盗撮事件で被害者不明の場合について

最終更新日: 2023年07月12日

はじめに

盗撮事件においては被害者不明、つまり被害者が特定されていないケースがしばしばあります。

今回は、このようなケースで後に被害者が特定されるのか、処分はどうなるのかという点についてご説明いたします。

盗撮事件で被害者不明のパターン

盗撮事件において被害者不明の場合として、以下の3パターンがあります。

  1. 目撃者に現行犯逮捕されたが被害者は立ち去ってしまった場合
  2. 盗撮データから余罪が明らかになった場合
  3. 自首したものの被害届が出ていなかった場合

以下、それぞれのパターンごとにご説明いたします。

現行犯逮捕されたが被害者は立ち去ってしまった場合

被害者は特定されるか

目撃者が警察官の場合には、犯人を現行犯逮捕するとともに被害者にも被害に遭っていたことを伝え、被害届を出してもらうのが通常です。

しかし、目撃者が私人の場合には、犯人を現行犯逮捕したものの、被害者は盗撮被害に気が付かずにそのまま立ち去ってしまうケースがしばしばあります。この場合、防犯カメラ映像に被害者が映っていたときは、警察が同じ時間帯、場所に張り込むなどして、被害者を見つけ出すこともありますが、被害者不明のまま捜査を進めることもあります。

処分はどうなるか

被害者が特定されていれば弁護士に依頼をして被害者と示談交渉をすることができます。そして、前科前歴にもよりますが、被害者と示談が成立しているケースでは不起訴処分となることが多いです。

しかし、被害者不明の場合には示談交渉をすることはできません。そのため、担当の検察官(又は検察事務官)は、被疑者の反省態度や、前科前歴、常習性などの事情を考慮して、起訴処分とするか不起訴処分とするか判断します。

初犯の場合には、示談が成立していなくとも不起訴処分となることはあります。なお、10万円ほどの金額を弁護士会などに贖罪寄付することも考えられますが、起訴・不起訴の判断にはほとんど影響しないようです。贖罪寄付が決め手になるケースは、起訴・不起訴のボーダーライン上にあるケースに限られるでしょう。

盗撮データから余罪が明らかになった場合

被害者は特定されるか

盗撮事件の捜査では、犯行に使われた携帯電話や小型カメラ、SDカード、USBメモリ、パソコンなどの盗撮データが保存されていそうな媒体が押収されます。

初めて盗撮をした際に逮捕されるというケースは稀で、何度も盗撮を繰り返してきて遂に逮捕されたというケースがほとんどです。そのため、押収物のデータを解析すると、ほとんどの場合、余罪となる盗撮データが出てきます。

このような余罪の被害者を探し出す捜査を警察がするかどうかはケースによります。例えば、駅や街中など多くの人が入り乱れる場所での盗撮の場合、被害者を特定することは不可能ですから、そのような捜査はまずしないでしょう。

他方、当該データ内容や被疑者の供述から、犯行現場が職場や学校など限られた人間だけが出入りするような場所と判明した場合で、かつ当該データ内容が被害者を特定できる内容の場合には、被害者を特定する捜査がなされる可能性は大いにあります。

処分はどうなるか

余罪について被害者が特定された場合には、逮捕の原因となった事件とは別に被害届が出されることになりますから、その被害者と示談が成立しているか否かが起訴処分とするか不起訴処分とするかに大きな影響を与えます。

他方、余罪について被害者不明の場合には、起訴処分・不起訴処分の対象となるのはあくまで逮捕の原因となった事件のみで、余罪については常習性の有無・程度という観点で処分の判断にあたり考慮されることとなります。

自首したものの被害届が出ていなかった場合

被害者は特定されるか

盗撮をして被害者に気付かれた、あるいは怪しまれたけれども、その場を逃げたので現行犯逮捕されなかったというケースがあります。このようなケースでは、被害届が出ているのではないかと思い、自ら警察署に自首する犯人も多くいます。

ところが、自首はしたものの、被害届は出ていなかったということがあります。この場合、被疑者の自供する日時・場所を映す防犯カメラの有無を捜査します。その結果、被疑者と被害者を映す防犯カメラ映像が得られれば、その被害者を探し出す捜査をするでしょう。

一方、犯行現場を映す防犯カメラが無かった場合や、既に当時の映像データが失われていた場合には、それ以上被害者を特定する捜査はしないでしょう。

処分はどうなるか

自首したものの被害者不明の場合には、警察から厳重注意を受けて終わることになります。

もっとも、押収物のデータを解析した結果、余罪が明らかになった場合には、警察での捜査の後、検察庁に書類送検される場合もあります。とはいえ、犯行日時や場所を特定することのできた余罪がない限りは、起訴処分とすることはできませんので不起訴処分となります。

盗撮事件の処分内容

盗撮事件で起訴された場合、処分内容は適用される法律によって異なります。

迷惑防止条例違反の場合

公共の場所での盗撮は各都道府県の迷惑行為防止条例違反となります。

迷惑行為防止条例違反の場合には、都道府県によって罰則は異なり、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金と定めているところもあれば、それよりも重い刑罰を定めているところもあります。

軽犯罪法違反の場合

更衣室や事務所など公共の場所とはいえない場所での盗撮は、迷惑防止条例で規制対象としている都道府県と、未だ規制対象としていないため軽犯罪法で処分する都道府県があります。

軽犯罪法違反の場合は、拘留又は科料という軽い処分となります。

建造物侵入罪の場合

他人の管理する施設に侵入して盗撮をした場合には建造物侵入罪として処分されます。

また、勤務先や飲食店などの異性のトイレで盗撮をした場合も、異性のトイレに入ることを施設管理者は許していませんので、建造物侵入罪として処分されます。

建造物侵入罪の場合は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金となりますが、親告罪ですから示談が成立している場合には起訴されません。

最後に

以上、盗撮事件における被害者不明の場合についてご説明しました。

被害者が特定された場合には示談交渉をするべきですし、被害者不明の場合でも有利な情状を示すことで不起訴処分となる可能性があります。

いずれの場合も刑事事件の経験が豊富な弁護士にご相談ください。

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