離婚後も今の家に住みたい!財産分与で失敗しないコツ

2026年03月10日

離婚後も今の家に住みたい!財産分与で失敗しないコツ

離婚に際して「住み慣れた家を離れたくない」「子どもとの生活環境を変えたくない」と考える方は少なくありません。しかし、家は夫婦にとって最大の財産の一つであり、その財産分与は複雑で、将来の生活に大きな影響を及ぼします。

特に住宅ローンが残っている場合や、共有名義の家である場合は、感情的な問題だけでなく、法的な知識や金銭的な計算が必要となるため、計画的に進めることが不可欠です。

この記事では、離婚後に今の家に住み続けるための具体的な方法から、それぞれの方法における注意点、そして財産分与を円滑に進めるためのステップ、さらには失敗しないための重要なポイントまで、詳細に解説します。

大切な家をめぐる財産分与で後悔しないよう、ぜひ最後までお読みください。

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
宅地建物取引士
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目次

離婚後も今の家に住み続けるための方法

離婚後も現在の家に住み続ける方法は、大きく分けて以下の2つが考えられます。それぞれのメリットとデメリットを理解し、ご自身の状況に合った選択肢を検討しましょう。

自分が所有者となり住み続ける(財産分与)

最も一般的な方法が、自分が家の所有権を取得し、名実ともにその家で生活を続ける方法です。これは、財産分与によって相手方の持分を自分が買い取る形や、元々自分の単独名義であった場合に該当します。

メリットとしては、家の所有権が自分にあるため、心理的な安心感が非常に大きい点が挙げられます。賃料の支払いや、将来的な立ち退きの不安もなく、自分の好きなようにリフォームや売却を検討できる自由があります。

しかし、住宅ローンが残っている場合は、そのローンも引き受けることになるため、支払い能力が問われます。また、相手に支払う代償金(清算金)が発生する場合も多く、まとまった資金が必要となる可能性があります。

相手が所有者のまま住まわせてもらう

自分が家の所有権を得ることが難しい場合でも、相手方が家の所有者のままで、自分がその家に住み続けるという選択肢もあります。この場合、主に「賃貸借契約」または「使用貸借契約」を結ぶことになります。

賃貸借契約は、自分が相手に賃料を支払って住む形態です。一般的な賃貸物件と同じように、契約書を作成し、賃料や契約期間などを定めます。使用貸借契約は、無償で家を借りる形態で、親族間などでよく見られます。

メリットとしては、自分が住宅ローンを抱える必要がなく、所有権移転の手続きも不要なため、手続きが比較的簡素である点が挙げられます。

しかし、そもそも、相手方が自らローンを負担しつつ、離婚する配偶者に家を貸すことはあまりなく、賃料の支払い、修繕費用、契約更新などで将来的に揉める可能性があり、相手の再婚や転勤、家の売却といった事情によって、突然立ち退きを求められるリスクもありますから、あまり現実的ではありません

【方法別】家に住み続ける場合の注意点

それぞれの方法には、メリットだけでなく、必ず知っておくべき注意点があります。後のトラブルを避けるためにも、以下の点をしっかり確認しましょう。

自分が所有者になる場合

自分が家の所有者となる場合、最も重要なのは住宅ローンと関連費用です。

住宅ローンの名義変更・借り換え

現在の住宅ローンが夫婦の連名や、相手が主債務者で自分が連帯保証人になっている場合、金融機関の承諾なしに名義を変更することは非常に困難です。多くの場合、自分の単独名義で新たにローンを組み直す「借り換え」が必要になります。

借り換えには審査があり、自分の収入だけでローンを組めるだけの返済能力が求められます。審査に通らない場合、この方法での住み続けることは難しくなります。

代償金(清算金)の支払い能力

家の価値から住宅ローン残高を差し引いた純資産について、相手に支払うべき代償金が発生する場合があります。この代償金を一括で支払えるだけの貯蓄があるか、あるいは金融機関からの借り入れが可能かを確認する必要があります。

維持費と税金の負担

所有者となる以上、固定資産税や都市計画税といった税金、火災保険料、そして家の修繕費用など、全ての維持管理費用を自分が負担することになります。これらを継続的に支払い続ける経済力があるか、十分にシミュレーションしておきましょう。

相手が所有者のまま住む場合

相手が所有者のまま住む場合は、法的関係の明確化と、将来的なリスクの考慮が必須です。

賃貸借契約・使用貸借契約の明確化

口約束は厳禁です。必ず書面で賃料、契約期間、更新条件、修繕費用負担などを明確に定めた契約書を作成しましょう。

無償の使用貸借契約の場合、賃貸借契約と比べて借主(住む側)の権利が弱く、貸主(相手方)の都合で立ち退きを求められるリスクが高まります。

相手との関係性による不安定さ

離婚後も相手との関係が続くため、何らかのきっかけで関係が悪化した場合、家賃の滞納や更新拒否、一方的な契約解除など、トラブルに発展する可能性があります。

固定資産税などの負担

所有者は相手方ですが、実質的な居住者として、固定資産税など一部の費用負担について取り決めが必要になる場合があります。

財産分与で家を取得する際の基本的な流れ

財産分与で家を自分が取得する場合、一般的な流れは以下のようになります。正確な手続きを踏むことで、後のトラブルを防ぎましょう。

家の名義と住宅ローンの残高を確認する

まず、家の現状を正確に把握することがスタートです。

家の名義確認

法務局で「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取得し、家の所有者が誰になっているかを確認します。単独名義か共有名義かで、その後の手続きや分与割合が変わってきます。

住宅ローンの残高確認

金融機関から「住宅ローン残高証明書」を取り寄せ、現在の正確な残高を確認します。

住宅ローンの契約内容(主債務者、連帯債務者、連帯保証人)も確認しておきましょう。

家の価値を査定する

財産分与の基準となる家の価値を適正に評価するため、不動産会社に査定を依頼します。

不動産査定の依頼

複数の不動産会社に査定を依頼し、一般的な市場価格を把握しましょう。机上査定だけでなく、実際に家を見てもらう訪問査定を依頼することをおすすめします。

査定額が会社によって異なることもあるため、平均的な価格や、最も信頼できると判断した査定額を参考にします。

財産分与の金額(代償金)を計算する

家の価値が判明したら、財産分与の金額を具体的に計算します。

純資産の算出

(家の査定額)−(住宅ローン残高)=「家の価値」となります。

もし住宅ローン残高が査定額を上回る「オーバーローン」の状態であれば、家には実質的な資産価値がない(むしろ負債)ということになります。

相手が財産を隠している可能性がある場合の調査方法はこちらの記事で解説しています。

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代償金の計算

純資産がある場合、基本的に夫婦の財産分与の割合は1/2とされています。自分が家を取得する場合、相手の持分を代償金として支払うことになります。

オーバーローンの場合は、原則として代償金は発生しません。残った負債は、原則ローンの名義人が負うことになります。

不動産の名義変更(所有権移転登記)を行う

財産分与の合意が成立したら、速やかに不動産の名義変更(所有権移転登記)手続きを行います。

家の財産分与で失敗しないためのポイント

離婚時の財産分与、特に家に関する問題は、複雑でトラブルになりがちです。失敗しないために、以下の重要なポイントを頭に入れておきましょう。

住宅ローンの連帯債務・連帯保証に注意する

住宅ローンが残っている場合、特に注意が必要なのが「連帯債務」や「連帯保証」の問題です。

連帯債務者・連帯保証人とは?

連帯債務者: 夫婦ともに住宅ローンの契約者(主債務者と同等の責任)となり、連帯して全額の返済義務を負う形態です。

連帯保証人: 主債務者が返済できなくなった場合に、代わりに返済義務を負う人です。

離婚後のリスク

離婚しても、金融機関との契約は継続するため、元配偶者が連帯債務者や連帯保証人から自動的に外れることはありません。

例えば、家を自分が取得し、住宅ローンも自分が支払うと取り決めたとしても、元配偶者が連帯保証人になっている場合、自分がローンの返済を滞納すると、元配偶者に返済の請求がいってしまいます。

これは、連帯債務者も同様で、相手が返済を滞納すれば、自分に請求が来ます。

対策

最も確実なのは、家を取得する側が単独で住宅ローンを組み直し、借り換えを行うことです。

借り換えが難しい場合は、元配偶者が連帯債務者や連帯保証人から外れるために、保証会社を利用したり、他の保証人を立てたりする方法もありますが、金融機関の審査が非常に厳しく、実現は困難な場合が多いです。

離婚後の家の財産分与は弁護士への相談がおすすめ

離婚時の家の財産分与は、専門的な知識と冷静な判断が求められる複雑な手続きです。感情的になりやすい問題だからこそ、弁護士などの専門家に相談することを強くおすすめします。

適正な財産分与の金額を算出できる

複雑な資産評価と計算

家の査定額だけでなく、住宅ローン残高、夫婦それぞれの特有財産(結婚前から所有していた財産など)、寄与度などを考慮した上で、適正な財産分与の割合や金額を算出するのは非常に専門的な作業です。

弁護士は、これらの複雑な計算を正確に行い、ご自身の権利が守られるようサポートしてくれます。

隠し財産の調査

相手が財産を隠している可能性がある場合、弁護士は職務上請求どを用いて、金融機関への照会や証拠収集を行い、財産の全貌を明らかにすることが可能です。

相手方との交渉を有利に進められる

法的な根拠に基づいた交渉

弁護士は、法律や過去の判例に基づき、ご自身の立場を法的に主張し、相手方との交渉を有利に進めることができます。

感情的になりがちな当事者同士の交渉に比べ、弁護士が間に入ることで冷静かつ合理的な話し合いが期待できます。

調停・訴訟への対応

協議離婚が難しい場合でも、家庭裁判所での離婚調停や、最終的な離婚訴訟へと進む場合も、弁護士は代理人としてこれらの手続きを全て代行してくれます。

将来のトラブルを未然に防げる

公正証書作成のサポート

上述の通り、公正証書は非常に重要です。弁護士は、ご自身の意向を正確に反映させつつ、法的トラブルを回避できるような内容で公正証書を作成するためのアドバイスや、公証人との連携をサポートします。

予期せぬリスクの指摘と対策

離婚後の生活で起こりうる様々なリスク(住宅ローン、養育費の不払い、税金問題など)を事前に指摘し、それに対する適切な対策を提案してくれます。

離婚問題の解決を弁護士に依頼した場合の費用相場は、こちらの記事で解説しています。

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よくある質問(FAQ)

Q:離婚前に夫が勝手に家を売ることはできますか?

夫単独名義の家ならば、単独で売却することができますから、勝手に処分される前に早めに対応することが重要です。

少しでも不安がある場合は、不動産会社に売却相談をしていないか確認したり、弁護士に相談して対応を検討したりしたほうが安心です。

Q:家の購入費を親に出してもらっていた場合でも、財産分与の対象になりますか?

親からの援助があった場合、そのお金が「夫婦の共有財産」ではなく「特有財産」と評価されることがあります。

たとえば、自分の親が頭金を出してくれていた場合、その分については全額を夫婦で半分に分けるのではなく、自分の取り分として主張できる可能性があります。ただし、実際にどこまで認められるかは、振込記録や贈与の記録によって変わります。

Q:専業主婦でも、家をもらって住み続けることはできますか?

専業主婦だからという理由だけで不利になるわけではありません。離婚時の財産分与は、名義や収入だけでなく、婚姻中に夫婦で築いた財産をどう分けるかという考え方が基本です。そのため、家事や育児を担っていた場合でも、家について財産分与を受ける余地は十分あります。ただし、実際に住み続けられるかどうかは、離婚後の生活費や住居費を無理なく支払えるかどうかも大きく関わります。権利の問題と、現実に住み続けられるかという問題は分けて考える必要があります。

専業主婦が離婚で後悔しないために知っておくべきポイントについては、以下の記事で解説しています。

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Q:子どもの親権を持つ側が、必ず家に住み続けられるのですか?

親権を持つ側であっても、自動的に家に住み続けられるわけではありません。たしかに、子どもの生活環境をなるべく変えないことは重要ですが、それだけで家の所有権や居住権が決まるわけではないからです。

実際には、家の名義、住宅ローン、夫婦の合意内容、経済状況などをふまえて決まります。

まとめ

離婚後の家をめぐる財産分与は、人生の大きな転機における重要な決断です。住み慣れた家に住み続けたいという希望は、多くの方にとって当然の願いですが、そのためには感情だけでなく、冷静な判断と具体的な手続きが不可欠となります。

様々な選択肢の中から、ご自身の状況に合った選択肢を見つけ、それぞれの注意点を踏まえて検討しましょう。

財産分与という複雑な問題に一人で悩むことなく早期に弁護士のような専門家に相談することで、ご自身の権利を守り、安心して新しい生活をスタートさせるための最善の道筋を見つけることができるでしょう。後悔のない選択をするためにも、ぜひ積極的に専門家のサポートを活用してください。

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