高校生が窃盗したら前科つくの?退学になるの?弁護士が解説

最終更新日: 2024年01月29日

高校生が窃盗したら前科つくの?退学になるの?弁護士が解説

  • 「高校生の子どもが窃盗事件起こしてしまった」
  • 「窃盗事件を起こしたあとどうなるのか」
  • 「警察への対応に備え弁護士に力になってもらいたい」

令和2年の「刑法犯に関する統計資料」によると、令和2年における万引きで検挙された14歳〜19歳の件数は4,164件となっており、現状では減少傾向にあります。
高校生が窃盗などの刑事事件を起こすと、通常の刑事手続きとは異なり、逮捕・起訴、刑罰の内容、あるいは処分の方法など少年事件特有の手続きになります。

そこで今回は、多くの窃盗事件を解決に導いてきた実績のある刑事事件専門の弁護士が、高校生が窃盗事件を起こしてしまった場合に、その後の法的手続きがどうなるのか、また迅速な解決をめざすために弁護士に依頼する場合はどれくらいの費用がかかるのかなどについて解説します。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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高校生のよくある窃盗事件

高校生が万引きや自転車・バイクを盗んだ、あるいは友人の財布から現金を抜き取ったといった窃盗事件はよく起きます。

窃盗罪とは他人の物を盗む行為を罰する規定です。他人の財物を盗み窃盗罪が成立すると、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられます(刑法第235条)。窃盗行為が常習化し過去10年以内に3回以上、懲役6ヶ月以上の刑の執行を受けた、またはその執行の免除を受けたことがある場合は常習累犯窃盗として刑罰が重くなり、3年以上の有期懲役が科せられます。

窃盗罪は7年で公訴時効となり、この時期をすぎると検察官による公訴ができなくなります(刑事訴訟第250条)。

窃盗事件には主に以下の種類があります。どれも窃盗罪としての刑罰は同じです。

非侵入窃盗万引き、置き引き、自販機ねらい、すり、ひったくり、車上ねらい
部品ねらい、仮睡者ねらい、色情ねらい(下着泥棒含)
侵入窃盗空き巣、忍び込み、事務所あらし、出店あらし
乗り物盗自転車、自動車、オートバイ

万引きなどは店側からの注意と弁償、学校への通達などで終わる可能性もありますが、 バイク・自動車の窃盗は組織犯罪なども考えられるため、逮捕の可能性が高まります。

高校生による窃盗事件の流れ

高校生が窃盗事件を起こした後の流れは以下の通りです。

  • 逮捕
  • 観護措置
  • 少年審判

では、1つずつ解説します。

逮捕

まず、逮捕に関して解説します。高校生などの未成年者が起こした事件を少年事件といいますが、悪質な刑事事件を起こせば成人と同様に逮捕されます。少年事件の場合でも現行犯逮捕と後日逮捕、緊急逮捕の可能性がありますが、14歳未満の少年の犯行は刑法上、犯罪になりません。

逮捕直後の手続きは基本的に成人の場合と同じですが、大きく異なる点は、逮捕後に検察官が勾留請求するほかに勾留に変わる観護措置として少年鑑別所に移送する場合があるという点です。

逮捕後、事件は少年法上の保護処分を含め家庭裁判所が審判します。

観護措置や少年審判の必要性を検討

つぎに、観護措置や少年審判の必要性を検討することについて解説します。家庭裁判所に事件が送られると、少年は裁判官と面接します。そこで裁判官は少年を観護措置にするのか、あるいは在宅観護にするのかを判断します。観護措置である少年鑑別所への移送の決定は、家庭裁判所に送られてから24時間以内に行なわれます。

家庭裁判所が観護措置を決定すると、その少年は少年鑑別所に送られます。少年鑑別所に移送されるのは、逮捕または勾留後が多いのですが、事件の内容によって移送されるタイミングが異なります。

証拠が明白で捜査の必要があまりない比較的軽微な事件においては、留置場で勾留されずに すぐに少年鑑別所に移送されることが多く、反対に強制捜査の必要が高く比較的重い事件の場合は、成人事件と同じように10日から20日間、勾留されたあとに少年鑑別所に移送されます。

少年鑑別所にいる間に、家庭裁判所の裁判官が本人と面談をしたうえで審判の必要があるか否かを判断します。審判の必要があると判断されれば、少年審判が行われます。必要がない、と判断すれば「審判不開始」となります。最終的な処分は少年審判によって言い渡されます。

なお、在宅観護の場合は、在宅のままで家庭裁判所の調査官の観護を受けることになります。

少年審判になった場合にくだる5つの処分

最後に少年審判となった場合について解説します。少年審判となった場合には、以下の5つの処分のうちのいずれかがくだされます。

試験観察家庭裁判所で少年に対する処分をただちに決めることが困難な場合に少年を相当期間、家庭裁判所調査官の観察に付する処分。
少年に対して更生のための助言や指導を与え、少年が問題点を改善しようとしているのかを観察する。
保護処分
  • 保護観察

保護観察官や保護司の指導・監督を受けながら社会内で更生できると判断された場合に付される処分。決められた約束事を守りながら家庭などで生活し、保護観察官や保護司から生活や交友関係などについて指導を受ける。

  • 少年院送致

再非行のおそれが強く、社会内での更生が難しい場合には、少年院に収容して矯正教育を受けさせる処分。

検察官送致犯行時14歳以上の少年について、その非行歴、心身の成熟度、性格、事件の内容などから、保護処分よりも刑事裁判によって処罰するのが相当と判断された場合に、事件を検察官に送致する処分。
不処分処分をしなくても調査、審判等における様々な教育的働きかけにより少年に再非行のおそれがないと認められた場合に、少年を処分しないとする決定。
都道府県知事または児童相談所送致

少年を児童福祉機関の指導に委ねるのが相当と認められた場合に、知事または児童相談所長に事件を送致される処分。

児童相談所では18歳未満の児童をめぐる各種の相談に応じ、児童福祉司による指導、児童福祉施設への入所や里親への委託措置を行う。

高校生が窃盗したら前科?退学?

ここでは、実際に高校生が窃盗で逮捕されてしまった場合に、弁護士が本人やその家族などからよく聞かれる3つの質問と回答例を解説します。

  • 前科はつくのか
  • 退学しなければならないのか
  • どのような流れで解決されるのか
  • 弁護士費用はどれくらいを考えればよいのか

では、1つずつ解説いたします。

前科はつくのか・退学しなければならないのか

1つ目は、前科はつくのか・退学しなければならないのか?という質問への回答です。

そもそも「前科」というのは裁判で有罪判決を受けたことを指します。少年事件で少年審判となった場合であっても、刑の言い渡しがないため「前科がつく」ことはありません。ただ、前歴という犯罪歴になります。

退学については、学校側の裁量により決められ個別の事情により判断されます。公立校よりも私立校のほうが学校の規則や処分も厳しいようですが、これも弁護士の働きかけにより、本人が更生の意思を持って真摯に反省していることを学校側に訴えかけていくことで停学・退学などの処分を回避できる可能性があります。

どのような流れで解決されるのか

2つ目は、どのような流れで解決されるのか?という質問への回答です。

ここでは実際に高校生が窃盗事件を起こしてしまい弁護士に弁護依頼をすることになった場合に、具体的にどのような手続きとなるのかについて解説します。

1.電話相談:事件の概要を大まかに弁護士に説明します。

弁護士介入の必要がある事件は、来所して詳細を相談することになるので、日程の調整などを行います。

弁護士介入の必要がない事件や解決不可能な事件は、この時点で終了します。

電話相談は通常15分程度です。

2.来所相談:事件の詳細を弁護士に説明し、今後の弁護活動の方針などを話し合います。

本人が勾留されている場合などは、その家族や関係者が来所して面談します。

来所時の所要時間は通常1時間くらいです。

3.依頼:弁護士への依頼を決めたら、弁護士事務所との委任契約が結ばれます。

弁護士が契約内容を説明して契約書に署名捺印をします。身分証明書の持参が必要です。

着手金はこの時点で支払うこともでき、後日でも支払い可能です。

4.弁護活動:依頼を受けた直後から弁護活動が開始します。

いずれにせよ、早急の弁護活動が不可欠です。

5.審判開始:審判が開始された後は審判における弁護活動の方針を立てていきます。

審判の開始と不開始により弁護活動の内容も異なります。

弁護士費用はどのくらいを考えればよいのか

最後に紹介するよくある質問は、窃盗で逮捕され、弁護士に依頼するようになった場合、弁護士費用はどれくらいになるのでしょうか?というものです。 少年事件の弁護士費用には、主に以下の5つが含まれます。

相談料
  • 事件を弁護士に相談したときにかかる費用
  • 相談料の相場は60分あたり1万円
  • 相談料を無料にしている弁護士事務所もあり
着手金
  • 弁護士に何らかの事件の対応を依頼したときに発生する費用
  • 窃盗の少年事件では、事件が捜査段階にある場合の着手金として

30万円〜50万円
事件が家庭裁判所に送られた場合の着手金として
30万円〜50万円が発生

  • 事件が重大または複雑であればさらに増額の可能性あり
報酬金
(成功報酬)
  • 事件が解決された場合にかかる費用
  • 解決方法により報酬額が異なる
  • 少年の身柄が解放された場合は10万円~30万円
  • 観護措置を回避した場合は10万円~30万円
  • 否認事件で家庭裁判所への不送致が決定した場合30万円~50万円
  • 否認事件で非行なし不処分が決定した場合30万円~50万円
接見手数料
  • 弁護士が逮捕・勾留されている本人に接見するときにかかる費用
  • 1回の相場は1万円~3万円
  • 拘置所が遠方などの理由により3万円〜5万円程度になる場合もあり
審判日当弁護士が審判に出席することでかかる費用(着手金等に含む場合も多い)

高校生の窃盗事件に強い弁護士の見極めポイント

高校生の窃盗事件に強い弁護士を選ぶときに見極めるべきポイントは、以下の3つです。

  • 接見を即日で行なってくれる
  • コミュニケーションを密にとってくれるか
  • 粘り強く最後まで交渉してくれるか

では、1つずつ解説します

接見を即日で行なってくれる

1つ目は、接見を即日で行なってくれることです。

窃盗事件では逮捕から勾留まで一刻一秒を争うので、何よりもスピードが重要になります。

未成年者の今後の更生や社会復帰を考えれば、解決は可能な限り早いほうが望ましく、高校生の窃盗事件では、手遅れになる前に弁護士が即日で動いてくれるか否かが依頼を見極めるうえでの大切なポイントとなります。

コミュニケーションをしっかり取ってくれる

2つ目は、コミュニケーションをしっかり取ってくれることです。

少年事件では主に保護者からの弁護士依頼が一般的です。通常の刑事手続きと異なることもあり不安も大きい傾向にあります。そのようなときに弁護士の携帯電話の番号を知らせてくれ、いつでもコミュニケーションを取りやすい環境を整えてくれるかどうかも重要なポイントです。

また、少年の精神的なケアなど、さまざまな角度で安心できるサポートがあるとさらによいと言えます。

諦めない情熱で引き受けてくれる

3つ目は、諦めない情熱で引き受けてくれることです。

高校生の窃盗事件は、学校への対応や被害者との示談などさまざまな困難が待ち受けており、多感な時期の未成年者が当事者になるぶんデリケートな事件だといえます。こうした難しい状況の中でも、少年事件の知見や経験をいかして、最後まで諦めずに情熱を持って弁護活動を継続してくれる弁護士であるのか否か、何よりもここが一番大切なポイントとなるでしょう。

まとめ

今回は高校生が窃盗事件を起こしてしまった場合に、その後の法的手続きがどうなるのか、また迅速な解決をめざすために弁護士に依頼する場合はどれくらいの費用がかかるのかなどについて解説しました。

高校生が窃盗を犯してしまったとき、通常は少年事件として前科はつきませんが、警察から学校への連絡を控えてもらうなどの迅速な動きができる弁護士を選ぶことが重要になります。いずれにしても、少年事件に詳しい弁護士に今後の見通しを丁寧に教えてもらうことをお勧めします。

高校生が窃盗で逮捕された場合でも、不処分になったり、家庭裁判所に送致されなかったりする場合もありますので、まずは刑事事件専門の弁護士に相談してください。

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