ダブル不倫で妊娠したら子はどうなる?慰謝料は?弁護士が解説
最終更新日: 2024年01月26日
- ダブル不倫で妊娠した子は誰の子になるの?
- ダブル不倫で妊娠した子が戸籍に載らないためにはどうすればいいの?
- ダブル不倫で妊娠した場合の慰謝料相場は?
不倫をした妻、不倫相手の女性が妊娠をするケースはしばしばありますが、不倫当事者がともに既婚者、ダブル不倫のケースもあります。この場合、関係者が4人もいることになりますので、問題が複雑化しがちです。
そこで、今回は、ダブル不倫で妊娠をしたケースの対処法について不倫問題を数百件解決してきた専門弁護士が解説します。
ダブル不倫で妊娠した子は誰の子?
ダブル不倫で妻が妊娠をした場合、夫の子なのか不倫相手の子なのか、はっきりしないという場合があります。親子関係を考える場合、血縁上の親子関係と法律上の親子関係があります。
婚姻から200日経過後又は離婚から300日以内に生まれた子は、妻が婚姻中に懐胎した子と推定されます(民法第772条2項)。そして、婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定されます(同条1項)。
つまり、基本的に、婚姻中に妻が妊娠した不倫相手の子は夫の子と推定され、仮に血縁上は不倫相手の子であっても法律上の親子関係が生じてしまうのです。
そして、妻が出産して出生届を出しますと戸籍に夫の子として記載されることになります。
ダブル不倫で妊娠したときの各自の対応
ダブル不倫で妊娠した場合、不倫された夫、不倫相手、不倫相手の妻はそれぞれどのような対応をすべきでしょうか。以下それぞれについて見て行きましょう。
- 不倫された夫の対応
- 妊娠した妻の対応
- 不倫相手の対応
- 不倫相手の妻の対応
不倫された夫の対応
まず、不倫された夫ですが、先ほど、ご説明しましたとおり、何もしなければ生まれた子と法律上の親子関係が生じてしまいます。
妻と話し合った結果、自分の子として育てていくことになることもあります。一方、そうではなく、法律上の親子関係が生じることが避けたいという場合には対応が必要です。
具体的には、子の出生を知ったときから1年以内に嫡出否認の訴えを提起しなければなりません(民法第777条)。この訴えの中でDNA鑑定がなされ、血縁上の親子関係がないことが立証されれば、法律上の親子関係が否定されることになります。
そして、役所に届けることによって戸籍の訂正が行われることになります。もっとも、戸籍の訂正といっても線が引かれるのみで子の記載自体がなくなるわけではありません。
そのような記載自体を避けたいという場合には戸籍法上は違法となりますが、嫡出否認の訴えの結果が出るまでは出生届を出さない必要があります。
妊娠した妻の対応
妊娠をした妻としては、不倫相手に養育費を請求したいと考えるかもしれません。養育費を請求するためには、子の法律上の父親が不倫相手であることを確定させる必要があります。
何もしなければ夫が法律上の父親となってしまいますので、まずは夫に嫡出否認の訴えを起こしてもらい、夫と子が法律上の親子関係にないことを確定させる必要があります。
その上で、不倫相手に対して子の認知を求めますが、不倫相手が子の認知を拒否するときは、認知の訴え(民法第787条)を起こして強制認知をさせることになります。これによって不倫相手が法律上の父親であることが確定し、養育費の請求が可能となります。
不倫相手の対応
不倫相手の男性には、妊娠、出産した子を自分の子とは認めたくないという方もおられます。この場合、認知を求められても拒否しますが、認知の訴えを起こされた場合には、最終的に強制認知を避けられないのでしょうか。
認知の訴えにおいてはDNA鑑定がなされます。DNA鑑定がなされれば、不倫相手の子であることが確定します。もっとも、このDNA鑑定は強制はされませんので、拒否することが可能です。
DNA鑑定を拒否した場合、相手は子を懐胎した時期に性交渉があったのは不倫相手しかいないことや血液型が矛盾しないことなどを立証し、その結果、裁判所は不倫相手の子であると認定する可能性があります。
このような立証が必ず成功するわけではありませんので、認知を拒否する不倫相手の対応としてはDNA鑑定を拒否するという対応になります。
不倫相手の妻の対応
最後に、不倫相手の妻には、自分の夫が認知をして、養育費を支払うことになるのは回避したいと考える方が多いでしょう。
しかし、夫が認知をして、養育費の支払いをすることに固執するのであれば、残念ながら不倫相手の妻としてはそれを妨げる法律上の方法はありません。認知の問題は、法律上は、不倫当事者間の問題だからです。
ダブル不倫で妊娠したときの慰謝料相場
ここまで、妊娠、出産した子の法律上の親子関係についてご説明しました。ここからは、ダブル不倫の慰謝料請求についてご説明します。まずは、慰謝料相場についてです。
通常の不倫の慰謝料相場
不倫の慰謝料相場は、不倫の結果、離婚する場合は200万円、離婚しない場合は100万円です。
婚姻期間や不倫期間の長短、子の有無、従前の夫婦関係が良かったか悪かったかなど様々な事情を考慮して、上記の金額は増減します。
例えば、不倫が1回だけであった場合には慰謝料は50万円以下になることがありますし、不倫期間が20年以上の場合には慰謝料が300万円以上になることもあります。
妊娠したときの慰謝料相場
このように様々な事情で慰謝料は増減しますが、妊娠した場合には慰謝料は増減するのでしょうか。
妻が妊娠して中絶した場合には、妻の心身を傷つけられたことで夫の精神的苦痛は大きくなりますので、慰謝料は増額されます。例えば、離婚しない場合であれば、慰謝料は150万円ほどになる可能性があります。
一方、妻が妊娠して出産した場合には、夫の戸籍に不倫相手の子が載ることになりますし、法律上の親子関係を否定するために嫡出否認の訴えを起こさなければならないなど大きな負担を被ります。
そのため、不倫をされた夫の精神的苦痛は自ずと大きなものとなり、離婚しない場合であっても300万円以上の慰謝料が認められる可能性があります。
ダブル不倫で妊娠したときの慰謝料請求の方法
ダブル不倫で妊娠したときの慰謝料請求の方法についてですが、双方の夫婦が離婚するのかしないのかによって異なる点がありますので、以下場合分けをしてご説明します。
- 両夫婦が離婚しない場合
- 両夫婦が離婚する場合
- 一方の夫婦だけ離婚する場合
両夫婦が離婚しない場合
ダブル不倫で妊娠をしたものの、お互いの夫婦が離婚しない場合があります。この場合、双方の不倫をされた配偶者が不倫相手に対して慰謝料を請求できることになります。
この場合、一方の夫婦の婚姻期間がとても短く、他方がとても長いなどの違いがない限りは、いずれの請求についても慰謝料金額は同等となります。
そのため、このようにいずれの夫婦も離婚しない場合には、お互いに慰謝料請求は取り下げ、接触禁止や他言禁止を約束して4者で和解をして解決することが多くあります。
両夫婦が離婚する場合
ダブル不倫で妊娠をした結果、双方の夫婦が離婚する場合もあります。
離婚をしますから自身の配偶者が慰謝料を支払うことに関心がないことが通常で、この場合には、双方の不倫をされた配偶者が不倫相手にそれぞれ慰謝料を請求し、慰謝料の支払いを受けることになります。
一方の夫婦だけ離婚する場合
3つ目は、一方の夫婦は離婚するものの、他方は離婚しない場合です。
先ほど慰謝料相場についてご説明しましたとおり、離婚をする方が慰謝料相場は高くなります。そのため、離婚をした不倫をされた配偶者の方が、離婚をしない不倫をされた配偶者よりも高い慰謝料の支払いを受けることになります。
ダブル不倫で妊娠した実際の事例
最後に、ダブル不倫で妊娠、出産をして、不倫をされた夫が不倫相手を訴えた実際の判例についてご紹介します。
事例
結婚して15年以上になる夫婦には二人の子がいました。妻はある男性と不倫関係になり、その男性の子を妊娠しました。不倫相手の男性は、認知をしないことを条件に出産に同意し、妻は夫の子として出生届を出しました。
出産をして約1年が経った頃、不倫相手の妻に不倫がばれたことから、妻は夫に第三子は不倫相手の子であると打ち明けました。そして、DNA鑑定により、第三子は確かに夫の子ではなく不倫相手の子であることが確定しました。それでも不倫相手は父親であることを認めませんでした。
その後、妻は夫に対し親子関係不存在確認訴訟を提起し、夫は嫡出否認の訴えを提起しました。しかし、前者は嫡出推定が及んでいることから、後者は嫡出否認の訴えの出訴期間を経過していることから、不適法却下となってしまいました。夫婦は離婚しました。
そして、夫は不倫相手に対して慰謝料を請求する訴訟を提起しました。
裁判所の判断
不倫によって子が生まれていること、父親であることを否定し続けている不倫相手の態度、夫婦が離婚したことなどを考慮し、裁判所は、500万円という高額な慰謝料を認めました。
まとめ
以上、ダブル不倫で妊娠した場合の対処法や慰謝料についてご説明しました。
妻が不倫で妊娠をしたので親子関係を否定したい場合、不倫相手に慰謝料を請求したい場合、不倫相手に認知させて養育費を請求したい場合、いずれも最善の解決をするためには、不倫問題を専門とする弁護士にご相談ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。