別居と離婚における5つの注意点を弁護士が解説!実施方法やメリット・デメリットも紹介

最終更新日: 2023年07月04日

離婚 別居

  • 離婚前に別居するメリットはなにか?
  • 離婚前に別居するデメリットはなにか?
  • 離婚前に別居するときの注意点を知りたい

夫婦が離婚に至る経緯はさまざまです。片方が離婚を決意してもなかなか合意に至らなかったり、感情的になってしまって冷静な話し合いができなかったりするなどを理由に、離婚前に一度別居を選択することはそう珍しいことではありません。

本記事では、実際に別居するにあたってのメリットやデメリット、注意点などを詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 離婚における別居のメリットは、「冷静な話し合いが期待できる」「離婚の本気度を伝えることができる」「離婚事由をつくることができる」などがある
  • 離婚における別居のデメリットは、「復縁が難しい」「離婚事由にあたる証拠を集めづらい」「悪意の遺棄を問われる可能性がある」などがある
  • 離婚前に別居する注意点は、「別居の定義を理解する」「別居する前に双方の合意を取っておく」「親権を望む場合は必ず子どもを連れていく」「離婚事由に必要な別居期間を理解する」「別居前に入念な準備をしておく」の5つがある

離婚に強い弁護士はこちら

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

離婚における別居のメリット

ここでは、離婚における別居のメリットを以下の3点から解説します。

  • 冷静な話し合いが期待できる
  • 離婚の本気度を伝えることができる
  • 離婚事由をつくることができる

それでは1つずつ、見ていきましょう。

冷静な話し合いが期待できる

離婚における別居のメリット1つ目は、冷静な話し合いが期待できるという点です。

別居することで、夫婦間の緊張やストレスが軽減し、冷静に話し合える可能性があります。また、自分自身の想いや考えを整理し、論理的に相手に伝える準備ができるでしょう。

離婚にはさまざまな形式がありますが、いずれの場合もお互いが結論に対して納得している状態が、わだかまりもなくベストだと言えます。互いに冷静になり建設的な話し合いを経て、こじれることなく離婚に向けて歩んでいくためにも別居は有用だと言えるでしょう。

離婚の本気度を伝えることができる

離婚における別居のメリット2つ目は、離婚の本気度を伝えることができるという点です。

コストがかかっても別居を選択することで、相手に対して離婚への本気度がより伝わるはずです。また、夫婦間に適切な距離が生まれると相手に頼っていた部分が明らかになるため、離婚後の生活がよりリアルに感じられ、話し合いに真剣に臨む姿勢が醸成されることでしょう。

離婚はどのような形であれ、話し合いのうえに成立します。別居によって、お互いの本気度や真摯な姿勢をそろえることは重要だと言えます。

離婚事由をつくることができる

離婚における別居のメリット3つ目は、離婚事由をつくることができるという点です。

お互いが合意に至らず裁判離婚となった場合には、民法上で定められている離婚事由に当たらなければ離婚は認められません。離婚事由の1つに「その他婚姻を継続し難い重大な事由」があり、長期間の別居はこれに当たると判断される可能性があります。

離婚事由にあたる具体的な別居期間は夫婦の同居期間や子どもの有無などが関わりケースバイケースなため一概に言えません。気になる方は、弁護士に相談してみることをお勧めします。

出典:民法第七百七十条 | e-GOV法令検索

離婚における別居のデメリット

ここでは、離婚における別居のデメリットを以下の3点から解説します。

  • 復縁が難しい
  • 離婚事由にあたる証拠を集めづらい
  • 悪意の遺棄を問われる可能性がある

それでは、1つずつ見ていきましょう。

復縁が難しい

離婚における別居のデメリット1つ目は、復縁が難しいという点です。

別居することで、復縁が難しくなる可能性があります。 別居によって一度距離をおくことで、気持ちが再燃する可能性もありますが、住まいを別にすることで復縁にむけたコミュニケーションをとることも困難になるためです。

別居をするにあたって、一定の覚悟が必要なことは言うまでもありません。

離婚事由にあたる証拠を集めづらい

離婚における別居のデメリット2つ目は、離婚事由にあたる証拠を集めづらいという点です。

相手に不貞行為やDV・モラハラなど、離婚事由にあたる行動があった場合でも、別居によって距離ができてしまえば証拠を集めるのが困難になります。

また、財産の動きを追いかけることも難しくなるため、離婚後の財産分与を考えるのであれば別居開始までの財産の状況をしっかりと把握しておくことが重要です。

悪意の遺棄を問われる可能性がある

離婚における別居のデメリット3つ目は、悪意の遺棄を問われる可能性があるという点です。

民法752条は、

夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない

と定めています。もしあなたが互いの同意や合理的な理由がないままに、別居を強行した場合、離婚事由にあたる「悪意の遺棄」だとみなされることがあります。

悪意の遺棄とみなされた場合、離婚の有責者となり不利な立場に立たされる可能性があります。

離婚前に別居すべきケース

離婚前に別居するときにはメリット・デメリットの双方をしっかりと把握して実行に移さなければなりません。一方で、明らかに離婚前に別居すべきケースも実在します。ここでは、そのようなケースを以下の3点を挙げて紹介します。

  • DVやモラハラを受けている
  • 相手が不倫している
  • 子どもに異常が見られる

DVやモラハラを受けている

離婚前に別居すべきケースの1つ目は、DVやモラハラを受けている場合です。

DV(家庭内暴力)やモラハラを受けている場合、別居することを考えるのは当然です。心身にダメージを受けている状態では冷静な思考や行動がとれないうえに、離婚を切り出すことで被害が一層ひどくなってしまう可能性があります。

まずは身の安全を確保し、しかるべきサポートを受けたうえで離婚の手続きに入ったほうがいいでしょう。また、このような場合は別居を切り出すこと自体が危険な可能性もあります。弁護士や行政・民間の支援団体など、専門家による早めのサポートを受けることを強くお勧めします。

相手が不倫している

離婚前に別居すべきケースの2つ目は、相手が不倫している場合です。

不倫が発覚した場合、夫婦間の信頼や愛情が揺らぎ、時には著しい精神的ストレスを感じることもあるでしょう。民法第770条は、不倫(不貞行為)を離婚事由として認めています。

動画や画像、メール・音声など不倫を立証するだけの証拠を押さえることができていれば、相手の有責で離婚請求することも可能です。自身の感情や考えを整理するための時間を確保するためにも、別居したほうがいいかもしれません。

子どもに異常がみられる

離婚前に別居すべきケースの3つ目は、子どもに異常がみられる場合です。

2人の間に子どもがいる場合、同じ屋根の下で生活する子どもは両親の様子を敏感に感じ取っている可能性があります。実際、2021年に3歳から6歳の子どもを持つ母親を対象に行われた調査によると、夫婦間の葛藤と子どもの問題行動の多さが比例することが報告されています。

2人が揃うことで、子どもに過剰なストレスがかかり心身に異常が見られるのであれば、相手や子どもとよく話したうえで、一度距離を取ったほうがいいかもしれません。

出典:夫婦関係と養育態度が子どもの問題行動に及ぼす影響|幼年教育研究年報 第44巻

離婚前の別居5つの注意点

離婚前に別居をするときには、把握しておくべきさまざまな注意点があります。ここでは、別居を後悔しない為に、以下の5つの注意点を紹介します。

  • 別居の定義を理解する
  • 別居する前に双方の合意を取っておく
  • 親権を望む場合は必ず子どもを連れていく
  • 離婚事由に必要な別居期間を理解する
  • 別居前に入念な準備をしておく

それでは、1つずつ見ていきましょう。

別居の定義を理解する

1つ目の注意点は、別居の定義を理解することです。

一般的に別居は夫婦としての共同生活を否定するものだと考えられます。つまり、単身赴任や入院など、円満な夫婦関係のうえで居住地を別にする場合には離婚紛争における別居とは呼ばないのです。

もし、離婚に至った場合、別居開始日は財産分与の基準日にあたり重要な意味を持ちます。自分は別居のつもりであったが実際には別居と認められない等といった場合には、あなたにとって不利な状況になる可能性もあるため、しっかりと別居の定義を理解しておきましょう。

別居する前に双方の合意を取っておく

2つ目の注意点は、別居する前に双方の合意を取っておくことです。

DVやモラハラなどの明確な離婚事由にあたる行動がない場合には、別居は双方の合意を原則としています。合理的な理由なく、あなたが別居を強行してしまった場合、夫婦における同居義務に違反したとみなされて離婚の責任を問われる可能性があります。

可能な限り、配偶者の合意を取り付けたうえで別居しましょう。

親権を望む場合は必ず子どもを連れていく

3つ目の注意点は、親権を望む場合は必ず子どもを連れていくことです。

親権争いの争点は、離婚によって子どもが受ける影響の最小化や、これまでの監護者が主に誰だったかなどになります。もしあなたが我が子の親権を望むのであれば、子どもと一緒に別居し監護実績を積んでおくことで有利になる可能性があります。

ただし、配偶者の合意なく子どもを連れて別居してしまった場合は、違法性を問われることもあるため注意が必要です。

離婚事由に必要な別居期間を理解する

4つ目の注意点は、離婚事由に必要な別居期間を理解することです。

相当な期間別居をし夫婦関係が破綻していると見なされば、その他に離婚事由がない場合でも離婚できる場合があります。離婚に必要な別居期間は3年から5年と言われることもありますが、夫婦によって幅があり、一概に目安を提示することは難しいのが実状です。

さまざまな背景を加味したうえで必要な期間を知る為には、専門の弁護士に相談してみるのがよいでしょう。

別居前に入念な準備をしておく

5つ目の注意点は、別居前に入念な準備をしておくことです。

別居のときには、生活費の確保を最優先としましょう。これまで、収入の多くを相手に頼っていた場合はなおさらです。同居している段階から費用のシミュレーションなどを詳細に行っておく必要があります。

また、別居前に回収できる離婚事由をできるだけ集めておくことも重要です。もし、別居したあとにサポートしてくれる身内の人間や友人がいるならば、事前に理解を得ておきましょう。専門弁護士に事前に相談しておけば、事前に準備しておくべきことや、利用できる可能性のある助成金の案内も受けられるかもしれません。

まとめ

本記事では、離婚のメリット・デメリットをはじめ、別居するときに注意すべき点などを説明してきました。

別居とひとくちに言っても、その定義や準備すべき内容は様々です。別居を後悔しないためにも、早めに弁護士に相談することを強くお勧めします。

離婚に強い弁護士はこちら

離婚のコラムをもっと読む