窃盗で被害届が出たら逮捕?取り下げてもらうには?
最終更新日: 2024年01月28日
窃盗罪で被害届が出ると逮捕されるのか?
示談をすれば窃盗罪の被害届が出るのを防げるか?
窃盗罪の被害届を出されないためには弁護士に依頼した方が良いのか?
窃盗罪を犯してしまい被害届が出るかもしれないという場合、このような疑問や不安をもつかと思います。
そこで、今回は刑事事件を数百件解決してきた専門弁護士が窃盗罪の被害届が出る前にすべきことについて解説します。
窃盗罪の被害届に関する誤解!?弁護士が正しく解説
まずは、被害届という制度について正しく理解しておきましょう。
被害届とは
一般に、被害届とは加害者を訴える、加害者の処罰を求めるものと認識されていることが多いようです。
しかし、被害届とは、「犯罪による被害を受けたことを警察に届けるための書類」です(『広辞苑』第7版)。もう少し実務的に定義しますと、被害届とは、被害者が犯罪被害にあったことを捜査機関に申告するものです。
このように正確には被害届は犯罪があったことを伝えるのみで、処罰を求める意思表示は含まれないのです。
告訴との違い
一方、被害届と混同されて使われることがある言葉に告訴があります。
告訴とは、犯罪があったことの申告に加えて、処罰を求める意思表示も含みます。告訴については刑事訴訟法に、「犯罪により害を被つた者は、告訴をすることができる。」(第230条)と規定されています。
告訴は、被害者の処罰意思を尊重した制度ですから、告訴状を受理すると捜査機関は捜査をする必要があります。そして、処分結果について検察官から通知を受けることができるなど告訴には各種の効果が法律に定められています。
被害届が出たら逮捕される?
被害届が出たら逮捕されるのではないかとのご相談は多くあります。しかし、被害届が出れば必ず逮捕されるわけではありません。
なぜなら、逮捕をするためには、証拠から犯罪の事実をある程度立証可能と判断できる必要がありますし、罪証隠滅や逃亡をする可能性があることも必要だからです。
被害届の取り下げで捜査終了?
被害届が出た後に被害者と加害者との間で話がついて、あるいは示談が成立して、被害者が被害届を取り下げた場合、それで捜査は終了となるのでしょうか。
刑事訴訟法は、「司法警察職員は、犯罪があると思料するときは、犯人及び証拠を捜査するものとする。」(第189条2項)と規定しています。
つまり、たとえ被害者が被害届を取り下げると言っても、捜査機関は犯罪があると考えたときには捜査を続行することができるのです。
とはいえ、被害者の供述がなければ犯罪を立証できない事件で、かつ未だ被害者の供述を証拠化していない段階で被害届を取り下げられた場合には、捜査を続けたとしても起訴することはできませんので、被害届の取り下げをもって捜査は終了となるでしょう。
窃盗罪で被害届が出た後の弁護士不在のときの流れ
次に、被害届が出てしまった場合にはその後、どのような流れになるのか確認しておきましょう。
逮捕
被害届が出ている場合、被疑者が特定され、警察が逮捕状をとって通常逮捕する可能性があります。
その後、被疑者は警察と検察での取り調べなどの捜査を受け、最大23日間、身柄拘束されることとなります。
起訴又は不起訴
警察・検察での捜査が終わると、通常は、勾留期間の最終日に起訴処分又は不起訴処分(起訴猶予)の処分が下されます。
起訴された場合、被害金額や犯行態様、前科の有無等の諸事情を考慮して、略式裁判又は正式裁判となります。
刑事裁判
略式裁判になった場合には、後日、簡易裁判所から略式命令が自宅に届き、そこに記載された罰金を検察庁にて納めることとなります。
他方、正式裁判になった場合は、概ね1か月後に公判期日が指定されます。それまでに被告人と弁護士は裁判の準備をして裁判に臨みます。
被告人が犯行を認めている事件で、執行猶予付きの判決が見込まれるケースでは大抵は1回の公判期日で結審し、1週間から3週間後に判決が言い渡されます。
少年事件(未成年の事件)の場合
少年事件の場合は、警察、検察での流れは概ね同じですが、その後、起訴・不起訴ではなく、家庭裁判所へ事件が送致されます。
家庭裁判所への事件送致後はまず、裁判所が少年を少年鑑別所に入所させる観護措置をとるか否かの判断をします。
観護措置がとられた場合は原則として4週間、鑑別所に入所して非行原因について様々な調査がなされ、3週目又は4週目に審判期日が入り、少年に対する処分が下されます。
窃盗罪で被害届が出る前に弁護士ができること
さて、それでは窃盗罪で被害届が出る前の段階で、弁護士は何ができるのでしょうか。
被害届が出ますと逮捕される可能性もありますし、一旦被害届が出ると仮に示談が成立したとしてもその後の捜査、呼び出しが続く可能性があります。
したがって、窃盗罪で被害届が出る前の段階では、早急に被害者と示談することが最善の弁護です。
示談をする場合、被害者への謝罪から始まり、その後、被害の賠償金額についての話し合いを行います。実際の被害金額に加えて多少の迷惑料を加算した金額をお支払いすることもあります。
賠償金額(示談金額)について話がまとまれば、示談書を作成します。示談書には、謝罪と賠償金の支払いを踏まえ、加害者に対しては刑事処罰を求めないので被害届も出さない旨を記載します。
このように示談が成立すれば被害届を出されることはありませんし、仮に約束に反して被害届を出されたとしても逮捕、処罰されることは事実上ありません。
以上の一連の示談交渉ですが、被害者の連絡先を知っている場合には加害者本人にて行うことも可能です。
しかし、被害届が出されるまでに早急に示談をまとめる必要があるケースもありますし、加害者という立場上、不利な条件を了承せざるを得なくなることもあります。
したがって、早期に適正な内容での示談を成立させるためには、専門家である弁護士を通じて示談交渉をすることをお勧めします。
窃盗罪で被害届が出る前に弁護士が解決した事例
最後に、窃盗罪で被害届が出る前に弁護士が事件を解決した具体的な事例について見てみましょう。
万引き事件
おにぎり2点とペットボトルのお茶を1点、コンビニで万引きをしたところ、お店を出た直後に店員から呼び止められ捕まりました。
その場で謝罪をして商品代金を支払いましたが、警察に通報するかどうかは店長と相談すると言われ、身分証のコピーをとられた後、解放されました。
依頼を受けた弁護士は、被害届が出る前にお店と示談することを目指し、早速、店長と面会しました。幸い未だ警察へ通報する前の段階で、店長と話し合った結果、入店禁止の誓約と迷惑料5万円を支払うことで示談が成立し、刑事事件化することを避けられました。
介護利用者のお金を盗んだ事件
担当している訪問介護の利用者の財布から現金を盗むことを繰り返していました。不審に思った利用者の家族が室内にカメラを設置したところ、窃盗の一部始終が映っており犯行が発覚しました。
通報を受けた介護施設の管理者から相談を受け、被害者との示談交渉を弁護士にて対応することとなりました。利用者は被害届を出すことを検討しているということでしたが、その前に示談交渉をする機会をいただきました。
記憶する限りの犯行日と被害金額を書き出したものの、正確な金額を算定することは不可能でしたから、最終的には利用者の納得する金額をお支払いすることで示談が成立し、刑事事件化することを避けられました。当然ではありますが、当人は介護施設を解雇されました。
まとめ
以上、窃盗罪の被害届が出る前にすべきことについてご説明しました。
窃盗罪を犯してしまい、被害届が出る前に示談をしたい、逮捕を回避したいという方は、早急に窃盗罪の経験豊富な弁護士にご相談ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。