します。

婚姻費用を支払う側:夫(会社員、年収760万円)

婚姻費用を受け取る側:妻(パート従業員、年収150万円)

子供の年齢と人数:15歳未満の子供が一人

妻のみが別居し、夫が子供の監護をする場合、婚姻費用は約6万2000円です。一方、妻が子供を連れて別居する場合は約13万5,000円かかります。

出典:養育費・婚姻費用算定表

婚姻費用を請求できないケース

婚姻費用を請求できないケース

別居中の婚姻費用は、夫婦の一方がもう一方に生活費を請求できる制度ですが、必ずしも請求できるわけではありません。例えば、有責配偶者からの請求といったケースが挙げられます。

有責配偶者とは、 夫婦関係を破綻させた原因を作った配偶者のことです。

不貞行為、DVなど、明らかに夫婦関係を破綻させた側の配偶者は、有責配偶者とみなされる可能性が高く、婚姻費用の請求が認められないか、減額されることがあります。

婚姻費用の請求期間

婚姻費用は、一般的に別居開始時から、離婚が成立する時、または夫婦が同居を再開する時までの間請求することができます。

相手が婚姻費用の支払いを拒否し続けている場合などには、過去にさかのぼって請求できる可能性も考えられます。

さかのぼって請求する場合、原則として請求した時点までさかのぼって支払い義務が発生します。 ただし、過去にさかのぼって請求できる期間は、裁判所によって異なり、認められないケースも少なくありません。

また婚姻費用がさかのぼる始期となる「請求時」は、調停申し立て時のみならず、内容証明郵便で婚姻費用の分担を求める意思を表明した時でもよいとされています。

婚姻費用の請求方法

婚姻費用の請求方法

調停の申立て

夫婦間で婚姻費用の話し合いが行き詰ったら、家庭裁判所で解決を図りましょう。

相手方の住所地の家庭裁判所または当事者が合意で決めた家庭裁判所に、「婚姻費用の分担請求調停」を申し立てます。

申立て時の主な必要書類等は次の通りです。

・申立書及びその写し1通:申立用紙は家庭裁判所の窓口等で取得

・夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書):本籍地の市区町村役場で取得(1通450円)

・申立人の収入関係の資料:源泉徴収票、給与明細、確定申告書等の写し

・収入印紙1200円分

・連絡用の郵便切手

調停では、夫婦の資産やそれぞれの収入、子も別居しているのか等の事情を踏まえ、調停委員(2名)が解決案の提示や助言を行います。

出典:婚姻費用の分担請求調停

審判の申し立て

調停で話し合いが進められ、双方が合意できれば調停成立となり、調停調書が作成されます。調停が不成立になったときは、自動的に審判手続が開始されます

審判に移行後、当事者が再度の話し合いを行うわけではありません。 裁判官が必要な審理を行い、一切の事情を考慮したうえで、婚姻費用の決定を下します。

まとめ

別居中の生活費は、法律に基づいて請求できる可能性があります。しかし、具体的な金額や手続きについては、個々のケースによって大きく異なります。

もし、別居を検討されている場合は、弁護士に相談し、ご自身の状況に合った適切なアドバイスを受けることをおすすめします。

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