嫌がらせで離婚してくれない相手への対策と進め方!弁護士のメリットも徹底解説
最終更新日: 2025年01月31日
- 配偶者が嫌がらせ目的で離婚を拒否しているようだ。何とか離婚を進める方法を知りたい。
- 配偶者が嫌がらせのつもりで、協議や調停を拒否している。裁判離婚で離婚したい。
- 裁判離婚を予定している。裁判を提起した後の流れについて教えてほしい。
夫婦の愛情がすっかり冷めただけでなく、中には配偶者へ恨みを抱き、嫌がらせ目的で離婚を拒否するケースもあります。
相手が嫌がらせ目的で離婚を拒否しても、冷静になって対応し、離婚を成立させたいものです。
そこで今回は、離婚問題の解決に携わってきた専門弁護士が、嫌がらせ目的で離婚してくれない相手への対策、裁判離婚の進め方等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 相手が嫌がらせ目的で離婚を拒否していても、裁判離婚では原則として相手も裁判所の判決に従わなければならない
- 相手が離婚を頑なに拒否しても、冷静に対応し、別居してみるのもよい方法
- 相手の嫌がらせに悩むときは、速やかに弁護士と相談しよう
嫌がらせで離婚してくれない相手への対策
夫婦関係が修復不能になっているにもかかわらず、配偶者を困らせるつもりで離婚に応じない人もいます。
離婚は協議・調停、最終的には裁判で解決を目指しますが、嫌がらせ目的で離婚しない相手には格別の注意が必要です。
協議
協議離婚は夫婦が話し合って離婚を目指す方法です。
夫婦で自由に離婚条件を話し合えますが、夫婦が合意しないと離婚届は提出できません。
嫌がらせ目的で離婚しない相手には次のように説得を試みましょう。
- 相手の条件を可能な限り容認する
- 自分が離婚の原因をつくったときは、誠心誠意謝罪する
- 協議で合意が成立しなければ調停や裁判に進むと告げておく
- 弁護士に交渉役を依頼する
嫌がらせをされている原因が自分にある場合(不倫をした、モラハラした等)は、まず相手に誠心誠意謝罪し、相手の条件を可能な限り容認する姿勢が必要です。
一方、協議で合意できなければ、調停・裁判に進むと告げれば、相手は「本気で離婚しようとしている」と感じ、協議に応じる可能性もあるでしょう。
夫婦で直接会うと口論になりそうなときは、弁護士を交渉役に立てれば、相手と理性的に話し合いを進められます。
調停
協議がまとまらない場合、家庭裁判所に話し合いの場を移し、離婚の合意を目指します。
相手方の住所地か夫婦が合意した家庭裁判所に、「夫婦関係調整調停(離婚)」の申立てが可能です。
調停では裁判官と調停委員が夫婦の仲立ちを行い、夫婦が対立している離婚条件の調整をします。調停期日に調停委員と話し合うときは、相手から嫌がらせ目的で離婚を拒否されていると率直に伝えましょう。
証拠として、相手が嫌がらせしていると認められるメールやLINE等の文章を提示します。
嫌がらせ目的を認識した調停委員は、相手に嫌がらせをやめ、真摯に離婚について話し合うよう説得するでしょう。
それでも相手が離婚に同意しない場合は調停不成立となりますが、裁判で離婚問題の解決が図れます。
裁判
調停不成立の場合、裁判離婚(離婚訴訟)で離婚の可否を決定します。
早く離婚したいからといって、調停を省略しいきなり離婚訴訟(裁判離婚)の提起はできません。事前に調停を経ておく必要があります(調停前置主義)。
離婚裁判では夫婦が原告・被告に分かれ、それぞれ主張・立証を行い、裁判が進められていきます。夫婦以外の第三者である証人に証言してもらうことも可能です。
原告・被告双方の主張・証拠、その他一切の事情を慎重に審理し、裁判官から離婚を認めるか否かの判決が言い渡されます(判決前に和解案が提示される場合もある)。
相手(被告)が離婚を拒否しても、判決には原則として従わなければなりません(判決に不服の場合は控訴も可能)。
嫌がらせで離婚してくれない相手との裁判の進め方
協議や調停をしても、嫌がらせ目的で離婚を拒否する相手が合意しないとき、最終的には裁判で解決を目指します。
民法で定められている「法定離婚事由」にあたるのかよく確認したうえで、提出書類を準備し、証拠を揃えて裁判に臨みましょう。
参考:民事訴訟 | 裁判所
訴状提出
家庭裁判所へ訴状を提出する前に、夫婦の離婚問題が法定離婚事由にあたるかどうかを確認しましょう。
法定離婚事由に該当するのは次の5つです(民法第770条)。
- 配偶者に不貞行為があった
- 配偶者から悪意で遺棄された
- 配偶者の生死が3年以上明らかでない
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
- その他婚姻を継続し難い重大な事由がある
単なる性格の不一致だけが離婚したい理由の場合、訴訟提起は認められない可能性が高いです。
また、訴訟提起する本人(原告)が離婚原因をつくった側(有責配偶者)の場合、基本的に訴訟提起は認められません。
家庭裁判所に訴える条件を満たしていると確認できれば、提出書類の準備にとりかかりましょう。
通常、次の書類を準備します。
- 訴状:2部
- 夫婦の戸籍謄本とコピー
- 年金分割のための情報通知書:離婚の他、年金分割に関する処分の申立てをする場合
- 源泉徴収票・預金通帳等の証拠書類のコピー:2部
書類を集めたら、原則として夫または妻の住所地の家庭裁判所に訴状を提出しましょう。
訴状送達・被告が答弁書提出
裁判所は提出された書類に不足・不備がないか確認して、問題がなければ訴状を受理します。
訴状が受理されれば、裁判所は第1回口頭弁論の期日を指定します。訴状提出の約1か月後を期日とするケースがほとんどです。
その後、被告(離婚を拒んでいる側)に訴状を送達します。
被告側は訴状内容を確認後、原告と事実の認識が異なる点、被告側の意見・反論等を答弁書に記載して提出するでしょう。提出期日は口頭弁論期日の1〜2週間前に設定されます。
第1回口頭弁論
口頭弁論は公開の法廷で開かれ、原告・被告双方が主張、証拠を提示しながら進められていきます。
弁護士が代理人になっている場合、依頼者に代わって出廷し、主張・証拠の提示を行います。第1回口頭弁論は、原告の訴状・被告の答弁書で争点を確認し、第2回目以降の口頭弁論に進むのが一般的です。
なお、第二回目以降は概ね月1回のペースで開かれます。
第2回口頭弁論
2回目以降は、原告・被告双方から互いに主張書面(準備書面)、証拠となる書面(書証)を提出し進められます。
概ね原告の主張、被告の反論、原告の再反論、被告の再々反論等という形で書面が提出されるでしょう。
口頭弁論で双方の言い分が揃うまでに、半年〜1年くらいかかる可能性があります。
双方の言い分が揃ったところで「本人尋問」が開始されます。本人尋問は原告・被告が裁判官や代理人(弁護士)の質問に答える手続きです。
質問のやり取りを通じて事実の立証や、双方の証拠の信ぴょう性について確認していきます。
本人尋問をする場合は、原告・被告がそれぞれ主張する内容を「陳述書」にまとめ、裁判所に提出するのが一般的です。
必要であれば証人を参加させ、離婚等に関する証言を求めることも可能です(証人尋問)。
判決前に裁判官から和解案が提示される場合もあり、原告・被告双方が和解に合意すれば裁判は終結します。
判決
尋問の結果を踏まえた最終準備書面が提出されると弁論終結となり、裁判所は判決期日を指定します。
審理終結〜判決期日までの期間は概ね1〜3か月です。
判決期日に、裁判所から原告の離婚請求を認めるか認めないかの判決が言い渡されます。判決の詳しい内容を記載した「判決書」が、判決後の数日〜2週間後に、当事者双方へ届きます。
夫婦のどちらかが判決に不服がある場合は、判決書の送達を受けた日の翌日から2週間以内に、高等裁判所への控訴が可能です。
嫌がらせで離婚してくれない相手への対策
相手から嫌がらせ目的で離婚を拒否されている場合は、離婚成立を目指して焦らずに対応を検討する必要があります。
どうすればよいかわからないときは、速やかに弁護士と相談しましょう。
離婚の計画を立てる
相手へ離婚を申し出る前に、離婚してからどのように生計を立てていくか、慎重に検討しましょう。
離婚を希望する本人が給与所得者・自営業者であれば問題はないかもしれませんが、専業主婦やパート従業員の場合は、生活の安定をどのように確保していくか決めておかなければなりません。
離婚を話し合うときは、財産分与・親権・養育費・面会交流・慰謝料等の取り決めも必要です。事前にそれぞれの希望条件も決めておきましょう。
冷静に対応する
相手が嫌がらせ目的で離婚を拒否しているとわかっていても、感情的にならず冷静な対応を心がけましょう。
苛立ち相手に暴力を振るったり、脅迫したりすれば、相手から刑事責任を追及されるおそれがあります。
相手が頑なに離婚を拒否しも、「自分は諦めずに、調停・裁判で解決を目指す」とはっきりと伝えておきましょう。
「今度は家庭裁判所で話し合いを続けるのか」と相手は焦り、離婚に同意する可能性があります。
別居
相手が嫌がらせ目的で離婚を拒否しているときは、別居を検討しましょう。
離婚を希望する側が有責配偶者でない場合は、別居期間が5年以上経過していれば、裁判官から「婚姻関係の修復は困難である」と判断され、裁判離婚が認められる可能性があります。
一方、離婚を希望する側が有責配偶者であった場合は、次の3条件全てに該当しなければ離婚は認められないでしょう。
- 10年前後別居
- 夫婦の間に未成熟の子がいない
- 離婚が著しく社会正義に反するような特段の事情がない
有責配偶者でも離婚請求が認められる場合はありますが、非常に厳しい条件といえるでしょう。
嫌がらせの証拠収集
相手が嫌がらせ目的で離婚を拒否しているとわかる証拠も揃えておきましょう。
嫌がらせの証拠に該当するものは次の通りです。
- 離婚を拒否して「あなたを追い詰める」「あなたを困らせてやる」といった音声や動画の録音
- 嫌がらせで離婚を拒否する旨のメールやLINEの保存
調停のときに証拠を提出できれば、調停委員が相手を説得し、真剣に離婚を話し合うよう説得する可能性があります。
裁判で嫌がらせされた記録を提出すれば、証拠の1つとして裁判官が確認するでしょう。
弁護士への相談
嫌がらせ目的で離婚を拒否している相手との交渉が進まない場合は、専門の弁護士に相談しましょう。
弁護士は相談者の事情や夫婦の状態を聴いたうえで、相手と交渉するコツ、譲歩した方がよい条件、協議がうまくいかなかった場合の措置等をアドバイスします。
相談している間に「相手との交渉は弁護士に任せた方がよい」と判断したときは、弁護士と委任契約を締結してもよいです。
嫌がらせで離婚できない問題を弁護士に相談するメリット
弁護士に相談すれば有益なアドバイスが得られる他、代理人として依頼すれば、弁護士に交渉や様々な手続きを委任できます。
弁護士がサポート役となれば、離婚成立の可能性は高まります。
精神的負担の軽減
弁護士に相談すれば相手と協議するポイントや、効果的な譲歩案の提示等、様々なアドバイスが得られます。
たとえ協議が不成立でも、調停・裁判のような解決方法があると説明を受けられるので、次の対応をどうすればよいかと悩む心配はありません。
また、弁護士に交渉役を依頼すれば、相手との交渉を任せられるので、嫌がらせをするかもしれない相手との直接交渉は不要となります。
そのため、精神的なストレスも大きく軽減されるでしょう。
法的なアドバイス
相手との協議・調停・裁判に臨むとき、弁護士は法的なアドバイスをします。
- 協議離婚:事前の離婚条件の決定、相手との調整ポイント、離婚協議書作成の必要性
- 調停離婚:弁護士が同席し依頼者側の主張・証拠の提示を行える旨
- 裁判離婚:依頼者に代わり弁護士が口頭弁論で主張・立証を行える旨
依頼者は弁護士に手続きの進捗状況を確認しながら、納得のうえで様々な対応を任せられます。
離婚条件の取り決めがスムーズ
弁護士は協議離婚のとき、話し合わなければならない条件をしっかり把握しているので、スムーズに相手と条件内容の取り決めが可能です。
たとえば、以下のような異なる状況の場合、それぞれのケースごとに、焦点をあてる離婚条件を明確にして交渉できます。
- 子のいる夫婦:親権・養育費・面会交流
- 共働き夫婦:財産分与
- どちらかが離婚原因をつくったとき:慰謝料等
依頼者の納得のうえ、弁護士が相手に譲歩案を提出する等して、柔軟かつ迅速に和解へと導きます。
手続き代行
弁護士は協議がまとまった場合の書面化や、家庭裁判所での調停・裁判手続きまで代行が可能です。
- 協議離婚で夫婦が合意→離婚協議書の作成または離婚公正証書の手続き代行
- 家庭裁判所に調停を申立て→申立書の作成、添付書類の収集の代行
- 家庭裁判所に訴訟を提起→訴状の作成、添付書類の収集の代行
依頼者に代わり各手続きの必要書類を揃えたうえで、弁護士が窓口に提出します。
離婚問題でお悩みなら弁護士にご相談を
今回は多くの離婚問題の解決に尽力してきた専門弁護士が、嫌がらせ目的で離婚してくれない相手への対処法等について詳しく解説しました。
嫌がらせ目的で離婚をしない相手であっても、粘り強く交渉していくことが大切です。
離婚問題に強い弁護士の助力を受け、迅速に問題を解決しましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。