不倫でうつ病になったら慰謝料請求できる?専門弁護士が解説

最終更新日: 2023年12月09日

不倫でうつ病になったら慰謝料請求できる?専門弁護士が解説

「不倫のせいで夜も眠れなくなり、心療内科に通っている」
「不倫のショックでうつ病になり、薬代もばかにならない。不倫をした相手が許せない」

パートナーの不倫が発覚すれば、誰しもショックを受け、気分も落ち込んでしまうものです。そのせいで、うつ状態に陥ってしまう不倫の被害者の方は非常に多いです。

そのような状態になってしまった場合、相手に請求する慰謝料の額に影響は及ぶのでしょうか。早速、みていきましょう。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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不倫が原因でうつ病になる?

ところで、最近では「不倫うつ」という言葉も現れてきています。この不倫うつについて、詳しくみていきましょう。

  • 不倫うつとは何か
  • うつ病の心的症状
  • うつに対処する費用

不倫うつとは何か

「不倫うつ」とは、その名の通り、不倫が原因でストレスが溜まったり、うつ状態になることを言います。
パートナーに裏切られたというショックはもちろんのこと、今後の夫婦生活への不安感などが原因となって起こり得るものです。

また、不倫をされた者だけでなく、不倫をした者が罪悪感などから同様の状態になった場合も「不倫うつ」にあたり得ます。

うつ病の心的症状

「うつ病」という単語はしばしば耳にすることもありますが、どのような状態を「うつ病」と言うのでしょうか。

まず心的症状として、憂鬱だと感じる、悲しい気持ちが続く、集中力が低下する、好きなことや趣味が楽しいと感じないといったことがあるようです。
そして身体的症状としては、眠れない、食欲が低下する、倦怠感があるといったものが現れると言います。

パートナーの不倫が発覚後、このような状態に陥ることがあれば「不倫うつ」の疑いがあるかもしれません。

うつに対処する費用

うつ状態になった場合の対処法は様々です。ゆっくり休養を取ることで緩和されることもあれば、自分が没頭できることに集中する、友人と会って話すなども効果があると思われます。
それでも改善されない場合は、精神科・カウンセラーに通院することが必要になる場合も考えられるでしょう。

しかし、当然のことながら精神科に通うには診療費、治療費あるいは薬代といった費用がかかります。

パートナーの過去の浮気がなければ発生しなかった費用を支払うことになるのですから、原因を作り出した者が負担すべきではないか、あるいは心的な病を患うほどの苦痛を被っているのですから、この状況に対して請求できる慰謝料は多くても良いのではないかという考えも増えております。

不倫によるうつ病は慰謝料請求の要因に含まれる?

不倫によってうつ病が発症した場合、慰謝料請求をする上で、どのように影響してくるのでしょうか。不倫慰謝料の請求根拠とともに、うつ病の発症が損害額に影響しうる理由を具体的に見ていきましょう。

不倫による慰謝料請求の根拠

そもそも慰謝料とは、精神的な苦痛に対して支払われる金銭のことをいいます。

民法709条には「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を損害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」と規定されています。

不倫は夫婦の貞操義務に反する行為であるため、不倫をした者は709条にいう「他人の権利又は法律上保護される利益を損害した者」にあたり、損害賠償の責任を負うのです。

また民法710条には「前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。」とあり、財産以外、つまり精神的な損害に対しても賠償責任があるといいます。

以上2つの条文を根拠として、不倫をされた配偶者は、不倫した配偶者またはその不倫相手に対し、慰謝料請求をすることができます。

慰謝料の相場と算定要因

不倫による慰謝料の相場は、一律に決まるものではありません。裁判実務においては、裁判所が、個別事案ごとに細かく金額を決めています。

一般に言われる要因としては、婚姻歴、離婚に至ったか否か、幼い子供の有無、不倫の回数や期間、発覚後も不倫関係が続いていたのか、不倫による妊娠・出産の有無など客観的に判断できるものによって考慮されることが多いです。
特に、離婚に至ったかどうかが、裁判では大きく慰謝料を増加させる要因になっていると思われます。

一方で、ケースごとに、不倫された者の精神的な辛さの尺度を測り、それが算定額に直接影響するということはほぼありません。本人の辛さは主観的なものであり、判断するには困難だからです。

では、不倫された者の精神的苦痛を現す証拠として、うつ病などの診断書が提出された場合はどうでしょうか。確かに、精神的苦痛を証拠化することによって、ある程度、慰謝料を算定する客観的要素として評価することが可能になります。

実際、裁判例を見ても、うつ病の診断書が提出されていることを判決文に引用する例は多く見られます。

不倫によるうつ病は請求金額に加味される?

では、不倫によってうつ病が発症した場合、請求金額に影響は生じるのでしょうか。実際に請求金額を上げられるとすれば、どのようなパターンがあるでしょうか。

  • 精神科通院による治療費
  • 慰謝料の増額
  • 集めておくべき証拠

精神科通院による治療費

1つ目に考えられることとしては、通院にかかった費用を損害賠償として請求するというものです。

上にも述べたように、不倫は貞操義務に反する不法行為です。不倫によってうつを患い、その治療費がかかったので、同費用を慰謝料とは別に請求したいと考えるのは自然な発想と思います。

しかし、実務上は慰謝料に吸収されるため、治療費を考慮した上での慰謝料を算定することがほとんどです。

この点、交通事故などでは、通院に要した治療費はもちろんのこと、事故による傷害から生じた慰謝料も別個の損害項目として認められています。ところが、不貞の多くの場合、慰謝料のみしか認められず、治療費が別途、損害として認定されることはないのです。

要するに、裁判所の考え方としては、相手から支払われた慰謝料の中で、心療内科等の通院費用を対応すべきと扱われているのです。

慰謝料の増額

もう1つ考えられることとしては、うつ状態を考慮し、慰謝料を相場よりも増額してもらうというものです。

実際に婚姻期間が3年程であっても、原告である妻がうつであると診断されたケースでは、相場よりも高額の400万円が慰謝料として認定された事案があります(東京地判平成16年4月23日 )。

ただし、400万円の金額を決定付けたのが、うつ病の診断であったのかどうかは、判決文からは明確に読み取れるわけではありません。不貞関係が明らかになって交際をやめるよう言われたにもかかわらず、交際を継続していたとの事実経緯もありました。

このように、不貞をしていた当事者が、あえて被害者の精神的苦痛を増大させる対応をしたことで、うつ病を発症したという事情があったことが、慰謝料金額を押し上げた理由になっているのではないかと推察されます。

集めておくべき証拠

これまで不倫によってうつ状態になった場合、慰謝料の増額事由となりうる旨を述べてきました。
しかし実際のところ、不倫とうつの因果関係を立証することは困難であると言われています。上にも述べたように、心的な辛さは本人の主観面ゆえ、それだけでは精神的苦痛の程度は判断できず、確たる根拠無しには金額の増加は望めませんので、しっかりと精神的苦痛の大きさを表す証拠を集めておくことが大切です。

パートナーの不倫に関する証拠はもちろんのこと、うつと診断された場合には診断書も必須となります。
ただし、診断書だけでは不倫とうつの因果関係は認められにくい傾向にあります。一度診断書さえ書いてもらえば認められる、というのでは、被告側に不利になりかねません。
そのため、通院時期や回数を示すものも用意しておくと良いでしょう。

また、治療に要した金額がわかる資料(病院でもらった領収書等)も置いておくと、金額算定の際に役立ちます。

さらに、うつ病を発症するに至った経緯も重要となります。不倫の当事者が、不誠実な対応をおこなったため、精神的苦痛を増大させたなどの経緯が認められるのであれば、うつ病の診断書は慰謝料増額の大きな要素となりうるでしょう。

そのため、不倫の当事者に対して、不倫を即刻やめるよう通知した証拠は必ず残しておく方がよいと思います。その後、万が一、不倫を継続しているのであれば、不倫をやめるよう通知した後にも不貞を繰り返している証拠も取っておくとよいでしょう。

まとめ

以上、不倫を原因とするうつ状態に陥った場合、きちんと証拠を用意し、その因果関係を立証することができれば、相手に請求できる金額は相場よりも高くなると記述してきました。

しかし、一人で全ての証拠を用意し、立証していくのはもちろん難しいことです。
上に挙げたものが準備すべき証拠の全てではありません。

より多く慰謝料を請求したい、治療に要した費用を支払ってほしいなどという場合はぜひ一度、不倫問題を専門とする弁護士にご相談ください。

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