窃盗事件の被害届、告訴について

窃盗事件の被害届、告訴について

2019年12月04日

1 はじめに

盗難の被害にあってしまった、あるいは窃盗を犯してしまったという場合に、捜査機関に被害届は受理されるのか、犯人は検挙されるのかという不安、疑問を持つことがあります。
今回は窃盗で被害届が出た場合の流れや、被害届が取下げられた場合についてご説明いたします。

2 窃盗で被害届が出ると捜査はしないといけないのか?

⑴ 被害届とは? 捜査がなされる場合とは?

被害届とは、被害者が犯罪の事実を捜査機関に申告するものです。そして、刑事訴訟法は、「司法警察職員は、犯罪があると思料するときは、犯人及び証拠を捜査するものとする。」(第189条2項)と規定しています。

つまり、被害者からの犯罪事実の申告を踏まえ、犯罪事実が存在すると捜査機関が考えたときには捜査はなされますが、犯罪を立証できる証拠が得られる可能性の乏しいような被害申告の場合には捜査はされません。

このように、被害届を出せば必ず捜査がなされるわけではありませんし、捜査を開始しない案件の場合には、そもそも被害届提出に応じてもらえないでしょう。

⑵ 窃盗の被害届は受理されない?

どこかに落としたのか、盗まれたのか被害を訴えている本人が定かでない場合は、事件性があるのか明らかではありませんから、盗難事件として被害届(盗難届)を受理してもらうことは難しいでしょう。

他方、数百円や数千円と被害金額が小さい場合であっても、例えば、パチンコ店の台に置き忘れた玉を買うICカードを盗まれたというケースであっても、被害届は受理されます。そして、警察は防犯カメラから加害者を特定する捜査を始めるでしょう。

このように、警察が被害届を受理してくれるかどうかは、金額の多い少ないなど事件の大きさというよりは、窃盗罪の犯罪が起きた疑いが十分なものかという点によるものといえます。

3 窃盗事件と告訴

⑴ 告訴とは

被害届とは犯罪があったことの申告でしたが、告訴とは、犯罪があったことの申告に加えて、処罰を求める意思表示も含まれます。告訴については刑事訴訟法に、「犯罪により害を被つた者は、告訴をすることができる。」(第230条)と規定されています。

告訴は、被害者の処罰意思を尊重した制度ですから、告訴状を受理すると捜査機関は捜査をする必要があります。そして、処分結果について検察官から通知を受けることができるなど告訴には各種の効果が法律に定められています。

このように告訴があると捜査機関は、捜査を開始しなければならなくなることから、証拠が薄い事件については、なかなか告訴状を受理してくれません。告訴状を受理してもらうためには、弁護士に相談しましょう。

⑵ 窃盗の親告罪(親族相盗)

告訴がなければ起訴することのできない犯罪(親告罪)があります。親告罪については告訴が起訴をするための条件となっており、告訴の有無が非常に重要です。

窃盗罪は原則として非親告罪ですが、配偶者、直系血族又は同居の親族以外の親族間の窃盗については親告罪とされています(刑法第244条2項)。被害品の占有者と所有者いずれについても被害者と親族関係が必要とされています。
そして、占有者と所有者が異なる場合には、いずれも告訴権者であり、一方の告訴があれば起訴することができます。

非親告罪については公訴時効の完成前であれば(窃盗の公訴時効期間は7年です。)告訴期間の制限はありませんが、親告罪については被害者が犯人を知った日から6か月に告訴期間が限定されていますので注意が必要です(刑事訴訟法第235条)。

4 窃盗で被害届が出た場合、捕まる確率は?

窃盗をした場合でも、被害届が出ない場合があります。例えば、万引きをしたけれどお店が被害の事実に気が付かないケースがあります。このような場合には、被害の事実に気が付いていない以上、捕まることはないでしょう。

他方、被害者が被害の事実を認識して被害届を出した場合はどうでしょうか。もちろん捜査の結果、犯人を特定することができなかったという事件もありますが、防犯カメラ、指紋、被害者や目撃者の供述など様々な証拠から犯人を特定され、検挙される可能性は高いです。
 
そのため、このような場合には、警察が逮捕状をもって逮捕しにくる前に自首をして犯行について正直に話し、逮捕を回避するべきです。

5 窃盗で被害届が取り下げられれば、事件終結?

窃盗罪を犯した場合、被害者には財産的な損害が発生していることが通常です。そのため、被害者に対して被害弁償をすべきこととなります。

被害者が直接、加害者本人に会ってくれる場合もありますが、通常は会ってくれませんし、罪を犯した手前、加害者本人では被害者との示談交渉は何かとうまく行かないことが多いでしょう。そのため、弁護士に依頼をして示談交渉をすることとなります。

示談交渉の結果、示談の条件が固まると、被害金額、場合によっては迷惑料相当の金額を加えた示談金をお支払いする内容の示談書を作成します。最も加害者にとって有難いのは、示談の結果、被害者が被害届の取下げにまで応じる場合です。

被害届の取り下げは、処罰を一切求めない、捜査の継続も望まないという意思表明の意味合いで行われます。しかしながら、前述のとおり、被害届とは犯罪があったことの申告です。そのため、一旦そのような申告があって捜査機関が犯罪を認知した場合には、捜査機関は捜査を継続する権限・義務があります。ですから、被害者が被害届を取り下げる(犯罪事実の申告を撤回する)と言っても必ずしもその時点で捜査終了になるわけではありません。

そして、事情聴取や裁判への出廷に被害者の協力が得られなかったとしてもその他の証拠で十分に有罪判決を得ることができると検察官が判断する場合には起訴される可能性があります。

したがって、被害届の取下げイコール事件終結というわけではなく、被害届の取下げによって捜査も終結するというケースは、軽微な事件でかつ、警察が捜査に未だほとんど着手していないような段階に限られるでしょう。

6 窃盗で被害届が出た後の流れ

⑴ 逮捕

前述のとおり、被害届が出ている場合、被疑者が特定され、警察が逮捕状をとって通常逮捕する可能性があります。また、犯行現場で現行犯逮捕され、そのまま警察署で被害届が出ることもあるでしょう。

その後、被疑者は警察・検察での取り調べなどの捜査を受け、最大23日間、身柄拘束されることとなります。

⑵ 起訴

そして、警察・検察での捜査が終わると、通常は、勾留期間の最終日に起訴処分又は不起訴処分(起訴猶予)の処分が下されます。

起訴された場合、被害金額や犯行態様、前科の有無等の諸事情を考慮して、略式裁判又は正式裁判となります。

⑶ 刑事裁判

略式裁判になった場合には、後日、簡易裁判所から略式命令が自宅に届き、そこに記載された罰金を検察庁にて納めることとなります。

他方、正式裁判になった場合は、概ね1か月後に公判期日が指定されます。それまでに被告人と弁護士は裁判の準備をして裁判に臨みます。

被告人が犯行を認めている事件で、執行猶予付きの判決が見込まれるケースでは大抵は1回の公判期日で結審し、1~3週間後に判決が言い渡されます。

⑷ 少年事件(未成年の事件)の場合

少年事件の場合は、上記⑴⑵の警察、検察での流れは同じですが、その後、起訴・不起訴ではなく、家庭裁判所へ事件が送致されます。

家庭裁判所への事件送致後はまず、裁判所が少年を少年鑑別所に入所させる観護措置をとるか否かの判断をします。観護措置がとられた場合は原則として4週間、鑑別所に入所して非行原因について様々な調査がなされ、3週目又は4週目に審判期日が入り、少年に対する処分が下されます。

7 最後に

以上、窃盗で被害届が出た場合について諸々ご説明いたしました。特に窃盗を犯してしまった方については、手遅れになる前に刑事事件の経験が豊富な弁護士に相談することをお勧めします。

この記事を書いたのは

代表弁護士春田 藤麿
愛知県弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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