痴漢事件を起こしてしまった場合の示談交渉について

最終更新日: 2022年11月02日

はじめに

電車内や路上などで痴漢行為をしてしまい被害届が出されると、被疑者は警察から捜査を受けることになります。

被害者に対して謝罪をしたい、慰謝料(示談金)をお支払いして償いをしたいと考える被疑者の方もおられるでしょう。

また、逮捕・勾留された状態から釈放されるため、また前科が付くことを避けるために示談交渉をしたいと考える被疑者の方もおられるでしょう。

今回は、痴漢事件を起こしてしまった場合の示談交渉についてご説明します。

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痴漢事件における示談とは

示談(じだん)とは、加害者が被害者に対して自身の犯した過ちについて誠心誠意、謝罪し、示談金(慰謝料、賠償金)の支払いなど、被害者が納得する解決方法を話し合い、最終的に、許しを得ることをいいます。

なお、罪を認めて謝罪するのが通常ですが、故意はなかったなど、犯罪の成立は否認しているけれども、相手方に嫌な思い、ご迷惑をおかけしたことは間違いないという意味で謝罪をして、許しを得る場合も稀にあります。

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痴漢事件で示談が成立した場合

痴漢事件において、示談が成立した場合、事件発生直後の時期には、被害届が取下げになり、捜査も終了となることがあります。当然、この場合、前科はつきません。

もっとも、多くの痴漢事件では、警察から検察庁に事件は送致され、検察官が起訴処分とするか、不起訴処分とするかを決めることとなります。

そして、起訴処分となり有罪判決が確定した場合には前科がつきますが、不起訴処分となった場合には前科はつきません。

初犯の場合には、迷惑防止条例違反の場合も強制わいせつ罪の場合も不起訴処分となる可能性が高いといえます。また、過去に1、2件の痴漢事件の前科がある場合であっても、不起訴処分となる可能性はあります。

痴漢事件の謝罪文(反省文)の例文、書き方について

被害者と示談交渉をするにあたっては、まずは加害者の謝罪、反省の気持ちを被害者側に伝える必要があります。被害者側が加害者と直接会ってくれることは通常ありませんので、加害者の弁護士に謝罪文(反省文)を託すこととなります。

このような謝罪文(反省文)を作成する経験がない方が大半ですから、書き方がわからずインターネットで例文、ひな形を検索する方もおられます。

しかし、インターネット上にある謝罪文(反省文)は、当該事件を前提としていない、どのようなケースにも当てはまるようなものですから、内容が空疎ですし、表現もありきたりなものとなっています。

そのため、このような例文では、謝罪、反省の気持ちは伝わらず、むしろかえって全く反省が見られないと被害者を怒らせてしまうことがあります。

このような例文をそのまま使用するのは論外ですが、参考にする場合もやはり表現が引きずられてしまいます。

したがって、謝罪文(反省文)を作成するときは、まずは、表現や内容にこだわらず、自分の思い、考えをそのまま書き出してみるのが良いでしょう。そのうえで、表現や内容の過不足について弁護士に指摘してもらい、更に加筆修正をして完成させます。

痴漢事件の示談交渉の流れ

示談交渉の申し入れ

痴漢事件では、加害者が被害者の連絡先を知っていることはありませんし、被害者が痴漢行為の加害者本人に連絡先を教えることもありませんので、加害者本人では被害者に連絡して示談交渉をすることができません。

そのため、示談交渉をするためには弁護士に依頼することが必要となります。

そして、弁護士が、警察官又は検察官に連絡をして、示談交渉をしたいという加害者側の意向を被害者側に対して伝えていただきます。

被害者側が加害者側の弁護士と話しても構わないと回答した場合には、警察官又は検察官が弁護士限りで(加害者側には伝えない約束で)、被害者側の連絡先を伝えるか、弁護士の連絡先を被害者側に伝えることとなります。

示談交渉

被害者と連絡がとることができたら、弁護士が被害者と面会します。被害者によっては、仕事が多忙で面会の時間をつくれなかったり、稀に事件のショックがあまりに大きく自宅から出られなかったりするなど、面会ができないこともあります。

そのような場合には電話にてお話させていただき、示談書の調印も郵送でせざるを得ない場合もあります。

いずれにしても、まずは、加害者の弁護士として連絡をさせていただいた趣旨を丁寧に説明します。

加害者の弁護士ではありますが、相手方は被害にあった方ですから、高圧的な態度をとったり、お金で解決しようとしていると誤解を与えるような言葉遣いは厳に慎まなければなりません。

被害者の希望を丁寧にくみ取り、被害を少しでも回復する、被害者が今後少しでも安心して生活できるような提案していくことが、示談を成立させるためには重要です。

示談書の作成、提出

被害者との間で、示談金の金額など示談の条件が固まったら、次は弁護士において示談書を作成し、被害者の署名捺印をいただきます。加害者側は、代理人である弁護士が署名(記名)捺印をします。

示談書には通常、被害者の氏名が記載されますが、被害者のプライバシーを保護するため、加害者側の示談書原本は弁護士において保管し、加害者には、被害者の氏名をマスキングした写しを交付することとなります。

示談金の支払いがある場合には、弁護士が被害者に現金でお渡しする又は被害者の指定する預金口座へ送金する方法でお支払いします。

示談書が完成したら、その写しと示談金の領収書や送金明細を弁護士から警察又は検察官へ提出し、示談が成立したことを報告します。検察官は、その示談書の内容を踏まえて、加害者を起訴処分とするか不起訴処分とするか決めることとなります。

示談金の相場

痴漢事件には、迷惑防止条例違反の場合と強制わいせつ罪の場合があります。

事件内容や被害者によって被害者が納得する金額は異なりますので示談金の相場はあってないようなものですが、迷惑防止条例違反の場合は、10万円から30万円ほどの示談金が相場といわれ、強制わいせつ罪の場合は、30万円から100万円ほどの示談金が相場と言われることが多いようです。

もっとも、被害者が未成年者の場合は、これよりも示談金の相場は多少高くなることもあります。

また、示談金の支払いは原則として一括払いですが、加害者の支払能力が非常に乏しい場合もあり、そのような場合には被害者にご理解いただき、示談金のお支払いを分割払いとさせていただくこともあります。

加害者に十分な資力がない場合には、示談交渉は難航しますので、弁護士には示談交渉についての十分な経験が求められます。

痴漢事件の示談書のテンプレート

痴漢事件の示談書には、示談金に関する条項をはじめ、概ね以下のような条項が含まれることになります。もっとも、これらは一例に過ぎず、被害者の要望を弁護士の工夫によって書面に落とし込みますので、示談書に盛り込まれる内容は多様です。

示談金の支払いに関する条項

一 乙(加害者)は、甲(被害者)に対し、本件により甲が被った身体的・財産的損害に対する賠償金及び精神的損害に対する慰謝料として、金20万円を支払う義務があることを認める。

一 乙代理人弁護士は、前項の支払義務の履行として、本示談書締結日から5日以内に、甲が指定する預金口座へ前項の金員を振り込む方法によって支払う。但し、振込手数料は、乙の負担とする。

宥恕(ゆうじょ)条項

一 甲(被害者)は、前項で相当額の賠償を受けたことを条件に、本示談書の締結をもって、本件について、乙(加害者)に対する刑事処分は求めないことを表明する。

通勤ルートの変更

一 乙(加害者)は、本示談書締結日以降、平日の午前7時から午前7時30分までの間、東京メトロ東西線の西葛西駅から茅場町駅までの区間を利用しないことを誓約する。

守秘義務条項

一 甲(被害者)及び乙(加害者)は、本示談書締結日以降、本示談書の存在及び内容、その他本件に関する甲又は乙を特定しうる事項を、口頭、電話、メール、LINE、SNSその他のいかなる方法を用いても、第三者に口外・伝達しない。
但し、捜査機関や裁判所への報告等の正当な理由がある場合はこの限りではない。

清算条項

一 甲(被害者)及び乙(加害者)は、甲と乙との間には、本示談書に定めるものの他、何らの債権債務関係も存しないことを確認する。

痴漢事件の示談交渉の弁護士費用

弁護士費用は各法律事務所によって異なります。当事務所の場合は、刑事事件の中でも事件の難易度に応じて弁護士費用を設定しています。

痴漢事件のうち迷惑防止条例違反の場合には、9割くらいの案件で示談が成立していますので、示談の成功報酬金は10万円と設定しています。

一方、強制わいせつ罪の場合は、迷惑防止条例違反の場合よりも示談交渉の難易度は高くなりますので、示談の成功報酬金は20万円と設定しています。

当事務所では着手金については多くの事務所と同様に30万円と設定していますが、成功報酬については事件の難易度に応じて合理的に設定しています。

最後に

以上、痴漢事件の示談交渉についてご説明しました。

痴漢事件の示談交渉は事実上、弁護士でなければ行うことができません。また、示談金などの示談条件についての交渉は、弁護士に経験値が求められます。

痴漢事件の被疑者となったため被害者と示談交渉をしたいという方は、刑事事件の経験豊富な弁護士にご相談ください。

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